2023年7月13日に開催されたAdobe Marketo Engage(以下、Marketo)ユーザー会『MUG Day』に参加した。
今回はコロナ禍以降、2回目のオフライン開催。300名のMarketoユーザーと7社のMarketoパートナー企業が集まった今回のMUG Dayは、前回以上の大盛況だった。「鈴木心写真館」がブースを構え、活気良く参加者のプロフィール写真を撮っていた姿が印象に残っている。
MUG DayのメイントピックであるMarketoユーザー事例紹介とグループディスカッションは、会場に集まったユーザーの距離を近づけるきっかけとなった。
本コラムでは『MUG Day』で紹介されていたユーザー事例と、私自身が感じたことをまとめる。
※関連ナレッジ資料※
Adobe Marketo Engage操作スキルチェックシート をダウンロード
約半年ぶりに開催されたMarketoユーザー会『MUG Day』はエビススバルビルで開催された。
会が始まってすぐに昨年のMUG Dayとの違いに気づく。去年はマスク着用が推奨されていたが、今回は各自の判断に委ねられることになった。マスクを外している人は顔が隠れていないからか、表情や反応がよくわかる。心なしか、前回よりも会話が弾んでいるように感じた。
時間 | 実施内容 |
---|---|
14:00 | オープニング |
14:30 | プロダクトアップデート |
15:00 | ユーザー事例1:デジマ市民権獲得への挑戦|コクヨ株式会社 |
15:30 | ユーザー事例2:ファンマーケティングによる差別化戦略|オリックス野球クラブ株式会社 |
16:30 | Marketo Champion 発表 & 表彰式 |
17:00 | ネットワーキング(交流タイム) |
コクヨは青柳氏、芳野氏が登壇し、同社ワークプレイス事業本部でのデジタルマーケティング推進の軌跡を紹介した。
ワークプレイス事業本部 TCM本部 TCMマーケテイング部 プロモーションG グループリーダー 青柳 由美子 氏
ワークプレイス事業本部 TCM本部 TCMマーケテイング部 プロモーションG 芳野 延博 氏
コクヨには大きく分けて「ワークスタイル領域」と「ライフスタイル領域」の2つの事業領域があり、青柳氏と芳野氏はワークスタイル領域に所属している。ワークスタイル領域ではオフィス用品を取り扱っており、そのなかでも両者は官公庁向けデジタルマーケティングの推進を担当している。
コクヨがデジタルマーケティングへの取り組みを始めた背景には「顧客の動きをいち早く把握したい」という課題があった。
官公庁舎の担当者はオフィス環境を刷新するにあたり、委託先に関する情報収集をおこなう。こうした顧客の動向をいち早く察知し、コンタクトを取ることは良質な商談を創出するうえで重要だ。顧客の動向をいち早く察知するためにデジタルマーケティングに取り組むことになり、他部署ですでに利用していたMarketoを導入した。
営業部門が強い影響力を持つ同社では、社内でデジタルマーケティングに対する理解を得ることに苦労したという。そんな同社のなかでも新しいと取り組みに理解を示してくれる営業部門の若手社員を巻き込み、デジタルマーケティングを推進した。そうした活動が功を奏し、マーケティング部門は今では営業部門から頼られる存在へと進化している。
コクヨが掲げた「デジマ市民権獲得への挑戦」というタイトルが印象に残っている。
同社に限らず、営業部門が強い組織のなかで肩身が狭い思いをしながらデジタルマーケティングに取り組んでいるマーケターは多い。そのような、多くのマーケターが直面する壁を「市民権の獲得」と前向きに表現したことで、同じ悩みを持つマーケターから共感を得ていたと感じている。
セッションのなかで話していた「仲間づくり」について、持ち帰って実践したいと感じた人も多かっただろう。マーケティング活動が売上に貢献するには、営業部門との連携が不可欠である。マーケティングに対して懐疑的な人が多い営業部門と連携するには、マーケティング活動に協力的な仲間を営業部門のなかに作るのが得策だ。
青柳氏と芳野氏は、仲間を増やしてデジタルマーケティングへの理解を深めてもらうために、以下のようなことを説明する機会を定期的に設けたという。
・顧客行動の情報を活用するメリット
・行動トラッキングの仕組みについて
・問い合わせにつながった顧客の行動履歴
弊社がマーケティングコンサルティングを進めるなかでも、営業部門との連携についてはよく相談を受ける。部門間の溝を埋める活動は一朝一夕には進められない。施策共有会の実施を促したり、特定の営業所だけにフォーカスしてまずは小さく運用を始めることを勧めたりすることが多い。
このような取り組みの一環として、コクヨはデジタルマーケティングへ嫌悪感を持っていない若手社員を巻き込むことにしたのだろう。
グループディスカッションのテーマは「デジタルマーケティングが市民権を得るために工夫したことのなかで、上手くいったこと、上手くいかなかったことは何か?」というもの。このテーマでは「上手くいかなかったもの」を挙げる人が大半を占め、改めてマーケティング部門の立場の弱さを感じた。
営業部門との連携での悩みのなかに「MQLとして受け渡しているリードは営業が求める質になっているか」というものがあった。MQLがどれだけ機能するかは、マーケティング部門と営業部門の間で合意を取れたかどうかにかかっている。話し合いと検証を繰り返し、徐々に双方が納得できる定義を作れるよう、MQLの定義を改善し続ける必要があるだろう。
事業本部 事業企画部 企画グループ 洞井 知彦 氏
事業本部 事業企画部 企画グループ 谷 圭祐 氏
大阪でプロ野球の球団「オリックス・バファローズ」を運営するオリックス野球クラブは、関西で絶大な人気を誇る某球団とのファン獲得競争に苦戦。加えて、2020年まではパ・リーグ下位に終わるシーズンが多く、球場への来場者数を増やすことに大きな課題を抱えていた。
そこで同社はマスを対象とするのではなく、ニッチなニーズを満たすブランディング&マーケティング戦略を立案した。選手にスタイリッシュなファッションをさせたり、アイドルのようにプロマイドを作成したりして、これまで野球に関心を示さなかったような層を取り込むという一風変わった戦略である。
観戦チケットや飲食物の購入状況、イベントへの参加状況などのデータをもとに一人ひとりの熱量を推測し、喜ばれやすいコンテンツを提供することでファン化を促進した。そうした活動が功を奏し、ファンクラブでのコンバージョン数はMarketoを使っていなかったときと比較して4.1倍まで伸びたという。
BtoC事業であるオリックス・バファローズのファンマーケティングは、BtoB事業者でも参考にできるものであった。顧客の熱量を高め、継続的な購買につなげて中長期的な売上基盤をつくるという考え方はBtoB、BtoC問わず重要である。オリックス・バファローズの事例は、その重要性を再確認するきっかけとなった。
私が参加したグループには「無料会員から有料会員への転換」で悩みを抱えている方がいた。その方が所属する会社は一般消費者向けに学習アプリを提供しており、収益を上げるために無料会員から有料会員への転換率を上げる必要があるという。
ほかの参加者からは「無料会員を有料会員へと転換させるには、有料会員になることで利用できる機能などのメリットを訴求するのが良いのではないか」といった意見が出た。しかしそれでは売り手側の視点が強く、「ファンマーケティング」とは言いにくい。ファンマーケティングを推進していくには、売り手側の都合でアプローチするのではなく、ファン化した顧客を分析し、思わずファンになってしまうような顧客体験を設計する必要があるだろう。
MUG Dayに参加して多くのMarketoユーザーと接して、各社のマーケティングに関する悩みは多岐にわたると感じた。どのようにしてマーケティング成果を上げるのかを悩んでいる企業もあれば、部門間連携に悩んでいる企業もある。
そんななかでも試行錯誤しながらマーケティング推進を進めている企業もあれば、先が見えず停滞してしまっている企業もあるというのが率直な印象だ。
先が見えずに停滞してしまいそうなときはMUG Dayや各種分科会など、他社のMarketoユーザーが集まる場所に足を運び、情報交換をするのが良いだろう。近しい悩みを持った仲間がどのように壁を乗り越えようとしているかを知ることで、解決の糸口を見つけられるかもしれない。
パワー・インタラクティブはこれまで、160社以上にのぼる企業様のMarketo活用を支援してきた。そのなかでMarketoユーザーが直面しやすい課題や、その解決方法を蓄積している。
デジタルマーケティングを推進するなかで先が見えなかったり、社内で意見がまとまらなかったりするときは、ぜひ弊社まで相談してほしい。
デジタルマーケティング推進についてマーケティングコンサルタントに相談する
マーケティングコンサルタント
鍋山 百香
マーケティングオートメーション活用支援
営業と管理者の2軸で、人材・教育・旅行・広告・コールセンター・保険とさまざまな業界を経験。うち、楽天・リクルートなど大手企業での業務経験もあり。東南アジアでの海外就労経験も有し、様々な経験と柔軟な対応でお客様へのコンサルティングを行っている。
社内第一号の「キャリアと子育てを両立するママ」を目指す。
2024.11.26
2024.11.25
2024.02.13