BtoBマーケティングにおいて、経営層によるマーケティング活動の評価基準が、リード獲得数から収益貢献度へと変化しています。しかし、多くのマーケティング組織が収益貢献を見える化することに苦戦しているのが現状です。
本稿では、リード獲得施策はなぜ評価されにくいのか、収益貢献の見える化を進めるうえで何が障壁になるのか、ダッシュボードで収益貢献をどのように見るのか、どのようにして見える化を進めていくのかを解説します。
多くのマーケティングマネージャーは、施策別のリード獲得数や問い合わせ数を上層部に向けた説明で活用しています。
しかし、経営層が本当に知りたいのは、商談創出数、受注数、受注金額、ROIなど、マーケティング活動がどれだけ売上や利益に貢献したのかを表す情報です。
つまり、リード獲得数だけでなく、その後の収益貢献を把握したうえで、施策の効果を証明することが求められているのです。
収益貢献の見える化を実現するには、主に2つの壁を乗り越える必要があります。
多くの企業では、リード獲得からMQL、商談、受注に至るまでのライフサイクルステージが明確に定義されていません。また、各ステージの状況を数値化して把握するための管理ルールが決められていないケースも多くあります。
その理由としては、以下のような要因が挙げられます。
・MA導入時に決定したリードの獲得からMQL、商談、受注に至るまでのステージの定義が形骸化している
・定義したステージの有効性や信頼性が社内で認められていない
・マーケティング部門と営業部門のコミュニケーション不足により、獲得リードやMQLに関する営業からのフィードバックを得る機会が不足している
これらの問題を解決するには、営業部門と協力して有効リードの定義やスコアリングの考え方を議論し、確定する必要があります。また、共通のKPIを設けることで、両部門が一貫した目標に向けて協力できる体制を構築することが重要です。
もう一つの壁は、データの分断です。
多くの企業では、WebサイトのアクセスログデータをGoogle Analytics 4、リードのデータをMA、商談データはSFAというように、部署やプロセスごとに異なるシステムを使ってデータを管理しています。
そのため、ツール同士が連携できておらず、それぞれのデータが紐づいていなければ、一気通貫でリードの行動を把握することが難しくなります。
施策の収益貢献を見える化するためには、ダッシュボードの構築が必要です。ここでは、収益貢献と紐づけて施策を評価するうえで役立つ3種類のダッシュボードと、それぞれの役割を紹介します。
パイプライン実績ダッシュボードでは、リードがどのステージにどれだけいるか、どれだけ遷移させられているかを俯瞰して把握できます。
たとえば、Webの問い合わせフォームから獲得したリードが現在どのステージにいるのか、目標のステージ遷移数に対してどこがボトルネックになっているのかといった情報を一目で確認できます。
また、SQLとなったリードがどの施策を通じて獲得したリードなのかを遡って調べることもできます。
施策効果測定ダッシュボードでは、特定期間内で獲得したリード数、商談数、受注数、受注金額などのデータをリードソース別に把握できます。
このダッシュボードは、各チャネルで獲得したリードの収益貢献度や、リードの獲得数に対する受注数の割合が高いチャネルを割り出すのに役立ちます。
コンテンツ・アトリビューション分析ダッシュボードは、リードがMQL化するまでに経由したタッチポイントを確認し、それぞれのタッチポイントがどのように貢献したのかを評価するのに役立ちます。
ダッシュボード上では、施策ごとにファーストタッチ(最初の接点)、ラストタッチ(最後の接点)の数、施策への貢献度を評価したスコアを一覧で確認できます。
このダッシュボードを確認することで、評価が難しいとされているコンテンツの間接的な貢献が分かるようになります。
次に、収益貢献の見える化をスムーズに進めるために意識するべき3つのポイントを解説します。
マーケティング施策の収益貢献を見える化するには、受注に繋がったリードと、そのリードが反応した施策を紐づける必要があります。
商談受注金額とリード情報、反応した施策の情報を紐づけ、各施策の実施にかかっているコストを管理することで、マーケティング施策のROIを算出できます。
異なるシステム間でデータを連携させる際には、「共通キー」でデータを突合する必要があります。
共通キーとは、複数のシステムで共通して使用できる、ユーザーやセッションを識別するための値のこと。デバイスIDやメールアドレス、リードIDなどを使用するのが一般的です。
例えば、GA4とMAを連携させる際はデバイスIDを、MAとSFAではリードIDを共通キーとして使用すれば、ユーザーの行動を一貫して追跡し、分析できるようになります。
マーケティング活動の効果を適切に評価し、改善し続けるためには、プロセスマネジメント体制の構築が不可欠です。
この体制を構築する際に、最低限押さえておくべきプロセスは、リード獲得・商談・受注の3つです。
これらのプロセスを明確に定義したうえで、各段階のデータを収集・分析すれば、それぞれのステージへの転換率を把握できるようになります。また、リード獲得から受注までのプロセスとかかったコストを一貫して把握できると、見込み顧客やMQL、商談、受注の獲得単価を割り出せるようになります。
これらのデータをもとにマーケティング活動のボトルネックを把握できれば、リソースを適切に配分し、確度の高い成果改善につなげることができます。
リード獲得施策の収益貢献を見える化すると、以下のような好循環が生まれます。
・ROIが見えることで、成果への影響度が高い施策に注力できる
・プロセス管理によってマーケティング施策のボトルネックがわかり、改善サイクルを回しやすくなる
・他部署からのマーケティング活動への理解を得られる
・収益に対するマーケティング部門の貢献が明確になり、さらなる投資を得やすくなる
・マーケティングチームの視座が上がり、短期的な視点だけでなく、ビジネスゴールを見据えた視点を持つようになる
マーケティング部門は、収益を生み出すプロフィットセンターでありながら、それを証明できていないために正当な評価を受けられていないことがあります。収益貢献を見える化することは、マーケティング部門が経営層や他部門と対等に議論し、企業の成長に向けた活動をしていくうえで欠かせない取り組みです。
パワー・インタラクティブでは、短期間で収益貢献を見える化できるサービス『マーケティング・ダッシュボード・パック』を提供しています。
このサービスでは、テンプレートに当てはめる形でダッシュボードの実装を進めることで、短期間で収益貢献の見える化を実現できます。テンプレートに当てはめてまずはダッシュボードを作成し、お客様の環境に合わせて調整することで実運用に乗せていきます。
マーケティング活動の収益貢献の見える化を急ぐ方、現状のデータマネジメントに関して改善の必要性を認識しながらも、何から始めるべきか悩む方は、パワー・インタラクティブまでご相談ください。
コンサルティング第1部 部長
久道 真之介
マーケティング戦略策定
通信会社で法人向けの営業を8年経験。その後起業を経験し、2010年にパワー・インタラクティブに入社。Webサイト制作のディレクションからリスティングの運用、アクセスログの分析など現場での業務を経験し、現在はマーケティングコンサルタントとして、BtoB・BtoCのデジタルマーケティングの戦略立案から伴走支援までを行う。
2024.09.30
2024.07.25
2024.07.25