コラム

あなたのセミナーをインタラクティブに。「sli.do」どうでしょう?-デジマ実験室-

マーケティングデータアナリスト 八木 耕祐【文責】

パワーインタラクティブのデジマ実験室へようこそ!

「まずはやってみて、その感想を共有する」がテーマのこのコラム。

本コラムでは、自社のマーケティングに携わるメンバーが、自社のWebサイト、セミナー/イベント、マーケティングオートメーションを運営するなかで、いつの間にか定番化している施策を、「それ本当にそうなの?」とあらためて、テストし、検証し、その結果をコラムとして公開します。

また施策の検証以外に「話題のツールを使ってみた感想」なども公開し、明日から使える情報としてお届けいたします。

今回はセミナーや勉強会などで、参加者の声をチャット形式で共有できるサービス「sli.do」を取り上げてみたいと思います。導入から自社セミナーでの運用まで、使ってみてわかったことをデジタルマーケター2年生の若手、八木がお届けします。

※関連ナレッジ資料※
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会場からの質問を匿名で集めることができる「sli.do」を自社セミナーで使ってみた

BtoBマーケティングにおいて、自社セミナーは大きな役割を持っています。インターネットでの情報収集が当たり前になった今、見込み客は営業担当者と面会すべき理由をなくしてしまったからです。それゆえ、多くの見込み客と直接出会うことができるセミナーに企業はこれまで以上の期待をかけています。

私たちもGoogleアナリティクスやGoogleサーチコンソール、Googleデータポータルを取り上げるもの、デジタルマーケティングやマーケティングオートメーション(MA)の実践をテーマにしたものなど、さまざまなセミナーを月に2、3回開催しています。

私たちのセミナーに参加される方は、デジタルマーケティングに何らかの形で取り組まれているという共通点を除けば、所属する業界も企業規模もさまざまです。予算の制約や組織の壁、人手不足などひとりひとりの参加者の課題に即して理解を深めていただくために、セミナーの最後にはQAコーナー(質疑応答)の時間を設けています。

しかし、セミナーの最後に「内容に関すること、自社における課題など質問はありますか?」と投げかけてみても、気恥ずかしさや遠慮から、なかなかご質問いただけるものではありません。

そこで私たちは、ここ数年A5サイズの「QAシート」をセミナー入場時に配布し、セッション中や休憩時間に記載してもらう形式に切り替えました。この「QAシート」の導入により、参加者からの質問は増えましたが、「講師に参加者が質問する」ということを意識するあまりか、率直な意見や些細だけれど重要な質問を上げにくいのではないか、と感じられることも増えてきました。

私たちと参加者が、よりインタラクティブに(何しろ、社名がパワー・インタラクティブなのですから)セミナーを活用することはできないだろうか。そんなことを考えていた折、あるカンファレンスに参加した際、「sli.do」というWebサービスに出合いました。

「sli.do」はスマホやPCで入力頂いた質問をリアルタイムに回収することができるWebサービスです。

質問が講師にリアルタイムに届く点、参加者全員の質問が皆に共有される点などから、より多くの質問を紹介し、アドバイスと合わせて参加者全員で課題を共有することで、QAコーナーをさらに充実したものにできるのではないかと思い、私たちもセミナーで「sli.do」を導入することを決めました。

今回はそんな「sli.do」を使ってみての感想をご紹介します。

「sli.do」とは

「sli.do」はセミナーなどで、参加者から匿名で質問を回収することができるWebサービスです。

メールアドレスなどの個人情報登録は不要で、モバイル・タブレット・PCから質問の投稿を行うことができます。質問を投稿する際、氏名欄が必須ではないため、匿名投稿が可能です。投稿した質問は、他のセミナー参加者も閲覧することができます。

セミナー参加者の質問投稿方法

質問の投稿方法は以下の4ステップです。

1.『https://www.sli.do/』へアクセス
2.イベント運営者が発行したイベントコードをPCやモバイルなどの端末で入力
3.「Type your question」に質問内容を記入
4.【SEND】を押下して質問を送信

セミナー参加者の質問一覧確認方法

投稿された質問一覧は、質問投稿画面に表示されます。
PCではプレビューモードが有ります。文字が大きくなったり、白抜きになったり、質問の文字が強調されます。実際のQAコーナーではこのプレビューモードを会場でプロジェクターにより表示しました。

弊社の「sli.do」利用方法

弊社のセミナーは、第1部セッション(約50分)、第2部セッション(約50分)、QAコーナー(15分)という構成です。以前は、事前に配布した「QAシート」(紙)に質問を記入してもらい、スタッフが回収する、という運用でした。この「QAシート」の代わりに「sli.do」を使用しました。

紙の「QAシート」を使っていた、以前の運用

事前に「QAシート」を配布し、司会者がセッション前に「講義中に疑問に感じたことがあれば、「QAシート」に記入してください」とアナウンスをします。「QAシート」の回収は第1部と第2部の合間と、第2部とQAコーナーの合間の計2回行います。
QAコーナーでは、頂いた質問を講師自ら読み上げて回答する、という形式でした。

以前使用していた「QAシート」

「sli.do」を使っている現在の運用

セミナー冒頭に「sli.do」の説明をした上でセッション中に随時質問を入力してもらいます。QAコーナーの時間には、「sli.do」の質問一覧画面をスクリーンに表示させ、それを講師も一緒に見ながら質問を選定して回答しています。

なお、QAコーナーだけでなく、第1部、第2部のセッション中にも講師は「sli.do」を利用できるようにしました。演台に置いたタブレットには、「sli.do」で集まっている質問一覧をリアルタイムに表示。講師はセッションを進める中で質問を確認し、可能であれば講義内容に反映してもらうようにしました。

講師向けに表示していたQA一覧画面

「sli.do」の効果を評価する

「sli.do」導入で、QAコーナーはどう変わったのか。紙の「QAシート」を使用した際の質問数と、「sli.do」を使用した際の質問数を比較してみました。

比較対象のセミナーは、紙の「QAシート」を使っていた4セミナー、「sli.do」で質問の受付を行うようになった4セミナー、計8セミナーです。セミナー出席者における質問数をカウントして、「QAシート」と「sli.do」のセミナー参加者1名あたりの質問数を比較しました。

1名あたりの質問数は、「QAシート」では0.2~0.77、「sli.do」では0.5~0.86という結果になりました。
全く同じセミナー同士で比較しているわけではありませんが、「sli.do」を使ったときの方が、参加者から質問が出ています。

「sli.do」を使った時の方が、質問数が増えた要因としては以下が考えられます。

・手元のデバイス(スマホ・ノートPC)で気軽に入力できる。
・他の参加者の質問も見ることができるので、入力する心理的なハードルが下がった。
・紙の「QAシート」は記入したらスタッフに渡す必要があるが、「sli.do」はその面倒がない。

「sli.do」は入力いただいた質問がオープンになる分、誰かが質問すれば、それに続いて質問が入力される傾向があります。よって「早い段階で1つ目の質問を入力してもらう」ことがQAコーナーの活性化には重要だと感じました。

次に、セミナー運営スタッフ、講師による「sli.do」を使ってみた上での評価を紹介します。

セミナー運営スタッフの評価

・「QAシート」を用いていた頃と比較して、事前の準備、回収作業が楽になった
  セミナー参加者が多い時はシートの回収要員として2名アサインしていたが、それが不要になった。
・事前準備にて「QAシート」を印刷する手間がなくなり、移動時の荷物も減った。
・使い方が簡単なので、「sli.do」の使用方法についての質問はなかった。
・「sli.do」では匿名での質問が大半を占めるため、その質問をセミナー終了後のフォローに活かすことができない点はデメリット。

セミナー講師の評価

・以前よりもQAコーナーが盛り上がっているように感じた。
・セッション中に参加者の質問や反応が見えるため、講師としても進めやすかった。
・セッション中に参加者の質問を確認し、それを講義内容に反映することができた。ただし、すべての質問に適切に対応することは難しい。
・「QAシート」で質問を回収していた時は企業名と名前を記入してもらっていたが、「sli.do」では匿名での質問が大半を占める。質問者の企業名や役職などの背景がわからないため、質問内容だけで十分な回答ができないものも出てくるだろう。

講師から挙がった感想の「以前よりもQAコーナーが盛り上がっているように感じた。」ですが、「sli.do」というツールを使うことの新鮮さと、「sli.do」では他の参加者の質問も確認できることから、参加者にとってQAコーナーがより身近で切実な内容になったためだろうと思われます。

また、「QAシート」を利用していた時は講師が質問を読み上げる形でしたが、現在は「sli.do」の質問一覧画面を表示しています。表示された質問に対して講師が回答しているため、理解が深まりやすくなるのも、QAコーナーが盛り上がっている理由の一つと考えました。

まとめ

「sli.do」を使うことで、より意義深いQAコーナーを作り上げることができました。
新しいツールでまだ知らない人も多いと思われることから、当初は「事務局側で呼び水となる質問を投稿する必要があるか?」とも考えていましたが、事前にしっかりアナウンスを行うことで、参加者の方からは積極的に質問が寄せられました。

参加者のみならず、運営スタッフにとっても講師にとっても、「sli.do」を利用することのメリットは多く、弊社のセミナーでは今後も継続して利用していくことになりました。

「sli.do」活用することで、QAコーナーに寄せられる質問とのその回答により、セミナーの内容をより充実したものにできます。その際、講師には、「わかりやすいスライド」、「プレゼンテーション能力」だけでなく、「質問に対応する知識と経験」、「多くの質問に回答する即応力」も求められる資質になってくると考えています。

以上

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八木 耕祐

マーケティングデータアナリスト

八木 耕祐

Web行動履歴やアプリデータによる顧客行動分析

アナリストとして、50社のアクセスログ分析に携わる。現在は、データ設計、データマート構築などの基盤づくりから、ダッシュボード作成、分析まで、データ活用を極めている。セミナー登壇は50回以上、満足度90%以上のセミナーも多数。
リモートワークになり、海の近くでマリンスポーツをエンジョイ中。

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