事例

【前編】株式会社堀場エステック Marketo導入して6年、営業に寄り添い、進化を続けてきたデジタルマーケティングは第5ステップへ

ビジネス形態
BtoB
業種
製造
部門
マーケティング
規模
100名~1000名未満

株式会社堀場エステック 営業推進部 デジタルマーケティングチーム
チームリーダー 志知 文 氏

株式会社堀場エステックは、1974年に堀場製作所、島津製作所、東芝ベックマン(現ベックマン・コールター)、高千穂化学工業の共同出資により設立されました。当時は公害問題が社会問題化しており、堀場製作所が開発した公害測定機器の目盛の統一に必要な基準気体の生産技術を公開することが設立の目的でした。2005年には堀場製作所の完全子会社となり、現在は堀場製作所の5事業の中の半導体事業部の中核を担っています。特に主力の「マスフローコントローラ」は、世界シェア5割を超える商品です。

今回は、2014年にマーケティングオートメーション(MA)を導入し、デジタルマーケティングの牽引役を務めているデジタルマーケティングチーム、チームリーダーの志知文氏に、どのようにデジタルマーケティングを進めてきたか、社内推進のポイントについて、前編・後編に分けてお届けします。

株式会社堀場エステック 営業推進部 デジタルマーケティングチーム <br/>チームリーダー 志知 文 氏

デジタルマーケティングのきっかけは、MAとの出会い

デジタルマーケティングに取り組んだ背景を教えてください。

デジタルマーケティングの取り組みは、MAツールのMarketo(マルケト)を導入したのがスタートです。それまで私は営業部に所属していたのですが、営業推進部に異動になり、まずは展示会対応に取り組みました。例えば、展示会用のコンテンツを準備したり、アテンドする営業担当者の勉強会を行ったりしました。しかし、展示会後営業担当者へ来場者フォローをお願いしても、なかなか対応してもらえないというモヤモヤがありました

営業担当者が、新規商談獲得に積極的に取り組む姿勢がなかったということですか?

Face to Faceの営業で、顧客別、エリア別でそれぞれ顧客担当している中で、日々の案件フォローで忙しく、なかなか優先度をあげて来場者フォローをしてもらうことが難しかったのです。 主力のマスフローコントローラ以外の商材を売らなければいけないという意識はあるのですが、目の前の業務に追われ、新しい取り組みはできていませんでした。新規商談を全くフォローしていないわけではなく、会社としても主力商材以外を売っていく方針はあるのですが、どうやって進めるか営業部門と推進部門の連携も模索していました。そこで展示会出展を行ったのですが、結果は、あまり進展はありませんでした。

そうした中、ちょうど2014年に株式会社マルケト(現アドビ システムズ株式会社)が日本法人を立ち上げ、MAの情報を得る機会があり、ぜひMAを営業に活用してみたいと社内提案したのがデジタルマーケティングに取り組んだきっかけです。営業を経験していたので、MAを使って顧客を中心にした商談創出のしくみづくり、営業変革ができるのではと思いました。

同じ課題感をもったメンバーでMAプロジェクトを立上げる

デジタルマーケティングは、どのような体制で進められたのですか?

社内で起案すると、「やってみたい人とやってみなよ」と本部長が言ってくれ、営業部から3名が手を挙げてくれました。MAの立ち上げは、部単位の取り組みではなく、営業変革という同じ課題感を持ち、MAの活用に共感してくれたメンバーが集まったプロジェクトとして進められました。プロジェクトメンバーは、新規商談獲得はこれまでのやり方だけでは難しいのではという考えを持っており、自らシナリオやコンテンツ作りを行い、営業の手の届かない顧客へは、キャンペーンで対応しました。私以外は皆、営業部に所属するメンバーなので、コンテンツ作りは皆でアイデアを出して作成しました。

一方、Marketoの実装は私が行いましたが、当時、関西にはMarketoの使い方や活用に関する情報が全くなく苦労しました。Marketo導入時のコンサルティングのほか、月1回、関東のセミナーに参加してマーケティングを学ぶと同時に、Webで検索してヒットしたコンサルティング会社に藁にもすがる思いで2日間のハンズオン研修を行っていただきました。

同じ課題感をもったメンバーでMAプロジェクトを立上げる

MA導入初期は、少額商材が対象で失敗となる

Marketo導入時は苦労されたようですが、その後は順調に進んだのですか?

それなりに有望なリードは出ていたのですが、少額商材を対象にしたキャンペーンで営業とうまく連携ができませんでした。マルケト社のコンサルタントに、「プログラムは回っているけど成果が出ない。」と相談したところ、「会社が売りたいもの、つまり営業が売りたいもの、主力商材を対象にしていないからですよ。」とアドバイスされました。そこでハッとしました。営業と共通のゴールを持ち、役割分担をしてマーケティングを進めなければいけないことに気づいたのです。

少額商材に取り組んだのは、営業は主力商材を注視し、我々がマーケティングでサポートすれば良いという発想でした。ただし、クロージングするのは営業担当者です。本来、少額商材はWebで購入してもらうほうが営業は助かるし、せめて見積り対応まではしてほしいと考えていたと思いますが、当時はインサイドセールスもなく中途半端な状態でした。興味関心があるリードだから訪問して欲しいと言われても、営業担当者は面倒に感じていたと思います。Marketoを導入して半年くらいで、このままではダメだと認識しました。

MA導入初期は、少額商材が対象で失敗となる

第2ステップは、営業と連携してスモールスタート&クイックウィンに取り組む

その後はどう取り組まれたのですか?

これまでのやり方ではだめだと認識したのが10月で、次年度の予算を考える時期に入っていました。そこで、ターゲット市場の攻略に向け、そのプロジェクトリーダーにMAを活用したしくみに連携してもらえないかとかけ合ったところ、ぜひ一緒にと言ってもらったのです。そうして、営業+マーケティングのプロジェクトが立ち上がりました。対象商材は、営業から要望を受けた2点です。1つは、主力商材、もう1つは戦略商材です。戦略商材は競合が先行していますが、当商材が揃うことで全て弊社の商材でソリューション提案ができるので、後発でも売っていかなくてはならないものです。知名度も低く、新規顧客獲得が必要とされています。営業も攻略を考えなければならない商材なので、MAをプラットフォームにしたキャンペーン展開等、乗ってくれるだろうと考えました。今回のプロジェクトメンバーは、営業部5名、営業推進部は私を含む3名の計8名体制でした。

ここからがデジタルマーケティングの本格展開ですね。

マルケト社のコンサルタントにプロセスマネジメントを教えていただき、営業と一緒にプロセス設計を行いました。まずはスモールスタート、クイックウィンの取り組みを行い、目標を超える成果数が出るようになりました。具体的には、まず展示会で獲得した名刺をベースにターゲットを決め、メールで育成し、どういう状態になれば営業がフォローするか、といった育成プロセスと施策、メールコンテンツを考え、スコアリングも含めた育成プログラムを立てました。週に一度はどんな施策を実施するかも固めて、一連の動きをショートスパンでやってみました。 社内報告の仕方も変えました。今まではこんな展示会で、こういう企画をやってと、定性的な報告しかしていなかったのを、プロセス別に数字で報告するようにしました。展示会名刺だけでなく、資料DLやセミナーなどマーケティング施策からの獲得顧客のターゲットを分母とし、メールの反応数、有望リード数、営業のアポイント数、商談数と率を報告するようにしました。上層部に対しては、どれだけ商談が出ているか、共通の視点で話ができる指標を持つことがポイントです。

第2ステップは、営業と連携してスモールスタート&クイックウィンに取り組む

第3ステップは、デジタルマーケティング全体の戦略策定とWebサイト強化

スモールスタート&クイックウィンから、次はどのような展開をされたのですか?

スモールスタート&クイックウィンの実績を活かし、翌年は様々な接点を設計し、Marketoをプラットフォームにしたデジタルマーケティングの推進にかかりました。これまでWebサイトをあまり活用できていなかったのですが、Webサイト、イベント、メールといった接点を営業活動に活かすことを考え、デジタルマーケティングの戦略策定に取り組みました。そこでパワー・インタラクティブにお世話になりました。パワー・インタラクティブにて、営業課題のヒアリング、競合比較、現状分析が実施され、主力商材と戦略商材の方向性が提示された報告書が、戦略のベースになっています。

具体的な動きを教えてください。

主力商材はアカウント営業担当に、戦略商材はエリア営業担当に入ってもらい、各商材のデジタルマーケティングの方向性を明確にしました。主力商材は他社に比べて技術情報が発信できていないことを指摘いただき、確かに既存のお客様にしか見てもらっていないWebサイトで、これでは新規顧客をどうやって獲得するのかということに改めて気づかされました。

主力商材は技術情報をブログで発信し、メールコンテンツとしても提供していきました。アカウント営業担当とも施策から一緒に考えて取り組んでいます。また、戦略商材はコンテンツを整備する中で、Webのアクセス解析を通じて改善できた点、できていない点をデータで把握し、次の施策に活かしています。Webサイトのログデータで様々なお客様との接点が見えてくるようになりました。上流の動きはGoogleアナリティクスで見て、リードの動きはMarketoで見る、というかたちで進めています。

両商材ともにWebサイトのコンテンツ整備やMarketoのフォーム改修等、顧客との接点の整備を行い、現在もパワー・インタラクティブの報告書を見返し、対応できていないことを一つずつ改善しています。

→ インタビュー後編 デジタルマーケティングを推進していく中で出てきた課題についてお聞きしています。

インタビュー後記

堀場エステック様の社是は、『おもしろおかしく(Joy&Fun)』。オフィス受付にも大きく掲げられています。 この社是には、「社会人が働く上で20代から60代という人生で一番いい時間を会社で過ごしているので、その時間を、おもしろおかしくしていくことで人生が豊かになる。」という創業者の堀場雅夫氏の思いが込められています。海外のホリバリアンには、『Joy and Fun』として浸透しているそうです。志知氏のお話では、「社外のお客様や仕入れ先から『おもしろおかしく』してもらうのではなく、社員自らが仕事を『おもしろおかしく』する、そう思いながら日々取り組んでいます。皆、この社是を気に入っています。」とのこと。志知氏が様々なハードルを乗り越えて、上司、営業を巻き込みながら粘り強くデジタルマーケティングを推進してきたプロセスは、まさに『おもしろおかしく』仕事に向き合っているホリバリアンの姿だと実感しました。
インタビュー実施日:2019年8月9日

広富 克子

取締役/執⾏役員

広富 克子

コンテンツマーケティング支援

神⼾⼤学経営学部卒業。住友ビジネスコンサルテイング株式会社⼊社。マーケティングリサーチ・コンサルティング業務を中⼼に活動し、その後AJS(オール⽇本スーパーマーケット協会)にて、プライベートブランドの商品開発・営業に従事。2003年10⽉、株式会社パワー・インタラクティブ⼊社。2006年4⽉、取締役執⾏役員に就任。全社営業戦略を統括する。

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