創業50年を超える医療機器メーカーのA社。全国に営業拠点を持ち、医療機関向けに製品を提供しています。数年前にMAツールのAdobe Marketo Engage(以下、Marketo)を導入し、Web講演会やホワイトペーパーでリード獲得を行い、ナーチャリングを進めてきました。しかし、せっかく育てた有望リードが営業現場で活かされず、マーケティング部の存在意義そのものが問われる状況に陥っていました。
パワー・インタラクティブは、A社のマーケティング部門が営業に貢献できるよう、データ基盤整備と可視化を支援しました。本稿では、ダッシュボードを介してマーケティングと営業の連携を実現した事例をご紹介します。
利用サービス:マーケティング・データマネジメント推進支援サービス
https://www.powerweb.co.jp/service/data-management/
創業50年を超える医療機器メーカーのA社。マーケティング課長は当時を「毎週月曜の営業定例会議は針のむしろだった」と振り返ります。
Marketoを導入し、Web講演会やホワイトペーパーで獲得、育成した有望な見込み客リストを営業部門に渡しても、返ってくるのは「こんなリスト、現場では役に立たないよ。決裁権もない担当者に電話する暇なんて、我々にはないんだ」といった冷ややかな反応だけでした。
営業部門には、長年の「足で稼ぐスタイル」が根付いていました。各営業所が独自に管理するExcel管理表は、もはや「秘伝のタレ」のような存在です。マーケティング部が提供するデータは、そもそも見てもらえない。黙殺されるのが当たり前になっていました。
さらに頭が痛かったのが、経営層へのレポート業務です。
Marketoのデータと、営業部のSFAやExcelのデータは完全に分断されていました。「マーケティング活動がどれだけ売上に貢献したのか」を証明する手段が、どこにもありません。月末になると、部員総出で3つのシステムからCSVを抽出し、手作業でExcelを突き合わせる「コピペのバケツリレー」が始まります。それだけ時間をかけて仕上げたレポートですら、営業部長からは「現場の数字と合わない」と一蹴されてしまいます。
マーケティング課長は、この悪循環に対し、ツールの導入だけでは解決できないことに気づいていました。A社が必要としていたのは、単なるシステム統合ではありません。営業とマーケティングが「共通の数字」で会話するための仕組みそのものでした。
| 課題 | 詳細 |
|---|---|
| マーケ・営業間の断絶 | マーケティング部が創出した有望見込み客を営業が活用せず、「マーケティング部門からの有望見込み客=ノイズ」という認識が定着。部門間の信頼関係が崩れていた。 |
| データのサイロ化 | MA、SFA、各営業所のExcelがそれぞれ独立して存在。横断的にデータを見る手段がなかった。 |
| レポート作成の工数爆発 | 月末に3システムのCSVを手動で突合。部員総出で丸1日以上を費やしていた。 |
| マーケの貢献が見えない | マーケティング投資と売上の因果関係を示せず、予算獲得の根拠が薄かった。 |
正攻法は、全社的なデータウェアハウス(DWH)を構築して完璧なデータ基盤を作ることでした。しかし、情シスのセキュリティ審査や稟議を含めると1年以上かかります。現場の疲弊は、そこまで待てる状態ではありませんでした。
A社が選んだのは、「小さく始めて、早く見せる」というマーケティング・データマネジメント推進支援サービスでした。
システムの話に入る前に、営業部門と膝を突き合わせて会話しました。議題は「有望見込み客」という言葉の定義です。
マーケティング側は「名刺情報が揃っていて、Webの閲覧履歴からサービスに関心があると想定するリード」と考えていました。営業側は「予算と時期と課題が見えて初めて見込み客だ」と思っていました。このズレを放置したままデータをつないでも、空回りするのは目に見えています。
そこでA社は、マーケティング側の常識を一旦棚上げし、営業側の基準に歩み寄りました。共通の定義がなければ、どんなデータ連携も意味を持たない。その原則に立ち返ったのです。
物理的な解決策として採用したのが、CData Connect AIです。CData Connect AIは、クラウド上のデータソースをリアルタイムで接続できるプラットフォームです。CData Connect AIを入れることで、Marketo内のリード情報やアクティビティログを、BIツールのPower BIから直接参照できるようにしました。DWHの構築も、複雑なETL処理も不要。数カ月で「営業が見たいデータ」だけを表示するダッシュボードを立ち上げました。
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Adobe Marketo Engage リード情報・行動ログ |
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CData Connect AIリアルタイムデータ接続 |
→ |
Power BI ダッシュボード・可視化 |
ダッシュボードに、PV数やメール開封率は載せていません。営業が求めている数字ではないからです。
載せたのは営業のアクションを想定した以下の情報です。
| ダッシュボードに表示したトリガー | 営業のアクション |
|---|---|
| 先週、価格ページを3回以上閲覧した既存顧客 | 即座に電話し、見積もり提示へ |
| 休眠中だったが、突然Web講演会に参加した病院 | 翌日にフォローアップ訪問を設定 |
| 競合比較ページを繰り返し閲覧している新規リード | インサイドセールスから優先架電 |
データの「量」ではなく「質」を意識し、営業の行動に直結する情報だけに絞ったことで、ダッシュボードは「押し付けられるもの」から「自分たちの武器」に変わりました。
取り組みから半年。A社の定例会議の景色は一変しました。
かつてリストを放置していた営業担当者から、こんな問い合わせが入るようになりました。
「あのダッシュボードで通知が来た顧客にアプローチしたら、トントン拍子で商談化しそうだ。もっと詳しいログはないか?」データが「ノイズ」から「武器」へ。認識が変わった瞬間でした。
手動のレポート作成が自動化され、月間約40時間の工数削減を実現しました。空いた時間で、マーケティングチームは「数字の集計」ではなく「営業が商談しやすいコンテンツの企画」に注力できるようになりました。
経営層が見る数字と、現場の数字が、Power BI上で一本化されました。「マーケティング投資がいくらのパイプラインを生んだのか」が可視化されたことで、翌期の予算配分もデータに基づいて決められるようになりました。
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月間約40時間 レポート工数を削減 |
数ヶ月 ダッシュボード構築完了 |
半年後 営業がダッシュボードを武器にし始めた |
営業とマーケティングの間にあった壁は、共通のデータを介して取り払われました。A社は組織として「売上を作る」体制へと変わり始めています。
| フェーズ | 期間 | 取り組み内容 |
|---|---|---|
| Phase 1 | 1ヶ月目 | 営業・マーケ合同ワークショップで「リード」「案件」の定義を統一。KPIの再設計。 |
| Phase 2 | 2〜3ヶ月目 | Marketo × CData Connect AI × Power BIの直結型ダッシュボードを構築。営業トリガー情報の選定。 |
| Phase 3 | 4〜5ヶ月目 | パイロット運用開始。営業現場のフィードバックを反映し、表示項目を最適化。 |
| Phase 4 | 6ヶ月目〜 | 全社展開。レポート自動化の完成、経営ダッシュボードの統合。 |
| ポイント | 内容 | |
|---|---|---|
| 1 | 定義の統一が先 | システム連携の前に、「有望見込み客」の定義を営業と合意をとる |
| 2 | 小さく始め、早く見せる | DWH構築を待たず、CData Connect AIでMarketoとPower BIを直結。数カ月でダッシュボードを実装。 |
| 3 | データの「質」で行動を変える | PV数ではなく「営業が今すぐ電話したくなるトリガー」に絞り、データを武器に変えた。 |
| 4 | 共通のデータで会話する | 経営層・営業・マーケティングが同じダッシュボードを見ることで、予算獲得から日常の連携まで円滑になった。 |
パワー・インタラクティブがご提供する「マーケテイング・データマネジメント推進支援サービス」は、先ずは、今あるデータを自動で収集してデータ基盤を構築。そのデータをダッシュボードで可視化することで、「できていること」と「できていないこと」を明確化します。「見える範囲」を段階的に拡げて行くことで、組織横断でマーケティング活動の全体像を把握することを可能にします。
マーケティングコンサルタント
今西 涼
生成AIを活用したマーケティング業務の効率化・高度化支援
広告代理店でのアートディレクターを皮切りに、不動産営業、大手人材企業でのデータエンジニア・事業企画、ソフトウェア企業でのパートナーサクセスと、複数の業界・職種で成果を重ねる。
1,500名規模の営業組織にTableauを導入し、データドリブンな意思決定の定着を主導。ビジネス課題をデータとAIで解く実行力と、技術を経営成果に翻訳する力を武器に、マーケティングコンサルタントとして従事。
愛犬をカメラで追いかけるのが週末の楽しみで、お菓子作りも得意。

2026.02.04

2025.12.25

2025.08.29