コラム

データのサイロ化が与える影響と、QuickWinではじめるデータ集約のベストプラクティス

はじめに

データ活用に課題を抱えている企業は多いと思います。多くの企業が直面している課題の一つに「データのサイロ化」があります。
部門やチームごとにデータが分散されたままでは、顧客体験の最適化や効果的な意思決定が阻害され、組織全体の成長を妨げる要因となります。

本コラムでは、データのサイロ化を引き起こす具体的な影響と、その解決策を紹介します。
また、データ統合と可視化がどのようにして組織の意思決定に役立つのか、レベニュープロセスの視点から紹介します。

データのサイロ化が与える影響

データのサイロ化とは、組織全体で見たときにデータが部門やチームで独立して管理されている状態です。この状態では、部門やチームでデータの共有や連携が円滑におこなえず、組織としてデータを最大限に活用することが難しくなります。

データのサイロ化が発生する原因としては、以下のようなことが考えられます。

1.ツールやシステムの多様化
各部門が高機能なツールやシステムを利用しているが、システムが縦割りで組織に合わせてデザインされているため部門最適化されており、データが連携されておらずに断片的になる。

2.部門ごとの目標や責任の分断(部門間の連携不足)
目標やKPIが部門ごとに目線が異なることで組織のサイロ化が進むと、部門間の対立が発生する恐れがあります。これにより組織としての統一感はなくなり、部門間でデータが共有されなくなる可能性があります。

3.コミュニケーション不足
部門間でコミュニケーションや連携が不足している場合、他部門のデータがどこにあるか分からず、どのように活用できるかが周知されていない場合があります。

データのサイロ化による、組織、データ、ツールの分断はそのまま顧客体験に反映され、以下のような影響をもたらします。

1.顧客の全体像が把握できない
部門ごとに異なるツールやシステムを利用している場合、顧客データが断片化されます。その結果、最適化された顧客体験が提供できなくなります。

2.組織全体の非効率化
部門間で目標が一致せず、組織としての全体最適化ができなくなります。

3.部門間の対立と社員モチベーションの低下
データのサイロ化により、他部門の効果が見えにくくなり、部門間での対立が深刻化する恐れがあります。その結果、営業部門から「マーケティング部門から提供されるMQLの質が悪い」といった不満が蓄積し、士気が低下する恐れがあります。

以上のように、本来は各部門が収益の最大化という同一のゴールを持っているにもかかわらず、データのサイロ化により、組織としての全体像が見えず、誤った判断・行動をしてしまう可能性が高くなります。

このような問題を解決するには、顧客やレベニュープロセスに関するデータを部門やチーム間で連携・共有する必要があります。
また、『各部門でレベニュー目標の達成』を共通ゴールとして評価軸を統一し、部門ごとに適切な目標設定を行う事で、営業部門はマーケティング部門と密に連携を図り、共通された適切な質のリードによって目標が達成できます。

QuickWinではじめるデータ集約のベストプラクティス

データ集約の基盤としてデータ分析基盤を構築することが一般的であり、基盤の整備は全社的なデータ活用を実現するための重要なプロセスです。
しかしながら、データ統合の複雑さやリソース不足、技術的な課題に直面する企業は少なくありません。
本章では、Qucikに始めるためのベストプラクティスを3つご紹介します。

1.継続的に収集・集約して可視化し続ける仕組みを作る

顧客中心にデータを集約して分析につなげることが重要です。これにより部門間で統一された視点を持ち、顧客価値を最大化する意思決定が可能になります。

具体的な実践方法は以下です。

・社内横断的なデータウェアハウス(DWH)の導入
MA、SFA、CRM、販売管理など各部門が行った顧客に対する活動を一元管理するためのプラットフォームであるDWHを導入することで、レベニュー貢献を分析するための環境を構築します。

・ETLツールの活用
ETL(Extract・Transform・Load)はデータを抽出・変換・格納するためのツールです。SaaSなどのアプリケーション、データベース、ファイルなどにあるデータをDWHに連携することが可能です。利用するETLツールによっては様々なコネクタが提供されており、部門間の障壁である異なるツールの連携をDWH上で実現することができます。

・データ可視化ツールの活用
データの可視化にはLooker Studio、TableauやPower BI などのBIツールを利用し、定期的に更新されるダッシュボードでデータを見える化することが重要です。

2.段階的にデータ連携を進める(スモールスタート)

いきなり全てのデータを統合することは難しいため、段階的にアプローチすることが望ましいです。

・優先順位をつけて段階的に進める
レベニュー貢献の第1段階であるマーケティング関連データの連携から進めることを推奨します。特にMAはリード(顧客)を中心に施策や行動データが紐づいているため、まずはMAから連携をはじめ、次いでSFA→CRM→受注管理 と、レベニュー貢献に沿ったステップで連携を進めていきます。

・連携できないデータはCSVで対応
段階的にデータ連携を進めていく中で、レベニュー貢献を分析するには不足しているデータが見つかる可能性は大いにあります。その場合は、ExcelやCSVにデータを集約してDWHに連携を行う事で、アプリケーションからの連携プロセスを一時的に回避して、レベニュー貢献を分析することが可能です。

3.今あるデータの現状を把握する

現在のデータ環境を正確に理解することで、現在のデータ環境でどのような成果が得られるかを明らかにします。

・データ分析の現状把握
理想的なデータ分析基盤を利用して可視化を行った時の可視化率を100%としたときに、現在連携できているデータでの可視化率を測定し、率を上げるためにすべきことを明確にします。

・成果が小さくても可視化
現在のデータでできる小規模な分析や改善案を試し、成果を共有します。

・部門間の連携を促進する話題の材料にする
「データ分析の現状把握」と「成果が小さくても可視化」を踏まえて、データの重要性や活用例、どのようなデータを連携することで、組織的なレベニュー貢献を計測できるのかを他部門に展開し、連携を進めるきっかけを作ります。

これらの3つのベストプラクティスを実行することで、無理なく段階的にデータ集約を進めることができます。

データ統合と可視化が組織の意思決定にどのように役立つか

データ統合と可視化は、単なる業務効率化の手段ではなく、レベニュー貢献を実現するためレベニュー組織の意思決定を支える基盤です。
DWHを活用しながら、レベニュープロセスの最初から最後までを管理し、最適化するための仕組み化とデータの可視化をおこない、このデータ基盤を活用することで、以下のような意思決定に役立てることができます。

部門間の連携と全体最適の実現

データ分析基盤を構築するまでは、マーケティング部門、営業部門、カスタマーサクセス部門のそれぞれがレポーティングを行っており、自部門をよく見せるために、データの質が良くないことがありました。
データ分析基盤と可視化により、組織全体が共通の指標を活用することができます。組織横断的な活動を要するものの、これによって、組織全体としてより高度な意思決定が可能となります。

信頼性の高いデータに基づく戦略策定

データドリブンな意思決定は、主観やバイアスに左右されることなく、客観的かつ論理的な判断を可能にします。
顧客データを分析することで顧客のニーズや行動パターンを深く理解でき、顧客満足度を向上につなげることが可能となります。

まとめ

「データのサイロ化」は、部門ごとの分断を助長し、顧客の全体像の把握や組織の効率化を妨げる深刻な課題です。しかし、データ集約と可視化を段階的に進めることで、こうした問題を解消し、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。
データ集約によりデータ分析基盤を構築することが理想ではありますが、いきなり完璧なデータ分析基盤を構築するのは難しいかと思います。
まずは段階的にデータの連携と可視化を行い、モニタリングしながら他部門展開を考えて進めてください。

弊社は、デジタルマーケティング領域の知識と経験を活かし、貴社の最適なマーケティングデータ基盤を実現します。サービス内容について、詳しくはこちらのページをご覧ください。
マーケティングデータ基盤整備サービス

八木 耕祐

マーケティングデータアナリスト

八木 耕祐

Web行動履歴やアプリデータによる顧客行動分析

アナリストとして、50社のアクセスログ分析に携わる。現在は、データ設計、データマート構築などの基盤づくりから、ダッシュボード作成、分析まで、データ活用を極めている。セミナー登壇は50回以上、満足度90%以上のセミナーも多数。
リモートワークになり、海の近くでマリンスポーツをエンジョイ中。

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