生成AIによるマーケティングデータ分析の民主化
パワー・インタラクティブ マーケティング推進室(文責)
現在のビジネス環境において、マーケティングデータの有効活用は企業の競争力を高めるための不可欠な要素となっています。一方、社内に分散しているデータのサイロ化、多様なクラウドシステムの連携に苦労している企業が多いのが現状です。顧客データを集約し、マーケティング施策の効果を速やかに分析、可視化できる環境を整えることで、リアルタイムで適切な施策を打てるようになります。
2024年9月4日、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社でパートナーエンジニアリングを務める水野智也氏、CData Software Japan合同会社でリードエンジニアを務める杉本和也氏を招き、『 データ統合からインサイトへ 生成AIとクラウドを駆使したマーケティングの最適化 』をテーマにしたセミナーを開催しました。
本コラムでは、3社共同で解説した内容をまとめています。
BtoBマーケティングにおけるデータマネジメントの重要性
マーケティングにおけるデータ活用の重要性は高まる一方、多くの企業ではデータを十分に活用できていない現状があります。各種ツールにデータが散在しており、各施策がマーケティング活動全体にどのように影響したのかが分からず、ミクロ視点の分析に終始してしまうことがあります。そのような状況を打破するためには、データを集約し、管理する”データマネジメント”が必要不可欠です。
マーケティング領域においてもAIの活用は喫緊の課題となっています。AIはもととなるデータが適切に管理されていることを前提として、高い効果を発揮します。マーケティングにおいてAIを活用するためにも、データマネジメントが重要とされています。
マーケティングのデータ活用における問題
マーケティングにおけるデータ活用には、大きく分けて以下2つの問題があります。
・各種ツールにデータが散在しており、組み合わせて分析できない
・レポート作成者ごとに分析ロジックが異なり意思決定に活用できない
各種ツールにデータが散在しており、組み合わせて分析できない
マーケティングはアクセスログツールやMA、営業・カスタマーサクセスはSFA/CRMというように、各部門はそれぞれの業務に即したツールを使用しています。
このように利用しているツールが異なり、それらを連携できていない状況では、全体像を俯瞰して把握することが難しくなってしまいます。
たとえば、マーケティングが獲得した特定のリードがどのような経緯で成約に至ったのか、そのリードがどの程度の収益に繋がっているのかを俯瞰して分析することは困難です。こうした状況では、ビジネスの状況を正しく把握できず、適切に意思決定することが難しくなります。
レポート作成者ごとに分析ロジックが異なり意思決定に活用できない
何らかの分析をする際、レポート作成者ごとに分析ロジックが異なり、意思決定の参考にならないという問題もあります。
各担当者が自分の伝えたいことに基づいてデータを選定して使用するため、同じデータソースをもとに分析しても結果が一貫しないことがあります。このような状況では、経営層やマネージャーは提出されたレポートを信用できず、意思決定の参考にできなくなってしまいます。
このような問題を解決するためには、部門または全社で共通の分析ロジックを取り入れる必要があります。
散在しているマーケティングデータを集約する方法
データマネジメントの重要性が高まるなか、マーケティングデータの統合が課題となっています。散在しているデータを集約する方法は主に2つあります。
APIによる連携
API(Application Programming Interface)を活用することで、異なるツール間でデータを連携することはできます。
しかし、APIは「ボタン一つで簡単にできるもの」といった誤解をされていることが多くあります。API連携において、以下の工程はエンジニアが個別に開発する必要があります。
・データのテーブル化
・適切なクエリの実装
・連携先APIへのアクセス
・連携先へのマッピング
・連携ジョブの起動
API開発には高度なシステム理解が必要なうえ、一つのミスがデータの正確性を大きく毀損するリスクもあります。そのため、個別にAPI開発することが必ずしも最善策とは言えません。
ETL/ELTツールによる連携
マーケティングデータを集約する手段として、ETL/ELTツールが挙げられます。
ツール間のデータ連携においてAPIは有効な手段ですが、高度なスキルが必要で、一つの設計ミスがデータの正確性を毀損するという懸念があります。
ETL/ELTツールはデータ連携を専門としたツールで、その正確性が担保されています。また、簡単にデータ連携を実現できるため、非エンジニアでも簡単にデータを集約できます。
ソースデータの正確性、リアルタイム性が求められる生成AI時代において、ETL/ELTツールは有効な選択肢と言えます。
Lookerを活用することで実現できること
グーグル・クラウド・ジャパン社が提供する『Looker 』は、マーケティングデータを活用した意思決定に役立ちます。Lookerには以下4つの特徴があります。
1.No データアップロード
データは直接データウェアハウス(BigQuery)から参照され、Looker内に複製されないため、最新のデータをそのまま活用できる
2.データ定義の統一(セマンティックレイヤー)
全社共通のデータ定義を確立。分析の一貫性が保たれ、異なる部門や担当者が同じデータセットから異なる結論を導き出すリスクを排除する
3.既存ワークフローへの組み込み(Action)
分析したデータをそのままGoogle広告など他のシステムに連携し、即座に施策を実行できる
4.生成AIとの組み合わせ(拡張機能)
生成AIとの連携により、データから自動的にインサイトを抽出したり、自然言語でのクエリを作成できる
Lookerを活用することで、実現できる3つのことを詳しく解説します。
共通ロジックでの分析による意思決定精度の向上
マーケティングデータを活用した意思決定の精度を高めるには、分析の一貫性が欠かせません。この課題を解決するのが、Lookerの『セマンティックレイヤー』という機能です。
セマンティックレイヤーは、分析のロジックを一元管理する仕組みで、組織内のすべてのユーザーが同じロジックに基づいて分析できるようにします。
たとえば、マーケティング担当者がLookerを使って分析する際、セマンティックレイヤーに基づく共通のロジックが自動的に適用されるため、誰が分析しても同じ結果が得られます。これにより、レポート作成者によって分析結果のばらつきが生じるリスクが排除され、信頼に値するデータをもとに意思決定できるようになります。
自然言語での分析
Lookerは、拡張機能でGeminiと連携すると、自然言語で分析を指示できる機能を搭載しています。SQLなどのデータに関する専門的なスキルを持たない人でも、BigQueryのデータをもとにした分析を簡単にできるようになっています。
たとえば、「ブランドXのロイヤルカスタマーリストを出して」と自然言語で入力するだけで、Lookerはセマンティックレイヤーを基にデータを解釈し、SQLを自動生成して適切なクエリを実行します。
自然言語で指示できることで、エンジニアに依頼せず、意思決定者やマーケティング担当者が直接分析結果を抽出できます。これにより改善サイクルが格段に早く回るようになり、マーケティング部門全体の生産性向上に繋げられます。
AIを活用したインサイト発掘
LookerはGeminiと連携することで、データからインサイトを発掘し、提示してくれます。
Looker上のダッシュボードにビジュアライズされたデータは、見る人が仮説を持っていないとインサイトや次のアクションを導き出すことが難しい場合があります。そこで、Geminiと連携したLookerを活用することで、データの文脈を理解し、自動的にそのデータが示す傾向や潜在的な問題点を要約・提示してくれます。具体的には、「売上の減少要因」や「特定のキャンペーンが他と比べて優れている理由」といった分析結果をAIが自動的に抽出し、意思決定者に提供します。
マーケティング・データマネジメント推進支援サービス
ここまで解説したように、マーケティング成果を挙げていくうえで生成AIの活用は喫緊の課題となっています。そして、生成AIが力を発揮するためには、もととなるデータのマネジメントが必要不可欠です。
パワー・インタラクティブは、マーケティング・データマネジメント推進支援サービスを通じて、マーケティングデータ基盤の構築を支援しています。
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