コラム

BtoB企業のWebサイト「全部乗せ」になっていませんか?【改善チェックリスト付き】

Webサイトが、社内の意見の「全部乗せ」になっていませんか?

BtoB企業におけるWebサイトは、製品やサービスに関する情報発信に加え、リード獲得や商談創出、採用活動、ブランディングなど、目的に応じた多様な役割を担います。
しかし、社内の各部署からの要望に応えることを優先したために 「全部乗せサイト」 になり、結果として顧客の方を向いていないために成果を生み出せていないケースが見受けられます。

・製品情報、ニュースリリース、採用情報、社内ブログ、IR情報…Webサイトの訪問者ごとに見せたい情報の優先順位を整理しきれずに詰め込んだ結果、Webサイトの中で、何が重要かが分からなくなっている
・社内の各部署の意見を反映することが業務となってしまい、Webサイトの設計や改善において顧客視点が十分に考慮されていない
・Webサイトの制作・改善を担当するチームが、社内の各部署の意見をうかがう「御用聞き」になってしまっている
・Webサイトの構成や更新作業が複雑になり、社内向けの資料作成や部署間の調整にも時間がかかり業務負担が増えている。

このような状態になっていると、Webサイトを訪問した見込み客が本当に求めている情報にたどり着けず、ビジネスに貢献しにくいサイト になってしまいます。せっかくリソースを割いてWebサイトを構築したのに、成果につながらなければ意味がありません。
Webサイトの制作・改善を担当するチームにとっては、利益に直結しない間接業務が増えるにも関わらず、顧客視点が不足しているため成果が出ず、そのため評価もされないという状態になってしまいます。結果として、せっかく意見を反映した社内の各部署との関係もしだいに悪化する…という悪循環に陥るケースも。
本記事では、BtoB企業のWebサイトが「全部乗せ」になってしまう原因とそのリスクを明らかにし、より顧客視点で成果を出せるWebサイトに改善するためのポイントを解説します。

BtoB企業のWebサイトが「全部乗せ」になってしまう理由

「うちのサイト、情報量が多すぎて管理しきれない…」
「結局、誰に向けたサイトか分からなくなっている」
Webサイトの制作・改善を担当するチームがこのような悩みを抱えているケースは多いのではないでしょうか。

BtoB企業のWebサイトが「全部乗せ」になってしまう主な理由は、以下のような社内の事情が影響していることがほとんどです。

① 社内の各部署の要望をすべて反映してしまう

意見を聞くと、各部門はそれぞれの立場から要望を上げてきます。例としては次のような内容です。

・製品部門「うちの新製品をトップページに載せてほしい」
・広報部門「このトピックだけ別枠で表示したい」
・採用部門「採用情報をトップページで目立たせたい」
・経営陣「社長メッセージを最初に見せたい」

このような要望をそのまま受け入れていると、出来上がるのは「社内の関係者が満足するサイト」であって、顧客にとって使いやすいWebサイトとは別のものです。
特に、自社全体を統括する立場ではないが社内の影響力が大きな人の発言を取り入れてしまった場合には、自社のWebサイトの価値を損なう結果にもなりかねません。

② Webサイトの目的が不明確なまま運用されている

・Webサイトの役割が 「単なる会社案内」になっている
・Webサイトの訪問者にどんなアクションをして欲しいかが不明確
・Webサイトのターゲットとなる訪問者の種類やペルソナが定義されていない
・ターゲット毎の見せたいコンテンツと導線が整理されていない
・ナビゲーション内で、複数のターゲットに対する導線が整理されていない

Webサイトの役割が不明確なままだと、リード獲得や商談創出といったマーケティング活動、採用、ブランディングといった企業価値向上の機能を十分に果たせなくなる可能性があります。

③ 顧客目線での情報設計ができていない

・サイトの構造が 「社内の組織図」 に沿って作られている
・訪問者が、求める情報にたどり着く導線が設計されていない

例えば、製品情報を「事業部別」に分類してしまうと、顧客はどの製品が自分に合っているのか分からなくなります。
「顧客の課題」から情報を整理する視点 が求められます。

顧客視点が不足すると、単に情報を詰め込んだ「チラシ」のような状態になってしまうリスクもあります。Webサイトの目的の実現のために、時には優先度の低い要素を削ぎ落とし、シンプルにする決断が必要な状況もあります。
もし「決断できない」場合には、決断するための戦略が弱かったり、判断基準が不明確になっている可能性を教えてくれるサインと捉えてみてください。

「全部乗せWebサイト」がもたらす3つのリスク

このように 自社内の要望を優先しすぎたWebサイトには、以下の3つの大きなリスクがあります。

① 情報過多でユーザーが離脱する

Webサイトを訪問した見込み客は「どこを見ればいいのか分からない」 状態になると、すぐに離脱してしまいます。
離脱率が高くなると、せっかくのリード獲得の機会を失うことになります。

② 目的が不明確なため、CV(コンバージョン)につながらない

・CTA(問い合わせ・資料請求など)が埋もれてしまう
・顧客が次の行動を起こせる導線が不足している

結果として、せっかく訪問した訪問者の多くが「何もせずに去ってしまう」ことになります。

③ Webサイトの制作・改善を担当するチームの負担が増加する

・社内の各部署からの要望対応で、社内コミュニケーションの負荷が増加
・Webサイトの更新内容が煩雑になり、更新タイミングやバージョン管理が複雑化
・Webサイトに反映する情報が増えることで、コンテンツ管理の負荷が増加

これでは、Webサイトの制作・改善を担当するチームが本来注力すべき「Webサイトの改善」や「戦略策定」に使える時間が少なくなってしまいます。

「全部乗せWebサイト」から脱却するための4つの改善策

こうした課題を解決し、より成果につながるWebサイトにするための具体的な改善策を紹介します。

① Webサイトの目的を明確に定義する

・「誰に」「何を」「どう伝えたいのか」を再定義する
・企業の戦略やターゲットに応じて、Webサイトの役割と具体的なゴールを設定する

②Webサイト運用の担当部署でのポリシーを明確にする

・Webサイトの目的から、定義したゴールへ顧客を適切に誘導することを最優先とする
・他社のWebサイトや先進の事例を研究し、最適な顧客体験を設計する
・Webサイトの制作・改善を担当するチームが責任を持って、自社Webサイトの価値を高めていくための判断を下す。要望を出している他部署はWebサイトの成果に責任を取ってくれない
・顧客に向けた施策よりも優先したいという社内の要望が挙がった場合には、事前に社内で協議をおこない、記録を残して経緯や判断基準を明確にする

③ 情報整理のフレームワークを活用する

・「顧客の課題別」「業界別」「目的別」 に情報を整理する。
・社内都合の分類ではなく、顧客目線での導線設計を優先する。

④ CTA(コンバージョンポイント)を最適化する

・「問い合わせ」「資料請求」「無料相談」など、明確なアクションを促すボタンを設置する。
・どのページからも次のアクションが分かるようにする。

まとめ:Webサイトを「顧客のための資産」にする

Webサイトが「全部乗せ」になってしまう主な原因は、顧客よりも自社内の都合が優先されてしまうことにあります。「全部乗せ」Webサイトは、生産性を下げる対応を受け入れてしまう組織や体制の弱点が顕在化された結果と言えるかもしれません。

顧客の課題解決を最優先に情報設計をすることで、コンバージョンの高いWebサイトに生まれ変わることが可能です。

まずは自社のWebサイトを振り返り、「情報の整理」と「目的の明確化」ができているかを確認しましょう。
「自社のWebサイトは何のためにあるのか?」
「Webサイトの制作・改善を担当するチームは何を実現するために仕事をするのか?」
など、より俯瞰した広い視野で検証することが重要です。

自社のビジネスにおいてWebサイトが果たす役割をしっかりと定義し、競合他社や最新の事例を鑑みて、顧客視点での価値提供を続けていくことで、自社の事業の発展への貢献が期待できます。

チェックリスト

下記のチェックリストを使って、自社のWebサイトが「社内都合優先の全部乗せサイト」になっていないか確認してみてください。
各項目に「はい」または「いいえ」で回答し、「いいえ」が多い場合は改善の余地があります。

①情報設計

顧客目線になっているか

▢訪問者が求める情報に、3クリック以内でアクセスできるか?
▢社内の事業部単位ではなく、顧客の課題・目的別に整理されているか?
▢製品・サービスの情報は、競合と比較して分かりやすく整理されているか?
▢FAQやナレッジベースなど、見込み顧客の疑問を解決するコンテンツがあるか?

②ユーザー導線

訪問者が迷わないか

▢トップページにバナーが乱立しておらず、シンプルな設計になっているか?
▢各ページの目的(製品紹介/問い合わせ/資料請求など)が明確か?
▢主要な情報が、スクロールしなくてもファーストビューに表示されているか?
▢サイト内検索機能があり、訪問者が求める情報をすぐに見つけられるか?

③CTA

適切なアクションに誘導できているか

▢主要なCTA(問い合わせ、資料請求、商談予約など)が明確に配置されているか?
▢全ページでCTAのデザイン・メッセージが統一されているか?
▢訪問者の状態に応じて、適切なCTAを出し分けているか?
(例:初回訪問者には「無料ガイドDL」、リピート訪問者には「商談予約」など)
▢CTAのクリック率(CTR)を定期的に分析し、改善しているか?

④コンテンツ

「伝えたいこと」ではなく「顧客が知りたいこと」になっているか

▢製品・サービスページは「特徴の羅列」ではなく、「顧客の課題解決」の視点で書かれているか?
▢事例・導入実績が掲載されており、説得力があるか?
▢定期的にコンテンツ(ブログ、ホワイトペーパー、動画など)が更新されているか?
▢SNS・メールマーケティングと連携し、Webサイトの情報を発信しているか?

⑤データ分析

運用・改善の仕組みがあるか

▢Googleアナリティクスやヒートマップを活用し、ユーザー行動を把握しているか?
▢問い合わせフォームの離脱率を分析し、最適化をしているか?
▢「滞在時間が短いページ」「離脱率が高いページ」を特定し、改善施策を考えているか?
▢データをもとにPDCAを回し、Webサイトを資産として成長させているか?

次のアクション

・チェックリストで「いいえ」が多い項目について、Webサイト担当チームと改善策を検討
・訪問者の行動データを分析し、特に改善効果が見込めるページや導線から着手
・Webサイト構成やCTAの配置を見直し、コンバージョン率を高める施策を実施

ここまで取り組む中で、
「そもそも、どんなWebサイト戦略を描けばいいのかが分からない」
「自社のビジネスにあったWebサイトの役割を整理したい」
といった課題が浮かび上がる場合もあるはずです。

Web戦略策定サービスのご案内

当社では、企業のビジネス戦略・ターゲット顧客・競合環境を踏まえながら、Webサイトの目的や全体設計を明確に定義し、成果につながるWeb戦略を立案する「Web戦略策定サービス」を提供しています。具体的には、以下のような支援が可能です。

・現状のWebサイトおよび競合他社サイトの診断・分析
・ペルソナ設定やカスタマージャーニーの整理
・自社の事業目標に紐づいたコンテンツ戦略や改善優先度の設計
・具体的なKPIと計測プランの策定、運用チームへのトレーニング

「Webサイトの改善に本腰を入れたいが、どこから手をつければいいか分からない」「社内の要望ばかり増え、全体戦略が見えなくなっている」という企業様を包括的にサポートします。

まずはお気軽にご相談ください。
下記リンクからお問い合わせいただけます。

樫尾 雅史

マーケティングコンサルタント

樫尾 雅史

Webサイト構築/運用管理

Web制作会社および大手食品メーカーハウスエージェンシーにて、Webサイト構築・運営を経験。その後、医療系メーカーにて、自社Webサイトの運営やMAを活用したマーケティングを経験。商品やサービスが最適なユーザーに届くよう、WebサイトやMAにおける行動設計を改善して顧客のビジネスを好循環の軌道に乗せることを得意とする。

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