「この夏読みたい生成AIシリーズ」は、毎日忙しく生成AIについて勉強する時間がなかなか確保できないビジネスパーソンにおすすめの連載コンテンツです!
第2回では、生成AIと関わりの深い主要な米国ビッグテック企業について解説していきます。
日本では「GAFAM+N」とも呼ばれる6社の生成AI開発競争の現状に加えて、OpenAI社(ChatGPT)との関わりについてご紹介します。
また、最初に補足として、生成AIを理解する上で混同されがちな用語「生成AIサービス」と「言語モデル」の違いについて説明します。
<この夏読みたい生成AIシリーズ>
第1回:まずはここから!生成AIとLLM、ChatGPTの基礎知識
第2回:生成AIの今後がわかる!米国ビッグテック企業と生成AI競争(本コラム)
第3回:覚えるだけじゃ使えない!プロンプトの極意『FOCUSプロンプト』とは
第4回:どこまでできる?マーケティングへの活用例(前編)
第5回:どこまでできる?マーケティングへの活用例(後編)
第6回:ChatGPTだけじゃない!便利なAIサービス10選
第7回:2025年、生成AIはどこまで進化する?
おまけ:2024年8月最新!生成AI用語集100
※関連ナレッジ資料※
基本から分かる!「ChatGPT」&「Microsoft Copilot」&「Google Gemini」3大生成AI比較 をダウンロード
日々さまざまなニュースで生成AIに関する単語を目にする機会が増えてきました。「ChatGPTで⚪︎⚪︎時間の工数削減に成功」といった記事や「GPTを使った新サービス発表のお知らせ」などのリリース情報です。どちらも「生成AIで何かすごいことをやっているらしい」というのは分かるものの、具体的に何をしているのか、イメージしづらい場面はないでしょうか。
一言で表現するならば、生成AIサービスは「車」、言語モデルは「車のエンジン」といえます。
OpenAI社の生成AIサービス「ChatGPT」を例に挙げると、ChatGPTは完成した製品としての「車」に相当します。比較する他社の製品としては、「Microsoft Copilot」「Google Gemini」「Claude」「Perplexity」などが挙げられ、車でいうところの乗り心地や安全性、燃費や見た目などが比較ポイントになります。
一方、言語モデルは、その車の「エンジン」に相当する基礎技術です。エンジンだけでは走り出せませんので、車として他のパーツと一緒に組み立てたり、飛行機や船、宇宙ロケットとして組み立てることも可能です。(*この作業が生成AIサービス開発に相当します)
また当然ながら、エンジンにも開発元による違いや、バージョンごとの性能差があります。
例えば、ChatGPTは、GPTモデルという言語モデルで作られていますが、有料プランでは「GPT-4 mini」「GPT-4」「GPT4o」の3種類の中から利用する言語モデルを都度選択することができます。
「ChatGPT」という生成AIサービスが世界的なAIブームを引き起こしたことは紛れも無い事実ですが、より厳密には「GPT-4」という言語モデルが非常に優れていたから「ChatGPT」というチャットサービスが大流行したと捉えることもできます。
なお非常にややこしいことに、多くの会社が生成AIサービスと言語モデルに類似する名称を用いているため混乱してしまいがちなのですが、生成AIサービスと言語モデルを明確に区別することがポイントです。それにより「新しい生成AIサービスの提供」なのか、「大きな変化をもたらす可能性がある技術開発」なのかを正確に把握することができます。
米国ビッグテック企業の生成AIへの取り組みを評価する上でも、「提供しているサービスが便利なのか」という視点とは別に、「開発している言語モデルが何を可能にするのか」といった両方の視点を持ち合わせることが重要になってきます。
米国ビッグテック企業は、IT業界のみならず世界経済にも大きな影響力を持っています。各社の時価総額の合計は、*2024年8月時点で約12兆1,544億ドル(約1,701兆円)に達しており、日本のGDP(約5兆ドル)の2倍以上です。その莫大な投資金額からも、生成AIが今後もビジネスの主流であり続けることが読み取れます。
代表的な米国ビッグテック企業である「GAFAM+N」各社の動向を把握することは、生成AIの領域にとどまらず、私たちの生活やビジネスにどのような変化が起こるのかについての考察につながるといえるでしょう。
*出典 :米国株 アメリカ企業時価総額上位ランキング - 日本経済新聞
「GAFAM+N」とは、Google、Apple、Facebook(Meta)、Amazon、Microsoft、そしてNVIDIAの6社を指す「GAFAM+N」です。この項目では、各社の概要と生成AIへの取り組みについて解説します。
Google
検索エンジン、クラウドサービス、スマートフォン(Android)などで知られる世界最大のIT企業。
Googleは以前から生成AIの分野で先進的な取り組みを行っており、「Gemini」ブランドを中心に据えながら、言語モデル「PaLM」の開発にも注力しており、今後も生成AIの分野で重要なポジションにいることが予想されます。
*提供している生成AI関連サービス
Gemini: メール作成やプレゼン資料作成など、日常業務をAIがアシストします。他Googleサービスとの連携や、大規模なコンテクストウィンドウが特徴的です。同じ名称の言語モデルがあります。
Vertex AI: 開発者向けAIサービス。豊富な基盤モデルを活用して、企業は自社のニーズに合わせたAIモデルを開発・導入可能。
*代表的な言語モデル
Gemini 1.5 Pro: 大規模なコンテクストウィンドウが特徴的な汎用言語モデルです。
PaLM 2: Geminiよりも特定用途の利用に適した言語モデルです。
*出典:Google Generative AI
Apple
iPhone、iPad、Macなどのハードウェアとソフトウェアで知られる世界的なテクノロジー企業。
Appleは生成AIの分野への参入が他社と比べて遅れており、2024年のWWDCで「Apple Intelligence」を発表、米国ではローカルLLMの開発も盛んであることから、生成AI向けハードウェア供給の文脈で動向が注目されています。
*提供している生成AI関連サービス
Apple Intelligence: iPhoneやiPad、Macに組み込まれる生成AIシステム、2024年後半にリリース予定(英語)。言語理解・生成、画像生成、アプリ連携などの機能を提供。
*出典:Apple Intelligence
Meta (Facebook)
FacebookをはじめInstagram、WhatsAppなどのサービスを提供する世界最大のソーシャルメディア企業。生成AIの分野ではオープンソース(誰でも自由に使える)言語モデル「LLaMA」を開発することで、独自のポジションを獲得しています。
*提供している生成AI関連サービス
Meta AI: Instagram、WhatsApp、Messengerなど、Metaの主要なプラットフォームで利用できるAIチャットボットです。画像生成機能「Imagine」も搭載し、ユーザーはテキストから画像を生成できます。
Ray-Ban Metaスマートグラス: Meta AIを搭載したスマートグラスで、音声によるAIとの自然な対話や、AIによる画像認識機能などを提供します。
AI Sandbox: 広告コピーの作成や画像編集など、生成AIの様々な機能を検証できる開発者向けのツール。
*代表的な言語モデル
LLaMA 3.1: 2024年6月に公開された最新バージョン。高性能なオープンソースの言語モデルであることから、AIコミュニティ発展への貢献が高く評価されている。
*出典:Expand your world with Meta AI
Amazon
世界最大のECサイトを運営し、クラウドサービス(AWS)でも知られるグローバル企業。生成AIの分野では、一般向けというよりは企業向けの生成AI開発・運用支援サービスに注力している。
*提供している生成AI関連サービス
Amazon Bedrock:2024年4月に一般提供を開始した生成AIの開発と運用を支援するフルマネージドサービス。
Amazon SageMaker:機械学習モデルの構築、トレーニング、デプロイを支援するフルマネージドサービス。
*代表的な言語モデル
Amazon Titan:Amazon Bedrockでのみ利用可能な言語モデル。
*出典:生成 AI の基盤モデル – Amazon Titan
Microsoft
Windows、Office、Azureなどで知られる世界最大のソフトウェア企業。生成AIの分野でもOpenAIとの協力関係を軸に、先進的な取り組みを行っている。Office製品と互換性の高い「Copilot」など、実用的なサービスを発表しており、生成AIの分野では一歩リードしている状況といえる。
*提供している生成AI関連サービス
Copilot: 「Bing」および「Microsoft 365」に統合されているAIアシスタント。文書作成、メール、プレゼンテーション作成などをサポート。DALL-E 3による画像生成、Microsoft Designerとの連携などの追加機能の提供が進んでいる。
*代表的な言語モデル
Prometheus: Copilotの基盤となる言語モデル。OpenAIとの共同開発と見られるが、詳細については現時点では公表されていない。
*出典:新しい Bing の構築にあたって - News Center Japan
NVIDIA
GPU(画像処理に特化したプロセッサ)で知られる世界的な半導体企業。
NVIDIAは生成AIの基盤となるGPUを提供しており、ハードウェアの面で重要な役割を果たしている。また、2024年に企業向けの生成AIプラットフォーム「AI Foundry」を発表するなど、ソフトウェアの面でも存在感を示し始めている。AI技術の根幹を支えるサプライヤーであり、市場への影響力は大きい。
*提供している生成AI関連サービス
AI Foundry:2024年3月のGTC 2024で発表された企業向けの生成AIプラットフォーム。
*出典:生成 AI のカスタム モデル | NVIDIA AI Foundry
生成AI技術は急速に進化し、現在進行形でビジネスや日常生活に大きな影響を与えています。米国ビッグテック企業(GAFAM+N)は、この分野で主導的な役割を果たしており、それぞれ独自の戦略で市場に参入しています。
現時点では、OpenAI・Microsoft・Googleの3社が抜け出している印象がありますが、ベンチャーでありながらGPTモデルに匹敵する性能の「Claude」シリーズを開発するAnthropic社、ソフトバンク社と戦略提携したことでも注目を集める「Perplexity」など、日々情勢は変化しています。
これからも新しい生成AIサービス、そして言語モデルがビジネスを変革し続けることが期待されますので、「この情報は、単にサービスの話なのか、それとも大きなインパクトがある言語モデルの進化なのか」といった視点を欠かさずに、日々のニュースをご覧いただければと思います。
本連載を通じて、生成AIに対する「なんだかよくわからないもの」という印象を抜け出し、ビジネスだけでなく生活の場においても身近に感じられる一助になれば幸いです。次回もお楽しみに!
ChatGPTアドバイザー
天野 翔太
生成AI導入・活用支援
複数の事業会社においてBtoCならびにBtoBマーケティングを担当する。その後、アクセンチュア株式会社で広告運用をメインにしたマーケティングコンサルティングに従事。
2023年にパワー・インタラクティブに参画してからは、ChatGPTなど生成AIのポテンシャルに注目。マーケティングへの活用で成果を上げるだけでなく、これまでにない新しい顧客体験を生み出すことにチャレンジしている。
マツナイ合同会社代表。
2024.08.05
2024.08.05
2024.08.05