コラム

失敗してもただでは起きない!Adobe Marketo Engageの設定ミスをノウハウに転換する取り組み

パワー・インタラクティブではAdobe Marketo Engage(以下、Marketo)などマーケティングオートメーション(以下、MA)の活用支援サービスの一環として、「MA運用代行サービス」を提供している。MAを活用するにあたり、「手を動かす部分は外部にまかせて社内では企画をおこないたい」「急な退職や異動により、ツールに触れる人材が欠員した」と考え、運用に関わる部分をアウトソースしたいというニーズに応えるサービスとなっている。

MAの運用には、業務の設計やスタッフの確保とトレーニング、イレギュラーに対応できるスキルが必要だ。パワー・インタラクティブでは、以下3つの要素によって安定した運用代行オペレーションを提供している。

①専門スキルを持つチーム体制
②コンサルタントによる業務フローの定義、見直し
③ミス発生時の対応や評価方法のルール化

今回は運用代行サービスを推進するなかで、気を付けていても起こってしまった作業ミスやヒヤリハット事例をどのようにノウハウに転換しているか、その取り組みを紹介する。

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失敗事例が集まる仕組みを作る

運用代行チームでは、社内のWチェック作業でチェック者に間違いを指摘されたら「ヒヤリハット指摘事項」、お客様の確認段階で設定間違いを指摘されたら「お客様指摘事項」、そしてお客様も気づかずに施策実施後に発覚したものは「インシデント」として、作業ミスを分類している。万が一作業ミスが潜んでいたとしても、お客様に確認を回す前の社内確認の段階(=Wチェックの段階)で、自分達でミスをつぶしたいという気持ちがある。

図表1:作業ミスの分類

「自分達でミスをつぶす」ための工夫として、チームでは作業ミスやヒヤリハット(以下、失敗事例)を毎週末にメンバーから収集している。どのような失敗事例だったか、「内容」「原因」「対策」を簡単に記載してもらう。この時のポイントは、失敗に対してお詫びや言い訳を含めず、あくまで事実を淡々と記載してもらうこと。失敗はなるべく申告したくないのが人の気持ちというものだが、事実ベースの記載とすることで心理的ハードルを下げるよう気を付けている。

集まる内容のレベル感は様々で、メール本文の行間やスペースの間違いレベルもあれば、配信対象の設定間違いといった配信事故に繋がるレベルのものも時には存在する。収集の段階ではレベル感は気にせずに、まずは失敗事例を漏れなく収集することを第一にしている。

失敗事例を共有する場を作る

メンバーから集まった失敗事例は、週次の定例ミーティングで毎回時間を設けて共有している。ミスしたメンバーを糾弾する場ではなく、あくまで「事例」をメンバー間で共有する場になるよう気を付けている。

この場ではなるべく、具体的な改善策や予防策を生み出すためのディスカッションに時間を割くようにしていて、「気を付けます」「注意して取り組みます」といった気持ちの対策よりは、仕組みや手法の見直しで対策がとれないか、毎回メンバー間で知恵を絞っている。

また失敗事例の共有はお客様に対しても定期的におこなっている。毎月のタスク件数や作業時間の報告に加えて、チーム内のWチェックで見つかったミス(ヒヤリハット指摘事項)、お客様から指摘いただいたミス(お客様指摘事項)を月次でレポートにしている。レポートを見ながらお客様と一緒にミス削減について考える場を持つことが、運用品質を高めることにもつながっていると感じる。

図表2:品質報告レポートの例

失敗事例をカテゴライズして分析する

失敗事例の収集を続けていると一定のボリュームとなり「失敗事例データベース」のようになってくる。とはいえ、テキスト記述が中心で、カテゴリ整理もなくただ蓄積されているだけだったので、このままでは集計に取り組むことができなかった。手作業で数百の失敗事例をまずはカテゴライズして、集計できる土台を作った。(収集時にカテゴリ整理もあわせておこなうべきだったと反省している)

図表3:失敗事例のカテゴリ例

集計してみると、メール配信の代行業務が多いこともあり、メールアセットにまつわるミスの件数やバリエーションが多くなっていた。これまで肌感覚として、メールアセット関連は失敗事例がよく報告されていたと思っていたが、あらためて数値で可視化されたことで、何に気を付けるべきかが浮かび上がってきた。

図表4:失敗事例データベース集計結果(一部)

失敗事例を教育メニューに活用する

運用代行メンバーには、MAの利用経験が浅い人も参加している。これまでほかのメンバーが遭遇してきたミスを知らずに、再度起こしてしまうことも度々発生していた。個人としては初めて遭遇した事例でも、チームとしては過去に経験済みの事例なので、どうにか削減できないかとモヤモヤしてしまう。

そこで、失敗事例データベースの集計で見えてきた「よくある失敗事例」を踏まえて、新人育成プログラムを構築することにした。これまでの新人研修ではMarketoの操作習得を中心にしていたが、新しいプログラムでは操作習得に加えて、よくあるミスとその回避方法をカリキュラムに加えて学んでもらうようにした。結果的に新人スタッフもスムーズに業務に参加することができ、ミスの防止や運用代行の品質維持にも貢献できている。

図表5:新人メンバーの教育プログラムの変化

今回は作業ミスをいかに収集して事例化していくかについて取り上げた。作業ミスはいくら気を付けていても完全にゼロにすることはできない。少なくとも同じミスは繰り返さないようにしたいと日々取り組んでいる。MA運用の品質改善のヒントにしていただければ幸いだ。

高月 大輔

オペレーションPro.グループマネジャー

高月 大輔

マーケティングオートメーション活用支援

Webディレクターとして大手・中堅企業を中心に多数のWebサイト構築を手がける。その後、マーケティングデータアナリストへ転向。 Googleアナリティクスでのアクセスログ分析やBIツールを使ったダッシュボード構築に従事。現在はMarketoの活用支援コンサルティングにも領域を広げ、自社のMA運用代行チームのリーダーとして活動している。
またAdobe社のMarketoトレーニング講師も担当し、分かりやすい解説が好評を得ている。

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