セミナーレポート

マーケティング成果を可視化する ダッシュボード設計のコツ

マーケティング部門の成果は、マーケティング活動が売上や利益に繋がったかどうか、つまり営業への貢献度で示すとよい。しかしこれらを明示できず、「他部門からの理解が得られない」「実施しているマーケティング施策の効果を正しく測れていない」と悩んでいる方は多い。

こうした悩みは、散在しているデータを集約し、可視化することで解消できる。弊社はこれまで、データを集約し、ダッシュボードで可視化することでマーケティング担当者の悩みに応えてきた。

2023年1月11日、マーケティング活動の成果をダッシュボードとして可視化するためのコツを解説するセミナーを開催した。講師はマーケティングデータアナリストの八木。本コラムでは、当セミナーの内容をまとめている。

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マーケティングダッシュボードとは

『マーケティングダッシュボード』とは、マーケティング目標を達成する上で必要となる情報をひと目で把握できるよう、1つの画面上で視覚的に表現したもの。つまりマーケティングの状況や成果を『可視化』するのがマーケティングダッシュボードだ。
マーケティングダッシュボードを導入することで、以下のようなデータを可視化できる。

 ●新規リードの月別累積状況を把握できる
 ●獲得したリード件数とチャネルを月別で把握できる
 ●獲得したリード件数とWebアクセス(PV/UU)の関連性を月別で見ることができる
 ●どのチャネルからリードを獲得し、獲得したリードがどのステージにどのぐらい滞留しているかを把握できる
 ●どのチャネルから獲得したリードがどのぐらい売り上げに繋がったのか、件数と金額を把握できる
 ●年度ごとの受注件数と金額を地域別に把握できる
 ●マーケティング施策別の費用対効果を把握できる

このように大量のマーケティングデータをリアルタイムで可視化でき、データに基づいたスピーディーな意思決定が可能となることで、マーケティング活動では以下のメリットがある。

マーケティング施策の効果測定ができる

社内に散在する様々なデータを集約し可視化することで、各マーケティングの効果検証ができる。ボトルネックが浮き彫りになり、次にすべき施策が明確になる。

レポート作成業務が限りなくゼロになる

マーケターにとって重要なのは、施策を立案し実施し検証するというPDCAを回すこと。業務負荷の高いレポート作成業務を限りなくゼロにすることができる。

マーケティング部門の貢献度を訴求できる

マーケティング部門の役割を全社に向けて訴求できる

マーケティング部門でのダッシュボード活用例

MAツールを使った見込み客の獲得から育成・受注までのパイプラインを可視化した教育サービス事業者の事例を紹介する。

導入前

 ●Marketoを利用しているが、リードがどのような流れで育成されているのか捉えられていなかった
 ●リード育成の流れを捉えるためにAPIで集計してレポート作成したが、運用負荷が大きかった
 ●開催している講座の担当者にレポートを共有したいが、実施できていない

導入後

 ●ステージ別ダッシュボードを導入し、リードステージの状況を確認できるようになった
 ●ETLツールを用いてデータ抽出を自動化し、運用負荷は0に
 ●講座別のパフォーマンスをダッシュボードで可視化し、担当者へ展開できるようになった

ダッシュボードを活用するとデータ分析負荷を減らせるだけでなく、関係者への情報共有もスムーズにおこなえるようになる。一粒で二度三度美味しいのがダッシュボードだ。

マーケティングダッシュボード設計のコツ

マーケティングダッシュボードを作成する際の、マーケティングデータの集約と可視化のポイントについて解説する。

マーケティングダッシュボード構築の流れ

マーケティングダッシュボードの構築は一般的に、以下の流れで進める。

1. 要件定義
2. データ設計
3. データ連携
4. データマート構築・実装
5. ダッシュボード設計・実装
6. 運用

この中で特に重要なのは、『要件定義』と『データ設計』だ。要件定義では、ダッシュボード実装の依頼者と実装担当者との間で合意を形成する。データ設計では、データの種類と連携方法を整理し、必要な情報を棚卸する。

この2つの工程で抜け漏れがあると、後々になって実際のデータ連携がうまくできなかったり、ダッシュボードの完成後に「もう少しこういう数値が見たい」という要望が出たりといった手戻りが発生することがある。

また、ダッシュボード構築をスムーズに進めるために欠かせない「データのクレンジングから始める」「目的を明確にしてシンプルにつくる」という考え方をセミナーでは解説した。

データのクレンジングから始める

ダッシュボードを構築する前に、データのクレンジングをしておく必要がある。データの中身を見ると、「正しいデータが取れていない」「データが欠損している」「実施した施策のデータがきちんと入っていない」という場面に直面することが多い。

本来はシステムで自動的にクレンジングできればよいが、それができない場合もあるだろう。その場合、インサイドセールスや営業担当者を巻き込んでデータクレンジングをルーティン業務とすることをおすすめする。

異なる立場を考慮し、目的を明確にしてシンプルにつくる

ダッシュボードを作る前に、『誰が』『どんな目的で』『どんなシーンで』『どのように評価するか(KPI)』を決めておく必要がある。

マーケティングに携わる立場に応じて可視化の深度が異なるため、必要とするダッシュボードも異なる。以下のように、作成するダッシュボードを分ける必要があるだろう。

 ●マーケティング責任者向け:マーケティング活動全体を俯瞰するレポート
 ●管理者向け:施策ごとに評価するレポート
 ●担当者向け:施策単位でモニタリングするレポート

このように立場の違いを考慮してダッシュボードを企画し、優先順位を付けて実装していく。なおダッシュボードのイメージを作る際は、利用者全員で計画を詰めることが大切だ。そうすることで利用者ごとにこういうものが欲しいというイメージが深まり、より意見を活発に引き出すことができる。

データ可視化の仕組みとステップ

データ可視化の仕組み

図1:データ統合と可視化のイメージ

マーケティングダッシュボードを構築するにあたり、4つの要素を押さえておく必要がある。

■データソース
可視化したいデータ元(取得元)のことで、GoogleアナリティクスやMarketo、salesforceなどがこれに該当する。

■データ連携
データを取得し、変換したり加工したりする。コネクタ(製品に付属している専用の接続ツール)やETL(データを抽出・変換・格納するツール)を使う。

■データ蓄積
ストレージやデータウェアハウスにデータを貯める。

■データ可視化
BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを使って可視化する。

データ連携、データ蓄積、データ可視化の仕組みは各社で用意する必要がある。データ可視化に利用するBIツールは無料のものでも対応できるが、データ連携とデータ蓄積には費用が発生することが多い。

データ可視化のステップ

はじめから高度なダッシュボードを作ろうとするのではなく、段階を踏んでダッシュボード構築を進める。そうすることで手戻りなくマーケティングダッシュボードを作り上げることができる。

■ステップ①:手動でデータを集める
まずは手動で、サンプルデータを使ったモックアップを作る。モックアップを作ることでイメージを共有でき、関係者を巻き込みやすくなるからだ。

さまざまなマーケティングツールからCSVデータを取り出し、無料のBIツールに連携して可視化する。もしCSVデータ単体ではデータの可視化が難しい場合、Excel上でデータを結合する。結合したデータを可視化し、利用者全員にそのイメージを共有し、合意を得る。

■ステップ②:ETLツールを使ってデータ収集を自動化してみる
ダッシュボードを本格的に運用していきたい場合は、ETLツールを使ってデータを自動的に連携する仕組みを構築するのがよい。その際、Google Cloud Platformが提供しているGoogle Big Queryのようなストレージが必要になる。

ストレージに蓄積したデータを扱うことが自社だけでは難しい場合、外部ベンダーに協力を仰ぐことも視野に入れてほしい。

■ステップ③:目的別に分析用データマートをつくる
さらに次のステップに進むために、ストレージに蓄積したデータを目的に応じて加工する『分析用データマート』を作る。加工することで目的に応じたデータだけを抽出できるようになり、ストレージの利用料を抑えられる。またBIツールの加工機能への依存度を下げることもできるといったメリットもある。

マーケティングダッシュボード構築サービスの紹介

弊社では、データの集約から蓄積、可視化までをサポートするサービスを提供しています。当サービスを利用すると、ダッシュボード設計や実装にかかる時間を大幅に削減し、短期間で貴社のマーケティング基盤を構築することができます。

データソースはMarketoやSalesforce、Googleアナリティクスなど、データ可視化ツールはLooker StudioやTableauなど、様々なものに対応しています。そのため、貴社のデータ環境に合わせてダッシュボードを提供できます。

当サービスは3つのプランを提供しています。

図2:マーケティングダッシュボード構築サービスのプラン

 ●エントリー:Google関連ツールのデータを可視化する
 ●プロフェッショナル:データウェアハウスに蓄積された様々なデータを可視化する
 ●アドバンス:各種データを集約し、ダッシュボードで可視化する

貴社の状況に合わせてダッシュボード構築サービスを提供できるので、ご検討中の方はぜひ弊社までご相談ください。

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八木 耕祐

マーケティングデータアナリスト

八木 耕祐

Web行動履歴やアプリデータによる顧客行動分析

アナリストとして、50社のアクセスログ分析に携わる。現在は、データ設計、データマート構築などの基盤づくりから、ダッシュボード作成、分析まで、データ活用を極めている。セミナー登壇は50回以上、満足度90%以上のセミナーも多数。
リモートワークになり、海の近くでマリンスポーツをエンジョイ中。

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