セミナーレポート

マーケティングオペレーションモデル実現のポイント

マーケティングテクノロジーが急速に発達し、マーケティング業務が増大し続けている。そんななか、マーケティング担当者が個々人の努力によってテクノロジーを活用し、マーケティング活動をおこなうのは難しいだろう。

そこで注目されているのが、マーケティングオペレーション(以下、MOps)という組織だ。MOpsはマーケティング業務全体を俯瞰し、オペレーションを整備する役割を担う。日本ではまだ馴染みがない概念だが米国では一般的に取り入れられている。米国でBrandMakerが実施したアンケート調査『THE 2021 STATE OF MARKETING OPERATIONS』によると、米国企業の約70%はMOps組織を持っている。

2023年3月22日、マーケティングオペレーションモデルを実現するためのポイントを解説するセミナーを実施した。講師はマーケティングコンサルタントの山下。本コラムでは、当セミナーの内容をまとめている。

マーケティングオペレーション(MOps)とは

MOpsとは、人材、プロセス、テクノロジー、データなどを横断的に管轄し、マーケティング効率と効果の向上を役割とする組織のこと。複雑で多岐にわたる昨今のマーケティング業務を適切に管理し、マーケティング部門全体の生産性を高める。

マーケティングを成功に導くためには、全社のマーケティング戦略やターゲット選定、体制や人材、テクノロジーの活用、施策・プロセス設計など土台を整えることが重要だ。これら土台部分の戦略とマーケティング施策実行をつなぐのがMOpsといえる。

図表1:マーケティング成功プロセス

2022年11月、パワー・インタラクティブは「国内のMOpsに関する実態調査」をおこなった。

「言葉は聞いたことがある」を含めるとMOpsの認知は約73%あるが、「社内に業務を担う体制や組織がある」は9%だった。米国では専門のMOpsチームがある企業は6〜7割にのぼるといわれ、大きな開きがある。

マーケティングオペレーション(MOps)が必要な理由

MOpsが必要とされている背景には、現在のマーケティングを取り巻く状況が影響している。

マーケティングテクノロジーの増加とマーケティング領域の拡大

2011年では150程度だったマーケティングテクノロジーは年々増加し、2020年では8,000ものテクノロジーが誕生している。その結果、マーケティング業務に必要な知識が増大した。

これまでのマーケティング業務はいわゆるWebマーケと呼ばれる、Webサイトの運営やコンテンツ作成が中心だった。しかし、近年では、デマンドセンターとしての業務、アナリティクス業務、セールスプロモーション業務なども求められる。また、テクノロジーが増大するなかで、どのテクノロジーが自社に合っているかを考え、選定、導入する必要もある。

以前よりもマーケティング領域が拡大・複雑化している今、組織体制の構築や包括的な効果検証をマーケター自身でおこなうことが難しくなっている。

縦割り組織

日本企業の特徴である縦割り組織によって、事業部ごとにマーケティング施策も管理されているのではないだろうか。また、導入しているツール、データ管理方法も各事業部ごとに決められている場合もあるだろう。このような状態では、A事業部で実施した施策をB事業部では再現できず、ナレッジの展開や横断的な施策評価ができないといった問題が生じてしまう。
これからは事業部をまたいで、テクノロジー・施策・リード/顧客を管理するべきだ。事業部を跨いだデータの統合をMOpsチームが取り仕切り、全社的にナレッジをシェアしたり、施策を評価したりできるようにする必要がある。

また、縦割り組織では部門間で協力体制をとることが難しい。近年はMAの導入によって営業との連携が進んでいるが、テクノロジー活用を考えると情報システム部との連携強化も欠かせない。これからは、マーケティング部の中でMOpsチームを分け、情報システム部との連携を強化することが求められる。

オペレーショナルエクセレンスを実現するための要素

マーケティングテクノロジーの選定、導入、管理

マーケティングテクノロジーが増大するなか、数多くのテクノロジーから自社に最適なものを選定する必要がある。そのためには、自社のマーケティング・セールス戦略の理解、最新テクノロジーに対する知識、他部門を牽引するテクノロジーの運用が求められる。MOpsは、マーケティング部と情報システム部両方とコミュニケーションをとりながら、マーケティング活用を想定したテクノロジー導入を進める。

マーケティングプロセスの改善

自社製品の購買プロセスを考え、マーケティングプロセスを設計し、仕組みづくり~施策実行~ナレッジ蓄積のサイクルを回す。プロセス設計では、全社で共通のテクノロジーを用いる必要がある。

図表3:全社横断なマーケティングプロセスとナレッジ蓄積

全社で共通のテクノロジーを利用することで俯瞰した施策評価ができるようになり、ナレッジを蓄積することができる。

データの管理

オペレーショナルエクセレンスを実現するうえで、マーケティングと営業のデータを連携させることは必須条件である。連携していない場合、マーケティング活動の営業貢献を見える化することができない。

図表4:マーケティングデータマネジメント

マーケティングと営業のデータを連携するには、俯瞰したデータマネジメント能力が求められる。MOpsには、情報システム部やツールベンダーなどと協力しながら、俯瞰したデータマネジメントを推進できる人材が必要だ。

チームのマネジメント

MOpsチームは部門間連携の役割を担うため、ミーティングの運用が重要だ。マーケティング部内のミーティングに加え、情報システム部や営業部など他部門とのミーティングも定期的におこなう。MOpsチームが関わるミーティングを棚卸し、整理しておくと良いだろう。

図表5:マーケティングに関するミーティングの整理

また、MOpsチームはツールを操作する機会が多いため、ツール操作に関する育成に工数がかかる。教育工数を削減できるよう、ナレッジやマニュアルを整備して各々で解決できる体制を整えておくことも重要だ。

マーケティングオペレーション(MOps)の型を作る

オペレーションは整備するだけでは維持できない。型としてMOpsチームで共有してはじめて、持続可能なオペレーションとなる。型として共有するには2つのポイントがある。

Playbookを作成する

MOpsがオペレーショナルエクセレンスを実現するために必要な要素はPlaybookに落とし込んで共有すると良い。

Playbookとは、マーケティングの戦略から戦術、実行に近い部分までを取りまとめたものだ。アメリカンフットボールのフォーメーションを共有するPlaybookという考え方が米国ビジネスの現場にも取り入れられている。

関連記事:Playbookとは、経験からの学びをまとめた”成功のための指南書”である

Playbookには、下図に記載しているような内容をまとめる。(図表6)

図表6:マーケティング領域でのPlaybookの内容

Playbookを作成し、共有することで、戦略と実行を結び、チームが同じ目標をもとに動くことができる。

組織体制を整理する

マーケティング組織に正解はないが、MOpsチームを有効活用するために以下のような組織体制が例として挙げられる。

図表7:マーケティングオペレーションを実行する組織体制

マーケティング部内でも、マーケティング施策を実行する「フィールドマーケティング」とオペレーションを整備する「MOps」で役割をわけるのが望ましい。役割分担を明確にすることで、施策の実行とオペレーションの運用を安定させることができる。

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山下 智

マーケティングコンサルタント

山下 智

マーケティング戦略策定

Webコーダー/デザイナーを経て、Webディレクターとして数多くの企業サイトの企画~設計~制作を手掛ける。
2014年には自社へのMarketo導入を推進、短期間で運用を軌道に載せる。その後、Adobe Marketo Engageのパートナーとして70社以上のMarketo Engage支援を担当。
BtoBはもちろんBtoCまで、幅広い経験値をもつ。
最近はMarketo Engageだけでなく多様なマーテクの活用支援、より難易度の高いテーマを担当している。
無類のクラフトビール好き。 No Beer! No Life!

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