顧客行動のデジタル化により、マーケティング部門の責任範囲は広がる一方だ。担う責任を果たすためにマーケティング業務は増大していき、それに応じて利用するツールも増加している。
しかし、ツールや施策が増えれば増えるほど、マーケティングデータは分散していき、収益への貢献を俯瞰して分析することは難しくなる。収益への貢献を明示できず、社内でのコミュニケーションに苦慮している方も少なくないだろう。
2023年10月25日、「マーケティングの収益貢献を見える化すると起こる5つの好循環」と題した2部制のセミナーを実施した。
第1部では、日本のマーケティング組織が抱えるデータに関する課題と、収益貢献を見える化することで起こる5つの好循環について解説した。続く第2部では、実際に収益貢献を見える化するまでの流れやポイントを紹介した。
本コラムでは、当社マーケティングコンサルタント 久道による第2部の講義内容をまとめている。
マーケティング施策の収益貢献を見える化することに挑戦する企業は多い。一方で、取り組みの過程で問題に直面し、プロジェクトが停滞してしまう企業も少なくない。
まずは、収益貢献の見える化に向けた活動のなかで企業が直面しやすい5つの問題と、それらをクリアするためにやるべきことを解説する。
組織が収益貢献の見える化を目指す取り組みのなかで直面しやすい問題としては、主に以下の5点が挙げられる。
・マーケティング目標とKPIが明確になっていない
・データが各種ツール上に分散し、統合して管理できていない
・データの入力形式が統一されておらず、データを整理した状態で収集できていない
・データを読み解く力が不足している
・リードのタッチポイントが多様化し、必要な分析が複雑化・高度化している
先に紹介した5つの問題を解消して収益貢献の見える化を実現するために、以下4つのステップに沿って取り組みを進めていきたい。
1.収益目標設定とKPIの選定
収益目標の設定をおこなったうえで、それに連動するKPIを選定する
2.データ活用の指針作り
データソースの整理とデータマネジメント方針の策定。データの完全性・一貫性を保ち、レポートの精度を高めていくための下準備をおこなう
3.データ収集と整備
作成した指針に合わせて必要なデータを収集・統合し、分析可能な形に整える
4.レポートとダッシュボード作成
作成目的や見せる相手を考慮しながら、わかりやすいダッシュボードやレポートを作る
収益貢献の見える化を実現するために意識すべきことは2つある。1つはリードが受注にたどり着くまでのプロセスを管理する「レベニュープロセスマネジメント」。もう1つは、リードと施策のデータを紐づけて管理する「キャンペーンマネジメント」だ。
ここからは、それぞれのマネジメントにおいて意識すべきポイントを解説する。
レベニュープロセスマネジメントでは、「見込み顧客(リード)」「商談」「受注」に関するデータに注目する。この3つのデータさえ正しく把握できれば、収益に貢献している施策をスムーズに割り出すことができるためだ。
図表1のように、見込み顧客・商談・受注の件数を把握できれば、見込み顧客から商談への転換率、さらに見込み顧客から受注への転換率を算出できる。また、受注金額と施策のコストも把握すると、見込み顧客・商談・受注の獲得単価を算出することもできる。
「リード」と「商談」の間に位置付けられる「MQL」「SAL」「SQL」の定義を明確にしておくことも重要だ。
感覚に頼るのではなく、リードのステータスをステージとして定義付けする。これにより、優良なリードをマーケティングから営業に引き継ぐプロセスを整備できれば、営業活動の生産性向上にもつなげられるだろう。
マーケティング施策の効果を分析する際、各施策で獲得できたリード数に注目する人は多い。しかし、施策のROIを導き出すためには、最終的に受注に至った顧客が利用したコンテンツは何かといったデータを紐解くことも忘れてはいけない。
図表3の例では、受注にたどりついた見込み顧客Aがウェビナーを視聴し、ホワイトペーパーをダウンロードしている。この場合、ウェビナー開催、ホワイトペーパー制作に掛かったコストと受注金額がわかれば、施策のROIを算出できる。
また、リードの属性や施策の目的など、分析軸となるデータを活用すれば、施策ごとの収益効果のほかにも、さまざまな切り口で分析できる。
主要なマーケティングオートメーション(以下、MA)やセールスフォースオートメーション(以下、SFA)には、先に紹介した「見込み顧客」「商談」「受注」の3つのプロセスに関するデータを取得する機能が標準装備されている。しかし、MAとSFAを連携させているにもかかわらず、なかなか収益貢献を見える化できない企業も少なくない。
ここでは、MAとSFAを利用したレベニュープロセスマネジメントにおいて直面しやすい問題と解決例を紹介する。
MAはリードに関するデータを「人(リード)」単位で管理するのに対し、SFAは「企業(商談)」単位で管理する。そのため、SFA上で人(リード)と企業(商談)の紐付けをおこなわなければ、収益貢献の見える化は困難となる。
しかし、MAとSFAの連携はできているものの、リードと商談の紐づけができていない企業は多い。
MAとSFAのデータ連携が進まないという組織では、フィールドセールス担当者が紐づけまで担っていることが多い。しかし、フィールドセールス担当者は営業活動の忙しさからデータ整備にまで手が回らず、おざなりになってしまうこともある。
こうした問題は、マーケティングと営業の橋渡し役であるインサイドセールスがフィールドセールスにリードを引き渡すタイミングでリードと商談を紐づけることで解消できる。リードと商談のデータを紐づけられれば、データの活用が広がり、収益貢献の見える化も進めやすくなる。すでにインサイドセールスを配置している組織であれば、役割分担の変更を検討しても良いだろう。
施策の分析に用いられるアトリビューションモデルには、主に3つのパターンがある。
・ファーストタッチアトリビューション:最初のタッチポイントに評価の重きを置く評価方法
・ラストタッチアトリビューション:受注につながった最後のタッチポイントを重視する評価方法
・マルチタッチアトリビューション:すべてのタッチポイントを評価する方法
顧客が様々なチャネル、コンテンツを通じて情報収集するようになった今、マルチタッチアトリビューションを採用する企業が増えている。
マルチタッチアトリビューションを用いて収益貢献度を分析する場合、何をもって各施策が成功したかどうかを判断するのか、つまり「施策ごとの成功の基準」をあらかじめ明文化することが重要だ。
図表8のように各施策に対するリードの行動をステップ別に洗い出し、どのステップまで到達したら施策が成功したとみなすのかを決める必要がある。
施策の種類や目的によって成功の基準は異なる。判断に迷う場合は、その反応が「収益に貢献するものかどうか」を基準に検討を進めよう。
ROIの算出精度を向上させたい場合は、マルチタッチアトリビューションモデルのなかでも「フルパス型マルチタッチアトリビューション」を採用するのがおすすめだ。
フルパス型の特徴は、あらゆるタッチポイントのなかでも、特に「リード獲得」「商談化」「受注」の主要な3つのプロセスを重点的に評価する点にある。正しいデータトラッキングとデータマネジメントを実行したうえで、収益貢献度の高さに応じた施策評価をおこなえば、ROIの算出精度も向上していくはずだ。
マーケティング活動の収益貢献を見える化するには、データの整備が不可欠だ。綺麗な状態でデータを収集し、リアルタイムで収益貢献度をモニタリングし続けるためには、オペレーションの設計が必要になる。
パワー・インタラクティブでは、様々なマーケティングデータを統合し、可視化するサービス「マーケティング・ダッシュボード・パック」を提供している。短期間で収益貢献の見える化を実現したい方は、パワー・インタラクティブまで相談してほしい。
コンサルティング第1部 部長
久道 真之介
マーケティング戦略策定
通信会社で法人向けの営業を8年経験。その後起業を経験し、2010年にパワー・インタラクティブに入社。Webサイト制作のディレクションからリスティングの運用、アクセスログの分析など現場での業務を経験し、現在はマーケティングコンサルタントとして、BtoB・BtoCのデジタルマーケティングの戦略立案から伴走支援までを行う。
2024.09.30
2024.07.25
2024.07.25