エンターテインメント業界のA社。ECサイトの集客や顧客との接点維持のため、これまでメール施策に注力してきました。しかし、今後さらなる売上拡大を目指すにあたり、様々なチャネルを活用してパーソナライズされたマーケティング施策を実行する必要性を感じていました。
パワー・インタラクティブは2024年4月より、A社のBraze導入支援を開始。ツールの初期設定からメール配信設定、レコメンド施策の実施まで、12週間にわたる導入支援をおこないました。
その結果、セグメント別メール配信の実装や、自社で開発したレコメンドエンジンとBrazeの連携など、個別性と即時性があるマーケティング施策の基盤整備に成功。Webプッシュやサイト内での個別情報提供など、コミュニケーションチャネル拡大に向けた準備も整いました。
本稿では、A社の支援を担当するコンサルタントの山下に、導入支援の具体的な内容や成果、今後の展望についてインタビューした内容をまとめています。
A社は、キャラクターグッズやイベントチケットなどを販売するECサイトを運営しています。顧客との接点維持のため、会員を対象としたメール配信を続けてきたA社ですが、今後は会員の属性や購買データに応じたレコメンド施策にも取り組むべきだと考えていました。
A社がBrazeを選んだ理由は3つあります。
・One to Oneコミュニケーションの実現
・リアルタイムコミュニケーションの実現
・多様なチャネル対応
これまでは会員を対象として一括でメール配信をしていましたが、より良い反応を得るためには、会員の属性や購買データをもとにした個別のアプローチが必要不可欠となっていました。
また、コミュニケーションのリアルタイム性も重要な要素です。会員の”買いたい瞬間”を逃さずにアプローチすることで、着実に購買へと繋げることができます。
多様なチャネルへの対応も重要です。Braze導入前はメールのみでのアプローチをおこなっていましたが、すべての顧客がメールを見ているわけではありません。WebプッシュやLINEなど、様々なチャネルを活用してアプローチすることで、顧客の視界に入る必要があります。
このような要望を叶えるツールとして、Brazeが選ばれました。
2024年4月から7月までの12週間で、Braze導入後の初期設定、メール配信設定、レコメンド施策の実施などを支援しました。
このプロジェクトは、私とエンジニアによる2名体制で進行しました。私はマーケティングに関するアドバイスとキャンペーン実行、ツールの操作方法の指導を担当。エンジニアは、A社がスムーズに開発を進行するための技術的なサポートを担当しました。
図表1:パワー・インタラクティブの支援体制
キックオフでは、A社の要望や現状のデータ活用状況を把握するための聞き取りを進めました。
本格的な支援開始後は、大きく分けて3つの取り組みを通じて、A社のニーズに合ったBraze活用の実現を目指しました。
導入支援計画
・導入支援内での達成ポイントの定義
・プロジェクトの進め方やゴールの理解
・お客様自身で必要な役割の認識
システム連携
・実行したい施策に対して必要なデータを設計し実装
・計画で検討したデータ連携が完了
施策開始
・計画で検討した施策を開始
・ダッシュボードの基本的な機能を理解し、お客様自身で設定が可能
各取り組みの間に、キャンペーンの内容検討や必要なデータの棚卸しなど、A社側でBrazeを活用するために必要な準備を進めていただきました。
また、データを自動連携できるBrazeのメリットを最大限に活かすため、A社にはデータベースとの連携仕様の検討といった課題にも取り組んでいただきました。
A社が独自開発したレコメンドエンジンとBrazeを連携できたことが最も大きな成果だと考えています。これにより、会員の購入データ、閲覧データなどをBrazeに読み込ませ、顧客一人ひとりに最適なコンテンツや商品、サービスを提供できるようになりました。
現在は、レコメンドエンジンに格納されているデータを活用した施策が動き出しています。
メールマガジン配信では、様々なセグメントを活用し、セグメント全体への配信や、過去の購買履歴に基づいた配信など、より細かなターゲティングが可能になりました。
例えば、特定の商品を過去に購入した顧客だけにメールを配信したり、受信者の属性に応じてメール内に表示されるバナー画像を変更したりするなど、個別化されたメール施策がすでに実行されている状況です。
これらの取り組みを通じて、A社が目指すOne to Oneコミュニケーションの実現に向けた第一歩を踏み出せたと感じています。今後、購買データを用いた総合的な分析によって、具体的な成果が見えてくるものと期待しています。
A社には「顧客の行動に基づいた、よりきめ細かなマーケティング施策を実行したい」という意向があります。現状はメールマガジンによって顧客とのコミュニケーションを図っているA社ですが、1つのチャネルに頼った状態では、顧客との接点はどうしても限られてしまいます。
そこで、今後はWebプッシュをはじめとする他のチャネルの活用を進めていく予定です。
Webプッシュを活用すれば、ユーザーがブラウザを開いていれば、クーポンや情報などをポップアップ表示させ、サイトへ誘導するアプローチが可能になります。
さらに、ユーザーがWebサイトに来訪すれば、web接客機能を活用して、興味や過去の行動、属性情報を基に、興味を引くようなポップアップバナーの表示、フォローアップメールの送信、カートに入れたアイテムに関するリマインド表示など、様々なマーケティング施策の展開も可能です。
このようなメール以外のチャネル強化を通じて、顧客がA社のサービスや商品を想起し、サイトに訪れるきっかけを増やしていくことが理想的です。
キャンペーン設計をはじめ、A社のマーケティング活動を総合的に支援していければと考えています。特に、A社の特徴を活かしたマーケティング戦略の立案や、データを効果的に活用した施策の実装は、私たちの経験を活かせる分野だと考えています。
今回のBraze導入支援を通じて、BtoCビジネスの複雑さとスピード感を改めて実感しました。
BtoBビジネスでは、数ヶ月単位で施策に関する計画を立てるケースがほとんどです。しかし、BtoCビジネスのマーケティング現場では「今日中」「今月中」といったタイムラインで施策を展開することも珍しくありません。この速さに対応しつつ、質の高い支援を届けることは、私たちにとっては貴重な経験となりました。
一方で、A社の支援を通じて私たちの強みがより明確になったという実感もあります。今回の事例では、Brazeの導入支援にとどまらず、マーケティング戦略の立案やキャンペーンマネジメントにおいて、私たちの知見を活かせる場面が多くありました。
この経験を糧に、今後はBtoCビジネスの戦略立案から実行支援まで、総合的なデジタルマーケティング支援を多くのお客様に提供していきたいです。
マーケティングコンサルタント
山下 智
マーケティング戦略策定
Webコーダー/Webデザイナーからキャリアをスタート。その後、Webディレクターとして数多くの企業サイトの企画~設計~制作を手掛ける。
2014年に自社へのMarketo導入の推進をきっかけに、マーケティングオートメーションを専門とするコンサルタントへキャリアチェンジ。
現在は、事業会社のマーケティングDXの支援や、データマネジメントの仕組みや組織体制づくり、人材育成まで、データを活用したマーケティングの幅広い伴走コンサルティングを得意とする。特に、製薬および医療機器メーカーの支援に強みを持つ。
無類のクラフトビール好き。 No Beer! No Life!