矢野経済研究所「2017年版DMP/MA 市場~デジタルマーケティング市場の現状とビジネス展望」を読む
民間調査機関の株式会社矢野経済研究所は、11月29日、「2017年版 DMP/MA市場 ~デジタルマーケティング市場の現状とビジネス展望」の調査概要を公表(*1)した。
(*1)株式会社矢野経済研究所 プレスリリース
同調査は、デジタルマーケティングサービス市場の中でもデータマネジメントプラットフォーム(DMP)とマーケティングオートメーション(MA)を取り扱い、ライセンス売上およびコンサルティング・サポートによる売上によるそれぞれの売上高から今後の市場規模の推移を見ている。今回発表された調査は2015年の調査に続く2回目の調査となる。
2016年のデジタルマーケティングサービス市場(DMP+MA)の市場規模は303億円で、2014年の208億円に対して1.46倍の成長となった。市場は今後も成長を維持し、2022年には、2016年比で2.11倍の639億円に達すると予測している。
注1:事業者売上高ベース
注2:2017年は見込値、2018年以降は予測値(2017年10月現在)
出典:矢野経済研究所「DMP(データマネジメントプラットフォーム)サービス市場/MA(マーケティングオートメーション)サービス市場に関する調査(2017年)」
さらにDMPとMAそれぞれの市場規模の推移を見てみよう。前回調査と2017年調査を比較したものが図2である。
注3:事業者売上高ベース
注4:2015年調査:2015年は見込値、2016年以降は予測値(2015年11月現在)
注5:2017年調査:2017年は見込値、2018年以降は予測値(2017年10月現在)
出典:矢野経済研究所「DMP(データマネジメントプラットフォーム)サービス市場/MA(マーケティングオートメーション)サービス市場に関する調査(2015年、2017年)」
前回調査の2014年売上高に対する2016年予測売上高はDMP1.66倍、MA1.64倍に対し、2017年調査における2016年売上高は2014年比でDMP1.44倍、MA1.46倍と予測を下回る成長となったものの、ともに大きく伸長した。
2017年以降の予測を見ると、DMPは前回調査の予測から下方修正され、成長の鈍化を見込んでいるのに対し、MAは2018年に前回調査の市場規模に到達し、2019年以降は前回調査を上回る規模で成長の継続が見込まれている。2022年の予測では、MAの市場規模は530億円に達する。
DMPは2017年5月の改正個人情報保護法において匿名加工情報の利用について定められたことから、より利用しやすい環境は整っていくだろう。しかしDMPは広告における活用やCRMにおける活用など利用目的が幅広く、多様なデータソースの高度な利活用を前提に構築する必要があることから、導入の敷居は高い。また、DMPを主に活用するBtoC企業は個人情報の取り扱いにおいてコンプライアンス・プログラムによる制約から、クラウドサービスの利用について社内の承認が得られず導入を断念するケースも少なくない。
一方、多くの企業が所有するハウスリストを活用し案件創出の強化にフォーカスしたMAは、企業のマーケティング・セールスの課題に対するわかりやすいソリューションとして、より広く受け入れられるだろうことは、今回の予測からも見て取ることができる。
パワー・インタラクティブは今回取り上げた調査において、デジタルマーケティング関連事業社22社の1社として調査に協力している。最後に成長するMA市場を取り巻く状況について、現場で体感している点からまとめてみたい。
2016年、パワー・インタラクティブでは36件のMA導入・運用支援を行った。毎月実施しているMA関連セミナーの参加者も前年から大きく増加し、引き合いも増えている。
MA導入・運用の現場においては、以下のようないくつかの変化が起きていると見られる。
MA導入においては、ツールの仕組みをある程度理解したマーケティング担当者が主導し、担当者個人が運用にあたるケースは少なくなかった。しかし、2016年あたりから、営業との連携を含め社内での組織的な運用を前提に導入するケースが増えている。また、担当者1名による導入の場合も、社内でのチーム組成に課題感を抱いているケースが多い。
これまでフルスクラッチで構築、ないしは単体でパッケージを導入していたSFA・CRMについて、MA導入と合わせてSalesforce等へのリプレース・連携を行い、マーケティング・セールスプロセス全体を再構築したいと考える企業が増加している。また、すでに導入したエントリークラスのMAツールをより高機能のものにリプレースしたいという依頼も増えている。
MA導入支援を行った企業は、一定の運用を経て自社の課題が明確となり、運用の改善に関わる支援を求める引き合いが増えてきている。導入後、シンプルなマーケティングシナリオに基いて一定の成果を上げた企業が、コンテンツ拡充やライフサイクルステージごとのコミュニケーションシナリオの精緻化を通じてさらに成果を拡大したいと考えはじめているケースは少なくない。
こうした企業は、パワー・インタラクティブが導入支援を行ったケース、他社が導入支援したケースがあるが、MAの利用停止を考えている企業はほぼ存在しない。MA自体の有効性は強く感じており、より成果を拡大したいと考える企業が極めて多い。
MA導入支援はBtoB企業にとどまらず、徐々にBtoC企業からの引き合いも増えており、弊社のクライアントの1割超はBtoC企業となっている。BtoC企業におけるMA運用は業種ごとに独自性が高く、現状は初期運用を通じたノウハウ蓄積のフェーズにあると考えられる。来年以降、徐々に成功事例が認知され、さらに利用が広がる可能性は高い
こうした状況から、MAはすでに一過性の流行を脱し、企業のマーケティング・セールスを強化する上で避けて通ることができない取り組みとして受け入れられていると感じられる。MAを導入すべきか否か、を検討する時期はすでに過ぎ、今、企業は自社においてどのようにMAでビジネスを強化すべきかを真剣に検討している。
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