Adobe Marketo Engageのパフォーマンスインサイトでマーケティングの収益貢献を可視化する
パワー・インタラクティブ マーケティング推進室(文責)
昨今のBtoBマーケティング組織は、収益への貢献をもって活動に対する評価を受けるようになっています。しかし、たとえ良いマーケティング活動ができていても、収益の貢献を可視化し、数字をもとに説明できている組織は決して多くはありません。
Adobe Marketo Engage(以下、Marketo)には、『パフォーマンスインサイト』というマーケティングの収益貢献を可視化する分析機能が搭載されています。パフォーマンスインサイトを有効活用できると、どの施策がどれだけ収益に貢献しているのかが一目でわかります。データをもとに収益貢献を示すことができれば、経営層や他部署からの評価が高まり、さらなるマーケティング投資を得やすくなります。
本記事では、Marketoのパフォーマンスインサイトを中心に、収益への貢献を可視化するMarketoの分析機能について解説します。
Marketoのパフォーマンスインサイトとは
Marketoのパフォーマンスインサイトは、チャネルごとの収益貢献を可視化する機能です。表示されるデータは、「高い成果を挙げているチャネルにリソース配分を寄せる」「成果に繋がっていないチャネルの改善に力を入れる」といった意思決定に役立ちます。
Marketoは、施策実装前にチャネル(施策種類)を定義します。そして、Marketoではプログラムごとにチャネルを紐づける必要があり、どのプログラムがどのチャネルの施策なのかが分かるようになっています。パフォーマンスインサイトでは、リードが反応したプログラムの情報をもとに、チャネルごとの収益貢献を可視化しています。
パフォーマンスインサイトで分かること
パフォーマンスインサイトでは、「エンゲージメント」「パイプライン」「収益」の3つの画面が用意されています。
チャネル別のエンゲージメント獲得状況
エンゲージメントの分析画面では、各プログラムがどれだけリードの見込み度合いを高めたかを確認できます。
リードの見込み度合いを高められたかどうかは、チャネルごとに設定している「成功」によって判断され、集計されています。例えば弊社の環境では、「セミナー」チャネルのなかで「出席」「オンデマンド出席」「アンケート回答」「スライドDL」のステータスになったとき、成功とカウントされるように設定しています。
エンゲージメントの分析画面では「成功あたりのコスト」を算出しているため、各プログラムごとにコストを入力しておく必要があります。コストは各プログラムの「セットアップ」にある「期間原価」の項目で入力できます。
エンゲージメントの分析画面は、このような議論に活かすことができます。
「今月は前月と比べてメールの成功数は増えたけれど、セミナーの成功数が減った」
「今月はセミナーの集客が伸びず、結果としてエンゲージメントも伸び悩んだ」
「集客の課題を解消するために、セミナーのテーマと集客方法の両軸で改善しよう」
マーケティング部門内でのリソース配分、施策改善に役立てられる機能です。
パイプラインの進捗状況
パイプラインの分析画面では、各プログラムに反応したリードがどれだけ商談化したのかを確認できます。
パイプラインの分析画面では、以下の切り口でチャネルごとの商談創出への貢献を確認できます。
分析軸 | 内容 |
---|---|
新しい商談 | 各チャネルが貢献した商談の数 |
創出されたパイプライン | 各チャネルが貢献した商談の金額 |
オープンのパイプライン | 各チャネルが貢献した、進行中商談の金額 |
予想収益 | 各チャネルが貢献した商談によってもたらされる収益の期待値 受注確率をもとに算出される |
コスト | 商談創出に貢献したプログラムにかかった費用を創出商談数で割った数 |
創出されたパイプライン対コスト比 | 創出されたパイプラインの金額をコストで割った数 |
この分析機能を活用することで、マーケティング活動がどれだけ商談創出に貢献しているのか、その結果どれだけ収益が生まれる可能性があるのかを示すことができます。
パイプラインの分析画面は、マーケティング組織が上層部や関連部署への活動説明に活用しやすいです。
チャネル別の収益貢献
収益の分析画面では、各プログラムに反応したリードがどれだけ受注に繋がったのかを確認できます。パイプラインは商談を軸に抽出しているのに対し、収益は受注を軸に抽出しています。そのため、実際にどれだけ収益に影響したのかを実数で把握することができます。
商談が受注に繋がるまでに営業活動が発生するため、マーケティングのコントロール外の変数が多くなるという特性はありますが、収益への貢献を実数で確認できるという強みがあります。
期末の活動報告など、節目節目での振り返りに活用しやすい機能です。
パフォーマンスインサイトを機能させるためにやるべきこと
マーケティングの収益貢献を可視化し、関係者へ説明するのに役立つパフォーマンスインサイトですが、有効活用するためにはデータ環境を整備する必要があります。
ここでは、パフォーマンスインサイトを有効に機能させるためにやるべきことを3つの切り口で解説します。
MarketoとCRMを連携する
Marketo上でマーケティング活動の収益貢献を可視化するには、MarketoとCRMをデータ連携する必要があります。Marketoと連携できるCRMツールはいくつかありますが、パフォーマンスインサイトの活用に必要な情報を連携できるCRMは以下2つとされています。
・Salesforce
・Microsoft Dynamics 365(以下、Dynamics)
上記2つのCRMのみパフォーマンスインサイトの活用に使えるとされる理由は、商談情報の連携にあります。
リードの商談情報タブに入るデータは、カスタムフィールドで連携することができません。カスタムフィールドであればSalesforce、Dynamics以外のCRMでも作成してデータを連携することができますが、商談情報についてはそれができないのが現状です。
そのため、SalesforceまたはDynamicsと連携し、商談情報をMarketoに返せるデータ環境を整える必要があります。
チャネルを適切に定義し、運用する
チャネルの定義は、施策を実行する前の設計段階で決める必要があります。
設計段階で、自社がおこなっているマーケティング施策をカテゴリーごとに整理して、チャネルとして定義します。そして、チャネルごとにステータスを定義し、何をもって成功したとするのかを決めます。プログラムを作成するときは、必ずチャネルとの紐づけをおこないます。
プログラムとチャネルを紐づければステータスが自動で切り替わるわけではありません。指定した行動を起こしたことを条件にステータスが遷移するよう、スマートキャンペーンで設定する必要があります。この設定に不備があると、ステータスが正しく遷移せず、成功がカウントされなくなってしまいます。
チャネルの適切な運用は、パフォーマンスインサイトのエンゲージメント分析に影響します。エンゲージメント分析画面でマーケティング活動をモニタリングするのであれば、まずチャネルの運用から見直すのが良いでしょう。
各プログラムの期間原価を入力する
パフォーマンスインサイトでコストを適切に算出するためには、各プログラムの期間原価を設定しておく必要があります。
期間原価は、その施策を実施するのにかかった費用のことを指します。パフォーマンスインサイトでは、商談金額や受注金額を期間原価で割ることで、チャネル別のROIを算出しています。
期間原価は、各施策を実施するのにかかる工数を人件費に換算した金額と、広告予算を足した金額を入力するのが良いでしょう。実際にかかっているコストとの乖離が少なく、入力にかかる工数をなるべく抑える形での運用をおすすめします。
パフォーマンスインサイトの活用方法
パフォーマンスインサイトは、以下2つの方法で活用できます。
・パフォーマンスインサイト上で活用する
・外部BIツールを用いて活用する
パフォーマンスインサイト上での活用
パフォーマンスインサイトはマーケティングの収益貢献を可視化する機能であり、マーケティング部長が役員に対してマーケティング活動の意義を伝えるのに役立てられます。
マーケティングは多額のお金を投資して収益として回収する活動のため、収益への貢献を厳しく見られます。どの会社のマーケティング部長も何らかの論理をもとに説明していますが、一目で分かる形で収益貢献を可視化できていないと納得を得られないこともあります。
パフォーマンスインサイトでは、ひとつの画面でマーケティング活動がどれだけ収益に貢献しているのかが分かるため、マーケティング部長が上層部に対してプレゼンし、予算を獲得するうえで役立ちます。そうして獲得した予算はマーケティング活動の活性化および成果の拡大に繋げられます。
外部のBIツールを用いた活用
パフォーマンスインサイトで見ることができるのは、あくまでMarketoとCRMに格納されたデータです。より幅広いデータを突合し、マーケティングの収益貢献を可視化したいと考えるのであれば、BIツールを利用して可視化するのもおすすめです。
BIツールで可視化をするときは、一度データウェアハウスに各種データを集約し、加工したうえで可視化することになります。そのため、パフォーマンスインサイトよりも自由度高く、自部門が表明したいことを表現できるようになります。
例)GA4のデータも取り込み、リードインする前の活動も合わせて収益への貢献を可視化する
Marketoに搭載されているおすすめの分析機能
ここまで、パフォーマンスインサイトについての解説をしてきました。ここでは、マーケティング活動が収益に貢献していることを示すMarketoのおすすめ分析機能を紹介します。
商談影響アナライザー
商談影響アナライザーでは、商談・受注に至ったリードが過去どのようなコンテンツに接触してきたのかを確認できます。
商談・受注に至ったリードの過去のコンテンツ接触をさかのぼることで、マーケティング活動が営業活動に間接的に影響しているということを視覚的に説明できます。この機能は、俯瞰的にマーケティング活動の収益貢献を示すというより、定性的な形でマーケティング活動への理解を促すという活用ができます。
関連部署との連携に悩むマーケティング部門の方におすすめの機能です。
参考記事:商談の影響分析について|Adobe
成功パスアナライザー
成功パスアナライザーでは、あらかじめ設定している収益サイクルモデルに沿って、リードがどれだけ遷移したのかを俯瞰して確認できます。
成功パスアナライザーは、自社のマーケティング活動を振り返る際に役立ちます。
例えば、前月のステージ遷移状況を前々月のものと比較すると、何が要因で前々月と比べて差異が出ているのかを議論できます。また、半年、一年といった長期間で抽出すると、前年と比べてマーケティング活動がどのように伸長してきたのかを確認できます。
マーケティング活動全体を俯瞰して評価するときにおすすめの機能です。
参考記事:成功パス分析の使用|Adobe
収益エクスプローラー
収益エクスプローラーでは、マーケティングがパイプラインにどのくらい貢献しているかを確認できます。収益エクスプローラーでは、マーケティングが商談・受注に貢献したかを様々な切り口で分析できますが、代表的なものは以下の通りです。
創出された商談のうち、マーケティングプログラム経由で獲得したリードによる商談と商談金額の割合
リード獲得チャネルごとの商談化状況
リード獲得チャネルごとの受注までのリードタイム
特定の業種で、各年度に発生した商談数
収益エクスプローラーは、マーケティングが収益創出をけん引したい、販促計画についてマーケティングデータをもとに提言したいという方におすすめの機能です。
参考記事:収益エクスプローラーでの商談分析について|Adobe
キャンペーンマネジメント推進支援サービス
パワー・インタラクティブでは、Marketo × Salesforce環境でのキャンペーンマネジメントを推進するサービスを提供しています。
パフォーマンスインサイトを活用してマーケティングの収益貢献を可視化するには、キャンペーンの適切な運用が必要不可欠です。しかし、キャンペーンの運用ルールを整備できておらず、パフォーマンスインサイトを活用できる環境が整っていない企業が多いのが現状です。
パワー・インタラクティブは、Marketoを中心として300案件以上のMA導入・活用支援を手掛けてきました。その経験をもとに全体最適のキャンペーンマネジメントを提供することで、マーケティングの収益貢献の可視化をご支援します。ぜひお気軽にご相談ください。
パワー・インタラクティブ マーケティング推進室(文責)