インタビュー

株式会社ランドスケイプ 戦略策定、実行、システム開発と三位一体の進行チームが自社のマーケティングを牽引する

株式会社ランドスケイプ
吉川 大基氏

株式会社ランドスケイプ様は代表取締役社長福富七海氏が1990年に創業。「固有名詞の一元化により社会効率と安全とプライバシーを提供する」という企業理念のもと、データベースの事業化に取組み、今では750万件の日本で最大級の企業データベースを保有しています。2000年以降はデータベースを活用したマーケティング支援ツールの開発に精力的に取り組み、着々と事業を拡大してきました。今回は、事業展開の要となっている進行チームマネージャーの吉川氏に進行チームの活動内容や今後の取組みについてお話をおうかがいしてきました。

ターニングポイントは米国最大のデータベース事業を展開するアクシオムとの業務提携

ランドスケイプ様は日本最大の企業情報データベースを保有されていますが、データベース事業をどのように拡大されてきたのですか?

社長の福富は、元々カルチュア・コンビニエンス・クラブの社長室長で、ビデオレンタルの会員のデータベースを使った経営戦略を策定していました。ビデオレンタルの会員は若い層が中心ですが、もっと他の年齢層まで網羅的にビジネス展開をしたいと思い、1990年にランドスケイプを創業しました。
当初は、電話帳や高額納税者、医者年鑑、官公庁から発行されている紙媒体などをデータ化し、提供することを事業の中心としていました。様々な情報を集めていき、データコンテンツの提供を主軸に置きながら、次の段階でデータコンテンツを活用したダイレクトメール・FAXの発送やテレマーケティングというようなOne to Oneのサービス業を手がけるようになります。テレマーケティングを展開するにはコールセンターのシステムが必要になります。通常はコールセンターのシステムを外部から購入すると思うのですが、弊社のデータベースをうまく活用しようと思うと他社が作ったシステムでは対応が難しかったので、自社で開発し2006年には「DISH」という商品として販売も始めました。このように、データコンテンツを核に、それを活かしたサービス業、さらにシステム提供と事業を拡大してきました。

弊社にとってのターニングポイントは、2000年12月の米国アクシオム・コーポレーションとの業務提携です。アクシオムは1969年に米国で設立された世界でも最大規模のデータベース・マーケティング・サービスの会社です。そのアクシオムからデータクレンジングやエンハンスメントという属性付与の技術やそれらのサービス展開のノウハウを教えてもらいました。アクシオムと提携することによってデータベースのメンテナンスを核としたサービス展開を本格化、2001年3月からデータクレンジングサービス事業を開始しています。

300人が支えるデータベース事業

データベースを支えるためにどのような体制をとっているのですか?

現在、従業員は約100名、営業部門が20~30名、システム部門は30名。システム部門の中に集めてきたデータをチェックする調査チームがありまして、調査のために、在宅のアルバイト・パート社員が200~300名もいます。弊社は営業よりも、システム、データ構築の人員のほうが多いです。
提供するデータを構築していくというのは大変な作業で、できる限り自動化はしていますが、元々のデータを作る際は、実際に見て確認する割合が大きいです。確かな情報であるか、Web上で確認したり、実際に登記簿を見に行ったりします。新しいデータは人の目でまず1回確認して、その後はシステムで月1回チェックしています。

データクレンジングをしている会社や、データクレンジングシステムを売っている会社は他にもありますが、網羅しているデータ量と精度に限界があります。企業情報のクレンジングというのは難しくて、クレンジングシステムを持っている会社は、例えば「新宿区新宿西」と書かれてたら「新宿区西新宿」に住所を更新することはできても、その住所にデータのとおり企業が存在するのかまではわかりません。弊社はデータコンテンツを持っていますから、会社が移転した場合でも、移転先住所・電話番号や社名変更のメンテナンスも行うことができます。
また、弊社以外にもデータコンテンツを持っている会社はありますが、網羅性が弊社の強みになります。信用情報として使うのであれば網羅性は重視されませんが、データベースとして使うのであれば該当企業にマッチするために保有している企業データの量が求められます。 弊社は創業当時からずっとデータを集め続けていますし更新頻度も高いです。過去情報もヒモ付けで持っていますので、古い情報を預かったとしてもきれいにクレンジングできます。

マーケティング活動の中心は、セミナーを軸とした営業との連携

吉川さん所属の進行チームの活動についてお聞かせください。

進行チームの位置づけは営業を支援するマーケティング部門に該当します。経営戦略チームと制作部が一緒になって進行チームが編成されました。私は経営戦略チームにいて、サービスを企画したり、展示会や販促パンフレットの作成、Webのコンテンツを考えたりと、営業戦略・営業企画の策定、営業支援を行っていました。現在も同様の活動をしています。
進行チームには6名のメンバーがいます。経営戦略チームの活動を引き継いでいるのが私を含め3名。3名のうち私以外にはセミナー担当者が2名、この2名は自社のWeb制作にも関連して対応しています。それからシステム担当が1名。あと制作が2名です。

自社のWeb制作・運用だけでなくWebのシステム開発も含め、Web関連の動きは全て進行チームで対応しています。システム部門がありながら進行チームにシステム担当が1名いることで、進行チームの意見をすぐに商品やしくみに反映することができます。 今、営業が1番力を入れているのが2013年4月から販売を開始した「uSonar」というBtoB市場開拓支援ツールです。「uSonar」は、お客様が保有する顧客データとランドスケイプが保有する企業情報データベースやアクセスログデータ、Web上に散在する様々なデータを統合管理して、市場や顧客分析、ターゲット企業の探知に活用いただけるツールです。この「uSonar」にログ解析の仕組みを組み入れたのは、進行チームのシステム担当者です。

進行チームの活動の中心は、今どこに置かれていますか?

メインはセミナーです。使いこなすのが難しい商材を扱っていることもあって、理解を広めるためにもセミナーに力を入れています。まずセミナーを開いて、講師として営業スタッフが基本的な説明を行います。そこから関心を持った方へ「御社の場合は・・・」と詳細な説明に行きます。以前は進行チームが講師を務めていましたが、セミナー後の営業活動を考えると講師は営業スタッフのほうが適切だと考え、進行チームはセミナーのレジュメも含めた資料作成や企画・運用を行い、営業との連携を図っています。

セミナーは営業の扉のようなものです。その後の営業活動の結果、セミナーで取り上げた商材とは違うものが売れたということもありますし、過去2年間は止まっていた休眠客がセミナーをきっかけに復活したこともあります。昨年は社内企画で55本、外部での実施も入れると100本行いました。セミナーを通して、ランドスケイプの商品・サービスを知っていただいています。今年の目標はセミナー経由の売上を前年の115%に設定しています。

Webの成果は、広告なしで獲得する新規顧客接点数

具体的Web関連の動きについて教えてください。

Webは新規リード獲得のツールとして考えています。Webのプロモーションに関しては、出来るだけWebの広告を使わないで、いかに顧客との接点を増やすかを成果としています。
WEBの資料請求フォームを経由した新規顧客接点獲得数の目標は月間90件以上、WEB経由の売上を前年の130%、売上金額はセミナー経由の売上と同等の目標値を掲げています。Webの主な施策はSEOとLPOです。

SEO対策では、事例を月6本作成することを目標に掲げています。事例を営業資料用に使えるように作り、Webでも公開することにしています。私が事例になりそうな情報を吸い上げて、部下2人に営業部へヒアリングへ行くように指示しています。また、有価証券報告書を提出している企業5,000社ほどを弊社サイトで検索できるコンテンツを作っています。例えば「企業名×有価証券報告書」で検索をかけると弊社サイトが検索エンジン上に表示されるようにしています。弊社に興味あるなしは別ですが、企業情報に興味がある方のアクセス数を大きく上げることに貢献しています。

LPOは「uSonar」のリード獲得を中心に取り組んでいます。「uSonar」は大手企業向けのツールなので、大手企業には「uSonar」の広告を表示する、既存顧客でテレマーケティングを販売した企業には別のシステムを案内するといったやり方をテスト的に行っているところです。
「uSonar」のターゲットが限られてくるので、Webプロモーションをかけるのが難しいこともあり、Webよりもセミナーに力を入れているというのが現状です。

営業スタッフが自社サービスを使いこなす

Webの使い方としては、プロモーションだけでなく、開発したシステムを商品として販売する前に自社サイトをテストサイトとして使用しています。「uSonar」も実際に営業スタッフが使ってみてどうかということを試しています。 「uSonar」を自社サイトで活用する際は、今日訪問した会社がその後弊社サイトを見に来ているか、今までご無沙汰してた会社が弊社サイトにアクセスしているか、といった点をチェックしています。実際、久々にアクセスのあった企業へ電話を入れたら、ちょうど相談がしたかったと引合いにつながった話があります。営業スタッフがいつも管理画面をチェックしているのではなく、担当顧客がサイトへアクセスしたら営業スタッフへ自動的に「アラートメール」が配信されるようにしています。A社からアクセスがあって、どの検索ワードで来て、どのページを見ている、といった情報がメールで確認でき、その情報を元に営業スタッフは電話をかけるようにしています。営業スタッフが実際使って経験していることをお客様へも具体的活用方法としてご提案できるわけです。

創業以来の全員日報入力で、営業部門との垣根なし

営業部やシステム部との連携はどのようにとられていますか?

元々部署の垣根はありません。他部署の言うことでも、それが新人の意見であっても否定はしません。それも1つの意見だと耳を傾ける風土があります。これは日報の影響が大きいと思います。弊社では創業当初より、役員から新入社員まで全員が毎日反省と感想や自分の思っていることを日報に書いているんです。中途採用者にとっては、日報を毎日書くことはかなり大変そうなのですが、それも最初の頃だけで、慣れればかかっても10分ぐらいで済ませられます。

また、半年前からですが、週報としてEQ(emotional quotient/情動指数)を診断、向上させる仕組みも加わりました。弊社には「Talk Direct」「Think Positive」「Try Challenge」という社是があるのですが、その取組みが週報で全員毎週評価されます。 具体的に言うと、5~6人が毎週私をチェック、評価するんです。私をチェックするのは上の人間であったり、新入社員であったり、他部署の人間であったりしますが、誰にチェックされているのか特定することはできません。今週の私は前向きだったか、挑戦していたか、素直だったか、といった評価を受けるわけです。このシステムは、多くの気付きがあり、社内でも評判がよいです。私自身も色々と振り返るきっかけになっています。

日報、週報に続き、四半期報があります。四半期報では目標管理を行っています。去年の数字をベースに今年の目標数値を決め、それを四半期に分け、チームも個人もその目標にむかって動いていきます。目標の達成度と会社の利益を組み合わせて1人当りの平均基準を出し、インセンティブが四半期ごとに出されます。部下にはスペシャリティを持たせたいと考えているので、四半期の目標を立てる際は、あるスタッフには統計学を、別のスタッフにはイラストレーターやフォトショップなど、資格も含め目標を検討しています。

課題は最大規模の企業データベースとWebデータを連携させたマーケティングサービスの提供

今後の取組みについて教えてください。

今後はWebのデータをもっと活用していけたらと実験しています。 データベースは色々持っているのでWebの行動履歴と組み合わせてセグメンテーションやスコアリングをしたり、属性付与をしてより顧客情報が確認できるようにしていきたいと考えています。WEB行動履歴と顧客データ、750万件の事業所データや9500万件の消費者データなどを組み合わせたセグメント化に力を入れて、BtoBだけでなくBtoBtoCの企業向けのサービスも考え始めています。私達がまだ気づいていない可能性がWebにはあると思いますので、やはりWebへの取組みがこれからの課題ですね。

プロフィール

吉川 大基氏
株式会社ランドスケイプ スタッフ部 進行チームマネージャー

2000年に株式会社ランドスケイプ入社。ランドスケイプの経営戦略や営業企画・施策実施に取組む。一度ランドスケイプから離れ、他企業を経験し2009年に再入社。2012年11月よりスタッフ部進行チームマネージャーに就任。ランドスケイプ社の中核として、営業戦略策定から商品開発、広報活動まで幅広く活動する。

インタビュー後記

100人規模になっても部門間の垣根がないのは、創業時からの全員日報による情報共有化が大きく要因しているとのことでした。オフィスへおうかがいすると、見通しのよい開放的なフロアも貢献していると確信しました。データベース事業を展開されているので、どちらかというと堅い企業イメージを持っていましたが、会社も吉川氏も「遊び」を持ちながら新しい取組みにチャレンジする姿勢が伝わってきました。
今後はWebのデータベース活用に意欲的でしたが、弊社でもランドスケイプ様の企業データとGoogleアナリティクスを組み合わせたサービス「企業情報解析ツール」をご提供しています。Webと企業データベースのヒモ付けは、企業のマーケティング活動に様々な可能性をもたらしてくれます。ランドスケイプ様がこれからどんなデータベースシステムを開発されるのか、注目です。
【企業情報解析ツール】 「企業情報解析ツール」を導入いただくと、ご利用のGoogleアナリティクスにトラッキングコードを追加するだけで、ランドスケイプ様の企業情報データベースとマッチングさせて、サイト訪問者の行動履歴に企業名や業種、売上高の属性情報を取得することができます。サイト訪問者がどんな企業なのかを知って早めにしかけたいと要望されている企業へおすすめのツールです。

広富 克子

取締役/執⾏役員

広富 克子

コンテンツマーケティング支援

神⼾⼤学経営学部卒業。住友ビジネスコンサルテイング株式会社⼊社。マーケティングリサーチ・コンサルティング業務を中⼼に活動し、その後AJS(オール⽇本スーパーマーケット協会)にて、プライベートブランドの商品開発・営業に従事。2003年10⽉、株式会社パワー・インタラクティブ⼊社。2006年4⽉、取締役執⾏役員に就任。全社営業戦略を統括する。

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