GA4の重要度は落ちたのか?「Webマーケティングの主役」から「現場改善の計器」へ役割を再定義する
GA4の重要度は落ちていません。役割が「マーケティング成果の代名詞」から、より専門的な「現場改善(体験・導線)の計器」へと適正化されただけです。最終成果はCRM、顧客育成はMA、投資判断は統計分析(MMM)と連携させる「4層構造」での管理が成功の鍵です。
執筆:遠藤 美加(パワー・インタラクティブ 取締役 / MOpsコンサルタント)
「GA4になってから、以前ほど重要じゃなくなった気がする」 最近、現場でそんな声を聞くことが増えました。
ただ、企業のデータ活用を支援してきた私たちの実感としては、これは「GAの価値が下がった」という話ではありません。 単純に、マーケティングにおける「中心」が移っただけの話です。
かつては「Webサイトへの集客=マーケティングの成果」と見なせる時代があり、その中心には常にGAがありました。しかし現在は、「Webマーケティングの効果検証の主役」から、「現場改善のための精密な計器」へと、本来のポジションに戻ったのです。
なぜ「GA4の重要度が落ちた」と感じる現場が増えているのか?
理由は大きく分けて3つあります。環境の変化と、それに伴う「仕事の変化」によるものです。
1. 接点が複雑化し、Webログだけではストーリーが完結しない
広告、SNS、動画、セミナー、コミュニティなど、顧客との接点は爆発的に増えました。「サイトを見て、すぐ購入」という単純な行動は減り、Web行動データ(GA4)だけで顧客の心理変化をすべて説明するのは不可能になっています。
2. 意思決定の「真ん中」にMAが座るようになった
GAは「体験のログ」、CRMは「売上のログ」です。その間には必ず「顧客との関係性が育つ時間」があります。 メールの開封、セミナー参加、資料の読み込みといった「育成プロセス」のデータを管理しているのはMA(マーケティングオートメーション)です。 その結果、意思決定の軸足が「GAの数字」単体から、「MA×CRM」の統合データへとシフトしています。
3. マーケティングデータアナリストの仕事が「分析」から「統合」へ変わった
実はこれが、私たちが一番肌で感じている変化です。ここ10年で、弊社のマーケティングデータアナリストの役割は大きく変わりました。
以前の主戦場は、GAの画面を見て「どのページで離脱が多いか」を見つけ、改善案を出すことでした。いわゆる「分析して提案する」仕事です。
ところが現在は、GA・MA・CRMのデータを繋ぎ合わせ、ダッシュボード化して「全員が同じ景色を見られる状態」を作ることに最も時間を使っています。 やっていることは、アナリストというより「データエンジニア」に近くなっています。
| 以前のスキル(分析中心) | 現在のスキル(統合・エンジニアリング中心) | |
|---|---|---|
| 主な業務 | 「分析して提案する」 | 「統合して見える状態を作る」 |
| 対象データ | GA(Web行動ログ)のみ | GA + MA + CRM + 広告データ |
| 具体的な作業 | ・離脱ページの特定・導線の課題発見・ページ改修案の作成 | ・データの集約・統合・分析基盤の構築・ダッシュボード化(全員に同じ景色を見せる) |
| 目的 | サイト内の局所的な改善(UI/UX) | マーケティング全体の意思決定支援(全体最適) |
これはGAの重要度が落ちたからではありません。 接点が複雑化した結果、「分析する(GAを見る)」前に、「統合する(全体を見えるようにする)」プロセスがないと、正しい意思決定ができなくなったからです。
つまり、「GAだけを見て分析していればよかった時代」が終わった。これが、「GAの重要度が落ちた」と感じる構造的な正体です。
現在のマーケティングにおけるGA4・MA・CRMの役割分担とは?
「GA4を使わなくなる」のではありません。「GA4だけを見なくなる」のが正解です。 各ツールが得意とする領域を整理すると、以下のようになります。
| ツール | マーケティングにおける役割 | 意思決定の領域 |
|---|---|---|
| GA4 | 現場改善のエンジン(体験・導線の修正) | 「Web体験」の良し悪し:LP改善、フォーム到達率、ボタン配置 |
| MA | 関係性構築のエンジン(接触と反応の蓄積) | 「顧客育成」の進捗:メール反応、コンテンツ閲覧、スコアリング |
| CRM/DWH | 最終評価の基準(商談・受注・継続) | 「事業成果」の達成:商談化率、受注額、ROI(投資対効果) |
| MMM ✴︎ | 予算配分の最適化(統計分析によるシミュレーション) | 「投資判断」の決定:指名検索の増減、CM・認知施策の純増分 |
✴︎ MMM(Marketing Mix Modeling):Webトラッキング(GA4)では計測できないテレビCMや季節要因などの影響を、統計的な手法を用いて数値化する分析手法。
このように役割を定義し直すと、GA4は「現場のUI/UXを改善する最強のツール」として、再び輝きを取り戻します。
マーケティング責任者が設定すべき「4層の評価指標」とは?
組織の意思決定をスムーズにするためには、会議で見る数字を以下の「4つのレイヤー」に分けて管理することを強く推奨します。
1.レイヤーA:最終評価(CRM/DWH)
- ・見るべきもの: 売上、商談数、受注数、継続率。
- ・目的: 全体会議での合意形成。これを「GA」で測ろうとすると失敗します。
2. レイヤーB:顧客育成(MA)
- ・見るべきもの: スコア、メール開封率、重要コンテンツ(事例等)の閲覧数。
- ・目的: 「見込み客」の温度感の把握。GA4(点)とCRM(結果)を繋ぐ「線」の役割を果たします。
3. レイヤーC:現場改善(GA4)
- ・見るべきもの: フォーム到達、LP読了率、主要ページ遷移。
- ・目的: サイト内のボトルネック発見。「変えられるレバー」だけに集中します。
4. レイヤーD:投資判断(統計分析/MMM)
- ・ 見るべきもの: 広告や施策による「リフト値(純増分)」。
- ・目的: 予算アロケーション(配分)。Web上の直接コンバージョンだけでなく、統計的に算出した広告効果を見ます。
明日から実践できるGA4運用体制のポイントは?
1. 会議のトップ指標を「GA4」から外す
会議が「データの解釈大会」になってしまう原因は、全員でGA4の細かい数字を見てしまうことにあります。 全体会議でのトップ指標(KGI)は、必ずCRM側のデータ(商談・受注)に固定してください。GA4は、数字が悪かった時の「原因探し」の時にだけ開くようにします。
2. GA4のKPIは「最大6つ」に絞る
GA4は無限に指標を作れますが、追うべきは「アクションに繋がる数字」だけです。
- ・フォーム到達数
- ・料金ページ閲覧数
- ・CTAクリック数 など、「明日、サイトを修正して改善できる指標」に絞り込むことで、現場のPDCAスピードは劇的に上がります
3. 「コンテンツ→MA→CRM」の一本線で評価する
「どのコンテンツが良かったか?」をPV数だけで判断するのは危険です。 「誰が(MA)、何を見て(GA)、最終的に受注したか(CRM)」という一気通貫したデータで評価できるよう、ID統合やデータ基盤の整備を進めましょう。
まとめ:GA4は「単体」での評価を卒業する。MA・CRMと連携した「分業」が正解
GA4 で体験を磨き、
MA で関係を育て、
CRM で成果を測り、
MMM (統計分析)で予算を決める。
この役割分担ができた組織は、「GA4の数値」に振り回されることなく、本質的なマーケティング活動に集中できるようになります。
取締役/常務執⾏役員
遠藤 美加
マーケティング戦略策定
関⻄学院⼤学経済学部卒業。住友ビジネスコンサルティング株式会社⼊社。マーケティング分野のリサーチおよびコンサルティング業務を経て、⽴命館⼤学(学校法⼈)に転じ、⼤学の⻑期経営計画づくりや産学連携事業を担当。その後、⼤阪市のソフト産業プラザにてベンチャーコーディネーター業務に従事。2000年4⽉、パワー・インタラクティブ⼊社。同年6⽉取締役、2003年常務執⾏役員に就任。全社の事業戦略を統括する。



