セミナーレポート

マーケティングの収益貢献を見える化した後の景色

「マーケティング活動の重要性について、なかなか社内理解を得られない」「予算の獲得に苦戦している」といった課題を抱えるマーケティング担当者は少なくない。
マーケティング部門が経営層や他部署から信頼を得るには、「成果を出すこと」だけではなく、「収益に貢献していると証明すること」が重要だ。

2023年10月25日、「マーケティングの収益貢献を見える化すると起こる5つの好循環」と題した2部制のセミナーを開催した。
第1部では、日本のマーケティング組織が抱えるデータに関する課題と、収益貢献を見える化することで起こる5つの好循環について解説。続く第2部では、実際に収益貢献を見える化するための流れやポイントを紹介した。

本コラムでは、当社マーケティングデータアナリスト 八木による第1部の講義内容をまとめている。

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※関連ナレッジ資料※
マーケティングの生産性を高めるナレッジ共有のあり方とは 第1部 をダウンロード

日本のマーケティング組織が抱える、データに関する課題とは

日本のマーケティング組織の多くは、データに関して3つの課題を抱えている。

1.データを基にした意思決定に対する認識不足

図表1:アメリカと日本のデータ文化の違い

1つ目の課題は、データを基にした意思決定に対する認識の不足だ。

日本では、営業担当者が自身の担当エリア内を訪問しながら関係を深めるFace To Faceの営業活動が重視され、顧客情報をデータとして蓄積する文化が醸成されていない企業も少なくない。そのため、データ収集・解析に対する投資が後回しにされやすい傾向にある。
このような状況下では、市場の変化や競合の動向に対して迅速かつ適切に対応することが難しく、機会損失に繋がるリスクもある。

マーケティング先進国の米国では、ダッシュボードを積極的に活用し、データを用いて意思決定をおこなう企業が多い。

日本と米国の間でマーケティングスタイルに違いが見られる理由については、地理的な環境が大きく関係している。
国土面積が広い米国では、そもそも訪問中心の営業スタイルでビジネスを維持することが難しい。そのため、顧客行動データを分析しながらアプローチ先や訪問のタイミングを検討するようなデータ活用文化が発展していったと考えられる。

2.データの断片化

図表2:ツールの連携不足によるデータの断片化

2つ目の課題は、データの断片化だ。

ビジネスを効率化するためにマーケティングオートメーション(以下、MA)やセールスフォースオートメーション(以下、SFA)などのツールを導入している企業は多いだろう。しかし、各ツール内のデータが上手く連携されておらず、同じ顧客に関する情報が複数のツールに分散してしまっているケースも少なくない。

データを一元的に管理・分析できない状態である“データの断片化”に陥ると、顧客の全体像を掴むことや、一貫したマーケティング施策の実施も困難になってしまう。

3.データの複雑化

図表3:データのフォーマットが統一されていないと、正確な分析が難しい

3つ目の課題は、データの複雑化だ。

顧客データを多く収集したとしても、そのデータを正確に分析し、意思決定に繋げることができなければ意味がない。図表3のように、データの入力形式やフォーマットが統一されていないことによって発生した重複データは、誤った分析結果が出力される原因にもなる。

マーケティングの収益貢献を見える化することで起こる5つの好循環

紹介した3つの課題を解決し、マーケティングの収益貢献を見える化できれば、組織のマーケティング活動に好循環が生まれる。ここからは、マーケティングの収益貢献を見える化すると起こる5つの好循環について解説する。

1.成果への影響度が高い施策に注力できる

図表4:成果への影響度が高い施策が一目でわかる

データの整備が進み、収益貢献が可視化されると、どのマーケティング活動が最も収益に貢献しているのかを把握しやすくなる。

例えば図表4では、マーケティング・セールスでの成果と、施策に割いた予算に関するデータをリード獲得チャネルごとにまとめ、それぞれのデータを比較している。この例では、資料ダウンロードのROI(投資収益率)が最も高いことが一目瞭然だ。施策ごとのROIが見えると、「今後この施策に人的リソースや予算を集中的に割り当てる」といった判断がしやすい。

2.マーケティング施策の改善サイクルを回しやすくなる

図表5:マーケティング施策の改善サイクル

データの整備が進み、顧客情報を正しく分析できるようになれば、マーケティング施策の改善サイクルをより効率的に回せるようになる。

図表5で示したサイクルのように、まず目標を設定したうえで、データを基に現状を把握し、課題を見つける。発見した課題の解決に向けて新たな施策を立案・実行した後、効果測定をおこなう。日々の業務のなかでこのような改善サイクルを回し続けることで、マーケティング活動の改善・最適化を期待できる。

3.他部署や上層部からの理解を得やすくなる

図表6:データ共有により、他部署とのコミュニケーションがスムーズに

マーケティング部門の収益貢献度を見える化し、他部門の担当者や経営層に向けて発信すれば、マーケティング部門の取り組み内容や、活動の必要性についてより理解を得やすくなる。収益への貢献を数字で示せれば、マーケティング部門に対する信頼を社内で醸成することも期待できるだろう。

また、マーケティング部門が収集・管理する顧客データを積極的に営業やインサイドセールスなどの関連部門や経営層に提供し、それに対するフィードバックを受け取ることで、マーケティング・セールス活動をより発展させるための議論にもつなげられる。

4.マーケティング部門への投資を獲得しやすくなる

図表7:マーケティング部門への投資を獲得しやすくなる

マーケティング部門のビジネス貢献度が他部門や経営層にも認識されるようになると、予算の獲得がスムーズになる。

マーケティング予算を多く獲得できるようになると、業務を効率化するためのツールを導入したり、業務の外注を増やしたりといった手を打てる。多く獲得した予算をもとにマーケティング活動を活性化し、さらなる成果を生みだせば、次年度はより多くの予算を獲得できるといった好循環を生み出せるだろう。

5.マーケティング部メンバーの視座が高まる

図表8:マーケティング部メンバーの視座が高まる

収益貢献を見える化できていない状態だと、マーケティング活動の効果はチャネルごとに分析することになる。しかし、チャネルごとの分析では施策の改善はできても、ビジネス成長を押し進めるような施策の立案につなげることは難しい。

「どの施策がどれだけ収益に貢献しているのか」がわかるようになると、「収益を伸ばすためにどの施策に注力するべきか」「どの施策をテコ入れすると、効率よく成果につなげられるか」といった一段上の目線で分析できるようになる。

これにより、メンバー個人のスキルアップやキャリアアップ、ひいてはチーム全体の成長も望めるようになる。

収益貢献を見える化するダッシュボードの活用方法

セミナーでは、収益貢献を見える化するダッシュボードの活用方法を3つ紹介した。

チャネル別のリード獲得数を確認する

図表9:リード獲得チャネルごとのリード獲得数を月別に確認

マーケティング施策の効果を正しく測定するためには、まずチャネルごとのリード獲得数を把握する必要がある。

図表9の画面上には、指定期間内のチャネル別リード獲得数を月別にまとめたチャートが表示されている。チャートで示しているチャネル別のリード獲得数平均値を参考にすれば、施策ごとのリソース配分の見直しもスムーズに進められる。

リードステージの遷移状況を把握する

図表10:リードを可視化する、パイプライン実績

図表10の「パイプライン実績」とは、MAを運用する際に設定するライフサイクルステージを表したもの。MCLやMELというように、顧客の状況をあらかじめ「ステージ」として定義付けしたうえで、各ステージに滞在しているリードの数や商談件数、受注件数などを可視化している。

リードの遷移状況や目標に対する達成率を一目で確認できるパイプライン実績のダッシュボードは、マーケティング施策のボトルネックを検知するのに役立つ。目標に到達していないステージがある場合は、該当ステージ前後のマーケティング施策を見直すことで、数字の改善に繋げられるだろう。

マーケティングROIを確認する

図表11:マーケティングROIも把握可能

各チャネルで獲得したリード件数と、そのうち商談化した件数、受注した件数、受注金額がわかれば、チャネルごとの費用対効果を算出できる。効果測定のダッシュボードテンプレートでは、チャネルごとのコストを入力するとマーケティングROIを可視化できるようになっている。

マーケティングROIを可視化すると、リソース配分を最適な形で調整できるようになる。

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収益貢献の見える化に向けた準備を始めよう

データ活用による収益貢献の見える化を実現するためには、ツールの連携やデータのフォーマット整備などの下準備が欠かせない。

パワー・インタラクティブでは、マーケティング活動の収益貢献度を可視化するためのデータマネジメント、ダッシュボード構築をサポートしている。マーケティング活動の成果分析に課題を抱えている方は、ぜひパワー・インタラクティブに相談してほしい。

八木 耕祐

マーケティングデータアナリスト

八木 耕祐

Web行動履歴やアプリデータによる顧客行動分析

アナリストとして、50社のアクセスログ分析に携わる。現在は、データ設計、データマート構築などの基盤づくりから、ダッシュボード作成、分析まで、データ活用を極めている。セミナー登壇は50回以上、満足度90%以上のセミナーも多数。
リモートワークになり、海の近くでマリンスポーツをエンジョイ中。

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