Claude Motion と Dashboards で、AI に詳しい人がつくった型を組織の全員で使えるようになる~「Marketo MCP のいいところ」を30秒の動画にして確かめたこと~
2026年10月8日、Anthropic は Claude に2つの機能をベータ版として加えました。Claude Motion は説明用の短いアニメーションをつくる機能で、Claude Dashboards はデータからダッシュボードをつくる機能です。
私はこの2つをClaude Team プランで試し、マーケティングの現場で使えるかを確かめました。試してわかったいちばんの価値は、つくったものを組織の中ですぐ共有でき、詳しい人がつくった型をほかの人がそのまま使えることです。
※検証は2026年10月13日に、Claude Team プランで、架空のデータを使って行いました。
2つの機能を使えば、詳しい人がつくった型を組織の全員が使える
Motion と Dashboards なら、つくった動画や画面をリンクひとつで組織の中に共有できます。どちらも Claude の「アーティファクト」としてつくられるからです。アーティファクトは、Claude の中でつくった成果物を、そのままリンクで共有できるしくみです。Team や Enterprise のプランなら、共有先を組織の中の人だけに絞れます。
この1年で、AI をうまく使うためのプラグインやスキルが次々に出てきました。便利になった一方で、どれを入れてどう使うかは人によってばらばらです。詳しい人ほど成果を出し、そうでない人との差は広がっていました。
成果物の渡し方にも、ひと手間が残っていました。AI でつくった資料やグラフは、いったん書き出して Google ドライブに上げ、リンクを送り直す必要がありました。つくる作業は数分で終わるのに、人に渡すまでに同じくらいかかることもありました。
Motion と Dashboards は、この2つをまとめて解決します。つくる場所は全員が同じ Claude の画面で、できたものはその場でリンクにして社内に渡せます。詳しい人がつくった動画やダッシュボードを、ほかの人が開いて、そのまま型として使えます。共有の手間が消えることで、人による差も縮めやすくなります。この点が、2つの機能でもっとも大きな変化です。
Motion なら、準備なしで組織の全員が同じように説明動画をつくれる
動画ソフトをパソコンに入れなくても、Claude の画面からすぐに説明動画をつくれます。始めるには、アーティファクトのタブで Motion を選ぶか、チャットに「/motion」と打つだけです。
アーティファクトの一覧。Docs や Slides と並んで Motion と Dashboards がある(画面上の表示は単数形の「Dashboard」)
プログラムを書いて動画をつくる道具には、以前から Remotion があります。Remotion は便利ですが、使う人それぞれのパソコンで設定が必要です。設定できた人だけが動画をつくれて、ほかの人は頼むしかありませんでした。
Motion は Claude の画面からすぐ使えるので、パソコンごとの準備は必要ありません。組織の全員が、同じ手順で同じように動画をつくれます。できた動画もアーティファクトなので、そのまま社内に共有できます。社外のセミナーで流すときは、MP4 で書き出して使えます。
Motion は、動画を生成する AI で映像をつくるのではありません。文字や図形、グラフの動きと長さを、Claude がコードとして書くしくみです。そのため、実在の人物のような映像が勝手に入ることはなく、文字・数字・場面の長さをあとから直せます。
すでに Remotion や自分たちの仕組みで動画をつくっている場合は、無理に Motion へ乗り換える必要はありません。細かい作り込みや自動化は、いまの仕組みのほうが向いているからです。Motion が向いているのは、これまで動画をつくれなかった人が、説明動画を自分でつくりたいときです。
Motion は作り始める前に、見た目のスタイルと色の候補を出して選ばせてくれます。そのため、イメージに近い動画が数分でできあがります。
色の候補を選ぶ画面。この前にスタイルの候補も出る
セミナー冒頭の30秒動画なら、1回の依頼で使えるものができる
1回の依頼でも、セミナーの冒頭に流せる説明動画がつくれました。現場で使えるかを確かめるため、今回は「Marketo MCP のいいところ」を30秒で伝える動画を頼みました。
Marketo MCP は、Claude のような AI を Marketo につなぐための、Adobe 公式の窓口です。つなぐと、AI が Marketo の中身を読んだり、メールの下書きをつくったりできます。いまは限定提供で、使うには Adobe への申請が必要です。Claude では、デスクトップアプリの設定から接続します。
依頼文は次のとおりです。
/motion
社内外のマーケティング担当者向けに、「Marketo MCP のいいところ」を30秒で伝える説明アニメーションを作ってください。セミナーの冒頭でスクリーンに流します。
場面は3つにします。
1. チャットで頼むだけで、メールやランディングページの下書きが Marketo の中にできる
2. 配信前の設定の抜けを、AI が先に見つけてくれる
3. リードの数字をその場でグラフにして、次の手を一緒に考えられる(例:作成月ごとのリード件数の棒グラフ)
文字は日本語で、1場面に載せる文は1〜2行にしてください。最後に「検証環境・デモ用データ」と小さく入れてください。
1回の依頼で、ちょうど30秒のフル HD 動画ができあがりました。タイトルと3つの場面と締めがそろい、1場面1〜2行の指定も守られていました。日本語の文字は読める形で出ましたが、吹き出しの改行位置は一部くずれていました。「フ/ォローメール」のように、小さい「ォ」が行の頭に来た箇所があります。
動画は操作画面の録画ではなく、チャットの吹き出しと、Marketo の画面に似せた図形が動くつくりです。
動画の4場面(次の章で直したあとの版)。下書きづくり、設定の抜け、グラフ、締め。グラフの数字は Claude が仮に置いたもの
最初の締めは「頼む・見つける・考える。チャットひとつで。」でした。依頼文で指定した言葉ではなく、Claude が3つの場面から考えて添えた言葉です。正直に言うと、1回の依頼でここまでできるとは思っていませんでした。
直したい箇所を言葉で伝えれば、そこだけを直せる
Motion なら、直したい箇所を言葉で頼むだけで、ほかの場面を崩さずに動画を直せます。今回は同じチャットで、次の3つを1つずつ頼みました。
・グラフの値を、4月320から9月350まで最初から最後まで固定してほしい → 数字が数え上がる動きがなくなり、最初から決まった値が出るようになった
・「配信前の設定の抜け」の場面を2秒長くしてほしい → その場面が7秒から9秒になり、全体は32秒になった。うしろの場面は2秒遅れて始まるだけで、中身は同じ
・締めの言葉を「頼む、見つける、考える。チャットで進む Marketo の仕事。」に変えてほしい → 締めの文字だけが変わり、色と位置は同じ
直すたびに書き出した動画を0.5秒ごとに前の版と比べると、3回とも頼んだところのほかは同じ絵でした。一部を直してもほかの場面が崩れないので、気になるところを1つずつ直していけます。
Claude は返事の中で、どこを変えて、どこを変えていないかも説明していました。チームで動画を確認するときは、この返事を読めば、どこを見直せばよいかがわかります。
場面を延ばしたときの返事。画面の下に場面ごとの長さが並び、「抜けを先に発見」が9.0秒になっている
ただし、動画に出す数字には注意が必要です。最初の動画のグラフの数字は、私が指定していないので、Claude が自分で決めたものでした。Claude はチャットで「仮の数字です」と断っていましたが、仮の数字であることは動画には出ません。動画に出す数字は依頼文で指定して、書き出す前に確かめておきましょう。
Dashboards は、AI でつくった画面を組織で使い回せる、簡単な BI になる
Dashboards を使えば、つくった画面を社内で共有し、同じ型をチームで何度でも使えます。アーティファクトの便利さをいちばん実感できるのが、Dashboards です。
これまで、AI でつくったダッシュボードは、つくった人の手元に残りがちでした。Dashboards なら、1人がつくった画面をそのまま社内に共有でき、ほかの人はその型を開いて使えます。BI ツールを入れていない組織でも、BI に近い使い方ができます。
現場で使えるかを確かめるため、Marketo と同じ項目の架空データを CSV で渡し、次の6つの指標を並べた画面を頼みました。
・新規リード
・MQL
・商談化
・受注
・開封率
・クリック率
Claude は約5分で画面をつくりました。リードソース別の月別推移のグラフと、期間・業種の絞り込みも付いています。新規リードの件数は、私が元のデータから数え直した件数と同じでした。
私は以前、同じデータで似たダッシュボードを自分でつくったことがあります。そのときは集計のプログラムと画面のひな形と公開のしくみを別々に用意しましたが、Dashboards ならその準備は必要ありません。
数え方を言葉で伝えるだけで、集計と画面の説明の両方が一緒に直ります。「開封率は、届いた数で割ってください」と頼むと、Claude は集計を直し、指標の下の説明も「ユニーク開封 ÷ 届いた数(配信日で集計)」に書き換えました。
この直しのあとも数字は変わりませんでした。Claude によると、もともと届いた数で割っていたうえに、どのメールも送信の約1分後に届いていて、送った月と届いた月が同じだったためです。こうした理由まで返ってくるので、頼んだ直しが入ったのかどうかで迷わずに済みます。
数え方を指定したあとの画面。左は数字が変わらない理由の説明、右は指標ごとの数え方
数え方が書いてあるので、共有された人も、どう計算した数字かを画面ですぐ確かめられます。
毎月の数字は画面で見て、その場の疑問はチャットで聞ける
毎月の数字は画面で追いながら、気になった内訳はその場でチャットに聞けます。「ウェビナー経由のリードだけで見るとどうなりますか」と聞くと、Claude は画面はそのままで、チャットに表で答えました。ウェビナー経由の新規リード1,153件は、私の数え直しと同じでした。画面をつくり直さずに内訳を確かめられるので、会議中に出た質問にもその場で答えられます。
その場の質問には、チャットに表で答える。表の「前年比」は、画面の「前の同期間比」と同じ意味
一方で、CSV で渡した場合は、データの入れ替えは手作業です。1か月分のリードを足した CSV を渡すと、グラフは新しい月まで延びました。画面には「活動ログが未反映のため、新規リードのみの集計です」という注記も付きました。足りないデータを注記で知らせてくれるので、共有された人が古い数字を最新と思い込むおそれは減ります。
ただし、月を足したことで期間が2025年10月から2026年10月までの13か月に広がり、前の期間との比較が消えました。その直前の13か月分のデータがないためです。毎月データを足していくなら、期間を12か月に絞り直す必要があります。
また、CSV を渡し直しても、画面右上の更新時刻は新しくなりませんでした。表示は「Updated 2h ago」のままで、最初に画面をつくったときから数えた時間でした。いつのデータかを画面で見分けられないので、共有するときに一言添えておきましょう。
データを足したあとの画面。期間が13か月に広がって「比較期間なし」になり、10月分が未反映だという注記が付いた
1回だけ見るなら、Marketo から書き出した CSV で解決できます。毎月同じ画面を見るなら、Marketo のデータを BigQuery のような置き場にためて、Dashboards をそこへつなぐやり方が現実的です。
Anthropic の発表通り、Dashboards は BigQuery などにつながり、つないだ場合はデータの変化に合わせて画面が自動で更新され、グラフごとに使った問い合わせと最終更新時刻も表示可能でした。
これからは、AI に詳しい人がつくった型を全員で使えるようになる
2つの機能を使えば、AI に詳しい人がつくった動画やダッシュボードの型を、組織の全員が同じ場所でそのまま使い回せます。
これまでは、AI を使いこなせるかどうかで、出せる成果に差がついていました。これからは、詳しい人がつくった型を、ほかの人が開いてそのまま使えます。AI に詳しい人の役割も、自分で成果物をつくる人から、組織で使える型をつくる人へ移っていくはずです。
それでも、人が決めることは残ります。ダッシュボードの指標の数え方や、動画に出す数字は、つくる前にそろえておく必要があります。数え方が社内のレポートとそろっていないと、共有した画面の数字とレポートの数字がずれます。
本物の顧客データを扱うときの確認も、人の仕事です。今回は架空のデータでしたが、実際の顧客データを Claude に渡したり BigQuery につないだりするなら、共有する相手がそのデータを見てよい人かを先に確かめてください。
使う前に確かめておくこと
2つの機能は、どちらもベータ版です。2026年10月の時点では、Dashboards は有料のプランで使え、Motion は Team と Enterprise のプランでだけ使えます。Enterprise では、どちらの機能も初期状態ではオフで、管理者が組織の設定で有効にする必要があると案内されています。正式版では条件が変わるかもしれません
共有できる範囲は、初期設定では組織の中までです。私のClaude Team プランでも、共有の範囲で「リンクを知っている全員」はグレーアウトしていて選べませんでした。
公式のヘルプによると、組織のオーナーが「外部共有」をオンにするまで、この選択肢は選べません。オーナーは、組織全体でオンにすることも、アーティファクトを1つずつ許可することもできます。ただし、ほかのアプリにつないだアーティファクトは、リンクでの公開はできないと案内されています。社外に見せたいときは、まず社内の管理者に相談してください。
共有の範囲。「リンクを知っている全員」は、組織のオーナーが外部共有をオンにするまで選べない
検証時点は2026年10月13日です。Claude Team プランで、架空のデータを使って試した結果です。
この検証の続きを、自社の Marketo のデータで試してみたい方もいると思います。Marketo のデータをどこに集めて、どの分析や説明を AI に任せるかを整理したいときは、ご相談をお受けしています。
マーケティングコンサルタント
今西 涼
生成AIを活用したマーケティング業務の効率化・高度化支援
広告代理店でのアートディレクターを皮切りに、不動産営業、大手人材企業でのデータエンジニア・事業企画、ソフトウェア企業でのパートナーサクセスと、複数の業界・職種で成果を重ねる。
1,500名規模の営業組織にTableauを導入し、データドリブンな意思決定の定着を主導。ビジネス課題をデータとAIで解く実行力と、技術を経営成果に翻訳する力を武器に、マーケティングコンサルタントとして従事。
愛犬をカメラで追いかけるのが週末の楽しみで、お菓子作りも得意。


