高める方法は?企業の命運を決定する「メディア情報リテラシー」

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メディア情報リテラシーは企業の命運を決定しかねない要素のひとつです。
実際に、最近、企業がメディアを通して発信した差別的なメッセージが炎上し、企業のイメージを損ねて、不買運動にまで発展した事例もあります。

一方で、2016年、2020年のアメリカの大統領選、さらには新型コロナ感染拡大にともなって、SNSを中心にさまざまなフェイクニュースや不確かな情報、誹謗中傷が拡散しました。偽情報に踊らされ、命を落とした人さえいます。

情報を発信する際に不測の事態を引き起こさないためにも、情報を受け止める際に偽情報に振り回されないためにも、情報メディアリテラシーは個人にとっても企業にとっても欠かせない能力です。

本記事では、メディア情報リテラシーについてさまざまな側面からわかりやすく解説し、有益な情報を提供します。

「メディア情報リテラシー」はさまざまなリテラシーの集合体

情報に関するリテラシーにはさまざまなものがあります。
ユネスコはこれらのリテラシーをすべて含めて「メディア情報リテラシー」と呼んでいます(図1)。*1

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図1 ユネスコによるメディア情報リテラシーの概念図

不確かな情報に対する反応

SNSの普及に伴い、誰もが情報を受信、発信しやすくなりました。
しかし、一方で、インターネット上には不確かな情報やフェイクニュースも増加しています。
特に新型コロナ感染拡大に関してはさまざまな偽情報がみられ、被害を引き起こしたものもありました。

日本ではトイレットペーパーが店頭から消える事態が生じましたが、それは偽情報を信じたからだったのでしょうか。

総務省の「新型コロナウイルス感染症に関する情報流通調査」の結果をみてみましょう。*2
以下の図2は、新型コロナウイルスに関する、いわゆるフェイクニュースやデマを見た・聞いたことがあると回答した人が、その情報を初めて見た・聞いたときにどのように思ったか、その割合を表しています。

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図2 フェイクニュースやデマを見た・聞いた人が初めてその情報に接して思ったこと

青の部分は「正しい情報だと思った・情報を信じた」で、割合が多い順から、「死体を燃やした時に発⽣する⼆酸化硫⻩(亜硫酸ガス)の濃度が武漢周辺で⼤量に検出された」、「新型コロナウイルスについて、中国が「⽇本肺炎」という呼称を広めようとしている」、「こまめに⽔を飲むと新型コロナウイルス予防に効果がある」となっています。

オレンジの部分は反対に「 正しい情報ではないと思った・情報を信じなかった」という回答の割合で、多い順から、「漂⽩剤を飲むとコロナウイルス予防に効果がある」、「花こう岩などの⽯はウイルスの分解に即効性がある」、「新型コロナウイルスは5Gテクノロジーによって活性化される」となっています。

では、「トイレットペーパーは中国産が多いため、新型コロナウイルスの影響でトイレットペーパーが不⾜する」という情報に関してはどうだったのでしょうか。
信じた人の割合は6.2%、正しい情報かどうかわからなかった人の割合が30.6%、情報を信じなかった人の割合が63.2%です。
当時、こうした偽情報はSNSによって拡散したとまことしやかに報じられましたが、図2の状況は、トイレットペーパーが店舗から消えたのは、必ずしもSNS上の偽情報を信じた人が多かったからではなかったことを示唆しています。

このように、不確かな情報に接したときに、その真偽をリアルタイムで見極めるのはなかなか難しいことです。しかし、社員が偽情報に基づいた決定をしたら顧客までもを巻き込んだ大変な事態が生じるおそれもあります。

なぜ不確かな情報に振り回されてしまうのか

私たちはなぜ不確かな情報に振り回されてしまうのでしょうか。
総務省の「プラットフォームサービスに関する研究会 最終報告書」には、その理由が以下のように示されています。*3

偽情報に関しては、インターネット上に限った問題ではなく、デマや流言飛語が口コミで拡散されることはこれまでも存在しました。
しかし、現在、SNSなどの以下のような特質によって、インターネット上の偽情報が顕在化するのではないかと考えられています。

  1. SNS では一般の利用者でも簡単に情報発信・拡散できるため、偽情報も拡散されやすいこと
  2. 多くの利用者がプラットフォームサービスを通じて情報を収集・閲覧しているため、情報が広範囲に、また迅速に拡がり、影響力が大きいこと
  3. 偽情報は、SNS上で正しい情報よりもより早く、より広く拡散する特性があり、SNS 上の「BOTアカウント」(人間ではなくロボットによって自動的に投稿を行うアカウント)が拡散を深刻化させていること
  4. 自分と似た興味・関心・意見を持つ利用者が集まるコミュニティが自然と形成され、自分と似た意見ばかりに触れてしまうようになる(「エコーチェンバ ー」)、パーソナライズされた自分の好み以外の情報が自動的にはじかれてしま う(「フィルターバブル」)などの技術的な特性があること
  5. 各利用者の利用者情報の集約・分析によって、個々の利用者の興味や関心に応じた「ターゲティング広告」などの情報配信が可能で、効果的・効率的な利用者へのアプローチが可能であること

こうした状況から、現在、FacebookやTwitter、LINE、Google、Yahoo!JAPANなどのプラットフォーム事業者やメディア関係者は、独自に、あるいはファクトチェック機関との連携によって、偽情報を防ぐためのさまざまな取り組みをしています。*4

ファクトチェックの方法

私たち自身も、SNSの特性をよく理解し、インターネット上の情報を鵜呑みにせずに冷静に評価することが必要です。
では、具体的にどうしたらいいのでしょうか。

2017年6月に、ファクトチェック活動を推進する団体「FIJ ファクトチェック・イニシアティブ(FactCheck Initiative Japan)」が設立されました。*5

FIJの主な取り組みは、AI技術を活用したファクトチェック活動の支援です。
自然言語処理技術を応用して、SNS上の情報からファクトチェックが必要な「疑義言説」の候補を自動的に収集し絞り込むシステムを開発し、メディアに提供しています(図3)。*6

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図3 FIJの活動概要

このFIJが一般向けに公開しているファクトチェックのためのリーフレットをみてみましょう。*7
このリーフレットでは、2020年5月に拡散されたSNSの投稿例を通して、誤・偽情報に惑わされないための予防策を提案しています。その投稿例と対応法は以下のようなものです。

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図4 2020年に拡散されたSNSの投稿例(上)と不確かな情報に接したときの対応法(下)

FIJはウエブサイト上で、ファクトチェックによって検証された国内外の情報を提供しています。

こうしたFIJによる支援を活用するのもひとつの方法です。

企業の炎上事例とその要因

炎上が起こると、企業に批判が集中し、それが不買運動につながることもあり、株価や収益の減少、商品の廃棄処分等、金銭的な被害が出る例も少なくありません。*8
ここでは、炎上事例とその要因をみていきます。

ある企業が、商品にちなんだエッセイや画像などの作品を募集するイベントの一環として、11 個のBOTアカウントを作成し、商品にちなんだ30個のキーワードに対して、自動でメッセージを返信できるようにしました。
ところが、それは、Twitterユーザーにとっては、フォローしていないアカウントから自動でプロモーションメッセージが送られてくるものでしかなく、スパムのように映ったため、企業に非難が集中しました。
さらに、その企業が対応を始めるまでに、3つのアカウントがTwitterよって公式にスパム認定され、凍結させられていました。
このケースは、Twitterの規則に反した結果、炎上したといえます。

また、ある調査によると、2020年上期には全体の1割にも満たなかったメーカーの炎上が同年下期では増加し、炎上の17%を占めました(図5)。*9*10

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図5 2020年1月から12 月までの炎上対象

特に同年11月はメーカーの炎上が多く、全体比率の20%を超す結果となりました。
調査を行った企業の分析によると、マーケティング・コミュニケーションの内容への批判が約1/3を占め、その他、企業のコンプライアンス問題への批判、製品の品質への批判も多く見られたということです。
ちなみに、これらの批判に、新型コロナウイルスに関連するものはほとんど見られませんでした。

批判の引き金となったマーケティング・コミュニケーションやコンプライアンス問題の内容を確認したところ、情報公開時に多様な観点からチェックを行っていれば、ミスコミュニケーションや製品不備が生じていることに気づけるものが散見したということです。

このような炎上が発生している要因の一つとして、テレワークなどによって、社内の意思決定フローやコミュニケーションが十分に機能していない可能性も推測されています。
どの企業にとっても人ごとではない状況があるのです。

情報メディアリテラシーを使いこなすために

以上みてきたように、企業にとっても個人にとっても、メディア情報リテラシーは大切な能力です。
たとえ個人のアカウントから発信したことであっても、今はすぐに所属企業が割り出され、企業も信用を失ってしまいます。

間違った情報に振り回されないために、上述のように、冷静に、丁寧に、多面的な情報分析をし、必要に応じてファクトチェック機関を利用することが大切です。

また、炎上に関しては、発信する企業と受け止めるユーザーとの間に意識の乖離があるのではないでしょうか。
冒頭で取り上げた差別発言に関していうと、差別がマジョリティーからマイノリティに向けられるものであることをよく理解し、マイノリティーに配慮することが大切です。

情報発信に関しては、その発言がどのように受け止められるかをよく検証し、企業内で何重にもチェックして、細心の注意を払う必要があります。
その際、経営層の意識が偏っているおそれがあることも考慮し、さまざまな属性や背景をもつ社員の、多様な意見を吸い上げることが有益ではないでしょうか。

そのチェック機能が健全に働くかどうかは、社員の多様性が実現できているか、また誰でも率直に提言できる風通しのいい社風であるかどうかにかかっているのかもしれません。

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この記事を書いた人

横内美保子

博士。元大学教授。総合政策学部などで准教授、教授を歴任。専門は日本語学、日本語教育。
Webライターとしては、各種資料の分析やインタビューなどに基づき、主にエコロジー、ビジネス、社会問題に関連したテーマで執筆、関連企業に寄稿している。