コラム

レベニュープロセスを可視化するRevOpsダッシュボードと、クイックスタート可能なプロジェクトの紹介

はじめに

現代のBtoB環境において、マーケティング部門、営業部門、カスタマーサクセス(CS)部門といった各部門が連携してレベニュー貢献に取り組む重要性が高まっています。
しかし、依然として多くの組織ではデータが分散され、顧客の全体像が把握できない状態が続いています。
この結果、部門間での連携不足や効率低下が生じ、組織全体の成長を妨げる要因となっています。

一般的な部門別のアプローチでは、マーケティング部門が有用なインサイトを営業部門へ提供しても営業部門が十分に生かせなかったり、マーケティング部門が捉えた顧客のリスク行動が連携できておらず、CS部門が顧客のリテンション改善に向けた具体的なアクションが取れない問題が顕在化しています。これらの課題を解決し、レベニュープロセス全体を一元的に管理・推進する手法として注目されているのがRevOps(Revenue Operations)です。

RevOpsを組織的に推進するためには、部門横断的なデータの統合と、それを活用したパフォーマンスをモニタリングできるダッシュボードの導入が欠かせません。
本コラムでは、レベニュープロセスを一元管理し、レベニュープロセスを可視化するためのRevOpsダッシュボード案を紹介します。また、データ分析基盤をクイックに始めるためのプロジェクト例も取り上げます。

組織の成長を加速させ、部門間の壁を超えた収益最適化を実現するために、ぜひRevOpsダッシュボードを導入してください。

RevOpsとは

RevOpsとは、マーケティング・営業・カスタマーサクセス(CS)といった売上に直結する部門(レベニュー組織)の収益プロセス全体を最適化することで、組織全体の収益成長を最大化するための概念であり、役割です。

RevOpsを実現することで部門横断的な協力体制の実現が期待されますが、そのためには、独立して運用されている部門間のデータやプロセスを統合し、データのサイロ化を解消することが必要です。

RevOpsを推進するために必要なデータマネジメント

各部門で管理されているレベニュープロセスの検証に必要なデータを正確かつ一元的に管理し、適切に活用するには、データマネジメントが必要です。その際は、一貫性を確保するために、データウェアハウス(DWH)を利用してレベニュープロセスの最初から最後までを管理することが有効です。データマネジメントに必要な観点を以下にご紹介します。

1.必要なデータ項目

RevOpsを推進するためには、各部門が持つデータを正確的かつ包括的に収集する必要があります。
これにより部門間の連携を強化し、収益に直結する意思決定が可能となります。
以下必要なデータ項目の例です。

マーケティング関連データ
1.リードデータ
・リード獲得数、スコア(行動、属性)
・MQLへの転化率
2.施策(キャンペーン)データ
・チャネル別ROI(費用対効果)
・クリック率、CVR
3.獲得コスト
・チャネルごとの顧客獲得にかかった費用

営業関連データ
1.パイプラインデータ
・商談ステージごとの進捗(金額、確度)
・各ステージでの滞在期間
2.受注率データ
・リードから商談までのコンバージョン率
・商談から受注までのコンバージョン率
3.営業成果
・担当者ごとの売上目標達成率
・商談件数、受注件数、失注件数

カスタマーサクセス(CS)関連データ
1.顧客満足度
・NPS(Net Promoter Score)、CSのフォロー状況
2.解約率
・顧客の解約タイミング、解約理由
3.収益貢献
・企業・顧客ごとのライフタイムバリュー(LTV)
・アップセル・クロスセルの件数・金額

2.データの管理・分析方法

部門ごとに分散されたデータを統合し、一元管理する仕組みが必要です。これにより、データのサイロ化を解消します。また、正しい意思決定は正しいデータから生まれます。そのため、データの品質を管理することが重要です。

データの統合
1.データウェアハウス
・マーケティング・営業・カスタマーサクセスのデータを一元管理(例:BigQuery、Snowflake、など)
2.BIツール
・ダッシュボードやレポートで全体俯瞰(例:Looekr Studio、Tableau、Power BI)
3.ETLツール
・ツールやシステムのデータを抽出・変換・格納(例:CData Sync、TROCCO、Reckoner)

品質管理
1.データクレンジング
・不正確なデータや重複の修正
2.データ戦略・ガバナンスの策定
・データの取集、管理、活用における中長期的な目標を定義
・必要なデータ、収集方法、分析プロセスを明確化し、全社で共有
・データの正確性、一貫性、セキュリティを確保するためのルールを策定

3.重要なデータ活用視点

RevOpsを推進するには、データ分析基盤をモニタリングにデータを利用するだけでなく、レベニュープロセスの最大化に向けた意思決定として活用することが重要です。
以下は、データ活用の視点の例です。

1.KPIの追跡
・各部門の主要指標(売上、受注率、顧客満足度など)を常時監視
2.トレンド分析
・前年同月比による成長率やリスクの可視化
3.原因分析
・成果が上がらない要因を特定
4.予測
・AIを活用した売上や収益予測で、将来の施策を立案

これにより、RevOpsを推進するためのデータ管理の基盤が強固になり、データの効率的な活用とリスク管理を両立します。

RevOpsダッシュボードのご紹介

RevOpsダッシュボードは、リードとの初回接点から商談・受注、その後のアップセル・クロスセルなど、レベニュー組織が収益につなげるための各プロセスであるレベニュープロセスの全体像を把握するためのダッシュボードです。
あくまで全体感の把握ですので、局所的な可視化ではなく、収益に影響のある課題のプロセスや、成長余地の高いプロセスを可視化し、改善していくことが重要です。

下記ダッシュボードはマーケティング、営業、カスタマーサクセスを統合し、全体の収益性を最大化することを目指しており、RevOpsおよび各オペレーション部門が利用することを想定しています。

Revenue & Forcast

売上と受注を把握し、成長の全体像とギャップの原因を探ります。
受注までの平均日数も含め、プロセス改善の指標とします。

Summary(比較期間:前年同月比)
■見方
現在の売上金額、受注金額、受注率、平均受注金額を前年同月比で比較し、成長率や変化の傾向を確認します。特に前年同月比での増減や、目標との差異に注目することが重要です。

■使い方
営業マネージャーや経営陣が月次会議で目標達成状況を議論し、収益が計画に対して不足している場合には、追加施策やリソース配分を検討します。


売上とフォーキャスト推移 / フォーキャスト予測(AI)
■見方
月次の売上および受注予測を時系列で確認し、過去の受注実績とAIによるフォーキャスト予測を比較します。予測精度や変動傾向を把握し、将来の収益に対する見通しを得ることができます。

■使い方
営業リーダーが次月以降の売上計画を調整し、受注不足が予測される場合には営業活動を強化します。また、AI予測の信頼性を高めるため、入力データの品質を改善します。


平均受注期間(日数)
■見方
商材ごとの商談が受注に至るまでの平均所要日数を確認します。特定の商材で平均受注期間が長期化している場合、商談プロセスに課題がある可能性を検討します。

■使い方
商談の進行速度を測定し、進捗が遅い場合には営業プロセスを見直します。特定の商談フェーズでのボトルネックを特定し、その解消に向けたアクションを計画します。

Pipeline

商談の進行状況や営業活動の成果を可視化し、進捗と失注から課題を抽出します。
進行中商談や失注商談の状況を把握し、個別フォローやリスク管理に役立てる。

Summary(比較期間:前年同月比)
■見方
創出パイプライン、オープンパイプライン、パイプラインカバレッジ、1st Visit件数を前年同月比で比較し、進捗状況を把握します。
・創出パイプライン:期間中に新規作成された商談
・オープンパイプライン:受注も失注もしていない商談
・パイプラインカバレッジ:売上予算に対する実績の比率
・1st Visit件数:商談の初回訪問の活動件数

■使い方
営業チームがパイプライン全体のボリュームを確認し、足りない場合には新規商談の創出を計画します。また、予算達成のための具体的なアクションを設定します。


パイプライン推移
■見方
商談の進行状況を時系列で確認し、各経路(Marketing Gen、Sales Gen、Partner Gen)のパフォーマンスを分析します。不足している経路や進捗が遅い領域を特定することがポイントです。
・Marketing Gen:MQLからの商談(マーケ経由)
・Sales Gen:ジェネレーションからの商談(営業が自らフォロー)
・Partner gen:パートナー経由の商談

■使い方
営業マネージャーが商談進捗を定期的にレビューし、必要に応じて営業担当者に重点的なフォローアップを指示します。経路ごとの商談創出目標を設定します。


上位進行中商談
■見方
売上規模が大きい進行中の商談をリスト化し、商談ステージや見込み度を確認します。

■使い方
営業チームが優先度の高い商談にリソースを集中させます。また、必要に応じてマネージャーが商談進行を直接サポートします。


失注商談
■見方
受注に至らなかった商談の理由やタイミングを分析します。特定の商談フェーズや顧客セグメントに問題が集中している場合、その要因を深掘りすることが重要です。

■使い方
失注理由をチームで共有し、改善策を立案します。失注率が高いセグメントに対して、提案内容や商談アプローチを再検討します。


リスク商談
■見方
停滞または進展が見込めない商談をリストアップし、リスク理由(顧客の意思決定遅延、競合状況など)を確認します。

■使い方
商談リスクが高い案件についてフォローアップの優先順位を設定します。進捗が見込めない案件は、クローズの判断を迅速に行い、リソースを効率化します。


営業毎達成率
■見方
各営業担当者の目標に対する達成率を比較し、個別パフォーマンスを可視化します。

■使い方
高パフォーマーの成功事例を共有し、低パフォーマーには適切なトレーニングやサポートを提供します。チーム全体の士気を高める施策を検討します。

Customer Success

既存顧客からの収益や顧客満足度の推移を追跡し、解約リスクの早期発見と原因究明に利用します。
リテンション率の向上や顧客リスクの早期発見に焦点を当てます。

Summary(比較期間:前年同月比)
■見方
既存顧客売上、アップセル受注、クロスセル受注金額を前年同月比で確認し、成長の傾向を把握します。

■使い方
リテンション率やアップセル率が低下している場合には、顧客フォローや提案内容を見直し、具体的な改善施策を実施します。


既存顧客売上推移
■見方
月次のアップセル・クロスセルの売上推移を時系列で確認し、収益貢献度の変化を把握します。

■使い方
既存顧客の貢献度を測定し、収益の高い顧客にリソースを集中させます。また、アップセル・クロスセル施策の効果を測定し、戦略を最適化します。


NPS推移
■見方
顧客満足度(NPSスコア)の推移を時系列で確認し、改善または低下のタイミングを特定します。

■使い方
NPSが低下している期間の原因を分析し、顧客体験向上のための具体的施策を立案します。ポジティブなトレンドが見られる場合は成功要因を継続的に実行します。


リスク顧客
■見方
解約リスクが高い顧客をリストアップし、特定のパターン(利用頻度の減少、満足度の低下など)を確認します。

■使い方
解約リスクが高い顧客を優先的にフォローし、必要に応じて特別なサポートを提供します。長期的な関係構築を目指したアプローチを検討します。

クイックスタート可能なプロジェクトのご紹介

データマネジメントを推進する上で重要となるデータ分析基盤ですが、基盤整備を推進する際にぶつかる問題点として、以下のようなことがあります。
1.施策の効果が断片的で全体像がつかめない
2.導入済みのツールやプラットフォームの制約で、身動きが取れない
3.データ関連の整備や分析が属人化している

弊社のデータマネジメントサービスは、マーケティングの収益貢献を可視化できる状態を、継続的に維持管理するための、組織的な活動を推進するサービスです。これにより、プロジェクトを効率的かつ確実に進めることが可能です。
弊社サービスには以下の特徴があります。
1.マーケティングデータ基盤の構築
MAやSFA/CRMおよび契約管理システムから自動でデータを抽出し、蓄積し、また、集計するためのデータ基盤を構築します。
2.MA・SFAの再設定と運用の見直し
費用対効果を可視化するために必要な項目の洗い出しやMA・SFAの運用の見直しを指南いたします。
3.モニタリングと効果測定
KPI/KGIのモニタリングやマーケティンス施策の効果測定を、付随するダッシュボードで可視化することができます。
4.データガバナンスによるデータ活用度の向上
データ入力やデータクレンジングの方針・ルールなどを組織として根付かせるための仕組みづくりをサポートします。

まずは、今あるデータを自動で収集してデータ分析基盤を構築します。次に、ダッシュボードで可視化することで、「できていること」と「できていないこと」を明確化します。少しづつ「見える範囲」を拡げていき、最終的には、組織横断でデータマネジメントを進めていきます。
まずは、現状の課題をぜひ無料相談でお聞かせください。具体的なご提案をいたします。

マーケティングデータマネジメント診断(無料)

まとめ

RevOpsは、組織全体の収益成長を最大化するための概念であり、収益プロセス全体を統合的に管理・最適化することで、収益プロセス全体の最適化を支援します。
RevOpsを組織的に推進するためには、部門横断的なデータの統合と、それを活用してパフォーマンスをモニタリングできるダッシュボードの導入が欠かせません。

ぜひ本コラムを参考に収益プロセス全体の可視化に取り組んでください。

八木 耕祐

マーケティングデータアナリスト

八木 耕祐

Web行動履歴やアプリデータによる顧客行動分析

アナリストとして、50社のアクセスログ分析に携わる。現在は、データ設計、データマート構築などの基盤づくりから、ダッシュボード作成、分析まで、データ活用を極めている。セミナー登壇は50回以上、満足度90%以上のセミナーも多数。
リモートワークになり、海の近くでマリンスポーツをエンジョイ中。

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