経営者に直接アピールできる「タクシー広告」とは?

タクシー広告は、企業にとって商品の認知拡大や潜在顧客の獲得に効果的な手段のひとつです。

デジタル広告だけでは届かないユーザー層にもアプローチでき、テレビCMなどのマスメディアよりも低コストで展開できるというメリットがあります。

そのため、予算が限られている場合でも、大きな効果が期待できる広告手法として関心を持つ人も多いのではないでしょうか。

タクシー広告の主流はデジタルサイネージ

タクシー広告は、タクシーを活用した広告手法を指し、ステッカーやリーフレットなどさまざまな形態が存在します。しかし、近年では「デジタルサイネージ」を用いた広告が主流となっています*1

デジタルサイネージは、ディスプレイやタブレット端末などの電子媒体を活用して広告や看板、掲示板などの情報を発信するシステムの総称です。

CARTA HOLDINGS社によると、2023年のデジタルサイネージ広告市場の規模は801億円で、前年比119%の成長が見込まれています。さらに、2027年の予測では、2023年比で174%増の1,396億円となり、この媒体が注目を浴びていることが示唆されています*2

2023年のデジタルサイネージ広告市場を詳しく見てみると、交通機関が399億円で全体の49.8%とほぼ半数を占めました。一方、商業施設・店舗が171億円で全体の21.4%、屋外が136億円で全体の17.0%、その他が95億円で全体の11.9%となっています*3

これは、デジタルサイネージ広告が特に交通機関において強力な存在感を持っていることを示しています。なかでも急成長を遂げてきたのがタクシー広告です。東京都内だけでも3万7,000台以上のタクシーの車内にデジタルサイネージが設置されています*4

タクシー広告は左後部座席の前という「一等地」に位置し、音声付き動画を通じて乗客の視線を引きつけることが可能です。通常の駅や店舗に設置されるサイネージと比較しても、高い認知効果が期待できるのが大きなメリットと言えるでしょう。

タクシー広告の出稿が人気を博するワケ

特にタクシー広告を積極的に取り入れているのがBtoB企業です*5

この傾向の背後には、タクシー利用者の特性に対する期待が大いに寄与しています。特に富裕層やビジネスパーソン、そして中でも意思決定者にアクセスしやすい環境が整っているためです。

IRIS社が運営するタクシーサイネージメディア「TOKYO PRIME」の調査によれば、タクシー利用者のうち39.4%が課長以上の役職者で構成されています。さらに、20.8%が「ソフトウェア購入の意思決定あり」と回答しており、ビジネス上の重要な意思決定を担う立場にいることが示唆されています*6

タクシーの平均乗車時間が約18分であることをふまえると*7、この時間を活かしてビジネスの意思決定者に対して音声付き動画でアピールできる点がタクシー広告の大きな利点と言えます。

この環境では、印象的な広告メッセージを伝え、乗客に『タクシーで見た』といった記憶を残すことが可能です。

IRIS社の調査によると、タクシー利用者の広告到達率は65%に達し、「確かに見た」「見た気がする」と回答した人が多数を占めています*8

さらに、広告に接触した人のうち75.3%が「購入したいと思った」「どちらかといえば、購入したいと思った」と回答しており、タクシー広告が実際の購買意欲に高い影響を与えていることが示されています*9

費用対効果を最大化するカギ

タクシー広告は、テレビCMのように受動的なメディアと言えます。テレビCMよりも強制視認性がありますが、ターゲットの興味を引く配信をしなければ印象に残りません。

最近では、EC/D2C向けSaaS「ecforce」を提供するSUPER STUDIO社の事例が注目を集めました。同社は、なかやまきんに君を起用したタクシー広告を展開した結果、配信期間中の受注件数が配信開始前と比較して70%増加しました*10

なぜBtoB企業のタクシー広告がこれほどの反響を呼んだのでしょうか?

通常、SaaS企業のタクシー広告は、「こんなお悩みありませんか?」という課題を取り上げ、その課題を解決する自社サービスを紹介するランディングページ(LP)のような形式が一般的です。

しかし、SUPER STUDIO社は単なる記憶ではなく、潜在顧客の心に残るメッセージを提供することに注力しました。具体的には、「売り上げの漏れない法人向けECカート」というワンメッセージを強調したのです。

そのメッセージを表現するのは、名画のワンシーンに登場するなかやまきんに君。「やああああああっ!」と叫びながら、一生懸命に注ぐ牛乳が思いがけず大量にこぼれ出し、その瞬間が鮮烈な印象を残しています。

また、タクシー広告だけでなく、社内では、なかやまきんに君を配置したオンライン商談用のバーチャル背景や、展示会で利用する名刺の裏面にも、CMを想起させるクリエイティブを活用したのです。

さらに、営業資料やホワイトペーパー、ブランドサイトでも同じクリエイティブに統一することで、タクシー広告を目にした人が簡単に思い出せるように工夫しました。

CM配信期間中には、デジタル広告の出稿も増やしました。

このプロジェクトの成功は、クリエイティブへのこだわり、メッセージの明確さ、そして潜在顧客に広く認知してもらうために同じメッセージを多くの場所で表示したことに起因しています。

BtoBビジネスの新たなプロモーション方法としてタクシー広告をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

この記事を書いた人

Midori

総合広告代理店のアカウントエグゼクティブを経て、国際結婚を機にイタリアに移住。取材・撮影コーディネーターのほか、フリーランスライターとして主にマーケティングやビジネスに関する記事を執筆しています。