アフィリエイト広告に関する景品表示法のルール|広告主・アフィリエイターが注意すべきポイントを弁護士が解説

アフィリエイト広告は、企業にとっては集客ツールとして、サイトやブログの運営者にとっては広告収入源として盛んに利用されています。

アフィリエイト広告に対しては、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)の規制が適用されます。広告主はもちろんのこと、個人でアフィリエイト収入を得ようとする方も、景品表示法のルールを踏まえて適切にアフィリエイト活動を行いましょう。

今回は、アフィリエイト広告に関する景品表示法のルールについて、広告主・アフィリエイターが注意すべきポイントをまとめました。

景品表示法によって禁止されている不当表示

景品表示法5条では、優良誤認表示・有利誤認表示などの不当表示が禁止されています。

不当表示を行った事業者は、消費者庁長官による措置命令(同法7条)・課徴金納付命令(同法8条)の対象になり得るので注意が必要です。

優良誤認表示

優良誤認表示とは、以下の2つの要件を満たす表示を意味します(景品表示法5条1号)。


(1)商品・サービスの品質・規格などの内容が、実際のものまたは競合他社のものよりも著しく優良であると示す表示であること
(2)不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあること

(例)

  • 「あっという間にニキビが消えました!」という使用者の体験談が薬品の広告に掲載されたものの、その体験談は架空のもので、実際には薬品にニキビを消す効能はなかった。
  • 「競合X社製品の2倍の保湿効果!」という宣伝文句が保湿剤の広告に掲載されたものの、「2倍」の根拠となるデータが掲載されていなかった。

有利誤認表示

有利誤認表示とは、以下の2つの要件を満たす表示を意味します(景品表示法5条2号)。


(1)商品・サービスの価格などの取引条件が、実際のものまたは競合他社のものよりも著しく有利であると示す表示であること
(2)不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあること

(例)

  • 「取引10回達成で手数料20%割引!」という宣伝文句がオンライン株取引サービスの広告に掲載されたものの、実は他にも手数料割引の厳しい条件が設定されており、実際に手数料が割り引かれた例は全くなかった。
  • 「当社指定プロバイダーと契約すれば、パソコンを無料で貸し出し!」という宣伝文句がインターネット接続サービスの広告に掲載されたものの、実際には月々の通信費にパソコンの購入費用が含まれていた。

その他の不当表示

優良誤認表示・有利誤認表示のほか、以下の不当表示が禁止されています(景品表示法5条3号)。

(1)無果汁の清涼飲料水等について、無果汁・無果肉である旨を明瞭に記載せずに行う以下の表示

  • 果実の名称を用いた商品名等の表示
  • 果実の絵、写真または図案の表示
  • 果汁や果肉と同一または類似の色、香り、味付け等がされている旨の表示

(2)商品の原産国に関する不当な表示

(3)消費者信用の融資費用に関する不当な表示

(例)実質年率の不明瞭な記載など

(4)不動産のおとり広告に関する表示

(例)

  • 実在しない不動産の表示
  • 取引できない不動産の表示(売約済みなど)
  • 取引の意思がない不動産の表示

(5)おとり広告に関する表示

(例)

  • 取引の準備がなされていない商品やサービスの表示
  • 供給量や供給期間が著しく限定されていることが明瞭に記載されていない商品やサービスの表示
  • 取引の意思がない商品やサービスの表示

(6)有料老人ホームに関する以下の事項の不明瞭な表示・不表示

  • 土地又は建物
  • 施設又は設備
  • 居室の利用
  • 医療機関との協力関係
  • 介護サービスの内容
  • 介護職員等の数
  • 管理費等

アフィリエイト広告を「表示」するのは誰か

アフィリエイト広告に関与するのは、以下の3者です。


(1)広告主
広告の対象である商品・サービスを販売する事業者です。

(2)ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)
アフィリエイト広告の掲載システムを運営する事業者です。広告主とアフィリエイターを媒介します。

(3)アフィリエイター
運営するウェブサイトやブログなどで、アフィリエイト広告を掲載する者です。


裁判例において、広告について景品表示法上の「表示」を行うのは、広告表示の内容の決定に関与した事業者であると解されています(東京高裁平成20年5月23日判決)。
したがってアフィリエイト広告の場合、表示内容を決定する広告主が「表示」を行っていると解され、広告主に景品表示法の規制が適用されるのが原則です。

ただし、アフィリエイターが広告主の指示を超える内容の広告を掲載した場合には、広告主は景品表示法上の不当表示に関する責任を免除されることがあります。

(例)
アフィリエイト・ブログにおいて、アフィリエイターが独自の紹介文を掲載した場合など

また、アフィリエイターが広告主と共同で商品やサービスを供給している場合、アフィリエイターにも景品表示法の規定が適用され得るので注意が必要です。

アフィリエイト広告主が講ずべき措置

消費者庁は、景品表示法26条2項に基づき、不当表示の防止に関して事業者が講ずべき措置をまとめた指針を策定・公表しています。2022年6月29日には指針の改定版が公表され、アフィリエイト広告に関する事項が新たに盛り込まれました。

同指針において、消費者庁はアフィリエイト広告主に対し、以下の措置を講ずることを求めています。
自社による景品表示法違反の行為を予防し、万が一違反行為を発見したら迅速に是正できるように、広告主は以下の措置を万全に講じておきましょう。


(1)アフィリエイターに対する、景品表示法の考え方の周知・啓発

(2)アフィリエイターに対する、法令遵守の方針等の明確化
→違反したアフィリエイターに対する報酬の支払い停止・契約の解除などを含む

(3)アフィリエイト広告の表示等に関する情報の確認
→委託先を通じての確認や、委託先の監視などを含む

(4)アフィリエイターに対する、アフィリエイト広告の表示等に関する情報の共有
→すべての情報を事前共有できない場合は、アフィリエイターからの相談受付・他の事業者を通じての共有などを行う

(5)アフィリエイト広告表示に関する管理担当者の指定
→アフィリエイターへの周知、法令に関する講習の実施などを含む

(6)削除されたアフィリエイト広告の内容を事後的に確認するための措置
→自ら資料を保管する、他の事業者やアフィリエイターに保管させるなど

(7)不当表示等が判明した場合の迅速・適切な対応
→削除・修正体制の構築、違反したアフィリエイターに対する処分、一般消費者向け相談窓口の設置など

(8)アフィリエイト広告であることの明示


広告主が講ずべき具体的な措置については、以下の消費者庁指針に詳しくまとめられているので、併せてご参照ください。

参考:
事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針|消費者庁

アフィリエイターが注意すべき事項

実際に広告を掲載するアフィリエイターは、広告主が定める方針・規約などを遵守しなければ、広告主によって以下のペナルティを受ける可能性があります。


  • 成果報酬の支払いが停止される
  • 支払済みの成果報酬の返還を求められる
  • 契約を解除される

など


安定的にアフィリエイト収入を得るためには、景品表示法の規制を正しく理解することに加えて、広告主が定める方針の内容をよくご確認ください。

この記事を書いた人

阿部由羅

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。