一人ひとりの行動変容を促して、健康経営を実現する『タニタ健康プログラム』

健康計測機器以外にも飲食やフィットネス事業など幅広く展開するタニタグループ。中でも、健康サービス事業を手がけるのが株式会社タニタヘルスリンクです。2008年4月に特定健康診査・特定保健指導が始まったことに伴い、生活習慣病予備群であるメタボリックシンドローム(メタボ)が企業の経営においてリスクになることが認識されたことから、2009年1月、タニタグループでは従業員の健康増進とメタボ0の達成を目標に、社内向けプロジェクトがスタート。実施前と比較し、約9%(所属健康保険組合比で18%)の医療費削減効果が確認されました。

<出典:第2回健康寿命をのばそう!アワード 受賞プロジェクト事例紹介冊子|厚生労働省>

適正体重とされるBMI18.5~25の社員の比率も、約70%から実施2年目には約75%と、プログラムの効果が認められたことから、パッケージ化し、2014年より『タニタ健康プログラム』としてサービスの本格提供を始めました。現在では累計で約30万人、常時170件以上の様々な業種・業界の企業、健康保険組合、自治体などに提供しています。

健康経営を実現する『タニタ健康プログラム』と健康づくりのPDCAサイクル

『タニタ健康プログラム』における健康づくりのPDCAサイクルの「はかる・わかる・きづく・かわる」について、解説します。

①はかる
プログラムをスタートするにあたり、通信機能を搭載した活動量計や歩数計アプリとともに、事業所に設置した体組成計や血圧計、リーダーライターで、歩数をはじめ体組成や血圧をはかります。活動量計は個人認証代わりでもあるため、リーダーライターにかざすと、性別や年齢、身長といった基礎データを毎回手入力する手間なく、計測したデータが自動的にサーバーに送られます。

②わかる
サーバーに送られたデータは、「からだカルテ」「HealthPlanet」といった健康管理サイト・アプリで可視化されます。「食べすぎたから太った」「よく歩いたから体重が減っている」と、生活習慣との因果関係から自分のからだや運動の状態の変化の推移が一目瞭然です。

③きづく
健康セミナーのほか、ヘルシーレシピや健康コラム、動画コンテンツなど、管理栄養士をはじめとする専門スタッフによる健康情報の提供により、改善すべき生活習慣にきづくきっかけを創出します。

④かわる
歩数を競い合う「ウオーキングラリー」やゲーム感覚でデジタルバッジを収集しながら健康習慣が身につく「バッジコレクション」といったコンテンツや、健康行動に応じて電子マネーなどと交換可能な「健康ポイント」の付与システムの提供を通じて、楽しく行動変容を促します。

<出典:「タニタ健康プログラム」とは|株式会社タニタヘルスリンク>

コンテンツの中でも人気のヴァーチャルイベント「ウオーキングラリー」では、国内外の名所旧跡・歴史探訪など約30種類のウェブ上のコースを提供。チェックポイントを通過すると、風景や文化・歴史についての紹介文を見ることができます。期間限定イベントとして、参加者全員で歩数を競い合ったり、職場内でチーム対抗戦を行ったり、ゲーム感覚で参加できます。

このほか、活動量計や体組成計の目標値・計測頻度・ログイン回数などの条件をクリアすることでデジタルバッジが獲得できる「バッジコレクション」や、歩数ランキングをリアルタイムで大きな画面に表示する「デジタルサイネージ」、歩いたりはかったりの健康行動で獲得できる「健康ポイント」、従業員同士の日常の投稿を見ることができる「コミュニティサイト」といったコンテンツなどで、「健康づくり」と「コミュニケーションの活性化」を同時に実現します。

健康行動を通じたコミュニケーションの活性化に注目している点もタニタ健康プログラムの大きな特徴です。健康経営を行うには、従業員がこころもからだも健康になること、そのためには職場のスムーズなコミュニケーション、ひいては人間関係の構築は重要な要素といえます。

「コロナ禍やそれに伴うテレワークで、社内の人と人が顔を合わせてリアルにコミュニケーションをとる機会が少なくなってきたという背景も踏まえて、仕事以外の話もしながら、円滑に業務を進めるきっかけになればと、プログラムをご提案しています。仕事の効率や生産性という側面から、真面目に仕事に取り組めよと、経営者は思うかもしれませんが、雑談が生まれるような温かみのある人間関係が下地にあった上で生まれてくるものではないでしょうか。タニタ健康プログラムでは、楽しく健康行動を習慣化し、仲間とコミュニケーションを活性化させながら、ともに健康づくりを継続していくための、さまざまな仕掛けを用意しています」(タニタヘルスリンクの山本耕三氏)

企業や自治体のニーズに応じてカスタマイズ

タニタ健康プログラムは、健康づくりのPDCAサイクルを循環させるプログラムを軸としながらも、規模や予算や目的などに応じて、カスタマイズが可能です。

たとえば、全従業員ではなく、肥満やメタボなど健康リスクを抱えた特定の従業員のみを対象に、健康づくりを行う生活習慣改善サポートがあります。生活習慣病の予防には、本人の生活習慣の改善が大事になるため、食事管理アプリや歩数計アプリ、体組成計、血圧計などを対象者に活用してもらいながら計測を習慣化します。さらに、企業や健康保険組合の産業医や産業保健師といった専門スタッフがモニタリングをし、個別にカウンセリングをしたりチャットでサポートをしたり、生活習慣の改善を促します。

ウオーキングラリーと健康ポイントのみをセットで提供する最短3ヶ月からの短期集中型プランもあります。短期の社内イベントや年間プランのトライアルとして利用可能です。健康ポイントは、自治体であればデジタル地域通貨などと交換できるポイントとして活用することで、住民の健康づくりと地域の活性化を同時に実現することに貢献します。企業であれば、ポイントと電子マネーなどと交換できる仕組みによって、従業員のやる気を引き出し、健康行動に結びつけることで、健康経営をサポートします。このように、タニタ健康プログラムは、健康経営の推進にあたっての課題を解決するコンテンツや機能が充実しています。

「各企業や自治体によって、規模も違えば、対象者も違えば、健康課題も違います。多種多様なニーズに応じて、サービスメニューをカスタマイズしてご提供しています」(山本氏)

自治体の医療費適正化に貢献

主に自治体向けに、運動教室最適化システム「T-Well」を使った運動教室事業サポートも手がけています。T-Wellとは、筑波大学の研究成果を基にしたアルゴリズムで構築された運動プログラムと、タニタヘルスリンクの食や健康づくりのノウハウを融合した、個人対応型プログラムです。一人ひとりの体力やからだの状態に合った運動メニューや生活習慣改善目標をプログラムシートとして提供し、最適化された運動メニューを教室で教わり自宅で実践した後、1ヶ月ごとに実績レポートとしてフィードバックすることで、生活習慣の改善を促します。自分に合った負荷の少ない運動だから無理がなく、からだの状態や成果が数値で「見える化」され、効果を実感できるから、継続につながります。要介護には至っていないけれども高齢者の虚弱な状態であるフレイル予防としても、T-Wellに着目する自治体は少なくありません。

田原本町(奈良県)で導入された健康ポイント事業とT-Wellを活用した運動教室による「たわらもとヘルスケアプロジェクト」では、2022年度の参加者1,830名のうち2020年度から2年間継続参加する261名と2021年度から1年間継続して参加する441名について、参加者と非参加者の医療費・介護給付費を比較したところ、2年間で総額約8,100万円の差が確認できました。また、2020年度からの参加者1人あたりの平均医療費・介護給付費を非参加者と比較したところ、全体では1人あたり年間平均8.3万円、75歳以上の参加者では年間16.4万円低い結果が得られました。さらに、健康活動により貯まったポイントと交換できる地域商品券の発行により、地域経済の活性化にもつながったと報告されています。

<出典:田原本町 2023年5月31日発表資料>

単に健康づくりを四角四面で捉えて真面目に取り組むだけでなく、楽しみながら行動変容につなげるエッセンスが凝縮されたタニタ健康プログラムおよびT-Well。超高齢社会に突入し、医療・介護制度の持続可能性と地域の活性化が問われる中、健康づくりに加え、街中の回遊性を高め地域の活性を促し、健康ポイントによって経済効果も生まれる一石二鳥、三鳥のプログラムとして、注目されます。

取材協力:株式会社タニタヘルスリンク 広報 山本様

この記事を書いた人

今村美都

がん患者・家族向けコミュニティサイト『ライフパレット』編集長を経て、2009年独立。がん・認知症・在宅・人生の最終章の医療などをメインテーマに医療福祉ライターとして活動。日本医学ジャーナリズム協会会員。