事例

ユーザックシステム株式会社 B2B Marketing Analyticsでマーケティング・営業施策を評価する

ユーザックシステム株式会社 B2B Marketing Analyticsでマーケティング・営業施策を評価する

ユーザックシステム株式会社 執行役員 マーケティング担当 大崎 豊 氏

「B2B Marketing Analytics」は、Account Engagement (旧 Pardot)とSalesforceのマーケティングおよび営業データを一元管理し、可視化するツールです。これにより、キャンペーンの効果をリアルタイムに把握することができます。弊社では、RPAや業務改善ソリューションなどの「名人シリーズ」を提供するユーザックシステム様へ、B2B Marketing Analyticsの活用支援を行いました。

本稿では、ユーザックシステム株式会社 執行役員 マーケティング担当の大崎 豊 氏に、B2B Marketing Analyticsの活用状況と効果について聞きました。

B2B Marketing Analytics活用の目的は、マーケティング・営業施策の見える化

B2B Marketing Analyticsを利用することになった背景や目的を教えてください。

以前からせっかくSalesforceが入っているのに、マーケティングや営業施策の評価の見える化ができていないと感じていたところ、御社からB2B Marketing Analytics活用の提案があり、やってみようかと思いました。実施したキャンペーン(マーケティング施策)について、どれくらいの集客ができ、どれくらいMQLやSQLに進み、最後は受注になったのか、調べていけばわかるのですが、結構手間がかかります。

B2B Marketing Analyticsのダッシュボードを使うことで、営業部門が実施している展示会出展やセミナー開催などの施策の成果が出ているのか、見える化することが目的でした。展示会でほとんど受注が取れていないことがわかり、展示会が受注目的であれば出展しても意味がないことを営業側も感じてくれるのではないかと思いました。また、セミナーも毎週1、2回やっているのですが、営業企画は大変な思いで準備しているものの、本当に成果は出ているのか把握できていません。ダッシュボードを使えば見える化できると考え、営業の役員と相談し取り組むことに決めました。意味がない施策は止めればいいし、成果が出ている施策はそこに集中するという見極めもできます。

マルチタッチ・アトリビューション・ダッシュボードで商談に貢献している施策を確認

具体的な取り組みを教えてください。ダッシュボードはいくつかご用意しましたが、どのダッシュボードを活用していますか?

マルチタッチ・アトリビューション・ダッシュボードです。これはキャンペーンの商談に与えた影響を測定するためのダッシュボードです。(図表1参照)

図表1:マルチタッチ・アトリビューションダッシュボードの全体像

キャンペーンやキャンペーン終了日、商談区分や商談の受注予定日など、項目ごとにフィルターを設置してもらっているので、自分で細かくドリルダウンをして、どの施策が商談に貢献しているのかを見ています。(図表2参照)

図表2:マルチタッチ・アトリビューション・ダッシュボードのフィルター領域

ダッシュボードは、日々見ているわけではありませんが、少なくとも月に1回、月初に前月の成果に関するレポーティングを、マーケティング本部内と経営会議内で確認しています。ちゃんと見るのは月1回ベースで、「あの施策の成果はどうなっている?」と気になるときに都度見ています。ならすと週に1回は開いています。

ダッシュボードにより、翌期の見込み商談データが残されていないことが判明

直近ではどのような使い方をしましたか?

最近では1月中旬から1月末にかけて、翌期が始まる7月~12月までの上半期分析を行うためによく見ていました。製品別や受注予定などいろいろフィルタリングをかけて絞り込んで見ています。

マーケティング本部がいまやらなければならないと思っているのは、商談の見込み集計です。この半年間の新規開拓商談からは、今期の売上げ目標を達成するための商談は出ないと見ています。商談日数をSalesforceで見ると受注まで平均200日くらいかかっているので、1月にセミナーで集客し、2月にかけてインサイドセールスがフォロー、2月末にSQLになって商談が作られたとしても、そこから半年後の8月に受注するのでは今期の売上げにはなりません。

最短の期間で見て、商談から受注まで60日、3月頭に商談ができて4月末に受注、そこから売上げが立つまで1〜2カ月、これでギリギリ今期末6月の売上げに間に合うくらいです。今期の売上げにできるかは営業企画や営業でなんとかするところで、マーケティングでは翌期7月以降の商談パイプラインを埋める活動を行っています。

ダッシュボードで翌期以降の商談パイプラインはどれだけあるのかを見ると、ほとんどなかったという衝撃の事実が判明しました。SQLはたくさん出ているはずなのに、7月以降の受注見込みのある商談データが全然ないのです。ダッシュボードができてサクサクと見ていけるようになって判明しました。

色々見ていると、営業が半年以降の見込み商談をクローズしてしまっていることが確認できました。営業は目先の受注を追いかけるので、受注見込みが少し先になる商談は「いまじゃない」とクローズしてしまうのです。残していると上司から「これどうなっているのか?」と問われるのが嫌なのでしょうね。現在見込み商談の登録ルールづくりを進めているところです。

私は、期初に売上げ目標の3倍の商談がないと売上目標は達成できないと思っています。受注率をふまえると2倍では無理、3倍なければ目標達成はできないというのが私の感覚です。

ダッシュボードを利用する前からなんとなく気づいてはいました。これまでエクセルでデータ抽出する作業を面倒くさいと思いながら半年に一度やっていたのですが、翌期や翌々期までは見ていませんでした。今回ダッシュボードで翌期以降のデータを見たら、全然見込み商談がないことに気づいたのです。

そこで営業向けに、なぜSalesforceを入れて商談管理をやっていくのか、勉強会を実施することにしました。1回目はSalesforceによる商談管理のメリットは何か、2回目はマネジメントをするリーダー、部長、本部長にどうやってパイプラインマネジメントをSalesforceを使ってやるべきかをテーマにしています。Salesforceを見込み集計だけでなく、部下のためのコーチングに使ってほしいと考え、勉強会を行うことにしたのです。

セミナーは今期売上げには貢献していないことを確認

実施するセミナーは本当に意味があるのかという疑問は、ダッシュボードを使うことで解消されましたか?

想像通り、セミナーをやって受注まで相当時間がかかっており、営業は今期の売上げ目標を達成するためにセミナーを実施していますが、受注につながっていません。ダッシュボードでは、セミナーに絞って商談フェーズにどれだけお客様がいるのかを見ています。(図表3参照)たまには受注が決まりそうなお客様もいますが、評価できるセミナーは確認できていません。

図表3:マルチタッチ・アトリビューション・ダッシュボードのキャンペーン別貢献度

ダッシュボードを使って施策の評価を行うタイミングとして、翌期の計画策定を行う2日間の合宿が5月に予定されています。参加するのは役員と部長の役職がついている者です。今期目標達成ができなければ、なぜ達成できなかったのかを追求し、体制の見直しや販促の成果と投資先の検討、営業目標もそこで決めます。ここで今期の様々な施策の評価を行うので、ダッシュボードが大活躍すると思います。

製品別ステージ管理に向けてプロスペクト・ダッシュボードを準備中

今後、ダッシュボードをより活用する予定はありますか?

キャンペーンからどれだけリードが発生し、MQL、SQLになっているのか、ステージ遷移が追えるようになり、どのステージにどれだけストックしているのか、プロスペクト・ダッシュボードで確認できるようにしたいと考えています。

現在ダッシュボードを活用しているのは私とマーケティング担当の高橋くらいでして、ステージ別にリード数が確認できるダッシュボード画面があれば営業側ももっと見てくれるはずです。

プロスペクト・ダッシュボードを活用するには、パイプライン管理をマーケティング本部がきちんと行う必要があります。現在、「Autoジョブ名人」の製品資料ダウンロードから入ってきたプロスペクト(*1)が「ダイナミックリスト」(*2)に入り、そのリストに対しAccount Engagementが稼働しています。現在はプロスペクトのセグメントは製品のみです。開封したら次のメール、さらに次のメールを配信するという流れはできているのですが、Aさんが今どのステージまで来たかの管理はしていません。製品別にステージ管理ができると、よりOne to Oneに近い施策が回せるのではないかと思います。

プロスペクトのステージを3つに分けるのがいいのか、5つに分けるのがいいのか、あるいはカスタマージャーニーで分けるのがいいのか要検討ですが、ステージごとの遷移条件を明確にして、条件を満たせば自動で次のステージへ進む流れを作りたいと考えています。そして、ステージにいるプロスペクトにAccount Engagementのシナリオを流していくようにします。

例えば、AIDOMA(*3)別にステージを組んで、現在はどの段階にいるのか、プロスペクトでパイプライン管理をしたいのです。ストックが足りないステージには、プロスペクトの獲得を加速し、そのためのコンテンツを作るようにします。また、ステージA~Dを作ったとして、もうすぐMQLになりそうなステージDのプロスペクトがどれだけいるか把握できれば、メールを配信してMQLへ押すことができます。

さらに、ステージDにはどんな人たちがいて、どんなコンテンツを見て、どんなアクションをしているのかが見えてくれば、インサイドセールスに電話してはどうかと、リストを渡す使い方ができます。インサイドセールスがSQLをもっと創出しなければならない中でリストが枯渇している状態をヘルプできるのです。

現状は、人的リソースが不足してステージ設計ができていません。マーケティング担当の高橋は、余裕ができたら今期中には使いたいと言っているのですが、プロスペクトをどんな管理にすればいいのか、我々が考えていることが正しいかどうかわかりません。ぜひ御社にステージ設計のコンサルティングサポートを行ってもらえると嬉しいです。

*1:メールアドレス情報を入手している登録顧客
*2:条件に合致したら組めるリスト
*3:消費者の購買行動プロセス。Aは注目(attention)、Iは興味(interest)、Dは欲求(desire)、Mは記憶(memory)、Aは行動(action)を意味する。

パワー・インタラクティブの理解度が高く、ダッシュボード設定もスムーズに進む

パワー・インタラクティブが貢献できたことはありますか?

Account Engagementの知識はあまり持っていないのですが、機能がたくさんあることはわかっています。そうした中で、色々と相談に乗ってもらい、弊社が実現したいことはどの機能を使うべきかなど、的確に回答いただいているところは感謝しています。

弊社側は人数が少なく、技術的なプロではないので、Account EngagementやSalesforce以外にもGA4、Webサイトなど相談対応してもらっているのはとても助かっています。

ダッシュボードを設定する際も、一言「こういうのがほしい」と言うと、察してアドバイスや提案をいただきました。長くお付き合いする中で弊社のことをよく理解し、言葉が通じることが一番のメリットだと感じています。

プロフィール

大崎 豊 氏
ユーザックシステム株式会社 執行役員 マーケティング担当

外資系企業で営業およびマーケティングに従事。その後、マーケティングエージェンシーに転籍後2019年6月よりユーザックシステムのマーケティング部門に就く。IT企業のマーケティング、インサイドセールス、営業のDX推進を積極的に展開している。

ユーザックシステム株式会社 
https://www.usknet.com/

インタビュー実施日:2025年2月18日

担当コンサルタントの声

ご一緒にダッシュボードを構築させていただく中で、改めて感じたのは、ユーザックシステム様のマーケティングと営業の成果を高めるためには、ダッシュボードを作って終わりではなく、状況の変化や運用実績に合わせて常に進化させていくことの重要性です。たとえば、レポート指標の細分化や自動化、キャンペーン施策との連動強化など、小さな改良の積み重ねが大きなビジネス成果につながります。私たちは具体的な改善提案やサポートを継続し、ユーザックシステム様がより高い成果を得られるよう伴走していきたいと考えています。

小畑 敬裕

マーケティングコンサルタント

小畑 敬裕

Salesforce Sales Cloud活用支援

マーケティングコンサルタントとして、Salesforce Sales CloudとAccount Engagementの導入・運用支援を得意とする。UX設計に基づくデジタルマーケティング戦略策定やマーケティング施策効果の可視化にも強みを持つ。B2B企業を中心に多数の支援実績があり、ペルソナ作成やマーケティング分析を通じたコミュニケーションシナリオ策定など、クライアントの課題解決に貢献。休日はバスフィッシングを楽しみ、自然の中でリフレッシュしている。

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