Googleアナリティクス4(以下、GA4)のセッションデータは、利用頻度や時間、反応の良さといったユーザーエンゲージメントを理解するための重要な手がかりを提供している。Webサイトやアプリのユーザーエンゲージメントを向上させるには、ユーザー行動を詳細に分析し、適切な施策を実施することが不可欠だ。
このコラムでは、GA4セッションデータの分析と活用法に焦点を当て、具体的な事例を交えながら、ユーザーエンゲージメント向上のための戦略を探る。
セッション数は、ユーザーエンゲージメントを測定する重要な指標の1つだ。
GA4では、セッションとは、Webサイトやアプリ上でユーザーが行動を開始してから、離脱するまでの一連の流れを指す。これは、一定期間内のユーザーによるインタラクションを表す。
GA4では、以下の条件のいずれかが満たされると、新しいセッションが開始される。
・ユーザーがWebサイトやアプリにアクセスしたとき
・ユーザーが初めてサイトを訪れた場合
・以前にサイトを訪れたことがあっても、Cookieが削除されたり期限切れになったりして、GA4がユーザーを新規訪問者として認識した場合
・前のセッションが終了してから30分以上経過したとき
セッション数は、ユーザー数、ページビュー数とは異なる指標だ。
セッションとは、ユーザーがWebサイトやアプリを訪れてから離れるまでの一連の活動のことを指しており、セッション数とは一定期間内のセッションの合計数のことである。
一方、ユーザー数は、一定期間内にWebサイトやアプリを訪問した一意のユーザーの数を表す。
また、ページビュー数は、ページが読み込まれた回数の合計であり、同一ユーザーによる複数回の閲覧も含まれる。
1. GA4のレポート画面にアクセスする。
2. 左側のメニューから「ライフサイクル」>「エンゲージメント」>「イベント」を選択する。
3. 「イベント」レポートの「イベント名」列の「session_start」の数が、サイト全体のセッション数となる。
1. GA4のレポート画面にアクセスする。
2. 左側のメニューから「ライフサイクル」>「エンゲージメント」>「ページとスクリーン」を選択する。
3. デフォルトでは「ページパスとスクリーンクラス」のディメンションを「ページ タイトルとスクリーン クラス」に変更することで、ページタイトル別の数値を確認できる。画像左上の検索で任意のワードで絞り込むことができる。
4.レポートのイベント数で「session_start」を選択する。
5. 検索したページのセッション数が表示される。
以上のように、GA4ではWebサイト全体、特定のページでのセッション数を確認することができる。
これらの情報を活用することで、ユーザーエンゲージメントの把握や改善に役立てることができる。
セッションデータは、Webサイトやアプリのユーザーエンゲージメントを理解するために非常に重要だ。
以下に、セッションデータを活用した有効な分析の例を3つ挙げる。
セッションデータを分析することで、ユーザーがWebサイトやアプリとどのように関わっているかを理解できる。
平均セッション継続時間、離脱率などの指標を確認し、ユーザーエンゲージメントが低いページや領域を特定しよう。ユーザーエンゲージメントが低いというのは、ユーザーが求めている情報が得られずすぐ離脱してしまったり、ページが見にくく離脱してしまったりという状況が想定される。結果的に、ユーザーはあまり価値のないサイトと認識し、流入が減る可能性まで考えられる。そうならないためにも、セッションデータを活用し、Webサイトのユーザーエンゲージメント情報を取得する必要がある。取得した情報を元に、コンテンツの最適化、ナビゲーションの改善、ユーザーエクスペリエンスの向上などの施策を実施することで、ユーザーエンゲージメントを高め、離脱などを防いでいくことができる。
平均セッション継続時間が短い場合は、その要因を仮説を立て、施策を実行していく。
例えば、コンテンツの離脱率と直帰率が高い場合、ターゲット層の確認、コンテンツの企画の再確認、ターゲットに合わせたサイトのユーザビリティの確認(例えば、フォントサイズやボタン配置など)をし、修正してみよう。
UTMパラメータを使用してマーケティングキャンペーンを追跡することで、各キャンペーンがもたらすセッション数やユーザーエンゲージメントを測定できる。
UTMパラメータとは、URLにタグを追加してWebサイトへのトラフィック情報を追跡できるようにするものだ。
この測定をしていない場合は、キャンペーンの効果測定が難しく、どのキャンペーンにどれぐらいの予算を投じるかの判断も難しくなる。その結果、効率の悪いマーケティングキャンペーンとなってしまう可能性が高い。
UTMパラメータの活用で、どのキャンペーンが最も効果的であるかを判断し、マーケティング予算の最適化やキャンペーン戦略の改善に役立てることができる。また、キャンペーンごとのユーザー行動を分析することで、ターゲットオーディエンスのニーズや嗜好をより深く理解することができる。
精度の高いキャンペーンの実施につながるので、UTMも活用したセッションデータの収集は非常に大切だ。
セッションデータのみを活用した場合、どのチャネルからの流入が多いかという傾向は分かるが、その他の切り口からデータを見ることで、より良い傾向のユーザーセグメントを作成することが可能だ。
セッションデータをユーザー属性(地理的位置、デバイス、性別、年齢など)と組み合わせて分析することで、ユーザーセグメントを作成できる。各セグメントのセッション数、平均セッション継続時間、コンバージョン率などを比較することで、各セグメントの特徴やニーズを理解できる。
これらの情報を活用して、セグメントごとにパーソナライズされたコンテンツ、オファー、ユーザーエクスペリエンスを提供することで、ユーザーエンゲージメントや売上の向上につなげることができる。
実施しない場合は、大きな機会損失になる可能性が高まるため、社内リソースや実施するための予算があれば、積極的にセッションを活用した分析をおこなうことをおすすめする。
GA4はBigQueryとのネイティブ連携が可能であり、これにより、セッションデータを他のデータソースと統合して分析することができる。
以下に、BigQueryと連携し、他データと統合してセッションデータを活用するアイデアを紹介する。
BigQueryを使用して、GA4のセッションデータと顧客データ(購買履歴、デモグラフィック情報など)を統合できる。これにより、各顧客のセッション行動と購買行動を紐付けて分析することが可能になる。
顧客ごとのセッション数、平均セッション継続時間、コンバージョン率などを計算し、それらと顧客生涯価値(LTV)との関連性を調べることで、高価値顧客の特徴や行動パターンを特定できる。
この情報を活用して、マーケティング戦略の最適化やカスタマーサポートの改善に役立てることができる。
BigQueryを使用して、GA4のセッションデータと在庫データを統合する。
各商品のページビュー数、セッション数、コンバージョン率などを在庫レベルと組み合わせて分析することで、人気商品の特定や在庫管理の最適化に役立てることができる。また、在庫切れが発生した商品のセッションデータを分析することで、機会損失の定量化や代替商品のレコメンデーションなどの施策につなげることも可能だ。
BigQueryを使用して、GA4のセッションデータと広告データ(Google広告、ディスプレイ広告、ソーシャルメディア広告など)を統合できる。
各広告チャネルがもたらすセッション数、コンバージョン数、売上などを分析することで、マルチチャネル Attributionを実現できる。これにより、各広告チャネルの貢献度を正確に評価し、マーケティング予算の最適化や広告戦略の改善に役立てることが可能になる。
BigQueryを使用して、GA4のセッションデータとユーザーフィードバックデータ(サイト内アンケート、カスタマーサポートログなど)を統合できる。
セッションデータとユーザーフィードバックを組み合わせることで、セッションの動きからユーザーがWebサイトのどの箇所に不満があるのかを仮説し、ユーザーが抱える問題点や改善要望を特定しやすくなる。
例えば、「特定の企業事例を見てみたかったがWebサイトに検索ボックスがないため、確認できなかった」というようなフィードバックと、トップページからの直帰率が高かったというデータがある場合、検索ボックスがWebサイトにないことでユーザーの目的が達成できていないことが推察される。
この場合、改善施策として検索ボックスをサイトに設置し、UIUXの改善を図ることで、エンゲージメントを向上させるための施策を立案・実施することができる。
ユーザーのフィードバックデータとデータから問題点を導き、改善につなげることができる。
当社では、GA4の支援を網羅的におこなっている。GA4の初期設定から、BigQueryを活用した難易度の高い分析用のダッシュボード構築などを幅広く提案可能だ。
また、当社ではMAツールとGA4を連携させたマーケティングに特化した設定の支援もおこなっている。興味がある方は、ぜひこちらの「お問い合わせ」から連絡いただけると幸いだ。
マーケティングデータアナリスト
安川 大
2024.09.24
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