Looker Studioを利用してGoogleスプレッドシートのデータを可視化する
マーケティングデータアナリスト
八木 耕祐(文責)
はじめに
Looker StudioはGoogleが提供している無料のBIツールです。直観的なマウス操作で、見やすく分かりやすいマーケティングダッシュボードを構築できます。GA4をはじめとした様々なデータソースへの接続が可能であり、オンラインで共同編集者を立てて編集ができるGoogleスプレッドシートのデータを参照して、可視化に利用することも可能です。
本コラムでは、GoogleスプレッドシートのデータをLooker Studioで可視化するためのデータ作成の注意点や、データの接続方法について解説します。
各部門が管理している様々なデータをGoogleスプレッドシートに統合し、Looker Studioを活用したダッシュボード化により、部門間のコミュニケーションを活性化させるために活用いただけると幸いです。
本コラムでご紹介するLooker StudioからGoogleスプレッドシートへの接続方法は、Google公式ヘルプにも同様の記載があります。
合わせて参照ください。
Looker Studio と Googleスプレッドシートを連携するメリット
Looker StudioとGoogleスプレッドシートを連携することで、以下のようなメリットを得ることができます。
1.無料で利用可能
Looker StudioとGoogleスプレッドシートはどちらも無料で利用できるため、初期コストをかけずにデータの可視化を始めることができます。オフラインで管理しているExcelデータをGoogleスプレッドシートに集約することで、スモールスタートで可視化を実現することができます。
2.コネクタがないデータソースを代替
Looker Studioでは様々なコネクタが提供されていますが、無料で提供されているコネクタの多くはサードパーティーサービスに接続することはできません。
そこで、サードパーティーサービスの管理画面からCSVエクスポートしたデータをGoogleスプレッドシートに集約することで、Looker Studioからサードパーティーサービスのデータを参照することができます。
3.共同編集者を立ててオンラインでデータ編集が可能
Googleスプレッドシートは共同編集者を立てることができます。この機能を利用することで、複数のメンバーが同じシートにデータを入力・編集できます。各部門のKPI値や進捗を日次で更新し、Looke Studioで統合的に可視化することができます。
4.柔軟なデータ整形が可能
普段利用しているMA(マーケティングオートメーション)やSFA(セールスフォースオートメーション)のフィールドを追加・編集するには様々な障壁がありますが、Googleスプレッドシートはシート上で簡単にデータを編集・整形(計算式、並び替え、条件に応じた入力)ができ、編集したデータをそのままLooker Studioから参照することができます。
Looker Studio と Googleスプレッドシート連携 ユースケースのご紹介
「収益貢献の可視化」をテーマにしたユースケースを2つ紹介します。
各部門のKPIの統合による収益プロセスの可視化
多くの企業では、マーケティング部門、営業(インサイドセールス)部門、カスタマーサクセス部門など、各部門が独自のKPIを管理しています。これらのデータが個別に管理されている場合、収益プロセス全体を網羅的に把握することが難しくなります。
そこで、KPI運用フローとして各部門がKPI値をGoogleスプレッドシートに統合し、Looker Studioで可視化をおこなうことで、共通の指標を活用して現状を把握することができます。また、他部門の動きも確認することができるため、組織としての活性化も期待できます。
KPI例
・マーケティング部門:獲得チャネル毎のリード獲得数、MQL数、MQL転換率
・営業部門:商談ステージごとの進捗(金額、確度)、商談から受注までのコンバージョン率
・カスタマーサクセス部門:NPS(Net Promoter Score)、CSのフォロー状況、企業・顧客ごとのライフタイムバリュー(LTV)、アップセル・クロスセルの件数・金額
複数代理店・媒体の広告出稿結果の統合による広告費用対効果の可視化
広告出稿に力を入れており、複数の代理店が複数の媒体に出稿している場合、共有されるレポートやデータの形式が統一されていないことが一般的です。この状態では、広告費用対効果や総合的な成果の把握には、データの加工に多くの時間を要します。
そこで、各代理店から共有されるデータの入力ルールを、事前に整理したGoogleスプレッドシートの形式で固定することで、データの加工にかかる時間を削減することができます。また、データの形式が統一されているため、Looker Studio上でGA4のデータと結合し、広告運用の最適化を実現することができます。
具体的なデータ例
・各媒体・キャンペーン・グループの広告費用
・各媒体・キャンペーン・グループのインプレッション数、クリック数
・各媒体・キャンペーン・グループのコンバージョン数
・各媒体・キャンペーン・グループの名称とUTMパラメータのマスター
Googleスプレッドシートを Looker Studio に接続する手順
本章ではGoogleスプレッドシートのシートに入力したデータを、Looker Studioから参照するための具体的な手順について解説します。
前提条件
Googleスプレッドシートでデータを準備する際に、いくつかの前提条件があります。以下の前提条件を満たすことで、データが正しく読み込まれ、スムーズな可視化が可能になります。
1.縦形式の表データとする:
データは縦方向に構造化されている必要があります。行がレコード、列が属性(フィールド)を表す形式が基本です。
2.1行目を見出し名の行とする:
データの1行目には必ず見出し(列名)名を設定してください。これにより、Looker Studioから参照先を選択する際に、フィールドとして自動的に認識されます。
3.セルの結合はNG:
セルを結合すると、データの読み込みが正しく行えなくなります。すべてのセルは結合せずに使用してください。
4.列内のセルはすべて同じデータ型(タイプ)とする:
同じ列内のセルは、同じデータタイプ(例:日付、テキスト、数値など)を揃える必要があります。異なるデータタイプが混在していると、エラーや予期しない挙動が発生する可能性があります。
5.1シート内で同じ見出しは使わない:
1つのシート内で重複する見出し名を利用すると、Looker Studioで正確に認識されません。
6.接続後に見出し名が変更されると再接続が必要:
シート内の見出し名を変更すると、Looke Studioとの接続が切れる可能性があります。変更が必要な場合は、Looker Studioから再接続が必要になります。
7.データの更新頻度を選択可能:
Looker Studioでは、データの同期頻度を「15分」「1時間」「4時間」「12時間」から選択できます。必要な更新頻度を考慮して設定してください。
接続手順
以下4ステップで、Looker StudioからGoogleスプレッドシートを参照することが可能です。
参照先のスプレッドシートは以下です。必要に応じてコピーして接続してください。
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1GjmCFh6bALt-CoGDz4gfc8YoasmxAY-21NYP22epAiI/edit?usp=sharing
1.新しいレポートの作成
Looker StudioのTOPページ(https://lookerstudio.google.com/u/0/navigation/reporting)へ遷移後、『空のレポート』をクリックして、Googleスプレッドシートを参照するためのレポートを作成します。既存のレポートからGoogleスプレッドシートのデータを参照する場合は、ステップ1は飛ばしてください。

2.データソースとして「Googleスプレッドシート」を選択
空のレポートを作成すると、レポート下部からデータの接続先を選択する画面が表示されます。本コラムではGoogleスプレッドシートと接続するため、『Google スプレッドシート』をクリックしてください。

既存のレポートからGoogleスプレッドシートのデータを参照する場合は、レポートヘッダーの『データを追加』をクリックすることで、上記のGoogleスプレッドシートと接続する為の画面が表示されます。

3.スプレッドシートから必要なデータ範囲を選択
スプレッドシート名 > ワークシート名の順番で、参照するシートを選択します。
シートの1行目に見出し名を入れていない場合は、参照するセル範囲を選択する必要があります。オプション列の『特定の範囲を含める』にチェックを入れて、範囲を選択してください。
選択後、『追加』をクリックして接続を確立してください。

4.接続を確立し、データを確認
ステップ3で該当のLooker StudioからGoogleスプレッドシートのシートを参照することが可能になります。
チャートを配置し、データソースに追加したGoogleスプレッドシートを選択してください。
Googleスプレッドシート内にはない「CTR」や「CPA」などの指標は、フィールドを追加してください。

よくある課題とその解決方法
GoogleスプレッドシートをLooker Studioで参照する際に発生する課題と解決方法についてご紹介します。
Googleスプレッドシートのセル上限
課題
Googleスプレッドシートは1シートあたり1000万セルの制限があります。この制限に達すると、新しいデータを追加できなくなり、データ分析や共有が難しくなります。
解決方法
・データを分割:
大規模データはシートを複数に分割して管理するか、必要なデータのみを保持してください。
・BigQueryに移行:
Googleスプレッドシートの制限を超えるデータは、BigQueryなどのデータウェアハウス(DWH)に移行することで効率的に管理できます。Looker StudioはBigQueryのコネクタを提供しているため、容易に接続を実現できます。
日付データ形式の統一
課題
Looker StudioからGoogleスプレッドシートへ接続した際、日付型のフィールドでエラーが発生することがあります。原因の多くは、データの入力形式によるものです。その他の理由として、Googleスプレッドシート内の日付データ形式が統一されていない場合、分析時にエラーや不整合が発生します。これらの場合に正確なレポートが作成できません。
解決方法
・標準形式の設定:
Googleスプレッドシートのセル形式を「日付」に設定し、YYYY-MM-DD(例:2025-01-01)の形式にしてください。
・データのクリーニング:
例えば『2025/01/01』がセルAにあるとき、「=TEXT」関数を使用し「=TEXT(A1, "yyyy-mm-dd")」と変換して、不揃いな日付データを統一してください。
終わりに
本コラムでは、Looker StudioからGoogleスプレッドシートを参照するための具体的な方法について解説しました。
Googleスプレッドシートは、共同編集者を立ててオンラインでデータ編集が可能なため、データ統合と可視化の第1歩として活用することが可能です。
Googleスプレッドシートを利用する際は、前提事項や制限事項に注意しながら利用してください。

マーケティングデータアナリスト
八木 耕祐
Web行動履歴やアプリデータによる顧客行動分析
アナリストとして、50社のアクセスログ分析に携わる。現在は、データ設計、データマート構築などの基盤づくりから、ダッシュボード作成、分析まで、データ活用を極めている。セミナー登壇は50回以上、満足度90%以上のセミナーも多数。
リモートワークになり、海の近くでマリンスポーツをエンジョイ中。