事例

TAC株式会社 マーケティングダッシュボードで、俯瞰したデータ分析と事業部への速やかなデータ共有を実現

TAC株式会社 マーケティングダッシュボードで、俯瞰したデータ分析と事業部への速やかなデータ共有を実現

TAC株式会社 マーケティング事業部 講座マーケティング開発部
オンラインマーケティング企画グループ 責任者
宮北 健吾 氏

直営校22拠点と提携校12拠点を全国に展開する「資格の学校TAC」を運営するTAC株式会社(以下、TAC)。「プロフェッションの養成を通して社会に貢献」を企業理念に、毎年約20万人の受講者の資格取得を支えています。

TACでは、2019年10月からマーケティングダッシュボード(以下、ダッシュボード)を導入。パワー・インタラクティブにてダッシュボードの設計・構築をおこない、現在も支援を継続しています。

本稿では、TAC株式会社のマーケティング事業部 講座マーケティング開発部に所属する宮北健吾氏に、ダッシュボード導入の目的や経緯、マーケティングへの活用状況についてうかがいました。

ダッシュボード構築の目的は、俯瞰したデータ分析と事業部への速やかなデータ共有

2019年10月に弊社へダッシュボード構築の依頼をいただきましたが、その背景や目的を教えてください。

ダッシュボード構築の目的は、主に2点あります。1つは、マーケティングデータが分散しているのを俯瞰して見えるようにしたかった点です。GoogleアナリティクスやAdobe Marketo Engage(以下、Marketo)、広告関連の計測ツールなど、マーケティングに関するデータが分散していて、マーケティング活動を俯瞰して分析することが難しい状態でした。

また、講座申し込み情報やリード情報は自社開発のCRMで管理していますが、講座申込みとリード情報が連動して見えるわけではなく、十分にデータ分析できていない状況でした。Marketoにおいても、レポート機能はあるものの、自社に適した分析をするには限界がありました。

MarketoやGoogleアナリティクス、それぞれのツールだけでも施策レベルの判断はできますが、戦略や中長期的な状況判断をするためには、すべてのデータを統合して見る必要があります。そのためには、ダッシュボードが必要でした。

ダッシュボード構築の目的は、俯瞰したデータ分析と事業部への速やかなデータ共有

2つ目の目的は、私たちマーケティング部門以外の、施策を実行する教育事業部の企画担当者へ速やかにデータを共有することでした。私が所属するマーケティング事業部は、事業を横断した全社のマーケティング活動を担っており、講座マーケティング開発部では、全社のマーケティングのしくみづくりを、講座マーケティング推進部では、戦略の施策への落とし込みをおこなっています。

実際に講座企画や販売促進など具体的施策を実行するのは教育事業部です。教育事業部では、資格試験ごとにターゲットが異なるため、企画担当者も資格試験ごとに担当付けされます。資格試験の規模によりますが、1つの資格試験に担当が1人の場合もあれば、10人の担当が就く場合もあり、トータルで100名以上が企画部門に所属しています。

教育事業部を含め、データを見て施策に落とし込むスピードをアップするには、それぞれの要件に応じた形で統合されたデータを分析する環境が必要です。そのために、御社にダッシュボードの設計と実装をお願いしました。

パワー・インタラクティブを選んだ理由は「マーケティングへの知見の深さ」

ダッシュボード構築のパートナーとして、パワー・インタラクティブを選んだ理由を教えてください。

「マーケティングへの知見が深いこと」が一番の選定理由です。御社のことはMarketoの研修で以前から知っていましたし、御社主催のセミナーにも参加していました。Marketo導入後の使い方トレーニングの講師を御社がおこなっていたとき、使い方だけではなく、目的から考えた活用方法を解説していたのを覚えています。ダッシュボード構築前のヒアリング時も目的をおさえ、ダッシュボードの閲覧対象者によって要件が違ってくることをふまえたヒアリングと整理をしてもらえたため、正式にお願いしようと決めました。

8つのダッシュボードレポートで、実績推移と施策検証を推進

ダッシュボードの具体的な内容について教えてください。

ダッシュボードのレポート構成は、全部で8つあります。Webガイダンス、資料請求、Web体験、オンライン受講相談などのコンタクト履歴もダッシュボードで把握できるようにしています。

1.講座申込・売上実績
2.アップセル・クロスセル分析
3.コンタクト別サマリ・前年対比
4.コンタクト数と人数、推移と発生地域
5.講座申込に貢献したコンタクト分析
6.コンタクトの貢献状況と申込検討における位置づけ
7.Marketo基本レポート
8.サイトのパフォーマンス(GA4基本レポート)

「1.講座申込・売上実績」は、講座の申し込み数と売上を定点観測して状況把握するためのものです。「2.アップセル・クロスセル分析」は、お客さまのアップセルとクロスセルの状況が分かります。

「3.コンタクト別サマリ・前年対比」「4.コンタクト数と人数、推移と発生地域」「5.講座申込に貢献したコンタクト分析」「6.コンタクトの貢献状況と申込検討における位置づけ」の4つは、申込情報とリード施策の関係をコンタクト履歴として集約しています。資格試験ごとに傾向が違いますし、新規ユーザーとリピーターの獲得施策でも有効な施策が違います。どの施策がユーザー獲得につながっているのか、分析するために活用しています。

「7.Marketo基本レポート」は、新規リード獲得数やメール配信施策の結果などが、Marketoのアカウントがなくても見られます。「8.GA4基本レポート」は、Webサイトのアクセス状況などが見られるものです。フィルターをかければ、資格試験ごとにデータの取得が可能です。

8つのダッシュボードレポートで、実績推移と施策検証を推進

ダッシュボードは、どのくらいの期間をかけて構築したのですか?

ダッシュボードの構築は、2回のフェーズに分けて実施しました。第1フェーズは、2019年12月から2020年3月末にかけての4カ月間、GoogleアナリティクスとMarketoのデータをCData Software社が提供するCData Syncというデータパイプラインツールで抽出・変換し、BigQueryに蓄積・加工、分析用データマートを構築しました。BigQueryに蓄積されたデータは、Looker Studioで可視化できるようにしました。その後、私たちの準備に少し時間をいただき、第2フェーズは2022年12月から2023年4月中旬までの4カ月半でCRMデータの統合、連携をおこないました。第2フェーズまでの間に、御社にダッシュボードの改修やGoogleアナリティクス4への移行を進めてもらいました。(図表1参照)

図表1:システム構成図

仕様書をベースにダッシュボードをメンテナンス、利用拡大へ

ダッシュボード構築後、メンテナンスはおこなっているのですか?

基本的なダッシュボードのレポート数は8つですが、新たに私のほうでYouTubeの基本レポートを作りました。また、御社から納品されたデータ連携とダッシュボードの仕様書を見ながらこちらで連携データ項目を追加したり、部門ごとの要件に沿ったダッシュボードを追加構築したりして、現在では20近い資格試験のダッシュボードが揃いました。

仕様書には、BigQueryのデータ構成内容や、Looker Studioのテーブルとビューの構成内容が書かれているので、参考にしながら最適化をおこなっています。部門や担当者ごとに要件が異なるので、社内でメンテナンスをおこなえるようにする必要があります。仕様書は大変役に立っています。

ダッシュボードの成果は、デイリーにCRMと連携した講座申込・売上実績の把握が実現したこと

ダッシュボード構築の成果を教えてください。

ダッシュボード導入時の目的であったマーケティング活用は、ほぼ達成できました。ダッシュボードが構築される以前は、データを確認したい人にGoogleアナリティクスやMarketoのアカウントを発行して、各自に直接数字を確認してもらっていました。Marketoの発行アカウント数は、全部で30個くらいにのぼります。ダッシュボードの構築によって、GoogleアナリティクスとMarketo、CRMのデータを統合して見られるようになりました。部門ごとに必要なデータの要件が異なりますが、ダッシュボード上のフィルター機能によって、資格試験ごとのデータを絞り込んで見えるようにしています。

ダッシュボードの成果は、デイリーにCRMと連携した講座申込・売上実績の把握が実現したこと

ダッシュボードの中でも、「講座申込・売上実績」は毎日更新されており、状況把握のためによく使われています。資格試験ごとに多くの講座があるので、昨対比で申込み状況を見て、講座別に施策をおこなう判断をします。CRMでは会員情報と申込み情報の関係を結びつけることが難しかったのですが、ダッシュボードで実現することができました。

ダッシュボードの成果は、デイリーにCRMと連携したデータが見えるようになったことです。CData Syncでデータを自動連携し、BigQueryでデータの加工をおこなうことで実現しました。データの自動連携は必須であり、ダッシュボードから参照するデータの取得元を一本化して管理を統一することが重要だと考えます。そうすればダッシュボードを資格試験ごとに拡張することができますし、今後Looker Studioから有料のBIツールに変更することがあっても、見せ方を変えるだけの話なのでスムーズに移行できます。

資格試験の企画担当者からは状況の把握がしやすくなったという声もあり、個人差はありますが、毎日ダッシュボードを確認している人もいるようです。

アトリビューション分析で3つの期間ごとのコンタクト履歴と売上貢献を把握

アトリビューション分析も実施できるようになりました。アトリビューション分析では、講座の受講に至ったユーザーのWebガイダンス、資料請求、Web体験、オンライン受講相談などのコンタクト履歴を時間軸で分けています。講座申込日を起点に、7日前・30日前・90日前という3つの期間に分けて、それぞれコンタクトがどれくらい発生しているのかを可視化しています。これにより、売上に直接貢献したコンタクト履歴だけでなく、成果に至るまでのすべてのコンタクト履歴を通じて「間接的な成果」が見えてきました。

講座申し込みに至るまでの検討期間は資格試験ごとに傾向が違いますし、資料請求やセミナーなどの施策によっても違いがあることがわかってきました。アトリビューション分析によって短期、中長期の施策を考えるときに、どの施策を強化すればいいのか、判断できるようになりました。今後は、プロモーションの組み合わせや予算の最適化など、新たなターゲットの開拓経路の発見にも活用したいと考えています。

パワー・インタラクティブからの要件整理と分析提案でダッシュボードの最適化が実現

パワー・インタラクティブが貢献したことを教えてください。

講座の申込状況や売上を、毎日確認できるようにしてもらい、本当にありがたいと感じています。また、ダッシュボードを構築する段階で、弊社の目的に合わせた形で分析できるようにデータ抽出してもらった点も感謝しています。アトリビューション分析の考え方も、私たちが考えるだけでは出てこない発想でした。さらにそれを実現していくためのデータ構成や、ダッシュボードの表現を提案してもらえたことは大変助かりました。

ダッシュボード構築時に大変だったのが、ダッシュボードを活用する目的と使用する対象者を決めて、そのためにどのようにダッシュボードを最適化していくかという要件を決めることでした。御社に相談し、提案を受けながら進めることができました。

今後の第一の課題は、社内のデータ活用の推進

今後の課題を教えてください。

まず第一の課題は、社内のデータ活用の推進です。ダッシュボードをより多くの企画担当者が利用できるよう広げたいですし、見える化したデータをより施策に活かしてもらうよう進めたいと考えています。また、AIと機械学習の導入も検討していきたいです。AIの導入によって、分析にかけていた人のリソースを施策に回せるようになります。一方、まだやり残していることもあります。GA4と会員番号との紐づけをおこなうことで匿名から受講、さらにリピーターに至った施策が把握できるようになります。Webの分析も進めていきたいと考えています。

プロフィール

宮北 健吾 氏
TAC株式会社 マーケティング事業部 講座マーケティング開発部
オンラインマーケティング企画グループ 責任者

2010年入社。映像制作部門、オンライン学習開発部門を経て、2013年よりマーケティング担当。2014年に自社サイトのリニューアルとCMS、Web解析ツールを導入。各部門担当者がサイトを制作できる体制を構築しデジタルマーケティングをスタートさせる。2019年 Marketoを導入しリード獲得強化策、ナーチャリング施策を開始。同年よりダッシュボードの構築を開始。近年はユーザー動向に応じた施策をサポートしながら、データドリブン・マーケティングの体制強化と仕組みづくりに尽力している。上級ウェブ解析士、G検定など保有。

担当アナリストの声

2019年当時、Marketoデータの可視化が珍しい中での取り組み、そして重要な「しくみ化」のプロセスを支援できたことは、私にとって非常にやりがいのある経験でした。

ダッシュボード構築の第1フェーズでは、マーケティング部門への見える化を行い、その後の第2フェーズで他部門への見える化を利用者の立場を意識した形で展開しました。宮北様の推進もあり、理想的な流れでダッシュボードを展開できたことが、導入時の目的を達成できた成功要因ではないかと感じています。

データ活用に終わりはありません。データ分析基盤の構築についてはCDataSyncを利用した広告データ連携、施策担当者視点での細部の見える化など、お客様の社内データ活用のさらなる推進を支援していきます。


インタビュー実施日:2023年9月25日

八木 耕祐

マーケティングデータアナリスト

八木 耕祐

Web行動履歴やアプリデータによる顧客行動分析

アナリストとして、50社のアクセスログ分析に携わる。現在は、データ設計、データマート構築などの基盤づくりから、ダッシュボード作成、分析まで、データ活用を極めている。セミナー登壇は50回以上、満足度90%以上のセミナーも多数。
リモートワークになり、海の近くでマリンスポーツをエンジョイ中。

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