事例

GA4×Marketo×BigQuery×MotionBoardでWeb広告成果のブラックボックスを解消

GA4×Marketo×BigQuery×MotionBoardでWeb広告成果のブラックボックスを解消

ウイングアーク1st株式会社
マーケティング本部 コンテンツマーケティング部 Webマーケティンググループ
グループマネージャー 飯坂 倫好 氏
コーポレートブランド&コミュニケーション統括部 CRM Opsグループ
グループマネージャー 谷井 沙矢香 氏 (オンライン参加)

「帳票・文書管理事業」と「データエンパワーメント事業」を主軸に、企業のデータ活用を支えるソリューションを展開するウイングアーク1st株式会社。 データ活用のプロフェッショナルである同社は、自社のマーケティング活動においても先進的なデータ基盤を構築してきました。すでにMarketoとSalesforceを連携させ、展示会やインバウンド(Web問い合わせ)等、どのチャネルが売上に貢献しているかは見える化されていました。ただし、インバウンドがどこから来たのかは把握することができず、ブラックボックスとなっていました。

パワー・インタラクティブでは、Google Analytics 4(GA4)とAdobe_Marketo Engage、そしてBigQuery、MotionBoardを連携させることで、Web上の行動データと顧客属性データを統合。単なる「リード獲得数」ではなく、「どのような企業(業種・規模)が」「どのチャネルから」流入したのかを可視化することを実現しました。本稿では、プロジェクトを主導したWebマーケティンググループマネージャーの飯坂氏と、データ基盤整備を統括するCRM Opsグループマネージャーの 谷井氏に、実現に至るまでの詳細を聞きました。

プロモーションの真の貢献度を「解像度高く」可視化したい

今回GA4とMarketoの連携に至った背景についてお聞かせください。

飯坂氏:弊社が扱う製品が多岐にわたるため、プロモーション活動もWeb広告をはじめ様々な施策を展開していました。ただし、「実施しているプロモーションが適切にターゲットに届いているのか」「正確な集計ができているのか」という点がクリアになっていなかったのです。

例えば、Google広告の管理画面上で「100件のコンバージョンがあった」と表示されていても、実際にWebの管理画面やCRMに入ってくるリード数は50件程度しかない、といった乖離が頻繁に起きていました。残りの50件はどこへ消えたのか、他の媒体の成果として計上されているのか。これまでも自社開発でこの差異を埋める仕組みを作ったり、広告効果測定ツールを導入したりしてきましたが、どれも決定的な解決策にはなりませんでした。

実際にどのプロモーション活動が、最終的なリード獲得にどう貢献しているのかを見える化したい、GA4とMarketoをつなぐことで、どこまで解像度高く可視化できるかチャレンジしたい、と考えたのです。

御社は以前からMarketoとSalesforceの連携など、データ環境の整備はかなり進んでいた印象があります。

飯坂氏: まずは、マーケティングが獲得したリードが、実際にどのような案件・受注につながっているかを可視化するために、MarketoとSalesforceの連携は谷井が主導して早期に行っていました。

谷井氏: 私の担当領域では、Marketoのフォームで取得できる項目を増やしたり、外部の企業データベースと接続することで、獲得したリードの企業属性(業種、従業員規模、売上規模など)をSalesforce上で付与・分析できる仕組みを整えていました。 これにより、どんな属性の人がリードになったのか分かるようになりました。しかし、飯坂が担当している広告やWeb施策の観点で見ると、「その人が何経由で来たのか」という流入経路の情報が不足していました。

飯坂氏: Marketo上だけでは、入ってきたリードが「自然検索(オーガニック)」なのか「プロモーション広告経由」なのか、詳細な判別がしきれていなかったのです。 Webマーケティングやオンライン広告に注力し予算を投下している中で、広告媒体側の管理画面の数字だけでは「本当にそのコストが具体的な成果(ターゲット企業の獲得)につながっているか」というROI(投資対効果)を正確に測りきれないでいました。ここが我々の最大の課題でした。

「誰が商談・受注に至っているか」は見えてきたので、次は「その人たちがどこから来ているのか」を突き止め、集客コストの最適化を図りたいと考えました。

GA4×Marketo×BigQueryによるデータ統合基盤構築

今回のデータ連携の全体像について教えていただけますか。

谷井氏: 弊社のマーケティングデータフローは、基本的に以下のような流れになっています。

  1. 1.Marketo:全てのマーケティングリードを格納。
  2. 2.Salesforce:Marketoからデータを連携し、リード情報だけでなく商談・受注情報を含めて管理。外部ツールで企業属性データも付与。
  3. 3.Dr.Sum(ウイングアーク1st製品):SalesforceやMarketoのデータを蓄積・集計する高速集計データベース。
  4. 4.MotionBoard(自社製品):データを可視化するデータ活用プラットフォーム。

今回のプロジェクトでは、ここにGA4とBigQueryの連携を加えました。具体的には、GA4とMarketoを連携させ、Marketoのリード情報とGA4のユーザー情報とを紐づけます。その結果をBigQueryに格納し、Dr.Sumへ接続することで、MotionBoard上で広告キャンペーンとリードの企業属性を紐づけた分析を可能にしました。(図表1参照)

図表1:システム構成図

飯坂氏:今回、GA4とBigQueryを活用し、データをDr.Sumへ連携する構成にしたことで、過去データを保持したまま継続的な分析ができる環境が整いました。

以前はURLパラメータによる計測も行っていましたが、パラメータが維持されたままコンバージョンに至るケースは全体の半分もありませんでした。また、外部の広告効果測定ツールも利用していますが、仕様上、最新コンバージョンの上書きが発生し、継続的なデータの蓄積や、過去に遡っての推移分析が難しい状況でした。

「スクリプト埋め込み」と「キー項目不一致」の実装の壁

プロジェクト期間中で苦労された点はありましたか?

飯坂氏: 最初の壁は、フォームへのスクリプトの埋め込みでした。通常であればGoogleタグマネージャー(GTM)を使って管理するのですが、なぜか正常に動作せず、原因究明に時間を要しました。最終的には直書きすることで動作しましたが、環境ごとの挙動の違いには試行錯誤させられました。

谷井氏: データ連携の部分でも苦労がありました。特にBigQueryとの接続において、GA4側で発行される「CID(Client ID)」と、弊社側で管理しているユニークキー(顧客ID)が異なるため、単純にはデータが結合できなかったのです。 そこで、データの連携キーを弊社側のユニークキーに合わせる改修を行っていただきました。

また、BigQueryに入ってくる過去の明細データにおいて、新しく追加した項目(部門や役職など)が空欄のままになっているケースがありました。これでは分析ができないため、Dr.Sum側でマスターデータを参照し、空欄部分にデータを補完する処理を組むことで、過去分も含めて属性分析ができるように整備しました。

企業規模×訴求軸の可視化で、「リードの数」から「リードの質」へ広告予算配分シフト

連携によって、具体的にどのようなダッシュボードが見られるようになりましたか?

飯坂氏: MotionBoard上で、左側に「広告キャンペーン(訴求軸)」、右側に「獲得したリードの企業属性(売上規模、業種、役職など)」を表示するダッシュボードを構築しました。

これにより、特定の広告キャンペーンをクリックすると、右側のグラフが連動して変化し、「この広告からは、売上1000億円以上の製造業が多く取れている」といった詳細な分析が瞬時に行えるようになりました。 以前は、ディスプレイ広告で何種類かバナーを出し分けたとき、どのバナーが効いたかまでは追えていませんでした。しかし、現在は「コスト削減訴求」が効いているのか、「課題解決訴求」が効いているのか、ターゲットのエンタープライズ層に刺さっているのかまで見えます。

データが見えるようになったことで、アクションにはどのような変化がありましたか?

飯坂氏: 最大の変化は、広告予算の配分基準が「リードの数」から「リードの質」へシフトしたことです。 会社の方針としてエンタープライズ企業の開拓を重視しているため、獲得数は少なくても、ターゲット企業の含有率が高い広告であれば、そこには予算を増やそうという判断ができるようになりました。

これまでは「CPA(獲得単価)が良いからこの広告を回そう」となりがちでしたが、今は「この訴求はエンタープライズの製造業に響いているから伸ばそう」という、経営方針に即した戦略的な運用が可能になっています。

運用面での変化はありましたか?

飯坂氏: データ基盤が整い、見るべき指標が明確になったことで、施策の数も圧倒的に増やせています。以前は全製品を私一人で回していたため、バナーの差し替えも数ヶ月に1回程度でしたが、現在は製品ごとのキャンペーンに加え、それぞれに訴求軸を変えてリスティングやディスプレイ広告を走らせており、バナー数で言えば常時100本以上は確実に回しています。 一人でやっていた頃に比べると、施策量は5倍以上に増えている感覚です。現在は私が方針策定や分析に集中し、実運用を2名のメンバーに任せる体制が構築できました。

ダッシュボードは、月1回程度の方針策定のタイミングで深掘りして見ています。日々の運用調整は代理店さんと週次で行いますが、このダッシュボード自体は社内限定のデータとして活用し、そこから得られた示唆(例:このターゲット層が取れているから、この方向性を強めたい等)を代理店への指示出しに反映させています。

パワー・インタラクティブが社内にはない「BigQueryの知見」を補完

今回のプロジェクトにおける、弊社のサポートについての率直なご感想をお聞かせください。

飯坂氏: 正直なところ、当初はGA4とBigQueryをつないで何が見えるようになるのかが自分たちでも明確にイメージできておらず、過度な期待はしていませんでした。しかし、実際にプロジェクトが進み、データが見えるようになるにつれて、「ここまで見えるなら、評価軸を変えられるかもしれない」という可能性が広がっていきました。 何より感謝しているのは、我々の進捗が遅れている時に、しっかりとお尻を叩いてプロジェクトを推進してくれたことです(笑)。我々も通常業務を抱えながらなので、レスポンスが遅れがちでしたが、そこを粘り強くフォローしていただいたおかげで、無事に実装まで辿り着けました。

また、 マーケティング部門の中にBigQueryを扱えるメンバーが一人もいなかったので、その知見を補完していただけたのは非常に大きかったです。

谷井氏: 私もデータベースは触りますが、BigQuery特有の仕様や挙動については未経験でした。実際のデータを入れてみて初めて分かる不具合や仕様変更の必要性が出てきた際に、質問に対して即座に回答をいただいたり、柔軟に設計を変更していただいたりした点は大変助かりました。 今後は、単なる実装だけでなく、「他社ではこういう連携をして成果を出している」といった、我々が気づいていない新しいデータ活用の提案も期待しています。

今後は広告キャンペーン分析の深化と必要なデータの取捨選択へ

今後、さらに取り組んでいきたいことはありますか?

飯坂氏: 今後は、広告キャンペーンの作り方そのものを、より分析しやすい形へ再設計したいと考えています。これまでは代理店の運用のしやすさを考慮して大きなくくりで設定していましたが、より細かくキャンペーンを分けることで、どの訴求が効いているかの解像度をさらに上げたいです。ただ、細分化しすぎると機械学習の効率が落ちるというジレンマもあるので、その最適なバランスを探っていきたいですね。

また、現在はGoogle広告が中心ですが、Meta(Facebook/Instagram)などのSNS広告との連携も強化したいと考えています。

分析手法においては、「アトリビューション分析」の強化が課題です。現在はどうしても「ラストタッチ(直前の流入)」や、計測できている範囲での「ファーストタッチ」を評価の中心に置いていますが、認知から獲得に至るまでの中間接触(間接効果)がどう効いているかまでは、完全には見きれていません。 特に弊社は展示会への出展数が非常に多く、リード全体の半数以上を展示会経由が占めることもあります。また、自然検索経由の商談化率が高い傾向にありますが、「本当にそれが純粋な検索なのか、実は広告を見た後に検索したのか」というパスを正確にトラッキングすることは永遠の課題です。

YouTubeなどの動画コンテンツも再生数が伸びており、そうした「認知施策」が最終的なコンバージョンにどう寄与しているのか、間接効果も含めた評価モデルを作っていきたいと考えています。

谷井氏: 私の視点では、データ量が増えすぎていることが次の課題だと感じています。見られる指標が増えた分、ただデータを並べるだけでは意味をなしません。「本当に必要なデータは何か」を取捨選択し、見る人(担当者、マネージャー、経営層)に合わせて最適な切り口で情報を届ける仕組み作りが必要です。部門最適にならず、事業全体を見渡せる分析基盤へと進化させていきたいですね。

プロフィール

飯坂 倫好 氏

ウイングアーク1st株式会社
マーケティング本部 コンテンツマーケティング部 Webマーケティンググループ
グループマネージャー 
Webマーケティングの責任者として、インバウンドリード獲得のための施策の全体方針策定から予算配分、実運用までをリード。リード獲得数だけでなく、事業貢献度を重視した施策の実施を推進している。

プロフィール

谷井 沙矢香 氏

ウイングアーク1st株式会社
コーポレートブランド&コミュニケーション統括部 CRM Opsグループ
グループマネージャー 
社内データ分析の管理者として、Marketo Engageをはじめとするマーケティングツールの運用管理および社内データ基盤の整備を担当。マーケティングとセールスをつなぐデータ環境の構築、および分析環境の最適化を技術・運用の両面から支えている。

インタビュー実施日:2025年12月11日

担当アナリストの声

ウイングアーク1st様の取り組みで印象的だったのは「どの意思決定を変えたいか」が最初から明確だった点です。既にMarketoとSalesforceを軸に、商談・受注に至るリード像は把握できており、次のステップとして「その人達はどこから来ているのか」を可視化したい、という課題設定が整理されていました。
GA4とBigQueryを組み合わせることで、Web行動と顧客属性を一気通貫で扱えるようになり、広告の成果を”リード数”ではなく”事業の貢献度”で判断できる状態が実現できました。

今後は、広告だけでなく、展示会や動画、オウンドメディアなど、認知から検討に至るまでの施策全体を、同じ視点で捉えていくフェーズに入っていくことでしょう。
今回構築したデータ基盤があることで、施策ごとの効果を横断的に整理しながら、マーケティング全体の打ち手を検討できるようになるはずです。
こうした取り組みが更に前に進むよう、今後もウイングアーク1st様のデータ活用を継続的にサポートできれば幸いです。

八木 耕祐

マーケティングデータアナリスト

八木 耕祐

Web行動履歴やアプリデータによる顧客行動分析

アナリストとして、50社のアクセスログ分析に携わる。現在は、データ設計、データマート構築などの基盤づくりから、ダッシュボード作成、分析まで、データ活用を極めている。セミナー登壇は50回以上、満足度90%以上のセミナーも多数。
リモートワークになり、海の近くでマリンスポーツをエンジョイ中。

担当アナリストの声

今回のGA4・Marketo連携はウイングアーク1st様で利用している数百点のMarketo生成フォームがスクリプトの設置対象となったことが特徴でした。フォームに実装されている機能が個々に異なるため、機能不全や取得データの欠損が見られ苦労しました。スクリプト調整・実装やデータ検証では、飯坂様にもご協力いただきました。

実装完了まで課題が多くあったプロジェクトでしたが、GA4とMarketo・Salesforceのデータを連携することができ、施策評価の視点が単純なリード数から、獲得したリードの属性視点に変わりました。
今後、更なるデータ活用に取り組もうとしているウイングアーク1st様を引き続き支援していければと存じます。

松實 美樹

マーケティングデータアナリスト

松實 美樹

Googleアナリティクスの計測設定、アクセスログ分析

2018年にパワー・インタラクティブに入社し、アクセスログ分析やリスティング広告運用などを通じてデジタルマーケティング支援に携わる。現在はGoogleアナリティクスの設定支援や、アクセスログを用いたWEBサイト分析、ダッシュボードの設計・作成を中心にアナリストとして従事。趣味は映画鑑賞。好きなジャンルはアクション、ホラー・スリラー。

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