オンライン服薬指導に、処方箋薬のデリバリー、かかりつけ薬局。 今、薬局に求められるもの。

オンライン服薬指導から処方薬のデリバリー、ドローンの活用まで、薬にまつわる医療サービスのデジタル化が進んでいます。この背景には、加速する超高齢社会と、新型コロナウイルスのパンデミックが大きく影響しています。今、薬局、とりわけこれまで処方箋を中心に扱ってきた調剤薬局には、大きな変化が求められています。国が推進する地域包括ケアシステムの流れからは、かかりつけ薬局としての役割が重要視されています。本記事では、薬局を取り巻く昨今の状況をご紹介します。

オンライン診療と服薬指導の需要増

日本では、高齢者人口の増加と共に慢性疾患を抱える人々が増加しており、継続的な医療サービスへのアクセスと在宅医療の強化が課題となっています。また、新型コロナウイルス感染症の流行は、人と人との接触を減らす必要性を浮き彫りにしました。これにより、オンライン診療やオンライン服薬指導、処方薬のデリバリーへの関心が高まっています。

かかりつけ薬剤師・薬局へ、薬局の役割変化

厚生労働省は、地域包括ケアシステムの推進の観点からも、かかりつけ薬剤師・薬局の機能強化を進めています。これは、服薬状況の把握や指導、医療・介護関係者との連携を効率的に行うことで、医療の質の向上と共に国民の健康増進を目指すものです。長寿大国として知られる日本ですが、健康寿命と平均寿命の差は約10年と、この差を短縮することは喫緊の課題となっています。
そこで、薬局には、かかりつけ薬剤師・薬局として、下記の機能が求められています。

<引用元:中医協 総-3 5. 7. 26 調剤について(その1)|厚生労働省 p9を参考に作成>

さらに、病気の予防や健康サポートに貢献する健康サポート機能を担うことで健康サポート薬局となることができます。
とりわけ、処方箋通りに薬を調剤して患者に渡すことが主な機能だった調剤薬局にとって、かかりつけ薬局、健康サポート薬局への転換はチャレンジングなものといえますが、やりがいにもつながる役割変化ともいえます。

ICTの活用とデリバリーサービス

電子処方箋、電子版お薬手帳などのICTを活用した取り組みは、患者の処方薬・市販薬も含む服薬情報全体を把握し、薬剤師が患者一人ひとりに合わせた適切な服薬指導を提供することを可能にし、薬の適正使用を促進します。患者の健康増進はもとより、長期処方・多剤処方による医療費増の軽減にも貢献します。
また、ICTの活用は、患者と薬剤師のコミュニケーション方法を変えつつあります。オンライン診療からオンライン服薬指導、処方箋のデリバリーサービスまでを一貫して行うサービスも既に行われています。Uber Eatsによる処方箋薬のデリバリーサービスの開始など、新たな配送サービスも登場しています。高齢者や外出が困難な患者も安心して必要な薬を入手することを可能にしています。

地域全体での連携強化

薬局間の連携や地域包括ケアシステムにおける役割も見直されています。小規模薬局では24時間対応など、すべての機能を単独で提供することが難しいため、かかりつけ薬剤師・薬局として届出をしていない薬局も少なくありません。地域の薬局が連携し、全体でサービスを補完し合う視点も重要です。地域住民に対してより包括的な健康支援を提供するためには、これからの薬局には一薬局を超えた連携が求められているともいえます。

かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料の届出薬局数

(令和4年7月1日時点)

届出薬局数 35,382 (保険薬局全体の58.4%)
(参考)保険薬局数 60,607

<出典:令和4年度厚生労働省保険局医療課委託調査「薬局の機能に係る実態調査」 調剤について その2 p21から引用・作成>

まとめ

オンライン診療から服薬指導、処方薬のデリバリーに至るまで、デジタル技術の進展は医療サービスの提供方法を根本から変えつつあります。これらのサービスが拡充することで、国民はより良いQOLを実現し、医療提供者は効率的なサービス提供が可能になります。かかりつけ薬局としての役割も進化し、ICTの活用を通じて薬剤師が提供できる価値はますます高まっています。今後生き残れる薬局になるためには、ICTの活用と地域連携により、かかりつけ薬局として、地域住民の健康への貢献が欠かせません。

この記事を書いた人

今村美都

がん患者・家族向けコミュニティサイト『ライフパレット』編集長を経て、2009年独立。がん・認知症・在宅・人生の最終章の医療などをメインテーマに医療福祉ライターとして活動。日本医学ジャーナリズム協会会員。