【データ分析】捨てる前に要チェック!DXを加速する“基盤構築”とAI活用のポイント
昨今、データドリブンマーケティングやデータの民主化が盛んに叫ばれています。しかし、実際の現場ではデータ活用が思うように進まず、せっかく費用や労力をかけて収集したデータを「削除」してしまうケースさえ見受けられます。これは非常にもったいないことです。
このコラムでは、データを捨てる前に一瞬立ち止まって「もう一度、データ活用を考えてみよう」というメッセージをお伝えします。
実は、今まさに削除しようとしているデータの中にこそ、“先行指標”や“お宝”が眠っているかもしれません。
まずは「今」を知るために、素早く分析を
私の持論は、まず最初に「今を知る」ことから始めるべきだ、というものです。既に手元にあるデータだけでも構いません。
たとえ虫食い状態だったり、汚れていたりしても、素早く可視化して全体像を俯瞰してみましょう。データを可視化・分析する習慣を持つと、担当者の経験値が飛躍的に向上し、「少しの違和感」に気づけるようになります。何度も繰り返すうちに感覚が研ぎ澄まされ、データ活用が加速度的に進むのです。
KIDWモデルでデータを「知恵」にまで昇華する
データを使いこなす際に重要なのが「KIDWモデル」です。これは、Data(データ)→Information(情報)→Knowledge(知識)→Wisdom(知恵)と段階的に価値を高めていくフレームワークと考えられています。

<出典:『DX時代のデータマネージメント大全』大川真輝著(翔泳社)P56より引用>
Data(データ): 数字や記号の羅列そのもの。単体では意味を持たない。
Information(情報): 「誰が・いつ・どこで・何を」などの属性を付与することで、行動ログやアクセスログといった“意味のある塊”に変わる。
Knowledge(知識): 蓄積した情報を整理・分析し、ノウハウや見込みにつなげた状態。たとえば「〇時台に配信するとメールが開封されやすい」といった、運用上のルールやコツがこれにあたる。
Wisdom(知恵): さらに、なぜその行動が生じるのかを深く考え、行動理由まで推測して再現性を高めた状態。たとえば「通勤時間や昼休みにメールを開く人が多い」などの推定理由づけが、最終的に“知恵”を生む。
ここで言いたいのは「早く分析に取りかかった方が、知恵に近づける」ということです。情報を集約・整理し、分析を重ねるほど「なぜそうなるのか」が見えてきます。
データバリューチェーンで見る“価値の連鎖”
データの価値を高めるもう一つのフレームワークが「データバリューチェーン」です。

<出典:『DX時代のデータマネージメント大全』大川真輝著(翔泳社)P58より引用>
生成 → 収集 → 蓄積 → 前処理 → 分析 → 利活用、と進むなかで、前半の「生成・収集・蓄積」だけではまだ価値が生まれず、後半フェーズの「前処理・分析・利活用」にかけて価値が大きく高まります。
つまり、“分析”以降のフェーズこそがデータ活用の本番。ここに早く着手し、経験を積むほど、データが「情報」→「知識」→「知恵」へと昇華するスピードが加速します。
データ基盤を「早めに」構築するメリット
では、具体的にどうやって分析へ進むか。 まずは、バラバラなデータを一元管理できるデータ基盤を構築することが肝心です。
多くの企業はSaaSを複数導入しており、データが分散しがちです。ここで手作業によるデータ収集を続けていると、想像以上にコストがかかり、生産性も低下してしまいます。
一方、ETLツール(CData Sync、TOROCCO、Reconerなど)を活用すれば、夜間でも自動的にデータを集めてくれます。その分、分析や施策改善など“本来取り組むべき業務”に時間をかけられ、データ基盤の構築自体もスムーズに進みます。
生成AIの登場で広がるデータ活用の可能性
近年話題の生成AIが出現したことで、データ活用の幅はさらに広がりました。
過去のデータから抽出した「成功体験」や、分析で導き出した“こうすればうまくいきそう”といった再現性は、生成AIと組み合わせることで、より素早く実践したり、新たなアイデアを創出したりできる可能性があります。
その土台となるのがデータ基盤です。基盤さえあれば、社内のあらゆるデータを連携しやすく、生成AIに学習や推論をさせる環境を用意しやすくなります。
最後に:データを捨てる前に、もう一度「立ち止まる」
結局のところ、捨てようとしているデータが“宝の山”である可能性は否定できません。
データ基盤を早めに整え、最初は簡易的なものでもいいので分析を繰り返し、得られた知見をさらに発展させていく。これこそが生産性向上や企業競争力の強化につながる、最短ルートだと考えています。
ですから、データを削除する前に一度だけでも「分析」を試してみてください。
そこにこそ、未来を変える大きなヒントが潜んでいるかもしれません。
パワー・インタラクティブの「マーケティング・データマネジメント推進サービス」
もし「データをどう整理・活用すればいいか分からない」「自社に最適なデータ基盤を短期間で構築したい」といったお悩みがありましたら、ぜひパワー・インタラクティブの「マーケティング・データマネジメント推進サービス」をご検討ください。社内外に散在するデータの収集・統合から可視化や分析環境の整備まで、総合的な支援を通じて“データ活用の一歩目”を加速させます。今あるデータを最大限に活かし、ビジネス成果を高めるためのお手伝いをいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

マーケティング・コンサルタント
中嶋 正生
データ基盤・データマネージメント推進
組み込みOS、DBミドルウェアの開発、海外製品の日本市場への展開、自社プロダクトの開発、アライアンス、カスタマーサクセス、コニュニティー運営など、日本企業、および、外資系企業で、多岐にわたる職種を経て、現在は、データを活用するまでの「仕組みづくり」に拘り「マーケティング・データ基盤」の構築やデータマネージメントの推進に注力。