「この夏読みたい生成AIシリーズ」では、生成AIの概要や最新の動向にはじまり、実際のマーケティング業務での活用方法まで順を追ってご紹介します。毎日忙しく勉強する時間がなかなか確保できなかったビジネスパーソンにおすすめしたい連載コンテンツです!
第1回では、2023年の流行語にも選ばれた「生成AI」「ChatGPT」という2つのキーワードに注目して、生成AIサービスの基礎知識について順番に解説します。
<この夏読みたい生成AIシリーズ>
第1回:まずはここから!生成AIとLLM、ChatGPTの基礎知識(本コラム)
第2回:生成AIの今後がわかる!米国ビッグテック企業と生成AI競争
第3回:覚えるだけじゃ使えない!プロンプトの極意『FOCUSプロンプト』とは
第4回:どこまでできる?マーケティングへの活用例(前編)
第5回:どこまでできる?マーケティングへの活用例(後編)
第6回:ChatGPTだけじゃない!便利なAIサービス10選
第7回:2025年、生成AIはどこまで進化する?
おまけ:2024年8月最新!生成AI用語集100
※関連ナレッジ資料※
基本から分かる!「ChatGPT」&「Microsoft Copilot」&「Google Gemini」3大生成AI比較 をダウンロード
最初に結論からいうと、「生成AI」は特定領域のAI技術の総称であり、そのAI技術の1つに「LLM(大規模言語モデル)」があり、「ChatGPT」はLLMを使って作られた生成AIサービス、となります。
そのため構造としては大きい順番に「生成AI」>「LLM(大規模言語モデル)」>「ChatGPT」といった流れで考えると理解しやすいといえます。
生成AI(Generative AI)とは、人工知能(AI)技術の一種で、人間の脳のニューロン(神経細胞)のつながりや働きを模倣した「ニューラルネットワーク」と呼ばれる計算モデルを基盤としています。生成AIは、大量データ(テキスト・画像など)を学習することで、それらのデータに内在するパターンや特徴を自ら見つけ出し、理解することができます。
この特性により、生成AIは単にデータを分析するだけでなく、学習したデータを基にしたオリジナルのコンテンツを創造することも可能にしています。つまり生成AIは、既存のデータを学習して、そこから新しいテキストや画像、音声、動画などを自律的に生み出すことができるのです。
生成AIは、ビジネスの世界で大きな可能性を秘めています。例えば、顧客のニーズに合わせてパーソナライズされた商品やサービスを提供したり、効果的なマーケティングキャンペーンを立案したりすることができます。
LLM(Large Language Model)は、自然言語処理(NLP)に特化した人工知能(AI)技術の一種です。LLMは、インターネット上に存在する大量のテキストデータ(例えば、ニュース記事、書籍、ウェブサイトなど)を機械学習アルゴリズムを用いて解析し、言語の構造や意味、文脈などを理解します。
LLMの特徴は、その学習に使用されるテキストデータの膨大さにあります。LLMは、数百億から数兆語にも及ぶ大規模なテキストデータを学習することで、人間の言語の複雑さや微妙なニュアンスを捉えることができるようになり、人間のような自然な言語理解と言語生成を実現しています。
LLMの応用範囲は非常に広く、言語翻訳、文章要約、質問応答、感情分析、文章生成など、様々な分野で活用されています。例えば、外国語の文章を自動的に母国語に翻訳したり、長い文章を要約したり、質問に対する適切な回答を生成したりすることができます。
LLMは言語に関連する様々なタスクを自動化することで、私たちの生活やビジネスを大きく変える可能性を秘めています。LLMの登場により、言語の壁を越えたグローバルなコミュニケーションが促進され、知識やノウハウの共有がより一層進むことが期待されており、特に*インターネット上の利用率が高い英語では、LLMの開発と発展が日本語などの他言語と比較して圧倒的なスピードで進んでいます。
*参考:【インターネット言語】使用順位とシェア
ChatGPTは、OpenAI社が開発した革新的な対話型AIシステムで、生成AI時代を象徴するサービスの一つです。ChatGPTは、LLM(Large Language Model)を基盤としており、膨大な量のテキストデータを学習することで、人間のような自然な会話を実現しています。
ChatGPTの最大の特徴は、その汎用性の高さにあります。一般的なトピックから専門的な内容まで幅広くカバーしており、例えば「健康的な食事について教えて」と質問すれば、バランスの取れた食事の重要性や具体的な食事プランを自分の代わりに考えてくれますし、「⚪︎⚪︎に関する最先端の技術について教えて」と質問すれば、インターネット上のコンテンツや世界中の学術論文から最新技術をピックアップして、わかりやすく解説してくれます。
ChatGPTは、日本語をはじめとする自然言語だけでなく、ワードやエクセル、PDFを理解できることはもちろん、インターネット上の最新情報にアクセスしてユーザーの質問に回答できます。またAPI連携を利用することで、社内外のツールと相乗効果を発揮します。実際にビジネスシーンでの活用についても数多くの成功事例が生まれており、営業、マーケティング、カスタマーサポート、コンテンツ制作、社内の業務効率化など、幅広い業務範囲でユーザーをサポートすることが可能です。
主要な生成AIサービスのほとんどは日本語に対応しており、日本語で指示しても自然に動作します。しかしながら、多くの生成AIサービスが英語を中心に学習されているため、日本語ネイティブモデルとは異なる特性を持っています。この点を踏まえながら、日本語LLMの現状とChatGPTとの比較を見ていきましょう。
ChatGPTを含む多くの大規模言語モデルは、主に英語データを中心に学習されています。そのため日本語での使用時には、下記の点に注意が必要です。
1. 不自然な日本語表現:文法的には正しくても、ネイティブの日本語コミュニケーションとしては不自然な表現で応答することがあります。また日本語特有の専門用語や業界用語の理解が不十分な場合があります。ビジネスシーンで使われる和製英語や、英単語での略称(GAFAMなど)は誤解しやすいといえます。
2. 文化的背景理解が弱い:日本特有の文化や言語の特性に関する理解が不十分な場合があります。例えば「主語・述語の省略」「指示語の多用」「文章構造が前後する」といった日本語特有の文章構造を理解して処理することが苦手なため、複雑な指示を与える場合には、英語の文法に近い内容で記述することが求められます。
ネガティブな事実として、日本語LLMの開発は急速に進んでいるものの、機能面の充実度や最新機能の導入速度など、ChatGPTに多くの優位性があります。具体的には、多くの日本語LLMはテキストのみの対応となっていますが、ChatGPTではテキスト生成だけでなく、画像理解などのマルチモーダル機能を無料版で利用することが可能です。
日本語LLMの開発には、学習データの不足、計算資源の制約、という2つの根本的な課題が存在します。日本語のデータ量は英語に比べるとわずかであり、LLM開発に使える学習データ量が絶対的に足りていないだけでなく、LLM開発に求められる高性能な計算資源(データセンター、スーパーコンピュータなど)も日本には不足しており、日本企業や研究機関がグローバル競争で遅れを取る一因となっています。グローバルな競争の中で、日本語LLMの開発は依然として多くの課題を抱えています。
「生成AI」「ChatGPT」というキーワードが、今後もビジネスの主流に位置付けられることは疑いようがありません。その仕組みのすべてを理解する必要はありませんが、数年後、数十年後のビジネスシーンを考えた時、最低限のリテラシーを今から身につけておくことは重要です。
残念ながら日本独自の生成AIの現状は芳しくありませんが、米国発の生成AIサービスは日本語でも十分に機能するため、その動向からは目が離せません。
本連載を通じて、生成AIに対する「なんだかよくわからないもの」という印象を抜け出し、ビジネスだけでなく生活の場においても身近に感じられる一助になれば幸いです。
次回「今後の流れがわかる!米国ビッグテック企業と主要な生成AIサービス」もお見逃しなく!
ChatGPTアドバイザー
天野 翔太
生成AI導入・活用支援
複数の事業会社においてBtoCならびにBtoBマーケティングを担当する。その後、アクセンチュア株式会社で広告運用をメインにしたマーケティングコンサルティングに従事。
2023年にパワー・インタラクティブに参画してからは、ChatGPTなど生成AIのポテンシャルに注目。マーケティングへの活用で成果を上げるだけでなく、これまでにない新しい顧客体験を生み出すことにチャレンジしている。
マツナイ合同会社代表。
2024.08.05
2024.08.05
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