2025年はAIエージェント元年!「DeepResearch」で理解する今年のAIトレンドとは?
はじめに:2025年はAIエージェント元年
「生成AI」という言葉が私たちの耳に入ってきたのは、2022年末~2023年はじめごろからでした。特にChatGPTをはじめとする対話型AIによって、文章作成やアイデア出しが一気に効率化し、ビジネスシーンでも「とにかくAIを使ってみよう!」という風潮が広がりました。マーケターの皆さんの中にも、広告コピーやメール文章の下書きをChatGPTに任せた方は多いのではないでしょうか。
ところが、数年経った今、生成AIの新しい流れとして「AIエージェント」というワードが注目されています。単に会話や文章生成をするだけでなく、自律的にタスクをこなしてくれるAIが本格化しつつあるのです。
「ChatGPTは使っているけど、“AIエージェント”は何が違うの?」
「今度のセミナーで取り上げるって言われたけど、まだよくわからない……」
そんな声が多く聞こえてきます。
本記事では、従来の生成AIとの違いを押さえながら、2025年が“AIエージェント元年”と呼ばれる理由を深掘りしてみます。今後マーケターが押さえておくべきポイントや、エージェントを活用するための最初の一歩も紹介しますので、ぜひセミナー前の予習としてご活用ください。
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そもそも「AIエージェント」とは何か?
学術界・研究の定義
「エージェント(agent)」という言葉自体は、AIに限らず古くから使われてきました。学術的には、イギリスの研究者マイケル・ウールドリッジ(Michael Wooldridge)などが「環境を認識し、自律的に行動して目標を達成するシステム」と定義しています。AI分野の定番テキストである『Artificial Intelligence: A Modern Approach』(Stuart Russell & Peter Norvig)でも、知的エージェントは「与えられた目的やゴールに向かって、自主的にアクションを取り続けるもの」と説明されています。
研究の世界ではこれを「インテリジェント・エージェント」と呼び、
観測(Perception) → 判断(Decision) → 行動(Action)
の一連のプロセスを自動化しようとする試みがずっと続いてきました。
ただし、過去のエージェント研究では「囲碁を打つAI」や「飛行制御システム」など特定のタスクに特化したものが多かったのが現実です。
LLMサービスとの違い
一方、現在ビジネスでよく使われるチャット型のLLMサービス(ChatGPTなど)は、ユーザーが「質問」や「指示(プロンプト)」を入力し、それに対して応答する仕組みです。確かに“会話”はできるものの、多くの場合はユーザーからの入力がないと積極的に動かないという特徴があります。
これに対し、「AIエージェント」と呼ばれるシステムは、チャット応答だけにとどまらず、自分からタスクを遂行するための行動を起こすところに特徴があります。たとえば「調べものをしてレポートをまとめて」「必要なデータを抽出して表にして」「そのままメール送信しておいて」といった一連の流れを、ユーザーがいちいち操作しなくてもAI自身が判断して、必要に応じて自身で修正しながら実行します。
外部のAPIを呼び出し、必要に応じて計画を立てながらタスクをこなす――これがエージェント型AIの大きなポイントと言えるでしょう。

ビジネス視点での“エージェント”
ビジネス現場では、「自律的に業務を補助・代替してくれるデジタル労働者」のように考えるとわかりやすいかもしれません。
マーケティング部門であれば、AIが自分の代わりに競合調査→データ分析→レポーティング→施策提案といった流れを一挙にやってくれるとイメージするとピンと来るでしょう。
現実にはまだ一部の先進企業やテック業界で試行段階ですが、この動向が2025年に入って急速に拡大し、実務に組み込まれていくのではないかと盛んに言われています。
2025年が節目と言われる背景
生成AIブームの反省と次の一手
2023年前後の生成AIブームでは、多くの企業が試験的にChatGPTや他の生成AIサービスを導入しました。
しかし、実際に使ってみると「長文は生成できるけど、資料を社内共有フォルダにまとめてくれるわけではない」「結局、最後は人力で編集・確認が必要」というように、業務プロセス全体を変えるところまでは届かないケースが多かったのです。これは、生成AIはあくまで「言葉を生成する」部分に特化しており、手足を使って他のシステムと連携する機能は弱かったためです。
そこで、2023年以降、マイクロソフト・OpenAI・Googleといった企業が次々に「外部ツール連携」「プラグイン」「マルチエージェント」などの拡張機能を検討し始めました。つまり、「しゃべるだけではなく、実際に動いてタスクを完了してくれる仕組み」を模索し始めたわけです。
この動きが形になりはじめたのが2024年〜2025年とされ、“生成AIブーム”の反省点を踏まえて次のステージに進むタイミングが今、まさに到来していると見る向きが強いのです。
大手企業の動向とエコシステムの準備
もう一つの大きな要因は、世界的に大手IT企業がエージェント技術に本腰を入れ始めたことです。
たとえばOpenAIが、従来のChatGPTに「DeepResearch」という高度なリサーチモードを組み込み、自律的に文献やデータベースを参照して詳細なレポートを生成できるようにしたり、マイクロソフトがCopilot Studioを拡張して「会社ごとにカスタマイズされた仮想社員」を提供しはじめたり。こうした動きは単発のサービスを越え、プラットフォームとして多くの企業が利用しやすい形でエコシステムが整備されつつあることを示しています。
企業側にとっては、エージェントを導入するにはAIを社内環境に統合するための開発リソースやコストが課題でした。しかし、大手プラットフォームが標準APIやクラウドサービスを用意し、さらにオープンソースのエージェントフレームワークも進化してきたことで、導入ハードルが下がりつつあります。実際に試用してみた企業からも「予想よりずっと簡単に連携できた」という声が増えています。
AI人材不足の深刻化と「デジタル労働者」の登場
もう一つ見逃せないのが、世界的なAI人材不足です。データサイエンティストや機械学習エンジニアの確保は、2023年時点でも非常に厳しい状況にありましたが、DX推進が加速する中、取り合いはますます激化しています。そこで「人を雇うより、AIを賢く使ったほうが早いのでは?」と考える経営層が増えてきています。
エージェントを業務フローに組み込むことで、リサーチや資料作成などに費やされていた社員の時間を大幅に削減し、その分を企画・戦略づくりに回す――。こうした動きが本格化する“きっかけ”として、2025年は世界的に人材不足とAI技術の成熟がクロスする年だ、と見られています。
主要プレイヤーと技術トレンド
OpenAI「DeepResearch」の衝撃
AIエージェントの代表的な機能として注目されるのが、OpenAIの「DeepResearch」です。ChatGPTの有料版向けに搭載されたこのモードは、ユーザーが「あるテーマに関する海外論文や市場データを集め、サマリーをまとめ、それに基づいた提案をして」と指示すると、AIが自律的に文献検索や要点整理を連続的に実行します。さらにユーザーが途中で口をはさまなくても、最終的なレポートを完成させるところまで一貫してAIがおこなうのです。
従来のChatGPTでもリサーチ風の回答は可能でしたが、まだ「文章を生成するだけ」という側面が強かったのも事実。DeepResearchでは検索データとの照合を繰り返すことで“裏付け”のレベルが格段に向上し、非常に説得力のある報告書をまとめられるといわれています。
これはすなわち、「ChatGPT」から「自律的なAIエージェント」への進化を象徴する機能といえるでしょう。
その他有力プラットフォーム
2025年、AIエージェント市場は急速に発展し、OpenAI以外にもエージェント機能を実装したプラットフォーム が続々と登場しています。特に、業務自動化・営業支援・カスタマーサポート・研究開発などの用途 に特化したエージェントが増えており、企業のAI活用がより実践的なフェーズに突入しています。
1. Microsoft Copilot Studio
Microsoftは、企業向けのAIエージェント開発基盤として「Copilot Studio」を強化しました。これは、Word・Excel・TeamsなどのMicrosoft 365アプリと連携し、タスクを自動化するエージェントを作成できるノーコード/ローコード環境です。
Copilot for Sales(営業支援):顧客データを分析し、次の商談アクションを自動提案
Copilot for Service(カスタマーサポート):問い合わせ対応をAIが処理し、CRMデータと統合
Copilot for Finance(財務管理):支払い処理やレポート作成を自動化
特に、企業のナレッジベースやメールデータを学習し、文書作成や会議議事録の要約をリアルタイムで実行するエージェント機能が進化しており、社内の生産性向上に寄与しています。
2. Google Vertex AI Agent Builder
Googleは、エンタープライズ向けのエージェント構築環境として「Vertex AI Agent Builder」を提供しています。これは、Google Cloud上で企業が独自のAIエージェントを開発・運用できるプラットフォームで、Geminiモデルを活用した高度な対話エージェントや自動化ツールの構築が可能です。
主な機能
CRMやデータベースとの統合による業務エージェントの作成
会話型エージェント(ボイス&チャット) の設計とトレーニング
リアルタイム検索 を活用したドキュメント整理・要約機能
特に、Gmail・Google Drive・Google Meetなどと連携することで、社内の情報をエージェントが自律的に管理・最適化する用途が期待されています。
3. Salesforce Einstein GPT & Agent Builder
Salesforceは、CRMとAIエージェントの融合を進めており、「Einstein GPT」をベースとしたカスタマーエージェント機能を拡張しました。2025年には、新たに「Agent Builder」を発表し、企業がノーコードで業務プロセスに特化したエージェントを作成できる仕組みを提供しています。
Einstein GPT for Service:サポートエージェントの負荷を軽減し、問い合わせ対応を自動化
Einstein GPT for Sales:営業資料の作成や顧客対応をサポート
MuleSoft Integration:外部の業務システムと統合し、より柔軟なタスク管理を実現
特に、SalesforceのAtlas Reasoning Engine を活用し、CRMデータをもとに最適なアクションを自律的に判断する仕組みが強化されています。
4. ServiceNow AI Agent Orchestrator
業務オートメーション分野では、ServiceNow が「AI Agent Orchestrator」を発表し、ITチケット処理・ワークフロー管理・エンタープライズ検索 などを統合したエージェントフレームワークを提供しています。
主な特徴
ITヘルプデスク向けの自動チケット処理エージェント
社内のFAQやデータベースを学習し、リアルタイムで社員の問い合わせに回答
企業独自のルールやワークフローに適応し、システム連携を自動化
LLMからLRMへの進化:ラージ・リーズニング・モデルの存在感
ここで技術的な背景として「LRM(Large Reasoning Model)」という言葉を押さえておきましょう。
従来の大規模言語モデル(LLM)は、いわば文章をスラスラ生成するのが得意でしたが、複雑な計画・論理推論には弱点がありました。そこで、推論プロセスを強化した次世代モデルとして登場したのがLRMです。
LRMは「チェイン・オブ・ソート(CoT)」などの技術を使い、問題を複数ステップに分解して考えるという“人間の思考プロセス”に近いアプローチを導入しています。これによって、複雑なビジネス課題の計画立案からタスク実行まで、一貫してAIに任せやすくなるのです。こうしたLRM的アーキテクチャは、2025年以降のエージェント型AIのカギになると考えられています。
事例で見るAIエージェントの実力
社内業務効率化:リサーチ・レポート作成の自動化
ある大手製造業では、研究開発部門が日々おこなっていた海外論文リサーチをAIエージェント化する取り組みを始めました。従来は研究員が数日かけて集めていた文献や特許情報を、AIエージェントが自動で巡回・要約し、さらにレポート形式にまとめて担当者へメールで送るフローを確立。結果として「探す・読む・まとめる」の手間が激減し、研究員がより創造的な作業(新製品のアイデア出しなど)に集中できるようになったといいます。
これはほんの一例ですが、「調べる→書く→共有する」というプロセスをAIに任せられるなら、人間がやるべきは指示の設計と最終チェック程度。情報収集がメインだった社員を、企画や意思決定に回せるため、組織全体の生産性が大きく向上する可能性があります。
サポート対応や顧客接点の最前線で
カスタマーサポートの領域でも、エージェントが活躍し始めています。
よくあるチャットボットではQ&A形式が中心ですが、エージェント型AIは「顧客の状況をヒアリングしながら、社内の在庫情報を参照し、配送手配や請求手続きまでおこなう」といった実行力を備えています。ネット通販などでは、顧客からの問い合わせに応じて返品処理や再発送手配を自動化できるため、対応コストが削減されるだけでなく、顧客満足度の向上も見込めるでしょう。
さらに、マーケティングオートメーション(MA)ツールと組み合わせれば、顧客の反応をリアルタイムで分析したエージェントがキャンペーンの出し分けを調整する、といった高度な運用も可能になるかもしれません。将来的には「広告運用をAIエージェントに一任してしまう」ような世界が来る可能性も否定できません。
マーケティング施策の立案と実行サポート
企業によっては、AIエージェントが競合調査→市場分析→施策プランの提案→コピー作成→LP(ランディングページ)草案の生成を一気通貫で支援する事例もあります。これらのステップをAIが主導し、人間はフィードバックや方向性の修正だけをおこなう形です。実際の採用事例はまだ限られていますが、コンテンツマーケティングやSNS運用で部分的に導入し成果を出し始めた企業も報じられています。
これまでマーケターが膨大な時間を費やしてきた作業が、エージェントによって大幅に圧縮できれば、「新しい施策をもっと試せる」「実験を早回しできる」といったメリットが見えてきます。AIが臨機応変にデータを集め、効果測定までセットで行ってくれるなら、次の一手もスムーズに打ちやすくなります。
マーケターが知っておきたいAIエージェントの活用ポイント
まずはリサーチやデータ分析から試してみる
マーケターにとって、エージェントを活用しやすい最初のステップは「情報収集やデータ分析を自動化する」ことかもしれません。たとえば「SNS上の口コミをAIに収集させ、ネガティブ/ポジティブ要因を自動で仕分けする」「業界ニュースや競合企業のリリース情報を定期的にまとめてもらう」などは、すでに現実的なタスクです。
生成AIの文章生成能力と、自動的に複数ソースを検索できるエージェント機能が組み合わされば、これらの作業をほぼワンクリックで済ませられるようになる可能性があります。
顧客コミュニケーションにおける可能性
次の応用としては、顧客とのコミュニケーションを一部エージェント化することが挙げられます。
メールやチャット、SNSのDMなど、多彩なチャネルでの問い合わせ・要望にAIが対応し、状況に合わせて社内システムとやり取りして最適解を返す――このような仕組みはすでにパイロット運用が始まりつつあります。チャットボットとの違いは、顧客が求める結果を実行するステップ(在庫確認・発送・請求など)にまでAIが踏み込める点です。
マーケターの役割としては、「どんな会話トーンで顧客と接するのか」「どこまでをAIに任せ、どのタイミングで人間が介入するのか」などをブランド体験を損なわない形でデザインすることが重要になります。エージェントが自律的に動く分、「お客様に対し失礼な応答をしていないか」「正しい情報を渡せているか」など、ガイドライン作りや運用ルールの策定が欠かせません。
エージェント活用のメリット・デメリット
メリット
・反復的な業務負荷の軽減
・大量データの分析やマルチチャネル対応など、人間では手が回らない領域で活躍
・ユーザー視点に合わせて最適なアクションを選択し続けるため、顧客体験の向上が見込める
デメリット
・初期導入コストやインフラ整備が必要
・情報漏洩リスクや誤ったアクションを防ぐためのガバナンス体制が要る
・AIが誤作動した場合の責任分担やトラブル対処が明確でない
エージェント化の恩恵は大きい反面、従来のチャットボット以上に「何をどこまで任せるか」「エラー時のフォローはどうするか」を明確化しなければ、想定外の混乱が生じる可能性もあります。

導入のハードル:コスト・リスク・社内理解
コストやインフラ面の課題
AIエージェントを実務に組み込むには、ある程度のシステム開発・運用コストが伴います。
クラウドAIを使うにしても、APIリクエスト量が増えれば利用料金が跳ね上がる可能性もありますし、オンプレミス運用ならGPUサーバやソフトウェア基盤の構築が必要です。小規模で始める分にはクラウドサービスが便利ですが、サービスレベルやセキュリティ要件に合わせて慎重に選定する必要があります。
また、エージェントが自由に社内システムと連携するとなれば、アクセス権限やセキュリティポリシーを再定義する手間も出てきます。
利用者が意識せずともエージェントが様々な情報を触る可能性がある以上、「機密データに触れられる範囲はどこまでなのか」をはっきり決めなければいけません。
情報漏洩リスクやガバナンス問題
生成AI全般に言えることですが、企業の機密情報をAIに入力してしまうと、クラウド側にデータが蓄積されるリスクがあります。エージェントが自律的に動くと、そのリスクがさらに増す可能性があります。マーケティング部門で顧客データを扱う場合、個人情報保護の観点も非常に重要です。たとえば「誤って顧客名簿を外部のサービスにアップロードしてしまった」といった事故は大きな問題になります。
このあたりは社内規定の整備、データマスキング、オンプレミス運用など、セキュリティ対策をどう講じるかという経営判断が求められます。
また、GDPRなど海外の個人情報保護規制に関わる企業にとっては、対応すべき法的要件も増えてきます。AIエージェントにまつわるガバナンス体制は、2025年以降ますます議論が深まるでしょう。
社内合意形成と小さく始めるためのヒント
マーケターがエージェント導入を検討しても、情報システム部門やリスク管理部署、経営層などを巻き込まなければ進められません。ここで大切なのは、まずは「小規模なPoC(実証実験)」を回して成果を確認し、社内に共有することです。
たとえば「既存のチャットボットを一部エージェント機能に置き換え、対応品質がどう変化するか」や、「競合調査レポートをAIに生成させ、コスト・時間を比較検証する」など、スモールスタートで成果を可視化するのが良いでしょう。その上で、事例と数字をもって経営層を説得できれば、一気に社内導入が進む可能性があります。
2025年前後のAIエージェント展望
AIエージェントがもたらすビジネスモデル変革
多くの専門家が言うように、エージェント化が進むと企業のビジネスモデルそのものが変わり得ます。たとえば、コールセンター業務を自動化して大幅にコストダウンしつつ、顧客体験はむしろ向上する――といったシナリオが実現すれば、既存の企業間競争のルールが変わってしまうかもしれません。「低コスト+高品質」でサービスを提供する企業が一気にシェアを拡大し、AIを活用しない企業との格差が広がる可能性は十分にあります。
また、エージェント同士が連携してサプライチェーンや業務プロセスを最適化するような事例も増えるでしょう。営業から受注管理、在庫発注、顧客フォローまで一貫してAIが回す世界が来れば、人間の働き方も劇的に変わります。
「AIエージェントチーム」の台頭はあるのか?
一部では、AIエージェントが組織の中で“仮想社員”として扱われ、複数のAIエージェントが一つのチームを形成するような構想も語られています。たとえばマーケティング領域だけでも「広告運用エージェント」「クリエイティブ制作エージェント」「データ分析エージェント」などが連携して、一連のキャンペーンを回すイメージです。
現時点では夢物語にも見えますが、小規模な試みとして既にいくつかの企業が「マルチエージェント・システム」を試験運用しています。もしこれがうまくいけば、人間が監督・方向性の指示をするだけで、AIエージェントたちが協働してプロジェクトを進める未来がやってくるかもしれません。
リアルとデジタルの境目が変化する
ChatGPTから始まったAI活用が、人間の指示を待たず自律的に行動するエージェントへと進化すると、デジタルとリアルの境界も新たな形を帯びてきます。たとえば一部の企業では、ロボティクスとエージェントAIを組み合わせ、倉庫内の入出荷作業を完全自動化する例も出始めています。ロボットが物理的に動き、エージェントAIが指示を下す――まるで工場長が人間ではなくAIになるようなイメージです。
マーケターの視点から見ても、顧客の動線がオンライン/オフラインで区分できなくなり、ショールームやイベント会場でもAIがリアルタイムで接客する時代が来る可能性があります。その先駆けとして、タブレット越しにAIアバターが接客を行う取り組みは既に一部で実験されています。オンライン施策とオフライン体験が混在する新しい顧客体験の設計が求められるでしょう。
まとめ:今から準備すべき3つの視点
最後に、2025年を前にしたマーケターの皆さんが、AIエージェント時代にどう備えるか、重要なポイントを三つにまとめます。
1. 小さく試せるところからPoCを始め、社内を巻き込む
いきなりフル機能のAIエージェントを導入しようとすると、コストもリスクも高く、社内抵抗も大きいです。まずはリサーチやレポート作成、データ分析の部分的な自動化からスタートし、成功事例を積み上げることが得策でしょう。うまくいけば社内の理解を得やすくなり、大きなAI活用プロジェクトにつなげられます。
2. セキュリティ・ガバナンス体制の整備
AIエージェントは自律的に社内システムや外部APIを使う性質上、情報漏洩リスクや法的リスクが伴います。マーケターであっても、個人情報や機密データを扱う可能性があるなら、どこまでAIに任せるのかをルール化し、利用者向けのガイドラインを整備しておきましょう。“誤作動が起きたときにどう対処するか”も含め、緊急時の対応フローを決めておく必要があります。
3. 「AIにしかできないこと」「人間だからこそできること」を見極める
エージェントが進化すると、マーケターの仕事の中でも繰り返し作業やデータ処理はAIに任せる選択肢が増えていきます。一方で、顧客体験の“感動”や、予期せぬトラブルに臨機応変に対応することなどは、まだまだ人間の創造性やコミュニケーション力が求められるでしょう。AI時代においてこそ、マーケターは「何をAIに任せ、どこに自分のリソースを振り向けるか」を考える必要があります。短期的には「業務効率化」、中長期的には「革新的なマーケティング施策」を実現するために、人間×AIエージェントの協働スタイルを設計するのが最も重要なテーマだといえます。
参考:セミナーでさらに理解を深める
ここまで読んでみて、「AIエージェントの全体像は何となくわかったけど、実際にどう導入したらいい?」「DeepResearchって結局どう使えるの?」といった疑問を感じている方も多いと思います。そこで、私たちが企画している2025年3月26日開催のセミナーでは、OpenAIの最新機能「DeepResearch」を例として、具体的な機能や事例を徹底解説します。質疑応答の時間もたっぷり用意し、みなさんの導入に関する悩みや疑問にお応えする予定です。
「ちょっと出遅れてしまったかも」と思っている方こそ大歓迎です。
まだまだAIエージェントの実装は始まったばかり。いま学ぶことで、2025年の変化にしっかり備えましょう。セミナーでは実際の操作画面をお見せしながら、ステップバイステップでエージェント活用を試す方法や、社内プレゼンに使える資料の作り方など、より具体的なお話をします。
どうぞお楽しみに。
おわりに
「2025年はAIエージェント元年」と言われるのは、生成AIがもたらした言語処理の進歩が“実務タスクの自動化”へ本格的に拡張される転換点に差し掛かっているからにほかなりません。マーケターとしては、AIエージェントをどう導入すれば業務効率だけでなくビジネス価値を高められるのか、早めに考えておく必要があります。
・単なる会話AIを越えて、自律的に行動し成果を出してくれるエージェントが増える
・大手企業が参入し、導入コストや技術ハードルが下がる一方、情報ガバナンスの課題も深刻になる
・人間の“発想力”や“対人コミュニケーション”が、より重要になる
これらのポイントを踏まえながら、まずは小さく検証→徐々に拡大のステップでAIエージェントの力を活かしてみてください。次回のセミナーでは、さらに突っ込んだ内容を取り上げる予定ですので、ぜひ足を運んでいただければと思います。
皆さんが「AIエージェント」を使いこなす未来を楽しみにしています。

生成AI活用アドバイザー
天野 翔太
生成AI導入・活用支援
複数の事業会社においてBtoCならびにBtoBマーケティングを担当する。その後、アクセンチュア株式会社で広告運用をメインにしたマーケティングコンサルティングに従事。
2023年にパワー・インタラクティブに参画してからは、ChatGPTなど生成AIのポテンシャルに注目。マーケティングへの活用で成果を上げるだけでなく、これまでにない新しい顧客体験を生み出すことにチャレンジしている。
M2AI代表。