いま注目のマイクロインフルエンサーマーケティングとは?基本と事例を解説

「マイクロインフルエンサー」という言葉を、ご存じでしょうか。

一般的にいわれる“インフルエンサー”よりも小規模なインフルエンサーを指し、新たなビジネス戦略として、「マイクロインフルエンサーマーケティング」が注目されています。

今回はマイクロインフルエンサーをテーマに、基礎知識や事例をご紹介します。

マイクロインフルエンサーマーケティングとは?

まずは基本的な事項から押さえていきましょう。

「マイクロインフルエンサー」とは何か

マイクロインフルエンサーとは、フォロワー数が1万人〜10万人程度で、特定の分野やコミュニティにおいて影響力を持っている人物を指します。

2010年代後半頃から、欧米では、インフルエンサーを以下のように区分するケースが見られるようになりました。

  • メガインフルエンサー:フォロワー数100万人〜
  • マクロインフルエンサー:フォロワー数10万人〜
  • マイクロインフルエンサー:フォロワー数1万人〜
  • ナノインフルエンサー:フォロワー数100人〜

※フォロワー数は目安(メディアや提唱者によって前後する)

とくに「マイクロインフルエンサー」を起用する手法は、ビジネス成果に結びつきやすい戦略として、注目されています。

たとえば、以下のように米国の経済誌・ビジネス誌で、マイクロインフルエンサーが取り上げられています。

マイクロインフルエンサー特有の強み

なぜ、マイクロインフルエンサーの施策がビジネス成果に結びつきやすいのかといえば、大規模なメガインフルエンサーと比較して、エンゲージメントが高いからです。

その理由として、マイクロインフルエンサーは、以下の強みを持っています。

  • フォロワーからの高い信頼:特定の分野に精通し、知識や経験が豊富であることから、フォロワーから高い信頼を得ています。この信頼性は、購買意欲を引き出す要因となります。
  • コミュニケーション力の高さ:フォロワーとの距離が近く、親近感があり、効果的なコミュニケーションが可能です。フォロワーとの強い絆が形成されるため、意思決定への影響力も強くなります。
  • ターゲティングの精度:マイクロインフルエンサーとそのフォロワーは属性が近いため、ターゲットとなる顧客層へピンポイントでリーチできます。

メガインフルエンサーの影響力は、「広く・浅く」になりがちですが、マイクロインフルエンサーは「狭く・深く」のアプローチが可能です。

結果として、エンゲージメントが高くなると考えられます。

マイクロインフルエンサーマーケティングが適しているケース

マイクロインフルエンサーマーケティングは、次のようなケースで効果的です。

  • ニッチな市場:特定の分野や興味関心に特化した商品やサービスを展開する企業にとって、マイクロインフルエンサーの影響力は、大いに役立ちます。
  • 新しいブランドや商品:まだ名の知れていない新ブランドや新商品・サービスは、一般的な広告を展開しても、なかなか見てもらえません。マイクロインフルエンサーを経由することで、ターゲット層の目に留まりやすくなります。
  • スモールスタート:予算が限られている場合や、小さく始めてじっくり育てたい場合、マイクロインフルエンサー施策は適しています。低予算でも、優れた費用対効果が期待できるからです。

マイクロインフルエンサーマーケティングの事例

続いて、実際にマイクロインフルエンサーマーケティングを取り入れている事例をご紹介します。

2011年生まれの「Daniel Wellington」

マイクロインフルエンサーを巧みに活用した事例としては、スウェーデンの腕時計ブランド「Daniel Wellington(ダニエル・ウェリントン)」が有名です。

日本におけるDaniel Wellingtonは、ドラマやCMでの着用シーンが話題となりました。人気ブランドとして知られていますが、誕生したのは2011年で、比較的新しいブランドです。

世界的な急成長を支えた施策のひとつが、マイクロインフルエンサーマーケティングであるといえます。*1

腕時計を無料で提供してSNS投稿を促進

初期のDaniel Wellingtonは、マイクロインフルエンサーに腕時計を無料で提供し、彼ら彼女らに、SNSで写真を投稿してもらうという戦略を取りました。

たとえば、Instagramのハッシュタグ「#DWpickoftheday」にアクセスすると、多くのUGC(ユーザー生成コンテンツ)が確認できます。

現在、キャンペーンは「アンバサダープログラム」として実施されており、日本国内のUGCの様子は「#ダニエルウェリントン」から確認できます。

以下は、Daniel Wellingtonの公式ページに掲載されているQ&Aからの引用です。

最低限必要なフォロワー数はありますか?
ダニエル・ウェリントンのファンであれば、誰でもアンバサダープログラムに応募することができます!ただし、ソーシャルメディアのアカウントをお持ちで、アクティブなユーザーであることが条件となります。また、3,000人以上のフォロワーを持ち、頻繁に活動し、コミュニティに参加しているアンバサダーには、さまざまな追加ミッションや特典を提供しています。

どのようなソーシャルメディアプラットフォームをお探しですか?
YouTubeやTikTok、Pinterestなど、さまざまなソーシャルメディアのクリエイターを歓迎しますが、Instagramには強いこだわりを持っています。

*2 ※翻訳はDeepLによる

マイクロインフルエンサーマーケティング施策のポイント

実際にマイクロインフルエンサーマーケティングに取り組む際には、意識したいポイントがあります。

  • ターゲット市場に合うマイクロインフルエンサーを見つける
  • 適切なコラボレーション方法を選ぶ
  • 長期的な関係の構築を目指す

それぞれ見ていきましょう。

ターゲット市場に合うマイクロインフルエンサーを見つける

1つめのポイントは「ターゲット市場に合うマイクロインフルエンサーを見つける」ことです。

前述のとおり、マイクロインフルエンサーの影響力は「狭く・深く」なります。適合性の高いマイクロインフルエンサーを選定することが、成功のカギです。

【選定のポイント】

  • 関心分野:発信している情報が、自社の商品やサービスと関連していること
  • ターゲット層:フォロワーが、自社のターゲット層と一致していること
  • 信頼性:インフルエンサーが持つ情報発信力や信頼性が高いこと

理想は、コアな既存顧客の中からマイクロインフルエンサーを見いだすことです。既存顧客の中に適任者がいないか、探すところから始めましょう。

適切なコラボレーション方法を選ぶ

2つめのポイントは「適切なコラボレーション方法を選ぶ」ことです。

マイクロインフルエンサーとのコラボレーションの手法は、さまざまな選択肢があります。

マイクロインフルエンサーが発信しやすく、自社の商品やサービスとの相性がよい方法を吟味しましょう。

【コラボレーションの方法の例】

  • 商品レビュー:自社製品の使用感や評価を発信してもらう
  • イベント出演:イベントに招待し、リアルタイムな情報発信を依頼する
  • キャンペーン企画:共同でキャンペーンを企画し、フォロワーを巻き込んだ情報発信を行う
  • アンバサダープログラム:ブランドの大使として活動してもらう
  • コンテンツ制作:共同でブログや動画などのコンテンツを制作する

長期的な関係の構築を目指す

3つめのポイントは「長期的な関係の構築を目指す」ことです。

マイクロインフルエンサーマーケティングでは、短期的な成果だけでなく、長期的な関係を構築することが重要です。

【長期的な関係構築のポイント】

  • コミュニケーション:定期的なコミュニケーションを通じて、インフルエンサーとの信頼関係を築きます。双方向のやり取りを大切にします。

  • サポート:インフルエンサーが自社の商品やサービスを十分に理解し、情報発信しやすい環境を整えます。たとえば、詳細情報を提供したり独自の視点を提案したりして、インフルエンサーの発信力をサポートしていきましょう。

  • 報酬:インフルエンサーの努力や成果をきちんと評価し、適切な報酬を返すことが、フェアで長期的な関係構築につながります。

さいごに

本記事では「マイクロインフルエンサーマーケティング」をテーマにお届けしました。

インフルエンサーを取り巻く環境は、ここ何年かで大きく変わっています。

筆者自身、10年ほど前は、メガインフルエンサーと契約して、1回の投稿で大きな売上獲得を目指す手法を実践していました。

しかし、現在では、打ち上げ花火のような短期的な施策ではなく、年単位で絆を構築していくことの重要性を痛感しています。

本記事を新しい時代のインフルエンサーマーケティングの参考にしていただければ幸いです。

この記事を書いた人

三島つむぎ

ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。