コラム

GA4設定ガイド:トラブルシューティングから最適化まで

GA4での計測は意外と複雑だ。設定ミスはしばしば発生し、収集しているデータを活用できない場合もある。このコラムでは、GA4設定の基本からイベントトラッキングの見直しポイント、トラブルシューティングの流れまでを解説する。GA4の潜在能力を最大限に引き出し、分析の質を高めるための第一歩を踏み出そう。

Googleアナリティクス4(GA4)の設定を見直す前にやるべきこと

GA4の基本概念を理解する

GA4は、Webサイトのアクセスログを解析できるGoogleが開発した4世代目のトラッキングツールだ。正式名称はGoogle Analytics 4 propertyであり、現在、多くの企業に導入され、マーケットシェアは約88%と言われている*1。
GA4は、ユーザーとイベントを中心に構築された新しいデータ構造とデータ収集ロジックを使用している。Webサイトを訪問したユーザーの属性、ユーザー行動をトラッキングすることができる。
マーケターによるGA4活用は、顧客になるまでのユーザーの行動を追跡し、分析することが大きな目標となる。その目的とは、顧客の理解、ユーザー体験の向上、データに基づいた戦略的意思決定、パーソナライゼーションの強化などがあげられる。AIベースの予測データ、プライバシーファーストの追跡、端末やプラットフォームを越えたユーザー行動の分析をすることで、顧客の特性をつかみ、マーケティング活動に活かすことができる。

*1 参考:Google Analytics 4 Stats 2024

GA4の設定計画を見直す

GA4の設定計画をする際には、以下の点を考慮することが重要だ。

データストリームの設定
GA4では、Webサイト、アプリのデータは「データストリーム」に登録することで発行された計測IDをベースに集計されている。データの扱い方次第では、データストリームでの集計データの切り分けか、プロパティベースでの集計の切り分けが必要になる。例えば、自社で複数のサイトを運用している場合、データストリームでの一括管理も可能であるが、各サイトごとの数値をGA4のプロパティ単位で見たいこともある。企業ごとに、データの運用は変わるため、自社の運用方法に合わせたデータストリームの設定をするべきだ。

イベントトラッキング
GA4では、計測のタグを入れただけで計測ができるイベント、拡張機能を有効化することで計測できるイベント、Googleが特定の業種やアクティビティに推奨するイベント、自身でカスタムして作成できる指標という大きく4つのタイプのイベントがある。
今後、GA4を活用していくならば、どのようなデータが必要かを洗い出し、それに合わせたイベントトラッキングをおこなう必要がある。
GA4の導入については、GA4のヘルプを参考に行うことができる。
GA4でカスタムイベントの計測を中心におこなっていきたい場合は、Googleタグマネージャ(GTM)経由での計測のほうが運用しやすいため、おすすめだ。
カスタムイベントについては、当社コラム「GA4イベント設定ガイド:イベント設計から計測開始まで」にて詳しく解説している。

GA4の設定すべきポイント

GA4の設定しておくべきポイントに関して、以下の6つの項目に分けて、詳細を深掘りする。

1. アカウントとプロパティ

GA4での設定は、アカウントとプロパティのレベルでおこなう。アカウント設定では、アクセス権限の管理、プロパティ設定ではデータの収集、データ保持期間の変更などが可能だ。プロパティでは、Google広告やBigQueryなどの他のGoogleサービスとの連携を管理できる。必要な場合は、データ保持期間の設定や他ツールとの連携をしよう。

2. データストリーム

GA4のデータストリーム設定では、データストリーム内でWebサイトやアプリなどの各プラットフォームのデータ計測ができる。GA4で、どのプラットフォームからどのデータを収集するのかを確認し、適切なデータストリームの設定をしよう。

【図表1】

3. トラッキングコード

GA4の計測設定は大きく2種類存在する。
1つは、GA4の計測タグをWebサイトに直接実装する方法だ。もう1つは、WebサイトにGoogleタグマネージャ(GTM)タグを設置し、GTMでGA4の計測タグを管理・計測する方法で、当社ではこちらを推奨している。GTMでは、GA4のタグなどを管理することができ、難易度の高いGA4のイベントの条件設定や、パラメータの付与などをGTM上で行うことができる。例えば、特定の条件でのみ計測することができるクリックや特定のHTML要素の表示回数などがある。そのため、GTM経由での計測の設定をしていない場合は、計測の設定を見直すことをおすすめする。

4. イベントトラッキング

GA4では、すべてのユーザー行動を「イベント」として計測している。
GA4は、自動収集イベント、拡張計測機能イベント、推奨イベント、カスタムイベントの4種類のイベントを提供しており、これらを活用することで、より詳細なユーザー行動の計測が可能になる。GTMを活用することで、GA4上では設定ができない条件の指定など難易度の高い特定のユーザーアクションに絞ったカスタムイベントを作成することもできる。
自社サイトに必要な計測すべき内容があれば、GTMを活用し、カスタムイベントを作成しましょう。

5. コンバージョンイベント(キーイベント)

GA4では、ビジネス成果につながるユーザーアクションを「コンバージョン(キーイベント)」と定義し、最大30個の任意のイベントをコンバージョンイベント(キーイベント)として指定できる。これにより、各WebサイトにおけるKPI指標をコンバージョンとして追跡することができる。
自社サイトのKPIとなりうる指標を指定しておくことで、目標に対しての進捗や現状を確認しやすくなるので、設定していない場合は、設定しておこう。

6. オーディエンス

GA4の「オーディエンス」とは、特定の行動や属性に基づいて定義されるユーザーグループだ。これを利用して、マーケティング活動やコンテンツのパーソナライズ、効果測定をおこなうことができる。ユーザーのデータを基にオーディエンスを作成することが可能だ。必要に応じて設定しよう。
これらのポイントを踏まえて、GA4の設定を見直し、最適化することが、データ分析の質を高める鍵となる。

間違いが起きやすいイベントトラッキング設定の見直しポイント

GA4のイベントトラッキング設定では、間違いが起こりやすいいくつかのポイントがある。これらのポイントを正しく理解し、適切な設定をおこなうことが、有効なデータ収集と分析のために重要だ。
以下に、間違いが起きやすいイベントトラッキング設定の見直しポイントについて詳細を述べる。

1. イベント名の一貫性がない

イベント名は、そのイベントが何を意味しているのかを一目で理解できるよう、明確かつ一貫性のある命名規則に従って設定する必要がある。
イベント名に一貫性がないと、データ分析時に混乱を招き、正確な分析が困難になる。

2. 不要なイベントの収集

全てのユーザー行動をイベントとして収集する必要はない。重要でないイベントを過剰に収集すると、データが膨大になり、分析の効率が下がるだけでなく、重要なイベントの洞察を見逃す原因にもなる。目的に合わせたイベントの選定が重要だ。

3. イベントパラメータの不適切な使用

GA4では、イベントごとに複数のパラメータを設定できるが、パラメータを不適切に使用すると、分析の際に正確なデータを得られない可能性がある。例えば、イベントの発生場所や発生時間など、イベントに関連する重要な情報をパラメータとして設定し、分析に役立てる必要がある。

4. カスタムイベントの過度な使用

GA4は、多数の自動収集イベントと拡張計測機能イベントを提供しているが、これらのイベントだけではカバーできない特定のユーザー行動を追跡するためにカスタムイベントを使用することがある。しかし、カスタムイベントを過度に使用すると、管理が煩雑になり、パフォーマンスに影響を与える可能性があるため、必要最小限に留めることが推奨される。
「推奨イベント」と「カスタムイベント」は、Webサイトでは無制限に作成できるが、アプリでは合計で500個までの上限となっている。
基本的に、そこまでイベントを作ることはないので気にする必要はない。

5. コンバージョンイベント(キーイベント)の誤設定

コンバージョンとして設定すべき重要なイベントを見逃したり、逆に重要でないイベントをコンバージョンに設定してしまうと、マーケティング施策の効果測定が正確にできない。コンバージョンとして設定するイベントは、ビジネス目標と密接に関連するものに限定し、定期的に見直すことが重要だ。
これらのポイントを踏まえてイベントトラッキング設定を見直し、適切に設定することで、GA4を用いた効果的なデータ分析が可能となる。

GA4設定のトラブルシューティングの流れ

GA4設定のトラブルシューティングにはいくつかのステップが存在する。
以下に、5つのステップに分けて詳細を深掘りする。

ステップ1:設定の確認

最初に、GA4の基本設定が正しく完了しているかを確認する。
これには、アカウントとプロパティの設定、データストリームの設定、およびトラッキングコードの正しい設置が含まれる。WebサイトにGA4またはGTMのトラッキングコードが適切に設置されているか、また、アプリの場合はGA4との連携が正しく行われているかをチェックする。チェック方法としては、Google Chromeの検証ツールを開き「Network」のタブで「g-」と検索をかけてみてほしい。そこでネットワーク通信が正常に行われている場合は、GA4のタグに対するレスポンスが200と返ってくる。

【図表2】

ステップ2:トラッキングコードの動作テスト

トラッキングコードが正しく設置されていることを確認したら、次にその動作をテストする。これには、リアルタイムレポートを使用してWebサイトへの訪問が正しく記録されているかを確認することが含まれる。リアルタイムレポートにデータが表示されない場合は、トラッキングコードの設置に問題がある可能性がある。

ステップ3:イベントトラッキングの確認

次に、GTMで設定したイベントが正しくトラッキングされているかを確認する。GA4では、様々なユーザーアクションをイベントとして計測するが、これらが正しく計測されていない場合は、イベント設定に誤りがある可能性がある。GA4管理画面やGTMを使用してイベント設定を再確認し、必要に応じて修正する。
詳細は当社のコラム「GA4イベント設定ガイド:イベント設計から計測開始まで」から確認してほしい。

ステップ4:コンバージョンのトラッキング確認

ビジネスにとって重要なコンバージョンイベント(キーイベント)が正しくトラッキングされているかといった点も重要なチェックポイントだ。
コンバージョンが記録されていない場合、イベントの設定を見直すか、コンバージョンとしての設定が正しく行われているかを確認する。
特定のコンバージョンイベント(キーイベント)に関する問題がある場合は、そのイベントのトリガー条件やタグ設定を詳細に検討する。

ステップ5:デバッグでの確認

GA4では、デバッグビューというトラッキングが正常にできているかを確認するためのデバッグ機能がある。この機能を利用してトラッキングの問題をより詳細に診断することができる。デバッグビューは管理のデータ表示から確認することができる。
また、GTMのプレビュー機能を使用して、イベントトリガーとタグ発火のプロセスをユーザー行動ごとに確認することで問題発生箇所を特定することも可能だ。

【図表3】

GA4初期設定のトラブルシューティング事例

計測タグの配置ミスによる2重計測

GTMタグ経由の計測とGA4の計測タグを直接埋め込む計測設定において、間違えてどちらのタグもWebサイトに埋め込まれておりデータ計測がおかしくなっている場合がある。自動収集イベントが2重でカウントされてPV数などが倍になってしまうため、早急な対応が必要だ。
当社では、GTM経由での計測を推奨しており、GA4の応用的な利活用にもつながるため、GA4の計測タグをWebサイトから取り除くことをおすすめしている。CMSのパターン化された<head>から図表4のような記述のトラッキングコードを削除しよう。

【図表4】

UA、GA4連携による2重計測

2023年の年始のことだが、「自動でGA4のプロパティを作成します」や「連携しましょう」というような案内が、UAを使用していると届いていたかと思う。この設定を適用している場合、UAのタグベースでGA4の計測をおこなうというものになっている。この状態で、さらに、GA4のタグも設置してしまうと、UAとGA4のタグ2つからの計測がおこなわれてしまい、2重計測となる。実際、このような設定をしており、PVなどの成果が半年以上倍で計測している事例も確認された。こちらもタグの削除や設定からの連携解除が必要となるので一度確認してみよう。

GA4支援サービスの紹介

当社では、GA4の支援を網羅的におこなっている。GA4の初期設定から、BigQueryを活用した難易度の高い分析用のダッシュボード構築などを幅広く提案可能だ。
また、MAツールとGA4を連携させたマーケティングに特化した設定などの支援も行っている。ぜひ、こちらの「お問い合わせ」から連絡頂ければ幸いだ。

安川 大

マーケティングデータアナリスト

安川 大

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