カスタマージャーニーは何に使う?マップの作り方、活用事例を確認しよう

マーケティングに関わる人なら「カスタマージャーニー」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
あらゆるマーケティング施策を考えるうえで、顧客の購買プロセスは重要な指標となります。 しかし実際にマップを作成して運用している企業は少ないのが現状です。
そこで今回は、カスタマージャーニーの重要性とマップの作成方法・注意点、活用事例について一緒に見ていきましょう。

カスタマージャーニーとは

はじめにカスタマージャーニーの概要と重要視されるようになった背景について見ていきます。
カスタマージャーニーとは顧客が商品やサービスを購入するに至るまでの行動や、認知→興味→検討といった思考や感情などのプロセスのことです。
企業は顧客の購買プロセスであるカスタマージャーニーを把握することで、より効果的なプロモーションをうつことが期待できます。

マーケティングにおける重要性

カスタマージャーニーが近年マーケティングにおいて重要視される理由に、情報源の複雑化が挙げられます。
顧客の情報源がテレビや雑誌からインターネットやSNSに移行したことで、購買行動を把握することが困難になってきているためです。

総務省による令和4年版情報通信白書によると、2007年に米国でiPhoneの販売が開始を機に、世界におけるスマートフォンの普及は年々増加傾向にあります*1
とくにスマートフォンの世界的な広がりと並行して、ゲーム、動画・音楽配信、地図、SNS検索などエンドユーザー向けのコンテンツ・アプリケーション市場も急拡大しています。

オンラインでのサービスが普及した結果、顧客の行動も多様化していることもカスタマージャーニーが広まった要因となっています。

世界におけるスマートフォン普及の推移

我が国においても同様に、スマートフォンの世帯保有率は2010年では9.7%であったのに対し、2021年には88.6%まで上昇しています*2

我が国におけるスマートフォンの世帯保有率の推移

情報源は複雑化し、顧客は求めているものに対して、入念に比較・検討をするようになりました。
その一方で、顧客ひとりひとりに対して細かなアプローチを行えるようにもなっています。

顧客の行動が多様化したために、マーケティングにおいてもカスタマージャーニーを考慮し、適切なアプローチをしなければ商品やサービスを顧客に届けにくくなっているのです。

活用して得られるメリット

カスタマージャーニーを活用することで、商品やサービスを広める際にチャネルごとに施策を検討したり、細かなプロモーションを打つことが可能になります。
最適なプロモーションを打つためには、顧客の視点を理解することが重要ですが、顧客の視点を理解するためにはカスタマージャーニーを考えることが必要です。

また、社内的なメリットとして、カスタマージャーニーが社内での共通認識となる点が挙げられます。
マーケティング施策を複数の部署で並行して行う機会がある際に、カスタマージャーニーを設定しおくことで認識のずれを防ぎ、効率よく施策を実施できる効果が期待できます。

したがって自社商品やサービスを販売する際はカスタマージャーニーを設定し、社内で商品企画の段階からプロモーションに至るまで、ユーザーのイメージを共有しておくことが、今後のマーケティングにおいて重要になってきています。

カスタマージャーニーマップの作成方法

次にカスタマージャーニーを実際に可視化したカスタマージャーニーマップについて見ていきます。
カスタマージャーニーマップは、顧客が商品やサービスを購入するまでを旅になぞらえて整理し視覚化し、顧客と企業との関係性をストーリーとしてまとめたものです*3

ジャーニーマップ

購買までの体験のみならず、購入後の体験も含めて作成していきます。
顧客が購入までにとった行動と背景、思考や感情の起伏等もあわせて時系列に整理することで改善ポイントが明確となり理想的なプロモーションを打てるようになります。

作成手順

次に実際にカスタマージャーニーマップを作成する手順を見ていきます。

1)ペルソナ設定

カスタマージャーニーを考えるうえで重要となるのが「ペルソナ」の設定です。
ペルソナとは仮想の顧客の、目的、行動、感情のパターンを定義するもので、具体的には以下のようなものです*4

ペルソナシート(イメージ)

ペルソナを設定することで、具体的な利用者像をイメージしながら検討することができるようになります。 また、ペルソナがどう振る舞うかという視点で検討すると、自然と利用者の視点で情報の整理を行うことが可能です。

また、40代女性会社員のように抽象的に定義してしまうと、プロジェクトに関わる人それぞれのもつ前提によって定義づけられてしまうため、認識のずれが生じてしまいます。
ペルソナを設定することで明確な顧客のイメージを共有できるため、判断基準の共有が可能になります。

2)場面・フェーズの設定

顧客がどの段階でどのような行動をとり、思考や感情の変化が現れるかを、場面・フェーズに分けて設定していきます。
商品やサービスの購入がゴールでもいいですし、リピートがゴールでも構いません。 自社の目指すところを基準に設定していきましょう。

3)タッチポイントとチャネル設定・行動整理

場面ごとにタッチポイントとチャネルを設定し、それぞれ顧客がどのように行動したのかを整理していきます。
タッチポイントだけでなく、前後の行動に課題が潜んでいるかもしれないので、あわせて分析しましょう。

4)感情の起伏を落とし込む

実際に行動に移す前に、顧客がどのように考えたのか、感情の起伏をマップに落とし込みます。
起伏は曲線で表されることが多いのですが、ネガティブな面に課題が潜んでいることも多いため入念に検討しておきましょう。

5)改善の検討

最後に浮かび上がってきた課題や、改善を検討してマップに落とし込みます。
顧客の満足度を上げるために、顕在化している課題や設定した基準を下回っているものがあれば整理して書き込んでいきましょう。

注意点

カスタマージャーニーマップを作成するうえで注意点があります。

手段が目的化してしまう

作成することが目的化してしまい、作成しただけで満足して実際に活用できなくなるといった場合があります。
現状がうまくいっていないときの解決策としてカスタマージャーニーを作成する際に起こりがちです。
顧客の購買プロセスを可視化したあとに施策や改善点を検討することが重要だということを念頭に置いておきましょう。

準備不足

情報や整理などの準備が不十分なまま、カスタマージャーニーマップを作成してしまうことも陥りやすい失敗のひとつです。
作成する際には、まずペルソナ設定と顧客視点が大前提です。
そのため作成前には入念に情報収集と整理を行い、現実に近い顧客をイメージできる状態になってから作成し始めるようにしてください。

活用事例

最後に実際にカスタマージャーニーが活用されている事例をご紹介します。

高千穂町観光協会

宮崎県高千穂町では、過疎と高齢化の影響で基幹産業である農業が課題を抱えるなか、観光で町を支えるべくインバウンドに取り組んでいます。
インバウンドに取り込むため、高千穂町観光協会ではアンケートの分析・聞き取り調査・アナリティクス分析・カスタマージャーニーマップ作成といった4つの施策を行いました。
また、高千穂町が近隣の温泉街の中継地点として機能していることを理解したうえでカスタマージャーニーマップを作成し、旅ナカでのアプローチを実施しています。

高千穂町観光協会でデータ収集・分析、戦略立案を担当する飯干氏は次のように述べています。

カスタマー・ジャーニー・マップを作る際は、客観的な視点、フラットな考えを持ち、ブレーンストーミング(自由に意見を言い合うこと)ができる人を集めることが肝心です。地域にいる外国人が参加すると、外国人目線の意見も聞けてより精度が上がるでしょう。

インバウンド取り組みにおいてカスタマージャーニーマップを活用した結果、2011 年以降から外国人観光客入込者が増加し、2017 年には7万人を突破しています*5

外国人観光客入込者数推移

まとめ

カスタマージャーニーマップを活用することで、効果的なマーケティング施策を打てる効果が期待できます。
チーム内で対話を重ねることもカスタマージャーニーマップを作成する際のメリットです。

しかし適切に活用するために、事前の情報収集などの準備、作成後の活用方法などについて、チーム内で検討を重ねておくことが重要です。

顧客の本質を検討し、ペルソナの認識をチーム内共有するためのツールとして、カスタマージャーニーマップを活用することを検討してみてもいいのではないでしょうか。

この記事を書いた人

平川ゆうこ

メーカーで営業・商品企画に従事した後、フリーのWebライターに。
主にマーケティングや業務効率化に関連したテーマで執筆、関連メディアに寄稿している。