日本の事例から探る 「Kawaii(かわいい)」文化がもたらすマーケティング効果とは

日本の「Kawaii(かわいい)」という文化は、世界的に注目されており、マーケティングの分野でも重要な役割を果たしていると考えられます。

実際、Kawaiiは幸福と深く関わっており、世界的に幸福が重要視されている今、このコンセプトは持続的なビジネスに効果的であると『Kawaii経営戦略』の著者は述べています*1

そこで今回は、Kawaiiを活用したマーケティングの特徴や効果、具体的な事例について見ていきたいと思います。

「Kawaii」がもたらす幸福感と世界的な影響力

日本にはKawaii文化が深く根付いており、街中ではKawaiiキャラクターや商品パッケージ、広告デザインなどをよく見かけます。

多くの人が、Kawaiiものに囲まれることで癒やしを感じ、心が和らぐ経験をしているのではないでしょうか。

PwCコンサルティングによると、Kawaiiという感情を持つ人ほど幸福度が高い傾向があるといいます*2

さらに、Kawaiiという言葉は海外でも認知されており、日本語と同じ発音・スペルで使用され、世界共通の日本語として使用されています。

政府による外国人の意識調査では、アニメやファッション、キャラクターなどに見られるKawaii文化が、特にアジアの人々にとって日本の魅力であることが明らかになっています*3

外国人が感じる日本・日本人の魅力

<出典:クールジャパンの再生産のための外国人意識調査(概要)|特定非営利活動法人 映像産業振興機構(VIPO) p5>

また、Kawaii文化は、アメリカの歌手レディー・ガガやマライア・キャリーなどのハードコアなファンを持つハローキティが牽引しており、Kawaiiの象徴として海外でも非常に人気があります*4

このように、世界的に注目を集めるKawaiiは、日本のマーケティング分野でも重要な働きをするとみられます。

Kawaiiキャラクターの魅力とマーケティング活用方法

Kawaiiを活用したマーケティングにおいては、一般的にキャラクターが活用されます。

キャラクターは、商品やサービスの魅力を訴求するために用いられ、特にKawaiiキャラクターは、親しみやすく、消費者の心を引きつけます。

ハローキティやマイメロディ、ドラえもん、ポケモンなどは、広く知られたKawaiiキャラクターの代表例です。

東洋大学の長島教授によると、キャラクターを使ったマーケティング手法は9種類あるとされています*5

キャラクターを使った9つのマーケティング手法

  1. アニメ『ONE PIECE』のルフィや『ポケットモンスター』のピカチュウなど、キャラクターそのものを売るコンテンツビジネス

  2. ENEOSのエネゴリくんや家庭教師のトライさんなど、企業のブランド構築としてキャラクターを作り、商品を売る

  3. ハローキティやリラックマなど、商品にキャラクターをつけて、キャラクターグッズとして売る

  4. ご当地キティなど、キャラクターの利用権利を他社に売るライセンスビジネス

  5. ディズニーキャラクターのついたペットボトル飲料やティッシュペーパーなど、キャラクターのイラストがついたパッケージで商品を売る

  6. 熊本県のPRキャラクター「くまモン」など、キャラクターで地域おこし

  7. 共創マーケティングやねこあつめなど、消費者がキャラクターを育て、それを利用して商品を売る

  8. 擬人化やイケメン化など、すでに存在するものをキャラクターにする

  9. AIを利用した接客において、キャラクターを設定して話しかけてもらう

実際に上記のようなキャラクターが描かれた商品やサービスを入手したり、利用したことがある人も多いのではないでしょうか。

キャラクターを選ぶ際には、ターゲットや商品・サービスの特徴に合わせて、適切なキャラクターを選ぶ必要があります。

また、キャラクターの使用は、ブランドや企業のイメージに影響を与えることもあるので、その点も考慮すべき事柄です。

キャラクターを活用したマーケティング戦略のメリット

キャラクターを使ったマーケティングには、「認知度の向上」と「ブランド価値の向上」という、おもな2つの効果があります*6

認知度向上と集客・販売促進効果

有名なキャラクターを使用すると、商品やサービスに注目を集め、興味を引きます。商品が地味な場合でも、キャラクターの人気を活かして競合商品との差別化を図り、商品の認知度を高められます。

さらに、キャラクターに熱狂的なファンや大きなファンコミュニティがある場合は、コラボ商品がファンのコレクションに加わったり、SNSを通じて話題になって拡散されることで、集客や販売促進に大きな効果を発揮できます。

ブランディング効果

キャラクターは、親しみやすさやかわいらしさなど、商品やサービスのポジティブなイメージを植え付けるために活用できます。キャラクターへの興味や愛着を持たせることで、商品・企業・広告に好感を持ちやすくできます。

また、企業が開発したオリジナルキャラクターの場合、世間に認知され、好感を持たれる存在に成長すると、企業の顔として強力なPR武器となります。企業キャラクターの親しみやすさは、企業への親近感を醸成し、ブランディングにも有効です。

大人も支持するキャラクター人気

「大人の好きなキャラクターに関する調査」によると、1位は「スヌーピー」で30.2%であり、女性からの支持が高く、なかでも60代女性からの支持率が最も高い結果となりました。2位は「ミッキーマウス」で27.1%、3位は「くまのプーさん」で26.2%でした*7

また、今回の調査では、キャラクターに対する期待も明らかになりました。調査によれば、1位は「かわいい」60.3%、2位は「癒し」48.0%、3位は「リラックス」26.1%という結果になりました。

生活者がキャラクターに期待すること

以上の結果から、キャラクター人気は子どもや若者だけにとどまらず、大人からも広く支持されていることがわかり、キャラクターを活用したマーケティングは幅広い世代に有効と言えるでしょう。

Kawaiiキャラクターの活用事例

企業のマーケティング戦略における活用例を紹介します*8

西濃運輸とハローキティのコラボレーション

西濃運輸は、社員数12,758名、トラックドライバー数8,467名の路線トラック運送業界最大手企業です。

同社は、社員の幸せにコミットするため、「輸送立国を目指し、すべての人に笑顔と幸せを届ける」という同社のパーパスを実現するために、ハローキティとコラボレーションしました。

西濃運輸の優秀ドライバー表彰式にハローキティ登場

この取り組みは、人口減少に伴う労働力不足や物流業界のグリーン化など、今後の物流業界の課題に対して、オープン・パブリック・プラットフォーム(O.P.P)を指向する同社の戦略にも合致しています。

西濃運輸は、ハローキティの発信力・認知力を活用し、社名や取り組みの認知度を社内外に高め、新商品の販売拡大や採用・定着につなげることで、売上拡大、コスト削減、利益拡大を目指しています。

また、このコラボレーションにより、ドライバーの安全意識が向上し、事故件数が65%減少するなどの成果も出ています。

「しまじろう」が教育ビジネスに与える影響

ベネッセコーポレーションは、通信教育最大手であり、進研ゼミやこどもちゃれんじといったブランドを展開しています。こどもちゃれんじでは、幼児教育にKawaiiキャラクター「しまじろう」を取り入れています。

「しまじろう」は、多くの子どもたちに愛されてきたキャラクターであり、Kawaiiことで子どもにとって親しみやすい存在として知られています。

「こどもちゃれじ<ぷち>」の教材「しまじろうパペット」

しかし、こどもちゃれんじでは、単なる可愛いキャラクターとしてだけでなく、子どもたちにとっての「バディ(友達)」のような存在としても位置づけられているのです。

これにより、子どもたちは勉強する上でバディの存在があることで「やってみよう」と思うため、保護者からすると「ほら、しまじろうも頑張っているよ」と声掛けできるようになるのです。

Kawaiiキャラクターを取り入れることで、教育など「頑張らないといけないタイプのビジネス」だけでなく、ダイエットや禁煙、禁酒など「やった方がいいとわかっていても頑張らないといけないタイプのビジネス」にもこのアプローチは適用できると考えられます。

顧客の多様化に対応する新たな戦略

現代においては、顧客の価値観や購買行動が多様化しているため、販売促進やブランディングに成功することは容易ではありません。

しかし、今後も必要とされるマーケティング手法として、Kawaiiキャラクターを活用したメッセージを用いて企業のファンを獲得し、販促を実現することが挙げられます。

企業のブランドイメージを単に機能性や品質で表現するだけではなく、Kawaiiキャラクターを取り入れることで、商品やサービスに対する感情的な結びつきを生み出せます。

そのため、Kawaiiキャラクターをビジネスに活かす方法を理解し、マーケティングにおいて有効に利用することは、今後の競争力強化につながると考えられます。

この記事を書いた人

Midori

総合広告代理店のアカウントエグゼクティブを経て、国際結婚を機にイタリアに移住。取材・撮影コーディネーターのほか、フリーランスライターとしてマーケティングに関する記事を執筆しています。