事例

スコアリングの見直しとリード獲得直後のアンケート活用で、MQLの量と質を改善

大手住宅メーカーA社では、Adobe Marketo Engage(以下、Marketo)を活用したリード育成に取り組み、毎週1,500件ほどのMQL創出につなげていました。しかし、市況環境の変化の影響もあり、次第にその数は1,000件まで減少。営業部門への送客を増やすための改善が必要な状況でした。

パワー・インタラクティブは、A社のデータ分析に基づくスコアリングの見直しと、リード獲得直後のアンケート活用を支援しました。その結果、MQLの創出数は約2.5倍にまで増加。さらに、新規リードに送るアンケートの回答者数も4倍に拡大させることに成功しました。

本稿では、A社の支援を担当したパワー・インタラクティブの砂に、支援の流れや具体的な改善内容についてインタビューした内容をまとめています。

MQL創出数の向上と営業部門に提供する情報の充実化が課題

図表1:改善策選定の経緯

—A社が抱えていた課題についてお聞かせください。

A社では、MAを活用してリードの行動を追跡し、ホットリードを営業部門に提供しています。

支援開始前、A社ではすでにMAとSFAを連携させることで、Webサイトでの閲覧履歴や商品カテゴリーへの関心度など、見込み客の行動データを営業活動に活かせる仕組みを構築していました。また、営業担当者へのリードの割り当てが適切におこなわれていたこともあり、見込み顧客が新たなアクションを起こしたという情報を伝えると、すぐに対応してもらえる良好な連携体制も築けていました。

しかし、提供できるリードの数は徐々に減少し、毎週1,500件ほどあったリード提供数は支援開始時点で1,000件程度にまで落ち込んでいました。また、定期的に実施している営業部門へのアンケートからは「商品の具体的な関心事項」「資料請求後の行動履歴」「他社展示場への来場有無」といった、より詳細な顧客情報を求める声も挙がっていました。

そこで同社のマーケティング部門は、さらに営業部門への貢献度を高めるべく、MQL数の回復と、提供する情報の充実化に向けた改善に乗り出しました。

顧客データの分析をもとに、スコアリングルールを見直し

—具体的な改善施策について教えてください。

MQLを増やすための取り組みは、大きく分けて以下3つのステップで進めています。

1.行動データの分析に基づくスコアリングルールの見直し
2.リード獲得直後のアンケート対象の拡大
3.アンケート回答に基づくステップメールの設計

このように、まずはスコアリングルールの見直しから着手し、段階的に施策を展開しています。

—スコアリングルールの見直しは、どのように進めていったのでしょうか?

まず、従来のMA運用チームとは別に、顧客データの分析に特化したプロジェクトチームを立ち上げました。このチームでは、営業対応履歴や顧客属性など、社内に蓄積したさまざまなデータの分析を進めました。その際に注目したのは、申し込みに至った顧客とそうでない顧客の行動パターンの違いです。

分析の結果、「特定のページの閲覧回数」と「申し込み確率」の間に強い相関関係があることが判明しました。たとえば、展示場のページを複数回閲覧している顧客は、申し込みにつながりやすい傾向が見られたのです。

この発見から、A社ではスコアリングルールを見直すことに。従来のルールでは「ページを閲覧したら1点」というような単純な加算方法を採用していましたが、改定後は「10ページ以上閲覧したらさらに10点を追加」といったように、閲覧回数に応じた追加点の仕組みを取り入れました。

図表2:顧客データをもとにしたスコアリングルールの見直し

—MQLの連携については、どのような工夫をされましたか?

A社では、スコアや閲覧したページなどの参考情報をSFAに自動連係し、営業担当者がSFAの画面上で見込み顧客の行動データを確認できる環境を整えていました。

マーケティング部門では、見込み客の行動データからスコアを算出し、営業フォロー対象となる「ランクアップ」基準である200点に達しているかを週に1回判定しています。SFAにはランク判定のあと、週1回手運用で反映していました。そのため、顧客の行動データはリアルタイムで取得できるにもかかわらず、最新の情報を営業活動に活かせない状況が続いていました。

そこで、A社はスコアを日次で更新する仕組みを導入。ランクアップの判定頻度は週1回のままとしつつ、営業担当者が気になる見込み顧客の最新の動きを随時確認できるようにしました。

図表3:営業部門の意見をもとにしたスコア反映の見直し

—営業部門は日次の情報をどのように活用しているのでしょうか?

SFAの「MA情報」タブでは、見込み顧客のページ閲覧回数や閲覧日時がリアルタイムで把握できるようになりました。営業担当者はこれらの情報を事前に確認し、それぞれの顧客の関心に合わせたアプローチを実現しています。たとえばアフターサービスのページをまだ閲覧していない顧客には重点的な説明を心がけ、間取りシミュレーターを頻繁に利用している顧客には具体的なプラン提案を用意するといったように、行動履歴を効果的な営業活動へとつなげていきました。

また、一度アプローチしたものの商談に至らなかった顧客が、再びサイトを閲覧し始めたことにいち早く気づけるようになったことで、適切なタイミングでの再アプローチも可能になりました。

顧客アンケートの実施により、ニーズに合わせたアプローチを実現

—次に、リード獲得直後のアンケート対象の拡大について伺いたいのですが、まずはA社のリード獲得経路について教えていただけますか?

A社の主なリード獲得経路は主に以下4つです。

1.住宅展示場への来場
2.住宅情報ポータルサイトでのカタログ請求
3.自社サイトでのカタログ請求
4.自社サイトでの間取りシミュレーション利用

このうち住宅展示場へ来場する顧客は、具体的な検討段階に入っているケースが多く、実際に住宅を見学し、営業担当者と直接対話するため、最も確度が高いといえます。

一方、住宅情報ポータルサイトでカタログを請求した顧客は、まだ検討の初期段階である可能性が高いものの、一定の関心は抱いていると判断できます。

また、自社サイトには2パターンの経路がありますが、特に間取りシミュレーターの利用者は、より具体的な検討段階に入っている可能性が高く、重要なリードソースとなっています。

—アンケートの実施対象はどのように拡大したのでしょうか?

これまでは展示場来場者のみを対象に「展示場に来た感想」「さらに知りたい情報」などの質問を含む5~6問程度の短いアンケートを実施していました。この仕組みを、先ほど紹介した他の3つの経路にも展開しました。

質問の設計については、それぞれのリード獲得経路に合わせて変化をつけました。たとえば、共通項目である「さらに知りたい情報」に加えて、間取りシミュレーター利用者には「シミュレーターの使いやすさ」を、ポータルサイトからの資料請求者には「資料の分かりやすさ」を尋ねるようにしました。

—アンケート結果はどのように活用されているのでしょうか?

アンケートへの回答内容はすべてSFAに反映され、営業担当者がリアルタイムで確認できるようにしています。回答内容からは顧客が関心や不安を抱いているポイントが具体的に読み取れるため、営業担当者は初回のアプローチからよりニーズに合わせた会話ができるようになりました。

特にアンケートにポジティブな回答をした顧客は商談につながりやすい傾向があることから、アンケート結果は優先的なフォローの判断材料としても活用されています。

図表4:アンケート対象の拡大によってフォローの事前情報収集を強化

MQLの創出数は2倍以上に。今後はステップメール配信でさらなる改善をめざす

—改善に向けた取り組みによってどのような成果がありましたか?

スコアリングの見直しにより、MQL創出数は1,000件程度から3,000件へと増加しました。当初は「数を増やすことで質が低下するのではないか」という懸念もありましたが、データ分析に基づいたスコアリングの再設計が上手くいったことで、そうした問題は起きませんでした。

また、ひと月あたりのアンケート回答者数は4~5倍に増加し、より多くの見込み顧客から意見や感想、検討状況の情報を集められるようになりました。

図表5:MQL数とアンケート回答者数の変化

営業部門のメンバーからは「顧客の検討状況がより明確に把握できるようになった」という声が届いているようです。

—今後はどのような展開を計画されていますか?

現在は、アンケートの回答内容に応じたステップメールの配信を計画しています。それに向けて、まずは基本となるコンテンツを8種類用意しました。

たとえば、展示場の感想が良好で、構造材について詳しく知りたいという顧客には、構造材に関する情報を優先的に提供します。一方、展示場の説明がわかりにくかったという顧客には、基礎的な情報から丁寧に説明したコンテンツを用意するといったように、見込み顧客一人ひとりの関心事項や検討状態に応じた情報提供をめざします。

こうした取り組みによって、今後も引き続き潜在的な顧客ニーズを引き出しながら、MQLの量と質を伸ばしていきたいです。

担当コンサルタントの声

MAを活用したリード育成において最も重要なのは、リード状況を示すデータや数値を継続的にモニタリングすることです。A社では週次でMQL提供数を記録・分析していたからこそ、減少傾向にいち早く気づき、適切な改善策を講じることができました。

また、定期的な営業部門へのアンケートを通じて、現場の声を収集していたことも成功要因の一つです。営業担当者が商談前にどのようにリード情報を確認し、活用するかを意識した施策立案ができたことで、営業活動に直結する改善を実現できました。今回の取り組みは、データに基づく改善と現場の声の両方を大切にすることの重要性を改めて示す機会となりました。

砂 智久

執行役員

砂 智久

マーケティング戦略策定

2000年からWebマーケティング、リードナーチャリングの支援に従事。ネットサービスの立ち上げやデータベースマーケティングのアウトソース、BtoB大規模サイトの運営などを経験。パワー・インタラクティブ入社後は、Marketo支援、マーケティング代行などのサービス開発を推進。

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