【マーケティング月次報告書作成アシスタント(仮称)】Salesforceレポートが“最速で会議資料”に変わる!
マーケティング×AIの時代がやってきた
インターネットの普及とともに、SNS運用やオンライン広告、ウェビナー、インバウンドマーケティングなど、多種多様なマーケティングチャネルが登場しました。その結果、私たちが日々扱うデータ量はかつてないほど増加し、データ管理が複雑化しています。多くの企業ではSalesforceなどのSFA/CRMシステムを導入し、リード獲得から商談、受注に至るまでのプロセスを一元管理しているものの、そこから会議で活用できるレポートを作ることに苦労している担当者は少なくありません。
近年、こうした課題解決の手段として急速に注目が高まっているのが、ChatGPTなど生成系AIを用いた業務自動化です。特に2023年11月に公開されたOpenAIの「GPTs(カスタムGPT)」は、プログラミングの知識がなくともノーコードで目的特化型のAIを構築できる点が大きな魅力となっています。
弊社ではこの機能を使って、「月次報告書作成アシスタント」というGPTsを作成してみました。
本コラムでは、Salesforceからエクスポートされたレポート数値データからの示唆出しや改善案の考察まで自動で行ってくれるGPTsの機能と、その作成過程をご紹介します。
はじめに
本コラムで使われる専門用語解説
以下に、本コラム中で頻繁に登場する重要な用語をまとめました。文中ですでに触れていますが、あらためて確認いただくと理解が深まるかと思います。
・ノーコード
プログラミング言語を使わずに、GUI操作や簡易設定だけでアプリケーションなどを開発・構築する手法。GPTsの大きな強みでもある。
・ChatGPT / GPTs
ChatGPTはOpenAIの開発した大規模言語モデルを活用した対話型AI。GPTs(カスタムGPT)はその拡張機能で、ユーザが自由にインストラクションや知識を組み込み、特定用途に特化させられる。
・報告書テンプレート
会議用レポートや月次施策報告書で、どの項目をどの順番で表示するか、どのようなセクション構成にするかなどをあらかじめ定義したもの。
本カスタムGPTsでは、これをAIに事前学習させておき、常に同じフォーマットのレポートを出力できるようにしている。
・算出定義
MQL転換率、ROI、CVRなど、各種KPIをどのような計算式・ルールで算出するかを明文化したもの。「報告書テンプレート」とセットでAIにインストールすることで、企業独自の定義でも誤差なくレポートに反映される。
・Salesforceレポート
Salesforce上で作成できる各種レポートの総称。たとえば「キャンペーンレポート」は広告やイベントなどの効果測定、「商談レポート」は商談金額・ステータスに関する集計、「リードレポート」は獲得リードの属性やフェーズ進捗などを確認するためのもの。これらをGPTsが読み込むことで、レポートの数値・指標を自動抽出できる。
・キャンペーンレポート: オンライン広告、ウェビナー、展示会など、キャンペーン単位でのROIやコンバージョンを測定。
・商談レポート: 商談金額、フェーズ、成約見込み、クローズド商談数など、売上に直結する情報を追跡。
・リードレポート: 新規リード数、リードソース、フェーズ移行状況などを分析し、MQL転換率や次の施策検討に活用。
Salesforce以外のレポートでも使える?
はい。使えます。
このコラムでは、Salesforceで作成したレポートをエクスポートし、GPTsにインポートすることで報告書を作成する方法を紹介してますが、報告書でまとめたい数値が記載されているファイルであれば、Salesforceレポート以外のフォーマットでも使えます。
Salesforceレポートを活かしきれない「三大課題」
実際に企業のマーケティング部門や営業支援部署をコンサルティングしていると、Salesforceレポートを運用する中で、下記のような課題に直面しているケースが目立ちます。
1.レポート作成に時間がかかりすぎる
Salesforceのレポート機能は強力ですが、経営層向けのフォーマットに合わせるためにExcelやPowerPointでの加工が必要だったり、複数レポートをまとめる作業が属人化しやすかったりするなど、毎回膨大な時間がかかっている。
2.会議で意思決定に至らない
数字自体はそろっているものの、「結局この施策はどう評価すべきか?」が曖昧なままで資料が提出され、現場担当者と経営陣の認識が合わないことが多い。
3.データの抜け漏れ・定義の不一致
企業独自のリードフェーズや商談ステータスが設定されていたり、ROIやMQL転換率などの算出定義が担当者ごとに微妙に異なっていたりすると、レポートの整合性が崩れ、信頼性の低下につながってしまう。

GPTsを使うことで、単なるデータ集計に留まらず、数値の差分から考えられる示唆や改善案まで自動でまとめることで、「レポート作成」に使う時間を削減し、「レポートを活かした意思決定」に時間を割けるようになるのが最大の特徴です。
まず結論:このカスタムGPTsでできること
レポート最終成果物の例
結論から言うと、本カスタムGPTsの導入によって、以下のような会議に“ちょっと手を加えれば使えそう”なレベルの月次レポートをAIが自動的に生成できるようになります。ここではサンプルの一部をご紹介します。
【最初に入力したプロンプト】
最初に「分析に使いたいデータ」と「報告書を作成します」というプロンプトを入力

【アップロードしたレポートイメージ】
Salesforceで作成したレポートをエクスポートしてアップロードしています。
※個人情報、企業情報の扱いには十分にご注意ください。分析に関係のないデータは削除することが望ましいです。
・キャンペーンレポート例

・商談レポート例

※Salesforceレポートの作成方法が分からない、という方はChatGPTにSalesforceレポートの作り方を聞いてみるのが良いかと思います。
【GPTsでの出力イメージ】

上記のように、定量データ(主要KPIやROI)と簡易的な示唆・改善案をセットで出力するのがポイントです。これにより、「数字はまとまったけれど、結局何が重要なのか分からない」といった状況を防ぎ、会議前に最低限の考察を済ませられるため、意思決定のスピードが高まります。
本カスタムGPTsの狙いと特徴
・狙い
1.作業時間の削減: ExcelやPowerPointでの集計・加工作業に多くの時間を割いていた担当者を解放し、戦略立案や施策検討にリソースを回せるようにする。
2.レポート品質の均一化: 経営層が求める指標と、それらの算出定義をテンプレート化してAIに覚えさせることで、常に一定品質のレポートを自動生成できる。
3.意思決定の高速化: 数値と示唆が同時に提示されるため、会議で「どうするか」に集中でき、議論が深まる。
・特徴
1.ノーコードで構築可能: GPTsのインターフェース上で指示文やテンプレートを組み込むだけなので、特別なプログラミングスキルが不要。
2.データ不足を自動検知: レポートに必要な指標が不足しているときはユーザに入力を促す仕組みがあり、抜け漏れレポートを防ぐ。
3.示唆(考察)機能: データの増減要因をAIが推測し、300文字程度のコメントを付け加えることで、経営層が次のアクションをイメージしやすくする。
このカスタムGPTsを活用できそうな人とよくある課題や悩み
CMOやマーケティング責任者
悩みの例
・会議資料がまとまるのが遅く、意思決定が先延ばしになる
報告を受けてから疑問点や修正点を指摘すると、また数日後に修正版が来て…といった具合に時間を浪費する。
・複数施策のROIをまとめるのが手間
新製品ローンチや各種キャンペーンを同時並行で走らせているが、どれが成果を上げているか定量的な比較が難しい。
・戦略検討に割く時間が足りない
報告書の細部を整えるだけで疲弊し、施策投資の判断や新たな取り組みに頭を使う余裕がなくなる。
GPTsでの解決イメージ
・報告書自体の作成期間が短縮されるので、会議での議論がより戦略的(次に何をやるか、どの施策に予算を増やすか、など)にシフト。
・AIが示す考察をきっかけに、経営層・担当者間の認識ギャップを早期に埋められる。
このカスタムGPTsによって何が変わるのか?AIを使うことによる変化
レポート作成時間の劇的短縮
従来は、Salesforceの各種レポート(キャンペーンレポート、商談レポート、リードレポートなど)をExcelで加工し、そこからWordやPowerPointに転記して最終資料を作る流れが一般的でした。集計やレイアウト調整だけでも数時間~数日を要し、属人的なミスが発生しがちです。
AI導入後は、「Salesforceのレポートをドラッグ&ドロップ→必要データの有無を確認→自動で報告書生成」というシンプルなステップになり、時間短縮だけでなく数字の精度やレイアウトの均一化も期待できます。
経営層が欲しい「示唆」まで自動生成
会議で本当に欲しいのは、「施策の結果、何が良くて、次に何をすべきか?」という打ち手のヒントです。本カスタムGPTsでは、報告書の数値を見ながらAIが示唆を出すよう設計しており、それらを300文字程度でまとめることで、担当者と経営層の認識ギャップを埋めやすくしています。
PDCAサイクルの加速と意思決定の高速化
毎月または毎週レポートが自動生成されるようになると、各施策のKPI推移やROIを連続的にモニタリングできるため、PDCAサイクルを効率的に回せるようになります。会議はもちろん、日々の運用段階でもスピーディーに軌道修正や新施策検討が可能になります。
GPTs開発のプロセス
ここからは、実際に本カスタムGPTsを開発したときの大まかな流れを説明します。「ノーコード」とはいえ、テンプレートや算出定義の整理、指示文(インストラクション)の作り込みが成功のカギを握ります。
開発の準備
Salesforceレポートの洗い出し
まずは企業内でどのようなレポートを使っているか棚卸しします。たとえば、キャンペーンレポート(広告やイベントの成果測定)、商談レポート(各商談の金額やステータス集計)、リードレポート(リード獲得源やステータス進捗)などが代表的です。
これらをどのように組み合わせれば月次報告書に必要な指標が得られるか確認しておくと後工程がスムーズです。
報告書テンプレートの作成
会議で用いるレポートのフォーマットを固めます。
例:
1.今月の主要KPI(リード獲得数、MQL転換率、商談創出数、ROIなど)
2.成果と課題のサマリー
3.300文字程度の示唆(考察)
4.次のアクション提案
これを「報告書テンプレート」としてテキストに落とし込み、GPTsにアップロードできる形にしておきます。
報告書算出定義の明確化
どの指標をどう計算するかを、テキストファイルなどでまとめます(例:MQL転換率、ROI、CVRなどの計算式)。これを「算出定義」と呼び、本カスタムGPTsの知識として組み込むことで、数値の取り扱いが標準化されます。
GPTsの構築
知識データ(テンプレート、算出定義)のアップロード
先ほど準備した報告書テンプレートと算出定義をGPTsの知識データに登録します。これにより、AIがどんな形式でレポートを作り、どのように各項目を計算すべきかを学習します。
インストラクション(指示文)の設定
GPTsにはノーコードでも細かく手順を指示できます。たとえば:
1.最初に「報告書テンプレート」を読み込み、報告形式を理解する。
2.次に「算出定義」を読み込み、KPIなどを正しく計算する方法を学ぶ。
3.Salesforceレポートを受け取った際は、そのデータを確認し、テンプレートの各項目を算出。
4.不足データ(目標値や前月値など)があれば必ずユーザに入力を促す。
5.集計結果とともに300文字程度の示唆をテキスト形式で生成する。
6.各項目のレポート作成が終わったら次の項目に移る。
こうしたフローを文章で記述するだけで、GPTsが指示通りにレポート生成を進めるようになります。
不足データの自動依頼フロー
Salesforceレポートをアップロードしても、目標値や特定指標の前月実績などが足りない場合があります。本GPTsでは、そうした不足データを検知すると、ユーザに追加入力を促すよう設計しています。これにより、最終的にすべての項目が揃った状態でレポートを完成させることが可能です。
開発を進める上で直面した問題と解決のヒント
報告書テンプレート作成での課題
テンプレートの視点不足
当初はSalesforceレポートに含まれるデータをテンプレートに全面的に反映したため、数字は揃えやすい反面、「結局、何をどう改善すればいいのか」という経営層の視点まで踏み込めない問題がありました。
ユーザ視点を重視した再設計
そこで、「誰が・どんなシーンでレポートを活用するのか」という視点に立ち返り、テンプレート構成を見直しました。KPIや目標値の扱い、レイアウトの優先順位を吟味し、レポートが経営層の判断材料として十分機能するかを検証したのです。
報告書算出定義: GPTsにどうやって数値を計算させるか
問題点
たとえばROIやMQL転換率など、企業独自の定義を使っている場合、通常のChatGPTでは計算方法があいまいになり、誤った数値を算出してしまうことがありました。
解決策
1.企業独自の定義をテキスト化
まず、ROIやCVRなどを「どのタイミングで数値化するか」「リードフェーズをどう扱うか」など、企業独自の運用ルールをテキストで明確化します。
2.GPTsにアップロード
そのテキストを算出定義としてGPTsに組み込み、「リードフェーズが〇〇の場合はMQL転換率の分母とする」など、具体的な条件分岐や計算式を指示します。
3.テスト用データで検証
ダミーのSalesforceレポート(小規模データ)を使って試行し、正しい数値が出力されるかをチェック。問題があれば算出定義や指示文を修正します。
このように、GPTsへ「正しい算出ルール」を伝えることで、企業独自のKPI定義にもとづく精密なレポート生成が可能となり、経営陣が安心して数値を参照できるようになります。
おわりに
レポート自動化はゴールではなくスタート
本コラムで紹介したSalesforceレポートのAI自動化は、業務効率化の強力な手段となる一方、それ自体が最終目的ではありません。真の目的は、定量的なデータと簡易考察が揃ったレポートをベースに、「次にどんな施策を打つか」「どのプロセスを改善するか」を素早く議論し、実行に移すことです。
GPTsを活用すれば、担当者が定型的なレポート作成に追われる時間を削減し、より高度な戦略立案やクリエイティブな仕事に集中できるようになります。経営陣も、報告書の細部を整える手間から解放され、意思決定のスピードと精度を高められます。
今後の展望:AI×マーケティングはどう進化する?
・意思決定までの自動化
将来的には、「施策ROIが一定以上になった場合は広告費を自動で増やす」など、AIが予実管理や予測モデルと連携し、経営判断の一部を自動化するシナリオも見込まれます。
・部門横断のデータ融合
営業部門、開発部門、サポート部門など、組織全体のデータを一元的に取り込み、顧客ライフサイクル全体を俯瞰したレポートをリアルタイムで生成することも視野に入ってきます。
注意事項
Salesforceカスタマイズ環境への適合
多くの企業では、Salesforceを標準の設定ではなく独自カスタマイズして運用しています。リードや商談のステータス名を変更していたり、カスタムフィールドを大量に追加している場合が珍しくありません。
・テンプレート・算出定義の更新
企業独自の運用をGPTsで正しく処理するには、テンプレートや算出定義をその都度アップデートし、AIが新しいステータスやフィールドを学習できるようにする必要があります。
・Salesforce側でも整備が必要
場合によっては、Salesforceのフィールド名やステータス名を整理し、会議向けのレポートに使いやすい形に変更する作業も並行して行うと、よりスムーズに進みます。
AIの限界と人間の判断の重要性
・AIの提案はあくまで参考
GPTsが示す考察や改善案は、過去データや定義されたロジックに基づくものであり、外部環境の急変や競合動向などをリアルタイムで捉えられるとは限りません。最終的な意思決定は人間がチェックし、追加情報を加えておこなうべきです。
・誤回答リスク
生成系AIは誤った言い回しや数値を出す可能性もゼロではありません。担当者が最終確認を行い、会議へ提出する前に精度を担保する運用体制が望まれます。
まとめ
SalesforceレポートとChatGPT(カスタムGPT)の連携によるマーケティング施策レポートの自動化は、企業の業務効率を飛躍的に高めるだけでなく、経営層の意思決定スピードと質を向上させる大きな可能性を秘めています。
・工数削減: 従来の手動加工・編集作業から解放され、担当者は施策改善や新しいマーケティングアイデアの検討に注力できる。
・品質の安定: テンプレートと算出定義をAIに組み込むことで、常に一定品質のレポートと考察が得られ、会議での議論が深まる。
・意思決定の加速: 数字と示唆をセットで受け取れるため、経営層は議題の本質(どこに投資し、どこを改善すべきか)に集中できる。
さらにB2B Marketing AnalyticsやAccount Engagementとの連携により、マーケティング活動をより細かく可視化したり、自動的に最適化する未来像も見えてきます。「AIにできる部分はAIに任せ、人間が戦略的・創造的思考に注力する」という流れは今後ますます加速するでしょう。
もし自社のSalesforce環境で本コラムのようなカスタムGPTsを試してみたい方がいれば、まずは小規模なレポート自動化から始めてみるのがおすすめです。ノーコードとはいえ、テンプレートや定義の設計が成功のカギとなりますので、外部コンサルやSalesforceパートナーの力を借りるのも一つの手です。
本コラムが、Salesforceデータの活用をもう一歩進めたい企業の皆様にとって、AI活用の具体的な道筋を示す一助となれば幸いです。
「マーケティング月次報告書作成アシスタント(仮称)」まもなくリリース!
B2B Marketing Analyticsを活用したダッシュボード構築サービスのご紹介
弊社では本GPTsとあわせて、SalesforceのB2B Marketing Analyticsを用いたダッシュボード構築サービスも提供しています。
・主要指標( 売上高、獲得件数、費用、ROIなど)によるマーケティング活動の定量的な評価
・マーケティング施策の売上貢献度、商談ステージ、クローズ理由など、施策ごとの具体的な成果や課題の可視化
・商談がクローズに至らなかった理由の分析
など、より深いインサイトが必要な場面では、可視化されたダッシュボードとGPTsで生成した月次報告書と組み合わせることで、経営視点・現場視点の両方からマーケティング活動を俯瞰できる統合的な仕組みを構築可能です。
B2B Marketing Analyticsを活用したリアルタイムダッシュボードと本GPTsの連携によって、施策の成果をタイムリーに把握し、次の一手を速やかに打つための土台づくりをサポートします。さらなる詳細や導入相談など、お気軽にお問い合わせください。
(※このコラムもChatGPTを活用して執筆しています。)

マーケティングコンサルタント
小畑 敬裕
Salesforce Sales Cloud活用支援
マーケティングコンサルタントとして、Salesforce Sales CloudとAccount Engagementの導入・運用支援を得意とする。UX設計に基づくデジタルマーケティング戦略策定やマーケティング施策効果の可視化にも強みを持つ。B2B企業を中心に多数の支援実績があり、ペルソナ作成やマーケティング分析を通じたコミュニケーションシナリオ策定など、クライアントの課題解決に貢献。休日はバスフィッシングを楽しみ、自然の中でリフレッシュしている。