コラム

Adobe Marketo Engageのベストプラクティス:株式会社スマートドライブの実践

パワー・インタラクティブ マーケティング推進室(文責)

Adobe Marketo Engage(以下、Marketo)を導入したものの「思うように活用できていない」「施策の効果を測りきれていない」といった課題に直面する企業は少なくありません。

こうしたお悩みに応えるべく、パワー・インタラクティブでは、収益貢献の最大化を目指したプログラム設計・構築・運用の実践方法を紹介する「Adobe Marketo Engage チャンピオン実践講座」3回シリーズを開催。

第1回となる本セミナーでは、株式会社スマートドライブ マーケティング部マネージャーの岡 桃子氏をお招きし、同社におけるMarketoの基本機能を活用したプログラム設計のベストプラクティスについてお話しいただきました。

本稿では、セミナーで取り上げた内容を基に、Marketo運用改善のヒントをお届けします。

スマートドライブのRevenue組織

本題のプログラム設計について解説する前に、まずはスマートドライブ社のRevenue組織体制について見ていきましょう。

スマートドライブ社のRevenue組織は大きく「セールス部門」と「事業推進部」の2部門に分かれています。セールス部門は、自社で営業活動を行う「ダイレクトセールス」と、代理店企業の営業活動を支援する「パートナーセールス」の2つのチームに枝分かれした組織体制となっています。

また、事業推進部には、マーケティング、インサイドセールス、カスタマーサクセス、事業企画の4部署が配置されています。

図表1:スマートドライブ社のRevenue組織

マーケティング部は、ダイレクトセールスと一部のパートナーセールスの営業活動を支援しており、Marketoをリード獲得の施策実施やインサイドセールス以降のステージ管理に活用しています。

Marketo運用のカギは「プロセス管理」

Marketoの運用においてスマートドライブ社が特に重視しているのが「プロセス管理」です。

プロセス管理とは

スマートドライブ社のプロセス管理とは、マーケティング施策における企画から実行、効果測定までの一連の業務プロセスを可視化し、各ステップでの最適な進め方を定義しながら、継続的に改善を図っていく取り組みを指します。

「再現性」を高めることが不可欠

プロセス管理の成功の鍵を握るのが「再現性」です。

同社では、以下の4つの要素を重視しながら、再現性のある仕組みを構築しています。

・定義
・測定
・管理
・改善

プロセス管理は、まず社内用語とルールの「定義」を確立することから始まります。マーケティング部門だけでなく、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスまで、すべての部門で明確に用語やルールが認知されている状態を作ります。

次に重要となるのが「測定」です。テクノロジーの標準連携を基準とし、誰が見てもわかりやすい仕組みを採用。ツール同士の複雑な連携を避け、シンプルな構成を目指します。

「管理」においては投資対効果が鍵となります。チャネル・施策ごとの効果を把握し、ボトルネックを特定できる状態を維持します。

これら3つの要素をベースに、質と量の両面で「改善」を実行できる仕組みを整えています。

プロセス管理を効率化するためのポイント

プロセス管理を効率的に進めるには、適切なテクノロジーの活用も欠かせません。ここからは、スマートドライブ社の実際の取り組みを例に、プロセス管理のポイントを解説します。

ポイント1:シンプルなテクノロジースタックの設計

スマートドライブ社では、MarketoとSalesforceを基盤としたテクノロジースタックを構築しています。

図表2:スマートドライブ社のテクノロジースタック

両ツール間のデータ連携は標準機能でおこない、それぞれの役割を明確にすることで、運用の透明性を確保しています。

ポイント2:4つのフェーズで進めるマーケティング施策の管理

マーケティング施策は「企画」「準備」「実行」「振り返り」の4フェーズに分け、それぞれの段階で適したツールを活用しています。

まず、施策の方向性を定める企画フェーズでは、プロジェクトマネジメントツールを用いて企画書の作成から社内稟議、承認までの進行を管理します。施策の方向性を定め、施策実施に必要なタスクを細分化した後、オーナーが担当者をアサインしながら、デザインチームへの依頼を含めた準備作業を進めていきます。

実行フェーズでは、MOpsが作成したテンプレートを使い、実行までの時間を短縮しながら、ヒューマンエラーを防ぎます。

最後に、施策の成果を検証する振り返りでは、MarketoとSalesforceのデータを連携させることで、マーケティングチャネル別の商談創出状況や受注貢献までをトラッキング。これにより、次の施策に向けた改善ポイントを見出します。

図表3:キャンペーンマネジメントではツールを適切に活用

ポイント3:テンプレートを活用したプログラム設計

施策の実行フェーズではテンプレートの利用を徹底することで、施策展開のスピードを向上させることができます。

スマートドライブ社では、ホワイトペーパー・セミナー・展示会など、チャネルごとにプログラムをフォルダで分類し、それぞれにテンプレートを用意。テンプレートの内容は必要に応じて更新し、新規施策はすべてテンプレートを複製して実行するようにしています。これにより、確認項目を削減しながら、ヒューマンエラーを防げるようになりました。

図表4:マスターテンプレートの作成でエラーを防ぎ、業務を効率化

テンプレート運用の効率化に特に貢献しているのが、以下3つの機能です。

・マイトークン
・プログラムメンバーカスタムフィールド(PMCF)
・スマートキャンペーン

マイトークンは、プログラム内の可変要素を一元管理する機能です。すべての変更箇所をマイトークンで管理することで、編集時の崩れやエラーを防ぎます。

プログラムメンバーカスタムフィールド(PMCF)では、セミナーや展示会でのアンケート結果を格納します。プログラムごとにデータを蓄積することで、定量的な評価が可能になります。

スマートキャンペーンでは、”フラッシュフィールド”というカスタムフィールドを作成、活用してフローやアセットの構成をシンプルに保ちます。

フラッシュフィールドは、一時的にデータを保存するフィールドとして活用します。フラッシュフィールドに格納したデータはトリガー条件として、特定のワークフローやプロセスで活用されます。必要な処理が完了すると、フィールド内のデータをNULLにリセットすることで、フィールドを繰り返し活用できるよう設定しています。

これにより、フィールドは再利用可能な状態に戻ります。フラッシュフィールドを活用することで、データマネジメントの工数削減に繋がっています。

プログラムテンプレートの具体例

最後に、Webコンテンツ、セミナー、展示会の施策について、スマートドライブ社が採用しているプログラム設計を紹介します。

Webコンテンツのプログラム構成

ホワイトペーパーなどのWebコンテンツでは、ユーザーの動きに合わせて連番でアセットを設定し、処理の流れの全体像を簡単に把握できるようにしています。

【テンプレートの構成】
1.フォーム入力処理
資料ダウンロード用フォームから必要情報を入力
2.ランディングページ
LP作成時に写真やテキストを変更する
3.フォーム
LPに埋め込むためのフォームのテンプレート
4.サンクスページ
フォーム入力後に表示されるページ
5.メール
フォーム入力後に送信されるメール
6.ダウンロードページ
メールでダウンロードページのURLを送信する

図表5:Webコンテンツ テンプレート構成

Webコンテンツ用プログラム配下の各アセット(ランディングページ、フォーム、メールなど)は、あらかじめ基本フォーマットのなかに用意されています。新しい施策を実施する際は、このフォーマットを複製し、資料タイトルや説明文など、必要な部分だけをトークンで変更します。これにより、作業時間が短縮されたほか、品質を保ちながら迅速に施策を展開できるようになりました。

また、資料タイトルや説明文、画像などの可変要素はすべてマイトークンで管理することで、直接編集による表示崩れや変更漏れを防いでいます。

セミナープログラムの構成

スマートドライブ社では、主にZoomウェビナーを利用してオンラインセミナーを実施しています。参加者がMarketoのフォームに入力した情報は、自動的にZoomウェビナーの参加者情報として登録される仕組みを構築しています。

【テンプレートの構成】
1.フォーム入力処理
フォームから必要項目を自動入力
2.フォーム
LPに埋め込むためのフォームのテンプレート
3.サンクスページ
フォーム入力後に表示されるページ
4.メール
フォーム入力後に送信されるメール
5.リマインド
開催日に送信されるメール

図表6:セミナー テンプレート構成

セミナープログラム内では、以下のようにフォルダを分けて管理しています。
・申込者対応
・参加者対応
・アンケート対応
・開催後対応

展示会で獲得した名刺情報はAskOneから入力

展示会での名刺情報は、AskOneのインタラクティブフォームを使用してリアルタイムで取り込みます。AskOneからSalesforceのキャンペーンメンバーに追加した後、Marketoのプログラムメンバーに所属させるような処理をすることで、一元管理を実現しています。

【テンプレートの構成】
1.インポート処理
リストから必要項目を自動入力
2.申込者リスト
申込者をインポートする静的リスト
3.参加者リスト
参加者をインポートする静的リスト
4.来場者リスト
来場者をインポートする静的リスト
5.フラッシュ紐付け(社内登録)
フラッシュフィールドを活用した社内登録フォームに対応
6.名刺紐付け
SFDCキャンペーンに追加されるとリストに追加

図表7:セミナー テンプレート構成

再現性のある仕組みづくりで、事業成長に合わせた運用改善を

Marketoによるプロセス管理を成功させる鍵は「再現性のある仕組み」の構築にあります。

共通言語の確立、標準的なツール連携、明確な評価基準の設定など、基本的な要素を押さえれば、継続的な施策改善と事業成長に合わせた運用改善が可能となります。

パワー・インタラクティブでは、Marketoの導入や運用に関する支援サービスの提供を通じ、効率よくMarketoを運用してマーケティング成果を上げたいと考えている企業の支援をしています。

詳しくは『Adobe Marketo Engageテクニカルサポート』詳細ページをご覧ください。

パワー・インタラクティブ マーケティング推進室(文責)

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