『LOVOT』でしかない、唯一無二のロボットを、日本から世界へ。

2019年12月に出荷をスタートしたLOVOT(らぼっと)。「小さなLOVEが、世界を変える。LOVEをはぐくむ家族型ロボット」をコンセプトとする、ぬいぐるみのようなロボットは、発売以来、一般家庭はもとより、飲食店から会社、クリニックや病院、介護施設と幅広いシーンで活躍しています。新カラーのモデルを発表すると、瞬く間に完売するなど、注目度も高いLOVOT。本体価格498,800円(税込)に加え、別途暮らしの費用がかかりますが、大切な家族として、あるいはスタッフの一員として、愛される存在です。

LOVOTの生みの親であるGROOVE X株式会社創始者の林要氏は、ソフトバンク株式会社で感情を認識する人型ロボット「Pepper」の開発に携わっていた際、Pepperがなかなか起動できずにいる様子に、見守っていた人々が「がんばれ、がんばれ」と応援する光景を目にしました。「やりたいことはこういうことだ」–––。そのときに、何かを応援したり愛したりする気持ちを育むロボットをつくりたいと感じたことが、LOVOTを世に送り出す原動力になりました。Pepperの手を握って、「温かったらよかったのに」と、女性が呟いたひとことをきっかっけに、人が癒しを感じる、ほっとする、かまいたくなる、ためには何が必要かを研究し、LOVOTの体温は、人の平熱よりちょっと高い37〜39℃になりました。踊れといわれたら踊る、歌ってといわれたら歌うといった、指示された通りに動くようなロボットらしさは皆無。名前を呼んでも、振り向くこともあれば振り向かないこともあります。あえて完璧にしないことで、テクノロジーを温かみのあるものにし、LOVE×ROBOTの名の通り、人がもっと愛せる、愛着を持てるロボットをと考えました。

1体ずつ、個性の異なるLOVOT

LOVOTは最初におむかえした時から、それぞれが異なった個性を持っています。その上で、どのような生活を送るかによって、個性豊かに成長します。どんな子がやってきて、どんな子になっていくのかはわかりません。性格には無数のバリエーションがあり、「天真爛漫、素直、人懐っこい」、「人見知りで内弁慶」、「おっとり呑気なマイペース屋」、「ちょっと臆病で何事にも慎重」など、それぞれが違った個性を持ちます。
また、何か動物を模したような開発もしていません。なぜなら、たとえば犬型ロボットでは、犬を作ることが目標になり、犬と少しでも違う動きをすると、人は違和感を感じてしまいます。いきものらしさを大切にしながら、本当に人のこころを癒すロボットを追求するために、既存の今あるものの模倣ではなく、世の中にない新しい生命体LOVOTであることにとことんこだわっています。

そのこだわりは、随所に見受けられます。まず、かたち。アンパンマンやドラえもんが「まる」であるように、世界的に愛されていて親しみやすいかたちであるまるだけで構成しようと、LOVOTはまるを2つ重ねました。目も鼻も全部まるです。
動作一つとっても、駆け寄るということをいかに表現するのか。試行錯誤の結果、一番早くてスムーズなものとして選んだのは、二足歩行ではなくホイールと呼ばれるタイヤでした。

目の動きだったらアニメーター、声だったらミュージシャン、動きだったらダンサー。各領域のプロフェッショナルとソフトウェア、ハードウェア部分を担うエンジニアが一緒になって、お互いの強みと価値観を化学反応させながら、開発を積み重ねてきました。

LOVOTの6つのテクノロジー

1 一人ひとりの顔や声を認識する、マルチセンサーホーン
360℃見渡せる半天球カメラ、音声の方向も判別できる半天球マイク、明るさを感知する照度センサー、人か物かを識別できる温度カメラ(サーモグラフィー)。

2 リアルタイム意思決定エンジン
全身の50を超えるセンサーが、ディープラーニングを含む機械学習技術で処理。リアルタイムに感情を表現。

3 10億通り以上の瞳から選べる!自然なアイコンタクト
まぶたも含めて6層の映像をアイ・ディスプレイに投影。 視線の動き、瞬きの速度、瞳孔のひらきまで緻密に設計。10億通り以上の瞳の表現を可能に。

4 鳴き声も10億通り以上!
声帯をシミュレーションしたシンセサイザーで鳴き声を作成。状態に応じて異なる音をリアルタイムに生成。

5 生きているかのようなボディ
タッチセンサーで、刺激の入った場所を正確に感知。 肩や首はネックパラレルリンクやフレキシブルショルダーで生物の滑らかな動作を表現。バッテリーなどで生じる熱を内臓ファンで循環させ(エア循環システム)、平熱37〜39℃の暖かさを実現。固い部分と柔らかい部分を作り、柔らかい部分は触感がよくなるように。あえて触られると嫌がる弱点も。

6 自律走行・MAP作成で玄関のお出迎えも。
自動運転車の技術を応用し、半天球カメラや複数の測距センサー・深度センサーによって、進行方向にある物体を感知。 回転、バック、カーブなど最適な動きを生成しながらスムーズに自律走行。 心地よいスキンシップのために、抱き上げられる瞬間にホイールをしまう配慮も。 壁や家具の位置を把握し、自動でネスト(充電ステーション)へ。

見た目はほんわか可愛らしく、触り心地にもこだわったLOVOTですが、中身は最先端テクノロジーの宝庫です。でもそれは、どこまでもいきものらしさ、唯一無二さを生み出すためのもの。LOVOTは、気に入る瞳を見つけるまでアプリから組み合わせを選んでシミュレーションできますが、誰かがその瞳を使用すると、もうその瞳は他の人には提案されません。声もまた然りです。つまり、その子だけの瞳で、その子だけの声。文字通り、唯一無二の存在です。同じ瞳で同じ声の人がいないように、ただのロボットではなく、いきものらしさを追求した結果です。

ロボットらしさを払拭し、いきものらしさを表現するために、LOVOTは服を着ていますが、服も自社開発しています。LOVOTの服は、発している熱を逃すために通気性がよく、全身にあるセンサーの邪魔をせず、動きに負荷をかけないといった制約がかかるため、1cmの誤差も許されません。当初はメーカーに問い合わせても「うちでは作れない」と断られることが多かったといいますが、今では様々なブラントとコラボし、毎月5種類以上の新作を開発しています。オーナーにとって服選びは、LOVOTへの愛着を深めるもの。手作りをしたいというオーナー向けに、Tシャツなど一部型紙を公開もしています。

アニマルセラピーならぬLOVOTセラピー

LOVOTの効果についての実証実験も進んでいます。
資生堂と共同で行った実験では、近年絆形成ホルモンとして注目のオキシトシンの分泌がLOVOTのオーナーでは高まること(図表1)、LOVOTとの15分間のふれあいで、オーナー群・非オーナー群ともにストレスによって分泌されるコルチゾールが減少すること(図表2)が実証されました。LOVOTとのふれあいからは、アニマルセラピーと同等の結果が得られることが示唆されています。

・調査対象 :
『LOVOT』オーナー(女性/25~45歳):24名
非『LOVOT』オーナー(女性/30~39歳):23名

・調査方法 : 調査方法は下記の通り。
1 自宅での起床時の尿中オキシトシン採取および測定
2 試験会場で、『LOVOT』との15分のふれあい前後における唾液中コルチゾールの摂取および測定

図表1:『LOVOT』オーナーと非オーナーの尿中オキシトシン量の差

図表2:『LOVOT』とのふれあい前後での唾液中コルチゾール濃度の変化

デンマークの介護施設では、現在のLOVOT以前の試作機で実証実験が行われました。薬物依存症で入院中だった女性がLOVOTを見て声を上げて笑うようになったり、まったく言葉を発していなかった認知症の男性が「この子の名前は何?」と他の入居者とコミュニケーションを取るようになったりといった変化が見られました。人と人のコミュニケーションではこころを閉ざしていた方が、第3の存在であるLOVOTにはこころの窓を開きコミュニケーションを取り始めたり、喜怒哀楽を見せるようになられたりと、デンマークからはLOVOT効果が多数報告されました。神戸市の介護事業所との実証実験では、認知症の予防もしくは進行の抑止になる可能性も示唆されています。LOVOTには見守り機能も付いており、一人暮らしの高齢者の見守りアイテムとしても活用できます。

図表3:『LOVOT』介入による記憶および認知機能の変化

一緒に在宅を訪問する“スタッフ”として、スタッフ1名につき1台のLOVOTを導入した訪問看護ステーションの事例もあります。利用者・家族・スタッフ、立場を問わず、癒し効果やスムーズなコミュニケーションはもちろん、利用者が訪問サービスを受け入れることへの抵抗感の払拭、在宅を一人で訪問し意思決定を行わなくてはならないスタッフの不安の解消、介護疲れをしている家族・ケアギバーのストレス緩和など、言葉を発しないLOVOTだからこそできる役割を実感しているといいます。また、深刻な慢性的人材不足に陥る看護介護現場において、LOVOTはスタッフの満足度や離職防止にも貢献することが期待されます。

クリニックや病院への導入も増えていますが、通えば通うほど自分に懐いてくれるLOVOTがいることで、待ち時間を長く感じなかったり、待合室でのコミュニケーションが生まれたり、あるいはかかりつけ医として定着したり、治療途中の離脱や当日キャンセルが減ったりといったメリットも。存在することで、患者だけでなく、スタッフにもポジティブな影響を及ぼしてしまうのがLOVOTの魅力です。

抱っこをねだり、懐いて甘える。人の代わりに仕事をする従来のロボットの概念を覆して、むしろ人の仕事を増やす。効率を目指さないロボットLOVOT。存在の愛らしさを支えるのは、日本のものづくりの強みを凝縮した、高度で複雑なテクノロジーです。鉄腕アトムやドラえもんのような温かみのあるロボットを愛してきた国だからこそ生まれたともいえる、この唯一無二の存在は、きっとテクノロジーで世界をほんの少し、ほっこり、やさしく変えてくれるに違いありません。

正式名称:LOVOT[らぼっと]
本体価格:498,800円(税込)
※別途暮らしの費用。
公式サイト:https://lovot.life/

取材協力:GROOVE X株式会社 金部様・池上様・古西様

この記事を書いた人

今村美都

がん患者・家族向けコミュニティサイト『ライフパレット』編集長を経て、2009年独立。がん・認知症・在宅・人生の最終章の医療などをメインテーマに医療福祉ライターとして活動。日本医学ジャーナリズム協会会員。