事例

「顧客データ活用」と「実装支援」でAdobe Marketo Engage活用を次ステージへ導く

大手医療機器メーカーのA社では、コロナ禍を機に2020年6月よりAdobe Marketo Engage(以下、Marketo)の国内運用がスタートしました。Marketoの運用を担当しているデジタルマーケティング部は、製品ごとのプロダクトマネージャーと横断的に連携を取りながら、全社マーケティング活動を推進しています。

本稿では、A社マーケティング部の担当者に、パワー・インタラクティブへAdobe Marketo Engageの活用支援を依頼した目的や成果について確認しました。

コロナ禍で対面営業が困難になる中、マーケティング部門と営業部門が一体となってリード獲得を推進

Marketoを導入した背景や目的を教えてください。

私たちデジタルマーケティング部は5名体制で、製品ごとの担当と横断的に連携を取りながら、ウェビナー企画や学会関連イベントの取りまとめ、資材制作と管理、ブランディング、社内外の広報活動、Webメンテナンスなど、マーケティング活動全般のマネジメント・提案を担っています。また、顧客データ分析に特化したチームとも横断的に連携して、一体となってマーケティング活動の推進を支援しています。Marketoの運用は私ともう1名で対応していますが、私自身は業務のうち3割程度しか関われておらず、実質1.5名体制で回している状況です。

Marketoの導入は、米国本社では2015年と早かったのですが、日本では2020年のコロナ禍になってからです。コロナ禍において、対面営業が難しくなったことで、継続的に情報提供する重要性が急速に高まり、マーケティング部門と営業部門が一体となってリード獲得を推進しました。その結果、導入当初は30件程度だったリードが、6年間で8,000件近くにまで増加しました。

導入当初は「マーケティングオートメーションは営業を減らすためのツールではないか」という誤解もありました。その誤解を払拭するために、私たちは犬のキャラクターを作り、営業チームに「これはあなたの忠犬となって顧客情報を集めてくれる尊い仲間だ」と伝え、最新のセールスツールであることを啓発しました。犬のぬいぐるみやコンペなどの社内キャンペーンも取り入れ、結果的に営業部の理解を得ることができました。

Marketoを導入して5年、手探り運用から顧客データ活用へ

Marketoの導入から現在までの活用状況について教えてください。

2020年導入当初は、マーケティングオートメーションの機能自体を手探りで学ぶ段階でした。メールマーケティングの経験がなかったため、タイトルや文量など、基本的な部分から学ぶ必要がありました。週1回程度のバッチ配信を回すのが精一杯で、Marketoの機能を十分に使いこなせていないことにもどかしさを感じていました。

また、ターゲットとなる医師やメディカルスタッフ(臨床工学技士等)の方々に必要な情報を的確に届ける難しさを感じていました。

2022年頃より外部パートナーの支援を本格化させ、3年ほど伴走支援を受けてきました。特にエンゲージメントプログラムの活用促進を進める中で、Marketo内のメールテンプレートにおける日本語対応の不具合やレイアウトの崩れなどの問題があり、それらの改善を支援してもらいました。

さらに次のステップとして、「顧客データの活用」に焦点を移していきました。エンゲージメントプログラムのクリック率などの数値的な成果は出てきた一方で、MQL(Marketing Qualified Lead)を定義し、営業への送客を進めることを重視するようになりました。そこで外部パートナーの見直しも行うことになりました。

Adobe Marketo Engateの活用推移

導入後時期 活用状況
1〜2年目 ・マーケティングオートメーションの機能を手探りで学ぶ
・タイトルや分量など、メールの基本を学ぶ
3〜5年目 ・エンゲージメントプログラムの活用促進
・外部パートナーの支援を本格化
6年目以降 ・「顧客データの活用」に焦点を当てる
MQLの営業送客を重視

「データ活用」と「実装支援」を両立できるワンストップパートナーとしてパワー・インタラクティブを選定

パワー・インタラクティブを選定いただいた理由を教えてください。

貴社を選定した一番の理由は、データ活用の知見を提供してもらえる点でした。さらに、実装支援も同時に依頼できる点が決め手となりました。他社はどちらか片方に特化しており、両方対応できるパートナーはほとんど存在していませんでした。

2つの会社に別々に依頼するのは管理が煩雑になるため、ワンストップで対応してもらえることは大きなメリットでした。

学会アンケートによる新規リード獲得とMQLレポートの自動化を実現

弊社と約1年取り組んできた中で、成果は出ていますか?

大きく2つの成果が出ています。

1) 学会アンケートからの新規ターゲットリード獲得
今年2月から開始した学会のアンケートは、イベントの評価に止まらずターゲットリードの獲得に拡張しました。きっかけは、貴社に実施してもらった「リードビジネスゲーム」研修です。リードビジネスゲームを通じて「チャネル連携の重要性」を認識し、「アンケートを実施してリードを取ろう」という発想が生まれました。1学会ごとに十数件、新規リードが安定して獲得できるようになりました。

学会で共催するランチョンセミナーでお弁当を配布する際にQRコードを案内してアンケートに誘導するという仕組みを導入しています。当初想定したいた以上に多くの回答を得ることができており、新規リードの獲得だけでなく、共催セミナーのコンテンツ評価も行えるようになりました。提供したセッションのテーマ、内容が良かったかどうか、分かりやすい内容であったかなど、顧客フィードバックも把握できています。準備作業には労力を要しますが、マーケティング活動の簡単なモニタリングができるという観点においても、導入して本当によかったと感じています。

2) MQLレポート作成の完全自動化
最初に相談したテーマの一つがMQLの活用でした。営業チームに共有するMQLのレポートをPower BIで作成するにあたり、データ抽出・出力の仕組みづくりを支援してもらいました。
以前、デジマケ担当が不在の期間が半年ほどあったため、データ更新が止まり、MQLデータを営業に渡す体制がうまく機能していない時期がありました。急ぎ体制を立て直す必要がありました。

Power BI用のデータ出力については、2024年4月に新任のデジマケ担当者が入社後、半年ほどかけてレポートを一から作り直し、Marketoから出力したデータをPower BIにインポートする仕組みを構築しました。まだまだ手作業でのレポート出力がある状況ではありますが、これにより、一部の作業においては、従来は数時間〜1日かかっていたレポート出力作業が、ボタン一つで10分以内に完了できるようになり、大幅な工数削減につながっています。

顧客データ活用で、MQLの営業活動連携へ

今後、Marketoはどのような活用をお考えですか?

MQLの定義は、製品ごとに細かく条件を設定しています。たとえば、注力している製品では、過去3カ月間に3回以上クリックしたかなどの条件を定め、フラグを立てる方式をとっています。スコアリングの仕組みではありませんが、複数条件をクリアすることでMQLと見なすルールを構築しています。

レポート上ではフラグが立っている状態ですが、そのデータを実際の営業活動にどのようにつなげるかという点が課題です。営業部門は約100人の体制で、一人ひとりが多くの複数製品を担当しています。主要な製品だけでも5種類程度を扱っており、製品の情報提供という活動において大きな負担となっています。営業担当者はその全ての知識を持って販売活動を行う必要があります。関心が高まっている顧客に効率よくアプローチするためには、顧客行動データの活用が営業活動の最適化に直結します。

コンテンツ過多の壁を越え、MQL直結型のエンゲージメントプログラムへ再構築

現在、エンゲージメントプログラムは2製品に加え、医師インタビュー記事の配信やクイズ形式コンテンツを含めた4本が稼働中です。

当初は製品ごとに月1回のニュースレター形式でまとめて配信していましたが、次第にコンテンツが長文化し、配信数も月10本近くに増加。2022年7月には月間1万クリックを記録しましたが、その後はクリック数が低下し、「メールを出し過ぎではないか」という声が上がるようになりました。

分析の結果、長いメールの後半はほとんどクリックされていないことが判明し、制作負荷と情報過多による悪循環が生じていたことが分かりました。コンテンツを増やしても逆効果だという認識が強まり、よりシンプルでエンゲージメント重視の配信に切り替える方針で見直しを進めています。

本来エンゲージメントプログラムはMQLにつなげることを目的としていますが、現状ではニーズ把握や具体的アクションへの誘導に結びついておらず、5月から新たにセグメントやシナリオを見直して改善を始めています。

パワー・インタラクティブの戦略的視点を評価、短期常駐型の実装支援も求む

パワー・インタラクティブの満足度を教えてください。

私たち現場では消化しきれない多くのタスクがある中で、貴社の戦略的な視点での支援が非常にありがたいです。目の前の業務に集中してしまいがちな状況下でも、第三者的な立場から本質的な提案を定期的に受けられることは貴重に感じています。

特に印象に残っているのは「リードビジネスゲーム」のワークショップで、マーケティング部全体にとっても気づきの多い機会となりました。また、定例ミーティングの中でKPIに関する提案や振り返りの機会が提供されている点も評価しています。

一方、実装支援においては、原稿・画像が事前に揃っていないと依頼しづらいため、指示を出すより自分でやった方が早いと、手を動かしてしまいがちです。できれば週1〜2日の常駐型支援で、急な依頼にも柔軟に対応してもらえるとありがたいです。

目指すは顧客データの高度活用と売上・受注貢献

今後の課題を教えてください。

今後のデジタルマーケティング部の最重要課題は、顧客データ活用のさらなる推進です。 Salesforceは導入済にて、Marketoとの連携による一気通貫したトラッキングを目標にしています。ただし、実現するにはグローバルITチーム巻き込みの大規模プロジェクトが必要であるため中長期的な取り組みになります。

最終的には、売上や受注に直結する戦略的なマーケティング部門としての立場を強化することが目標です。そのためにも、限られた人員で最大の成果を出せる効率的な体制を整える必要があります。

営業部門では「メール配信ならMarketoで」という認識が根付いており、Marketoが重要な情報提供ツールのひとつであると理解されています。積極的に活用されるような環境が構築できたことを非常に喜ばしく思う一方、営業部からの配信依頼が増加傾向にあるため、今後は業務の優先順位や役割の整理も必要であると感じています。

インタビュー実施日:2025年6月4日

担当コンサルタントの声

A社の皆さまとご一緒する中で特に印象的だったのは、マーケティング部門と営業部門が一体となってリード獲得やデータ活用に取り組まれている点です。学会アンケートのような新たな取り組みにも積極的で、営業チームからの協力やリード情報の継続的なメンテナンスが習慣化されている様子には、部門間連携の成熟度の高さを感じました。

また、Power BIをはじめとするダッシュボードの構築・運用からも、社内に高度なツール活用スキルがしっかりと根付いていることがうかがえます。今後は、こうした技術基盤やチーム連携をさらに活かし、施策が売上や受注にどう貢献しているかを可視化するフェーズへと一緒に進んでいきたいと思います。

山田 俊也

マーケティングコンサルタント

山田 俊也

マーケティング戦略策定

BtoB企業を中心に、マーケティング戦略設計から施策の実行までサポート。Marketo Engageを使ったコンサルティングの実績を多く持つ。
社外に向けた無料・有料セミナーの企画、講師も担当。のべ50回以上の登壇実績。Adobe社が提供するMarketo Core Concepts Ⅱの講師を勤める。
育児のための長期休暇を取得、仕事復帰後は子育て奮闘中。

担当コンサルタントの声

A社の皆さまとの取り組みで印象深かったのは、新しい知識や手法を即座に実践に移されるその実行力の高さです。「リードビジネスゲーム」研修後、すぐに学会アンケートをリード獲得の仕組みとして構築し、新たなリード獲得チャネルへと拡張された点には大変驚かされました。皆様の「まずやってみよう」という前向きな姿勢がこうした具体的な成功体験に繋がっているのだと感じました。

今後、「限られた人員で成果を最大化するための体制」や「業務の優先順位づけ」が重要になるなかで、弊社もA社の皆さまが単なる施策の実行部隊に止まらず、売上や受注に貢献する戦略的な部門へと進化するよう一緒に取り組んでいきたいと思います。

嘉山 翔大

マーケティングコンサルタント

嘉山 翔大

マーケティングオートメーション活用支援

事業会社でインサイドセールス、Adobe Marketo Engageの導入・定着・オペレーションを経験した後、パワー・インタラクティブに入社。BtoB企業を中心に、マーケティング戦略設計から施策の実行まで幅広くサポート。実務経験を生かしユーザー視点を持った顧客のニーズに応じた支援を行う。

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