1935年の創業以来、電気計測器の研究開発・生産に取り組んでいる日置電機株式会社(以下、日置電機)。2020年にAdobe Marketo Engage(以下、Marketo)を導入し、デジタルマーケティングを推進しています。パワー・インタラクティブでは、Marketoの活用支援を含め、デジタルマーケティングの推進をサポートしてきました。現在自走を進める中、デジタルマーケティングを担うカスタマーコミュニケーションセンター(以下、カスタマーCC)と営業との連携が直近の課題となっています。
そこで、営業部門にマーケティングの必要性と効果的な展開を認識してもらうべく、全国の営業拠点長を集めてリードビジネスゲームを実施。拠点長がデジタルマーケティングを疑似体験することで理解と関心を高め、マーケティングと営業連携が促進されることを期待しました。
本稿は、リードビジネスゲームの研修を依頼した背景や成果などについて、日置電機の執行役員国内営業部長である渡辺氏と、カスタマーCC 係長の中島氏にお話を聞きました。
支援サービス:リードビジネスゲーム®
※「リードビジネスゲーム®」は、株式会社Nexalが開発したBtoBマーケティング実践プログラムです。パワー・インタラクティブはそのトレーニングパートナーを務めています。
渡辺氏:当社では2020年にMarketoを導入し、デジタルマーケティングを推進してきました。カスタマーCCが商談の見込みのある有望リードを作り現場の営業担当者に渡し、営業担当者がフォローして受注まで持っていく流れを作ろうとしているのですが、なかなかできていませんでした。原因の一つに営業のデジタルマーケティングへの理解が十分でないと見ています。現場の営業担当者だけではなく、責任者であるリーダーたちの意識も不足していたと思います。
私は昨年から現在の立場になりました。そのころからカスタマーCCと営業担当者との間に多少の距離感があると感じており、お互いのことを理解できるようになれば、よりスムーズに連携できるのではないかと考えていました。そんなときにリードビジネスゲームを中島から紹介され、貴社に依頼したという経緯です。
渡辺 学 氏
中島氏:Marketoを活用したメール配信などのデジタルマーケティングは、カスタマーCCが担っていますが、営業に渡す有望リードの質や確度は十分とは言えません。また、渡辺も言うように営業担当者の認識のばらつきが発生するのはマーケター共通の生身かと思います。たとえば、営業担当者に渡す有望リードであるMQL(Marketing Qualified Lead)について伝えても「MQL」の定義が曖昧な状態だったので、共通の体験などで意識を変えるきっかけがほしいと思っていました。そこでチームで受講したことがあるリードビジネスゲームを提案しました。
中島 寿行 氏
渡辺氏:私は2017年から2023年まで海外に駐在しており、2024年に国内営業部の責任者として帰国しました。カスタマーCC長も兼務しているので、マーケティングを重要視しています。取り組みを見ていると結構新しい取り組みをしているし、方向性は間違っていないと思います。方向性というのは、営業担当者は売ることに集中し、カスタマーCCがMA(マーケティングオートメーション)を活用してナーチャリングをしてホットリードを創出することです。営業担当者自身も案件を創出することは大事ですが、デジタルマーケティングによるサポートも加われば、効果は増していきます。今後はさらに、ウェビナーも進めていきたいと考えています。
こうした取り組みにより、新規顧客と既存顧客を含めて年間売上を10~ 20%上げていければと考えています。受注ベースでは約5%伸びているのですが、まだマーケティングの効果が計測できていない状況なので、中島を中心に整えていきたいです。
中島氏:効果計測については、小さい案件がリードとして数多く入ってきているので、1件ずつのフラグ立てができていません。今後は、いかにマーケティングが営業の案件に絡んでいるのかを明確にしたいと思っています。現在、リードのうち、10~ 15%くらいが商談につながっているはずです。商談から受注につながるのは、そのうちの半分くらいでしょうか。
渡辺氏:拠点によってマーケティング意識の差があることも課題の1つです。地域によっては、マーケティング活動をしなくてもお客さまが問い合わせてくれるところもあります。この意識の差を埋めていき、平準化していきたいと考えています。
そのために、まずは営業現場の担当者数名にカスタマーCCと一緒にリードビジネスゲームを受講してもらいました。受講した営業担当者の評価が高かったので、拠点長にも受けてもらった次第です。
拠点長もマーケティングを勉強する必要性は感じていたと思いますが、これまでその機会がありませんでした。リードビジネスゲームを受けることに後ろ向きな人はいませんでした。実際にリードビジネスゲームに参加している様子を見て、楽しそうに学んでいたので良かったと思います。
リードビジネスゲーム受講の様子
リードビジネスゲームの参加者
渡辺氏:数字面での成果が出てくるのは、これからだと思います。2025年の1月からMQLやSQL(Sales Qualified Lead)という用語を使ったリード件数の報告が、全社的に始まりました。リードビジネスゲームを実施したメンバーは、リードビジネスゲームを通じて用語の意味が理解できたので、全社的な取り組みにスムーズに入れたと思います。これから本格的にCRMも導入していきますので、まずはそのウオーミングアップになったのではないでしょうか。
私自身も、用語を使った会話ができるレベルにならなければと思っています。ただし、細かい部分はカスタマーCCのメンバーに任せています。
中島氏:リードビジネスゲームを体験したことで、拠点の年間販促計画「イベントスケジュールカレンダー」にメール配信が組み込まれたり、販売店との施策に共催ウェビナーがあったりと従来とは違う動きが出ています。既に本社で作成しているイベントスケジュールカレンダーには、展示会やウェビナー、新製品のリリース情報や、営業がローカルで動くイベント、会員サイトの動きなど、全てを網羅して掲載しています。また、製品軸と業界軸に分けて見えるようにされています。
これにより、全体のマーケティング計画が把握できるようになり、効率的な販促活動が実施できるようになりました。チームとしてどのような戦略を組んで、それを営業全体としてどう進めていくかを考えるようになったと思います。私自身もリードビジネスゲームを体験したあとに、イベントスケジュールカレンダーを作り始め、今は受講したメンバー全員で日々改修を続けています。リードビジネスゲームを体験すると、イベントスケジュールカレンダーを作りたくなりますね。
渡辺氏:全国の各拠点が月次報告を出してくれているのですが、その中にある「来月の施策」という項目に、マーケティング施策を書いてくれているケースが増えています。たとえば、お客さまの属性によって送るメールの種類を変えるとか、販売店向けのマーケティング施策を打っていくといったことが書かれるようになりました。自主的に書かれているので、リードビジネスゲームを体験したことでアイディアが出るようになったのだと思います。
中島氏:最近になって展示会への出展を提案されることが増えてきました。マーケティング活動では、リードを獲得し、ナーチャリングしてMQLを創出していますが、リードビジネスゲームによって、ターゲットとなるリード獲得が必要だという意識が芽生えたのだと思います。まずはリードの母数を増やさないとナーチャリングもできませんから。
渡辺氏:現在、CRMに加え、ERPのシステムを入れ替えているところです。組織変更の可能性もありますので、社内はバタバタしています。そうしたなかでDXを進めていくためには、マーケティングツールやマーケティング活動の重要性が増しています。
また、マーケティング人材も営業人材も足りていない状況です。そのため、営業担当者は付加価値の高い製品に特化して営業をおこない、仕様だけ見て販売できるような製品はECで売れたらと考えています。
リードビジネスゲームを体験した営業担当者は、まだ4名しかいません。これから若いメンバーも入社してきますので、ある程度営業の基礎が身についたら営業担当者全員にリードビジネスゲームを体験してもらうことも必要だと思っています。
中島氏:CRMが新しいシステムに変わることでMAと連携しやすくなり、ナーチャリングもいま以上にできるようになるはずです。今後はインサイドセールスの機能を明確化する必要があると思っています。
リードビジネスゲーム実施日 | 2024年11月27日 |
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開催場所 | 日置電機株式会社 横浜テクニカルセンター |
参加者 |
カスタマーコミュニケーションセンター長 小林 秀人 氏 国内営業本部 東日本SSH リーダー 原野 大輔 氏 国内営業本部 北関東SEO リーダー 飯嶋 英昭 氏 国内営業本部 長野本社SSH リーダー 山本 英行 氏 国内営業本部 長野支店 金沢オフィス オフィス長 宮坂 康一 氏 国内営業本部 静岡 SEO リーダー 金近 宏征 氏 国内営業本部 東海SSH リーダー 小池 智博 氏 国内営業本部 西日本SSH リーダー 広島SEOリーダー兼福岡SEOリーダー 坂田 健太郎 氏 国内営業本部 アカウントセールスフォースリーダー丸山さやか 氏 (オブザーバー参加) 執行役員 グローバル営業本部 国内営業部長 渡辺 学 氏 国内営業部 カスタマーコミュニケーションセンター 係長 中島 寿行 氏 |
担当トレーナー | パワー・インタラクティブ 久道 真之介 |
プロフィール
渡辺 学 氏
日置電機株式会社
執行役員 グローバル営業本部 国内営業部長 兼 カスタマーコミュニケーションセンター長
2006年に入社。大阪営業所、北関東営業所所長、HIOKI USAカリフォルニアオフィス、HIOKI Europe GmbH 社長を経て、現職に至る
プロフィール
中島 寿行 氏
日置電機株式会社
国内営業部 カスタマーコミュニケーションセンター 係長
2019年SFAの入替をきっかけに営業部門からマーケティングにジョブチェンジ
多品種少量生産のB2Bビジネスにおけるインサイドセールスの適正をメール配信ツールや高機能MAを活用しながら模索中。チームの成果と売上との関連性を見える化することが現在の課題。
インタビュー実施日:2025年2月14日
今回のリードビジネスゲームは、営業現場へのマーケティング理解の浸透と、部門間の連携を促進する重要な一歩となりました。特に拠点長の皆さまが主体的に販促計画を立て、マーケティング視点での提案を行うようになった変化は、社内の意識改革の大きな前進といえます。今後は、若手営業層への展開や、CRMの活用、インサイドセールス体制の検討も含め、さらなる営業・マーケティングの連携強化をご支援してまいります。
ソリューション第1部 部長
久道 真之介
マーケティング戦略策定
通信会社で法人向けの営業を8年経験。その後起業を経験し、2010年にパワー・インタラクティブに入社。Webサイト制作のディレクションからリスティングの運用、アクセスログの分析など現場での業務を経験し、現在はマーケティングコンサルタントとして、BtoB・BtoCのデジタルマーケティングの戦略立案から伴走支援までを行う。
2025.05.12
2025.05.12
2025.05.12