経理業務プロセスの可視化、標準化、自動化、統制強化を実現する経理業務変革プラットフォーム「BlackLine」を提供しているブラックライン株式会社(以下、ブラックライン)。アメリカに本社のあるBlackLine社の日本法人であり、ジャパン・クラウドとBlackLine社との合弁企業です。「BlackLine」は、世界130カ国以上、約4,400社の企業、385,000を超えるユーザーに利用され、日本国内でも100社以上に導入されています。
パワー・インタラクティブでは、2019年からAdobe Marketo Engage(以下、Marketo)の活用支援を開始し、2024年からはWebサイトの改善もサポートしています。本稿では、ブラックラインでマーケティングに携わる3名に、これまでの取り組みについてうかがいました。
大徳 貴子 氏
大徳氏:ブラックライン日本法人は2019年1月からビジネスを開始しています。急速に日本でのビジネスを立ち上げるため、設立当初は人やノウハウなどリソースが不足していました。その後、半年後くらいにマーケティングスペシャリスト(以下担当)が加わりましたが、一人で日本のマーケティング活動の全てをカバーしなければなりません。マーケティングオートメーション(以下、MA)の運用だけでなく、Webサイト制作、コンテンツ制作なども展開する必要があります。リソース不足をカバーするとともに、「餅は餅屋」の考えで施策ごとに外部の専門家に協力をお願いし、一緒に進めていきました。
パワー・インタラクティブさんとは、ブラックラインに共同出資をしているジャパン・クラウドから紹介されたのが始まりです。マーケティング担当者はMAのオペレーションだけを行うわけではないため、御社にMarketoのサポートやアドバイスをお願いしていました。
私はマーケティング本部の責任者として2020年8月に入社していますので、入社時にはすでに御社とのお付き合いは始まっていました。
入社した当時は、私とマーケティング担当者との2名体制でした。現在は日本法人には約50名が在籍し、マーケティング部門にはマーケティング担当者が2名、BDRが5名、契約社員2名の計10名が配属されています。当社ではBDRはマーケティング部門に所属し、BDR活動のほかセミナー講師も務めるなど、チームとしてさまざまな施策を一緒に進めています。
大徳氏:マーケティング部門はイベントやWebサイト、MAやコンテンツ制作、さらには広報活動も担っているため、御社含め4-5社の協力会社と一緒に業務を行ってきています。ビジネスが立ち上がった当初からすべてのマーケティング施策をカバーする必要があります。現在もカバー領域は変わりませんが、施策の量を増やしている状況です。
私が入社した時期はコロナ禍でしたので、リアルイベントの開催はほとんどおこなっていませんでした。しかし、ビジネスを成長させるためには、お客様へのリーチを増やす必要があります。リアルイベントの代わりにウェビナーの種類や開催数を増やしていきました。ウェビナーでは、「BlackLine」を紹介する入門編のみの開催だったところをパートナー企業との共催や事例紹介、「BlackLine」の活用実践編、さらにオンデマンド配信を増やしていきました。
コロナ禍が落ち着いてからは、リアルイベントの開催が増えました。私たちのビジネスは売上1000億円からさらには1兆円以上の大手エンタープライズ企業の経理部門にフォーカスしているため、対面の商談も重要です。Cクラスの方や部門長クラスの方を招いたクローズドなイベントもおこなっています。特に2024年は会社の方針として、オンライン広告などの幅広いアプローチより、リアルイベントの開催を増やして、お客様との直接的な接点を増やすことにいたしました。
また、私たちはブランディングを意識しており、お客様にとって、永く付き合えるビジネスパートナーとして、信頼していただけることに重きをおいています。例えば、メールを配信する際には、正確で有益な情報をお届けするため、HTMLメールではなくテキストメールをお送りするようにしています。特に海外で制作したコンテンツを翻訳する際には、正しい日本語で翻訳されているか、内容としっかりとしたものであるかを特に重要視しています。イベントにしても多くのIT関連企業が行うような賑やかなものより、権威のある方に登壇いただき、参加者の皆様にとって有益な情報を提供できるようなセッションを用意するように意識しています。
大徳氏:Marketoの導入のきっかけは、アメリカ本社が利用していたからですが、運用は日本法人に任せられているので、運用に関する大きな縛りはありません。日本側でコンテンツをアップできますし、エンゲージメントプログラムの設計もおこなっています。スコアリングルールのみ本社が決めている部分があるくらいです。ジョイントベンチャーで100%子会社ではないので、ほかの外資系企業に比べると自由だと思います。
須藤氏:システム連携に関しては、本社で決められたツールがあり、完全に連携できているので便利です。ただし、Marketoの特定のステータスを日本独自に持つことは難しく、その場合は代わりに使えそうなフィールドがないか、本社に確認をとります。以前、イベントの申し込みフォームに質問項目を設定する際、Marketoに保存するフィールドが使い勝手が悪く本社へ変更を依頼したことがあります。その際、本社への質問の仕方を御社にアドバイスいただき、本社とのコミュニケーションがうまくいった記憶があります。
須藤 友里乃 氏
古賀氏:Webサイトに関しても自由に運用しています。そもそも本社とはドメイン自体が分かれているので、日本独自の運用ができています。本社に合わせているのは、トンマナやサービス情報くらいです。
大徳氏:御社に支援いただいて最も助かっているのは、マーケティング担当者不在の空白期間の運用そのものを支援いただいたことです。当社で人の入れ替わりがあり、マーケティング担当者が1~2カ月不在になった時期があります。その間に運用が止まってしまうと困るのですが、御社に空白期間の運用代行を担ってもらうことで埋めることができました。
また、マーケティング担当者が新たに入社したときにはMarketoのトレーニングやガイドを実施してもらったり、一定期間伴走してもらったりしました。こうした柔軟なサポートを提供いただけるのが最大のメリットだと感じています。
古賀氏:私は入社当初、Marketoを触ったことがなく、何も分かりませんでした。御社にはあらゆる面でサポートをしていただきました。そこから3カ月、半年、1年と経つにつれ、トレーニングを通じてスキルが上がり、私からの質問数も減っていったと思います。お守りをしてもらうところから、現在は後ろから支えてもらう役割に変わりました。
古賀 祥晟 氏
大徳氏:マーケティング担当者に対し、マーケティング活動を広く進めるか、深く進めるかの考え方があると思いますが、私は社員には広く進めるジェネラリストになってほしいと考えています。深いことは専門会社にお願いし、いろいろな会社に協力してもらいながら進めたらよいと思います。
マーケティング担当者の人数が多い会社であれば、ファンクション別に担当を決めて、MAやWebサイトの専任がいると思います。しかし、当社は3名でマーケティングのアクティビティをすべて見ていく必要があり、業務は兼任で進めます。誰かが病気になって休んだ場合に備えて、ほかの人もバックアップできるようにするべきです。属人化を防ぐためにも、ジェネラリストであることが大事だと考えています。
Marketoのようなソフトウェアはつねに進化していきますし、使い方もより高度になっていきます。御社のような専門知識のある協力会社に支援いただきながら、取り組みを進めていく考えです。
須藤氏:2024年末から御社に支援いただき、Marketoのマニュアルやプログラムのテンプレートを作成しているところです。普段、私たちはリモートワークをしているので、担当者によってMarketoの設定方法にばらつきが出てしまうリスクがあります。それを防ぐためにもマニュアルやテンプレート作成を進めているところです。
大徳氏:Marketoは、WebサイトやSalesforceなどと連動しています。以前はMarketoに関しては御社に、Webサイトに関しては別の会社に、主にサーバーの保守やコーディングを担っていただいていました。分断された運用になっていたのですが、御社はMarketoだけではなく、Webサイトも含めたデジタルマーケティング全般に長けていると分かったので、Webサイト改修の支援をお願いした次第です。
まずは2023年末にWebサイトの診断をお願いし、その診断結果をもとにWebサイト最適化のアドバイスをいただいています。(図表1参照)
図表1:Webサイト診断からの改善案(診断レポートより一部抜粋)
古賀氏:Webサイトの改修プロジェクトは2024年に完了しました。結果として、コンバージョンが向上し、パフォーマンスが上がっています。非常に効果があったと実感しています。御社からは専門的なアドバイスがもらえるので安心です。Webサイトにおいても、やりたいことはたくさんあるが、どこまでやるべきか線引きが難しい中、具体的な提案をいただき、成果も出ました。
大徳氏:Marketo運用に関して、非常に信頼してお付き合いしています。もう5年くらいの長いお付き合いになりますので、私たちのやりたいことは理解していただいているのではないでしょうか。私たちは協力会社がいないと成り立たないマーケティングのフォーメーションを取っています。そういう意味でも、非常に信頼してお任せしている状況です。
須藤氏:私たちのチームは、部門目標を達成しており、非常に順調です。ただし、細かいところは改善したほうがいいと思っています。MAに関しては、過去のデータを把握できていない状況です。未来の目標や予測を立てようとしても難しいので、データ基盤を御社と一緒に作っていければと考えています。また、メールのABテストによる検証や、リード獲得後の商談化をより重視していきたいと思います。
大徳氏:須藤も話したように、チームとしての目標は達成しているため、大きな課題はありませんが、1つひとつのクオリティを高めていくことが必要です。これからはリードに企業属性を付与して、属性によってメールの内容を変えるなど、さらにクオリティを高めていこうと考えています。
プロフィール
大徳 貴子 氏
ブラックライン株式会社 マーケティング本部長
2020年8月より現職。日本におけるマーケティング活動全般の責任者。IT業界、大企業向けのマーケティングとして、年間プランの策定と実行、業績管理、広報やユーザーグループの運営など業務は多岐に渡る。
プロフィール
古賀 祥晟 氏
ブラックライン株式会社 マーケティング担当
2023年にマーケティング担当として入社。主にデジタルマーケティング全般を担当。その他、パートナー向け施策の企画実行、既存顧客向けのマーケティングにも関わる。
プロフィール
須藤 友里乃 氏
ブラックライン株式会社 マーケティング担当
2023年にマーケティング担当として入社。主にデマンドジェネレーションをミッションとするインハウスセミナーの企画・運営のほか、コンテンツ制作や、MAツールを活用したナーチャリング活動を担当。
インタビュー実施日:2025年1月15日
ブラックライン株式会社 https://www.blackline.jp/
ブラックライン様のマーケティング活動は、社内のジェネラリストの育成と外部パートナーである弊社のマーケティング支援との連携によるバランスの取れたアプローチが特徴的です。Adobe Marketo Engageの活用からWebサイト改善まで一貫したデジタルマーケティングの強化が推進され、Webサイトのコンバージョン向上は、弊社との連携が効果的に進んでいることを示しています。お客様となるメガエンタープライズ企業に対し、ABMを軸にリアルイベントの活用を強化するなど、日本市場に適したマーケティング施策を展開している点も素晴らしいです。今後、データ基盤を整備することで、さらなる施策の精度が向上し、長期的成長路線に乗せられるよう弊社も協力できれば幸いです。
マーケティングコンサルタント
山下 智
マーケティング戦略策定
Webコーダー/Webデザイナーからキャリアをスタート。その後、Webディレクターとして数多くの企業サイトの企画~設計~制作を手掛ける。
2014年に自社へのMarketo導入の推進をきっかけに、マーケティングオートメーションを専門とするコンサルタントへキャリアチェンジ。
現在は、事業会社のマーケティングDXの支援や、データマネジメントの仕組みや組織体制づくり、人材育成まで、データを活用したマーケティングの幅広い伴走コンサルティングを得意とする。特に、製薬および医療機器メーカーの支援に強みを持つ。
無類のクラフトビール好き。 No Beer! No Life!
ブラックライン様では、須藤様・古賀様が着任後早期に業務へ適応し、Marketo運用の内製化がスピーディに進められたことがとても印象的でした。Marketo運用の属人化を防ぐために、ナレッジの蓄積や業務プロセスの標準化に取り組み、チームとしての仕組みが整いつつあります。また、お二方のマーケティングのバックグラウンドの経験を活かして、Webサイト施策に対しても積極的に取り組み、着実に成果を上げています。これからも引き続き私たちの専門的な知見を活かした業務の効率化と戦略的な施策の実施を支援していきたいと思います。
マーケティングコンサルタント
長島 小百合
マーケティングオートメーション活用支援
複数のIT系企業にてBtoBマーケティング業務に従事。
ユーザーとしてOracle Eloquaなどの国内外のマーケティングオートメーションツールに携わり自社マーケティング施策を実行。
2022年より現職、Adobe Marketo Engage オペレーション支援を担当。マーケティング部門での業務経験より、お客様と同じ視点でマーケティング活動をサポート。
溺愛中の愛犬が癒しの存在。
2025.05.12
2025.05.12
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