大手総合リース会社のA社では、2022年7月より企業情報解析ツールplusの利用が始まりました。導入を決めたA社の担当者は、営業のDXを推進する部署で、インサイドセールスを含むデジタルマーケティングチームに所属しています。5年前からMAを利用しているなかで3つの課題に直面していました。
本稿では、A社担当者に、企業情報解析ツールplusを導入した目的や導入後の成果について確認しました。
私たちは、MAのAdobe Marketo Engage(以下、Marketo)を約5年間運用しています。そのなかで、3つの課題がありました。
これまで企業の属性情報を手動でしか更新できず、Marketoにデータを取り込むまでに1カ月もの時間がかかっていました。営業側が使っているSFAはMicrosoft Dynamics 365(以下、Dynamics 365)なのですが、社内事情によりMarketoとのシステム連携ができません。そのため、Dynamics 365に入っている帝国データバンクの企業の信用情報をダウンロードして、Marketoに手動で取り込む作業が必要でした。その際にIT部門へ依頼をしなければならず、余計時間がかかっていたのです。
我々金融機関の場合は「与信が通る人だけ」にしか営業活動はできません。企業の信用情報データの取り込みは必須です。そうしないと、後からトラブルになってしまう可能性があります。年に4回程度しか企業データを取り込めず、企業属性情報をリアルタイムにメンテナンスすることが難しくなっていました。
2つ目の課題は、企業の最新情報を活かした施策が打てていなかった点です。社内で扱っている企業属性情報は、業種や信用情報などのあまり変化しない情報が中心でした。企業情報解析ツールplusの「ストーリー※」で取得できる、企業トレンドのような情報は持っていませんでした。そのため、セグメント別メール施策の幅に限度がありました。
※ストーリーとは、企業の特徴がわかる企業トレンド情報です。「SDGsを推進している企業」「広告宣伝費が増えた企業」「IT投資に積極的な企業」など約1400種類以上の特徴データが判別できます。
3つ目の課題は、見込み客リストの作成作業が煩雑になっていた点です。サービスの問い合わせがあった企業と類似している企業を特定しようとしても、Marketoには機能がありません。エクセルを使った作業が必要となり、手間がかかっていました。
これらの課題を克服するためにいくつかのツールを比較検討するなかで、企業情報解析ツールplusを導入しました。
社内への説明資料を作るためにいくつかのツールの情報を集めていたのですが、他のツールと比較し、一番の決め手は価格の安さでした。今回の導入は試験的な意味合いもあり、あまり予算をかけられないという事情があったので、価格は重要でした。
あとは貴社の担当者にお会いして、対応が良かったというのも決めた理由の1つです。
まだ半分くらいの活用度ですが、できているところでいうと、顧客データのメンテナンスの自動化です。Marketoには20万件近いリードを保有していますが、企業情報解析ツールplusは全てのリードに企業データが付与できます。しかも企業データは毎月最新版に更新されているので、企業属性ごとにメールの出し分けが簡単にできるようになりました。たとえば、従業員数500名以上の企業に送るメールと、従業員数500名未満に送るメールで紹介する商品を分けています。
また、企業情報解析ツールplusの企業データには法人番号が付与されているので、帝国データバンクの信用情報と法人番号を紐づけて与信管理も容易にできるようになりました。
分析面でも、項目にコードが付与されているので、深い分析ができるようになりました。たとえば、業種と従業員数を掛け合わせてメールを配信した際、どの顧客がクリックしたのか、狙いとした顧客はクリックしているのかが確認できます。売上高や当期利益といったデータは、Dynamics 365上では更新されませんが、企業情報解析ツールplusでは前期、前々期の数字が拾えるので、今期は増収増益なのか把握しやすくなりました。
私たちは、問い合わせ数をKPIに設定しており、前期と比べて約2倍の問い合わせ数を獲得しています。これだけ伸ばせたのは、企業情報解析ツールplusの効果もあったと思います。
ツールの満足度としては、100点満点で80点くらいです。あとの20点は不満というわけではなく、機能拡張への期待になります。具体的な機能として挙げられるのは、AIのスコアリングの精度向上などです。
会社への要望としては、周辺のソリューションの提案もいただきたいです。企業情報解析ツールplusのように、ユニークなプロダクトをさらに増やしていただくのも一案かなと思います。
ストーリーを活用したメールシナリオを展開したいと考えています。ストーリーの情報から「DXに関心のある企業」を抽出し、仮説ツリーに沿ったメールの出し分けを行う想定です。
たとえば、DXを推進したい企業は、どんな課題を持ち、どんな行動を起こそうとしているのか。DXに関心があるということは、社内の効率化や新規ビジネスのアイデアが必要、といった課題があるはずです。この課題を分解していくと、効率的に必要なシステムを導入したい、開発資金がほしい、といった課題に分かれていくと思われます。
ツリーの上部にある課題は、DXを推進するための参考になる記事コンテンツを配信します。ツリーの下部に行けば行くほど、私たちの提供するソリューションに近いコンテンツを配信するイメージです。DX推進したい企業へすぐに自社サービスを提案するのではなく、課題を段階的に追って、最後にサービスを提案するかたちにもっていきたいと考えています。
これから営業を巻き込んでワークショップをしながら仮説ツリーを作り、ソリューションを整理してコンテンツを作っていくところです。
また、教師データを元にAIがスコアリングする「企業スコア」を、インサイドセールスに渡すリードに活かしたいと考えています。
以前、教師データに「成約につながった企業」300社を使用し、企業リストを抽出したところ、スコア上位の企業はクリック率が高く、問い合わせ数も多かったので、信頼はできそうだと思いました。弊社の場合は、シンプルなサービスのほうがスコア精度は高いと認識しています。
インサイドセールスには、企業情報解析ツールplusで得られる情報を掛け合わせて、企業スコアの高いものを優先的に渡す予定です。
私はインサイドセールスの改革も担当しており、SDR(反響型のセールス)だけではなくBDR(新規開拓型のセールス)ができるチームを作りたいと考えています。企業情報解析ツールplusを活用してアプローチ先リストを作成できればと考えています。
企業情報解析ツールplusの導入により、業務の効率化や施策の精緻化に貢献できており、担当として嬉しく思います。どのツールでもそうですが導入したら成果が出るというものではなく、導入してからのPDCAが欠かせません。今回のA社の担当者も様々な施策に積極的に取り組んでおり、その試行錯誤の結果がKPI2倍達成に結びついていると思います。今後も一緒に試行錯誤できる伴走型のパートナーとしてサポートしていきたいと思います。
インタビュー実施日:2023年7月3日
マーケティングオペ レーション部 部長
高月 大輔
マーケティングオートメーション活用支援
Webディレクターとして大手・中堅企業を中心に多数のWebサイト構築を手がける。その後、マーケティングデータアナリストへ転向。 Googleアナリティクスでのアクセスログ分析やBIツールを使ったダッシュボード構築に従事。現在はMarketoの活用支援コンサルティングにも領域を広げ、自社のMA運用代行チームのリーダーとして活動している。
またAdobe社のMarketoトレーニング講師も担当し、分かりやすい解説が好評を得ている。
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