事例

今あるデータとツールを軸に、データ活用方針を策定

国内外で幅広く物流事業を展開するA社。「データを有効活用し、売上拡大を実現したい」というビジョンを描きつつも、どのようなデータをどのように活用すればよいのか、具体的なイメージを持てずにいました。

パワー・インタラクティブは2024年1月より、同社のマーケティングデータ活用支援を開始。
現状の課題整理とデータ活用方針の策定を通じて、データ活用のあるべき姿、それを実現するための手段を明確にしました。

本稿では、A社の支援を担当したマーケティングコンサルタントの山田に、本プロジェクトの経緯や成果をインタビューした内容をまとめています。

データを活用して売上拡大につなげたい

―A社のマーケティング部門が抱えていた課題について教えてください。

A社のマーケティング部門および営業部門では売上拡大に向けて、商談機会の創出と商談成功率の向上を目指していました。限られたリソースでこの目標を達成する方法を模索するなか、浮かび上がってきた課題が「マーケティング・営業部門におけるデータ活用の推進」でした。

特にマーケティング部門の現場では「適切なマーケティング施策と実施のタイミングを商材別に導き出したい」「施策の成果を見える化したい」といった具体的なニーズも存在していました。

しかし、どのようなデータ環境があれば組織的にデータを活用できるのか、明確なイメージを持てずにいたそうです。また、データ管理やシステム構造の見直し方についても、専門的なアドバイスを必要としている状況でした。

データ活用のあるべき姿を一緒に作っていく提案を評価された

―A社が今回パワー・インタラクティブのサービスを選んだ決め手は何だったのでしょうか?

「データ活用のあるべき姿を一緒に作っていく」という提案の姿勢を評価していただきました。

A社は大企業ということもあり様々なツールを導入しており、データも各種ツールに分散しています。また、縦割りの組織構造になっているため、世間一般でいう適切なデータ環境をそのまま実装するのが難しいという問題を抱えていました。

パワー・インタラクティブにご相談いただいた際、複数社に相談していたと伺っています。複数社からデータ活用支援の提案を受けるなかで、パワー・インタラクティブが一番現場に寄り添った提案をしていると感じたとお伝えいただきました。

マーケティング部門のデータ活用に焦点をあてる

―A社のデータ活用推進に向けて、具体的にどのような提案をされたのでしょうか?

データ活用のフェーズを3段階に分けてご提案しました。

・フェーズ1:営業、マーケティングにおけるデータ活用のための企画設計
・フェーズ2:データ提供の準備、ダッシュボードの実装
・フェーズ3:ダッシュボードの運用開始、フィードバック・修正

―プロジェクト始動後、まずどのようなことに取り組んだのでしょうか?

本プロジェクトでは、まずA社の営業担当者・マーケティング担当者に対するヒアリングを実施しました。

【各担当者にヒアリングした内容】
・実施中の施策内容、レポーティング方法
・使用しているMA、CRMツール
・誰が、どのような目的で、いつどこでどのようなデータを見るのか
・どのようなデータがあれば施策の評価ができるか
・データを見た後にどのようなアクションを取るのか
・営業活動の助けとなるデータをマーケティング部門から共有するにはどのようなデータ構造・運用が必要なのか

営業部門・マーケティング部門のデータ活用状況およびデータの連携状況、現場が抱えている課題を聞き出すことで、どの業務プロセスにデータ活用の余地があるのかを探っていきました。

―ヒアリングの結果、どのようなことが分かりましたか?

ヒアリングを続けていくと、3つの問題が浮かび上がってきました。

・マーケティング部門の主な業務は施策の実行に関するもので、収集したデータから新たな施策を立案する改善プロセスは確立されていない
・ツールを導入していたものの、十分に活用できていない
・営業部門にマーケティングデータを受け渡すための導線が構築されていない

ご相談いただいた当初は、マーケティング・営業の両部門でのデータ活用を同時進行する想定でした。しかし、ヒアリングした内容をもとに検討した結果、まずはマーケティング部門でのデータ活用に焦点をあて、営業活動に役立つデータをスムーズに渡せる状態をつくる方が賢明との結論に至りました。

図表1:優先的にデータ活用を進めるプロセス

この判断には、大きく2つの背景があります。

・営業部門では、データ活用なしでも一定の活動がおこなわれており、すぐにデータ活用の効果を出すことが難しい状況にあった
・マーケティング部門の方がデータ活用のニーズが高く、適切なデータがあれば施策の改善に直結することが予想された

以上の理由から、まずはマーケティング部門でのデータ活用に注力し、そこで得られた知見やノウハウを営業部門に展開していくアプローチを選択しました。その方が限られたリソースを効果的に活用でき、全社的なデータ活用につなげられると考えたのです。

“今あるデータ”を軸とした活用方針を策定

―マーケティング部門との取り組みはどのように進めていったのでしょうか?

マーケティング部門でのデータ活用を進めるため、KPI設定に必要なデータ、データ連携に関するニーズ、理想的なダッシュボードについて改めて担当者にヒアリングしました。これにより、マーケティング部門におけるデータ活用の方針を探っていきました。

最終的なゴールは、ダッシュボードの効果的な運用となります。ただA社の場合、はじめから理想的なデータ分析環境を構築するのは難しい状況にありました。

そこで私たちは、今すでにあるデータやツールを最大限に活用し、段階的にデータ活用の範囲を広げていく方針を提案しました。提案した活用シーンのうち、4つの案についてはA社の合意を得られ、実行に移すことになりました。

【A社 マーケティング部門におけるデータ活用シーン】

・マーケティング施策の効果検証
MAとBIのデータを連携させることにより、施策ごとのマーケティングROIの可視化とアトリビューション分析を実行。ホットリードの創出・商談化・受注に貢献しているマーケティング施策の見える化を進める。

受注に貢献したと見なされるマーケティング施策の実施回数は増やし、受注貢献度の低い施策は内容を見直す流れをつくる。

図表2:効果検証ダッシュボードのモック

・企業全体の接点状況を確認し、営業部門との連携を強化する
まずは、すでに運用していた名刺管理ツールの「接点マップ(※)」機能の活用を進める。
企業の各部門 × 各職位との接点状況を確認できるデータを営業部門と共有することで、効果的なアプローチにつなげる。さらに、MA上のリード情報に「接点マップ」のURLを掲載し、リードがアクションを起こした時に配信されるアラートメール上でも顧客との接点を瞬時に確認できるようにする。

※自社と名刺交換相手企業との接点を部署・役職ごとに可視化し、関係性の深さを色の濃淡で示す機能

図表3:接点状況確認ダッシュボードのモック

・アクティビティを確認し、リードの興味、関心を把握する
BIに蓄積されたリードの行動履歴をCRMに連携させ、個人のアクティビティデータをまとめる。このデータを分析することで、リードが興味を持っている製品を把握する。また、MAにおける個人情報詳細ページの活用も進行する。

図表4:リードの興味・関心を可視化したダッシュボードのモック

・ターゲットの優先順位決定
製品紹介ページなど、特定のページにアクセスした企業をBI上に作成したリストにまとめる。リスト内に名前が掲載された企業の営業担当者に対して、アプローチの優先度を確認する。

図表5:優先順位を見える化するダッシュボードのモック

―データ活用方針とその具体案を提出した後、A社からはどのような反応がありましたか?

A社のご担当者からは「データ活用の道しるべを作成してもらったことで、マーケティングデータの活用プロセスや、どのようなデータを活用していくべきなのかが明確になった」「当社の状況に合わせて、今あるデータ活用から始める提案をしてくれたことがありがたかった」とのコメントをいただきました。

ロードマップを基に、データ活用の実装化へ

―今後、A社のプロジェクトをどのように進行する予定ですか?

A社のマーケティング部門では、策定したロードマップに基づいてダッシュボードの実装と運用定着が予定されています。

今後もデータマネジメントやダッシュボード構築、営業部門とのデータ連携に向けたサポートを継続していきます。データ活用の裾野を全社に広げ、データ活用の文化を根付かせていく伴走者として、引き続き支援を続けていきたいと考えています。

―A社のデータ活用レベルを底上げするために、どのような支援をおこなう予定ですか?

ダッシュボード実装後、「データを見てどのようなアクションを取るか」にも注目していきます。

現在は机上での情報整理を進めておりますが、実際にマーケティング部門がダッシュボードを運用するフェーズに入ると、様々な改善要望が発生すると予想されます。要望にあわせて都度改善しつつ、マーケティング部門でのデータ活用を業務に定着させていくことが、今後の支援の中心になると考えています。

―データ活用の社内浸透度やプロジェクトの進捗はどのような指標で評価していきますか?

ダッシュボードや名刺管理ツールなどのツールの利用回数、アクセス回数といった定量的な指標を用いて評価します。これらのデータを取得・分析することで、客観的な視点からデータ活用の進捗を把握する予定です。

また、データ活用の社内浸透度を測るためには、社員の満足度も重要な指標になると考えています。そこで、アンケート調査を定期的に実施し、社員の意識やニーズも確認します。

このように、定量データと定性データを総合的に評価することで、プロジェクトの進捗や社内浸透の度合いを多角的に評価していく方針です。ゴール設定については、一定の数値目標に到達した時点をもって一区切りとすることを検討しています。

―最後に、A社のデータ活用推進における今後の展望について教えてください。

A社は現在も、輸送部門やウェアハウス、ロジスティクス部門などの各拠点との情報共有において、電話やFAXといったアナログな手段に頼っているのが現状です。しかし、今後は本部以外の拠点でもデジタル化を進めていく段階に入ると考えられます。

A社とのコミュニケーションからは、データ活用をさらに進め、DXの実現まで目指す意向が感じられます。現在はまだアナログな業務も多く残っていますが、担当者の方々は着実にデジタライゼーションを推し進めています。

パワー・インタラクティブとしては、A社のこうした変革の流れを支援し、データ活用の文化を全社に根付かせていくことに貢献していきたいと考えています。変革の第一歩として、マーケティング部門のデータ活用を支援していきます。

担当コンサルタントの声

ダッシュボード構築以外にも、既存ツールの活用やCRMの項目追加など、データ活用における効果的なアプローチはお客様の状況によって変化します。今回のA社への支援を通じて、データ活用の選択肢の多様性を改めて実感しました。
プロジェクトでは、お客様の現状をヒアリングし、運用内容や課題を整理した上で、データ活用の具体的な提案をおこないました。その結果、次のステップにつなげられたと考えています。
これまでの取り組みにより、ダッシュボード実装フェーズに移る準備が整いました。今後、ダッシュボードをもとにデータ活用を定着させられるよう、引き続きサポートしていきます。

山田 俊也

マーケティングコンサルタント

山田 俊也

マーケティング戦略策定

BtoB企業を中心に、マーケティング戦略設計から施策の実行までサポート。Marketo Engageを使ったコンサルティングの実績を多く持つ。
社外に向けた無料・有料セミナーの企画、講師も担当。のべ50回以上の登壇実績。Adobe社が提供するMarketo Core Concepts Ⅱの講師を勤める。
育児のための長期休暇を取得、仕事復帰後は子育て奮闘中。

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