コラム

「見えづらい」を打破!デジタルマーケティングを確実に成果へつなげる評価と運用法

はじめに

デジタルマーケティングの施策が普及する一方で、「具体的な成果の可視化」や「全社レベルでのデータ活用」について悩む企業が増えています。オンライン施策はさまざまなデータを取得しやすい反面、チャネルやツールが増えるほど情報が分散し、どの程度ビジネスゴール(売上や市場シェアなど)に結びついているのか、つかみにくいのが実情です。

本コラムでは、デジタルマーケティングの成果を「短期・中期・長期」の視点で評価し、最終的なビジネスゴールへどのように貢献させるかについて解説します。オンライン施策だけではなく、オフラインも含めた全社的な取り組みに応用できる内容です。プロセス管理やデータ基盤の整備、レポート設計のポイントなどを整理しているので、デジタル施策の“見えづらい”成果をどう可視化するか悩んでいる方の参考になれば幸いです。

ビジネスゴールへの貢献度を評価するための視点

デジタルマーケティングの成果が「見えづらい」とされる背景には、大きく3つの要因があります。

1.マーケティング活動と売上のタイムラグ

・BtoBの場合、受注までに複数部門の合意が必要で検討期間が長いケースが多い
・BtoCでも高額商材などは比較検討に時間をかけるため、施策から購入までの時間差が生まれる

2.影響範囲の広さ

・オンライン・オフライン、デバイスやチャネルが多様化し、どの施策がどこに影響しているか全体像を捉えにくい
・たとえば広告→SNS→ウェビナー→最終的に店舗来店…など複数のタッチポイントが絡み合いやすい

3.評価指標が施策ごとに異なる

・メール施策は開封率、広告施策はCPA、ウェビナーは参加率…とバラバラの指標を使っていると、ビジネスゴールへの全体貢献度を測りづらい

こうした課題を解消するには、「短期(個別施策)→中期(顧客の検討フロー)→長期(最終売上・リピート率など)」と段階を意識して評価することが重要です。施策ごとのコンバージョン率や開封率だけを見るのではなく、どのように最終的なビジネス成果(売上、リピート率、市場シェアなど)につながっていくかを、プロセスを踏まえて可視化していきます。

デジタルマーケティング推進の3要素

デジタルマーケティングの捉え方

「デジタルマーケティング」はオンラインだけの施策を指すイメージがありますが、本来は次のように広く捉えることができます。

顧客情報、オンライン・オフライン含む行動データ、マーケティング/営業活動の情報を“データ化して集約”し、あらゆるチャネルで効果的なコミュニケーションを図り、最終的に顧客満足度や売上に貢献すること。

この取り組みを成功させるためには「プロセス」「データ」「テクノロジー」の3つの要素が欠かせません。

1. プロセス(戦略的な運用フロー)

・マーケティング業務とパイプライン管理
例:見込み客を獲得し、育成して営業へ渡す流れを定義しておく
・ターゲティングとセグメンテーション
例:BtoBなら役職や業種、BtoCなら年齢や趣味など、顧客特性に合わせた施策を実施
・マーケティング・営業プロセスを管理
例:インサイドセールスやフィールドセールスがどのタイミングで顧客にアプローチするか明確化
・施策の実行とコミュニケーション
例:ウェビナーや広告など、施策ごとに目的を定義して適切なタイミングで提供

2. データ(測定・評価の基盤)

・KPI(重要業績評価指標)の設計
例:最終ゴールを受注件数や月次売上に設定し、そこへ至る中間指標を階層的に設計
・データの収集・統合と可視化
例:ウェブ解析ツール、MA(以下、マーケティングオートメーション)、CRMなど複数のソースをまとめる
・レポーティングと意思決定
例:BIツールでダッシュボードを作り、週次や月次で定例的に効果を確認し改善策を検討

3. テクノロジー(実行と最適化の技術基盤)

・MAツール活用
例:自動メール配信やスコアリングで、適切なタイミング・内容で顧客にアプローチ
・CRM・SFAとの連携
例:顧客情報を営業と共有し、受注までの進捗をシームレスに管理
・分析ツールの活用
例:広告効果やサイト内行動を可視化し、PDCAサイクルを回して施策を最適化

この3要素が一体となることで「戦略を立てる(プロセス)→数字をとる(データ)→施策を最適化する(テクノロジー)」という流れが生まれ、ビジネスゴールへの寄与度をより正確に把握できるようになります。

購買プロセスの可視化とプロセスマネジメントの重要性

デジタルマーケティングを効果的に進めるうえで欠かせないのが、「顧客が購買に至るまでのプロセスを可視化し、どこにボトルネックがあるかを把握する」ことです。これを支えるのが「プロセスマネジメント」です。

・BtoBの例
「情報収集 → 課題設定 → 比較検討 → 評価 → 契約 → 導入」のステージを設定し、見込み客がどのステージで停滞しているか、またどの施策でステージが進むかを管理する。
たとえばウェビナーでも「認知拡大」が目的なのか、「より具体的な製品情報を伝える」のが目的なのかで運用が変わるため、ステージごとの目的設定が重要になる。

・BtoCの例
「認知 → 興味 → 比較検討 → 購入 → リピート」のファネルを定義し、それぞれの段階で最適なチャネルとメッセージを用意する。商品によって検討期間が異なるため、メールやSNS、店舗接客などを連携させる。

また企業内では、たとえば「マーケティング → インサイドセールス → フィールドセールス → カスタマーサクセス」など、部門や担当者ごとに役割を分担すると、どのタイミングで何をすべきか明確になり、組織としてスムーズに顧客をサポートできます。

データを用いた効果測定とレポート設計のポイント

「どの施策が、どれくらいビジネス成果につながっているのか」を正しく把握するためには、データを活用したレポート運用が欠かせません。以下のようなレポートを整備し、期間別チャネル別セグメント別など多面的に比較・分析することで、改善のヒントが見えやすくなります。

1. パイプライン・プロセスレポート

・概要
顧客を「リード獲得 → 育成 → 営業接点 → 商談化 → 受注」などのステージに分け、それぞれの人数・移行率・滞留期間を可視化するレポートです。


・目的・メリット
・どのステージで滞留しやすいか(ボトルネック)を洗い出す
・フェーズ移行率が高いチャネルや施策を特定し、そこへリソースを最適配分する
・マーケティングと営業の連携をスムーズにする

2. 施策評価レポート

・概要
広告、ウェビナー、展示会など、実施している各種施策ごとのコンバージョン数・成約率・CPA(獲得単価)などを比較するレポートです。


・目的・メリット
・広告費や人件費など施策投入コストに対して、どれだけ成果を出しているか費用対効果を把握
・効率の良い施策に投資を増やし、成果の出づらい施策を改善・撤退する判断をしやすくする

3. 顧客分析レポート

・概要
顧客をさまざまな切り口で分類・分析し、購買行動や反応傾向を探るレポートです。
BtoBでは「アカウントごとの売上ポテンシャル」「担当者の職位や部署」などのセグメント分け
BtoCでは「年齢・性別・居住地域」「購買頻度・購入金額」などの切り口で顧客をグルーピング
RFM分析(Recency/直近購買日・Frequency/購買頻度・Monetary/購買金額)など、行動や売上データをもとに重要顧客を抽出


・目的・メリット
・どの顧客層・アカウントが高いLTV(顧客生涯価値)をもたらすかを明確化し、重点的にアプローチ
・休眠顧客の掘り起こしやリピート促進の施策を検討する材料になる
・マーケティング施策をさらに個別最適化し、コミュニケーション精度を高める

4. 成果分析(ファーストタッチ/ラストタッチ)

・概要
ユーザーが最初に接触したチャネル(ファーストタッチ)と最終的にコンバージョンに至ったチャネル(ラストタッチ)を追跡するレポートです。途中でメルマガやSNS、ウェビナーなど複数の施策を経由している場合も、一連の流れを確認できます。

・目的・メリット
・チャネルごとの貢献度を可視化し、初動(認知獲得)に強い施策や、最終的な意志決定を後押しする施策を把握
・施策同士の相乗効果が見えやすくなり、マーケティングプランを横断的に最適化しやすい

5. リード管理レポート(BtoB向け)

・概要
BtoBでの営業活動を想定し、営業へのリード受け渡し状況や商談の進捗、失注理由などを管理するレポートです。

・目的・メリット
・リードがいつどのチャネルで獲得され、どんな施策に反応したかを営業担当者と共有
・失注理由や再アプローチ時期も記録し、マーケティング施策と営業アプローチの改善を連携して進める
・マーケティング部門と営業部門が同じデータを参照することで、定例会議などでボトルネックや方針をスムーズに擦り合わせられる

上記のように多角的にレポートを設計することで、短期施策(コンバージョン数・CPAなど)から中長期視点(顧客満足度・リピート率・LTVなど)までを見通せるようになります。これらのレポートを定期的にチェックし、部門横断的な会議で共有することで、ビジネスゴールに直結するデジタルマーケティングの運用に活かせるでしょう。

データ連携の課題を解決するには

デジタルマーケティングが進むにつれ、ツールやチャネルが増えてデータが分散するのはよくある課題です。Googleアナリティクス、MAツール、CRM、SFAなどを並行して利用していると、情報が断片化しがちになります。

そこでETL(Extract, Transform, Load)ツールや**DWH(データウェアハウス)**を導入し、複数のデータソースを自動的・定期的に集約する仕組みを作ると以下のメリットが得られます。

1.部門間で統一された指標を持てる

・マーケ、営業、経営企画が同じダッシュボードを見て議論することで認識のずれが減る
・データがリアルタイムで更新される環境を整えれば、素早く意思決定が可能

2. BIツールによるレポート自動生成

・週次や月次で集計・レポート作成を自動化し、担当者の手作業を削減
・分析や施策検討など、付加価値の高い業務に集中できる

3.カスタマージャーニーの一貫管理

・オンライン/オフライン問わず、顧客単位で全タッチポイントのデータを結び付けられる
・BtoBであればリード情報と商談進捗を、BtoCであれば購入履歴やキャンペーン反応を統合評価しやすい

もしETLやDWHを整備しないと、各部門が別々にエクセル集計をするなどの属人的な運用に陥りやすく、更新の遅れやデータミス、部門間の齟齬も増えがちです。「一元管理の仕組み」を整えることで、デジタルマーケティングの成果を売上貢献までスムーズに“見える化”できるようになります。

次のステップ:まず何から取り組むか

ここまで紹介してきた仕組みを整えるには「自社で何をどこまでやるか」を明確にすることが大切です。まずは以下の3ステップから始めてみてください。

1.ビジネス目標やKPIを明確化

・売上・市場シェア・LTVなど、ゴールとなる数値を設定する
・BtoBならMQL・SQLなどのステージ定義を共通言語にし、部門間で用語を統一する

2.必要なデータと活用方法を整理

・MA、CRM、Web解析、オフラインの顧客接点など、保有しているデータソースを書き出す
・部門連携や会議体でのレポート共有をイメージして、どう繋げるかを検討する

3.運用とレポートを見える化

・週次・月次・四半期など、各会議でどの指標をモニタリングするか決める
・パイプライン進捗や施策成果を複数の視点で比較し、改善アクションを明確にする

特に「比較」の視点が重要です。期間別やチャネル別、セグメント別で数字を比べると、問題点や改善策の優先度が立てやすくなります。

まとめ

本コラムでは、デジタルマーケティングのビジネスゴールへの貢献度を評価するために必要な視点や仕組みを整理しました。はじめに述べたように、デジタル施策はデータを取得・分析しやすい一方で、チャネルごとの指標やツールが乱立すると“全体像が見えにくい”課題が発生しがちです。

短期・中期・長期の指標を階層的に設計し、プロセスを段階的に管理する
プロセス・データ・テクノロジーの3要素を連携させ、PDCAを回す
ETL・DWH・BIツールなどでデータを一元化し、意思決定をスピードアップする

これらを組み合わせることで、デジタルマーケティングが実際に売上や市場シェアなどの経営指標にどう影響を与えているのか、可視化と改善を繰り返せるようになります。まずは自社の現状を洗い出し、すぐに取りかかれることをひとつでも実行してみてください。施策の実行と検証を繰り返していくことで、組織全体でデジタルマーケティングの価値を最大化し、ビジネスゴールに着実に近づけるはずです。

弊社のサービスでは、こうしたデータ基盤の構築支援やツール連携の最適化をサポートしており、レポーティングやダッシュボードの自動化も含めてご提案しています。

久道 真之介

ソリューション第1部 部長

久道 真之介

マーケティング戦略策定

通信会社で法人向けの営業を8年経験。その後起業を経験し、2010年にパワー・インタラクティブに入社。Webサイト制作のディレクションからリスティングの運用、アクセスログの分析など現場での業務を経験し、現在はマーケティングコンサルタントとして、BtoB・BtoCのデジタルマーケティングの戦略立案から伴走支援までを行う。

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