コラム

第4回 最初のフォローのゴールは、「売り込み」ではなく「課題確認の場」をつくること

執筆:取締役・執行役員 広富 克子

ウェビナーが終わった当日や翌営業日に、参加者へすぐ連絡する。ウェビナー後のフォローでは、スピードが重要だとよく言われます。参加者の関心が高いうちに接点を持つという意味では、その通りです。

しかし、早く連絡すれば、それだけで商談につながるわけではありません。ウェビナー終了直後に電話をかけても、話す内容が全員同じであれば、参加者にとっては突然の営業電話です。「先ほどのウェビナーはいかがでしたか」と感想を聞いたあと、すぐに製品やサービスの説明を始めれば、参加者との間に温度差が生まれます。

参加者は、必ずしも具体的な導入検討を始めているわけではありません。ある業務に問題意識を持ち、まずは情報を集めるために参加した人もいます。社内で課題を共有する前の人もいれば、改善の必要性は感じていても、何から手を付けるべきか分からない人もいます。

だからこそ、最初のフォローのゴールを、いきなり「商談化」や「製品説明」に置かないことが重要です。最初に目指すのは、参加者の背景や現在の状況を理解するための、課題確認の場をつくることです。

早いフォローが、かえって逆効果になることもある

ウェビナー参加者へ早く連絡すること自体は、間違いではありません。問題は、早さだけを追い、参加者がなぜ参加したのか、何に関心を持ったのかを確認しないまま話し始めることです。

例えば、「AIを活用したウェビナー後のフォロー」というテーマに参加した人でも、関心のある部分はそれぞれ違います。AIそのものに関心がある人もいれば、参加者情報が分散していることに困っている人もいます。営業への引き渡し条件が曖昧なことを課題と感じている人もいれば、ウェビナーが受注に貢献しているか把握できないことに悩んでいる人もいます。

こうした違いをふまえず、すべての参加者へ同じ説明をすれば、「自分の聞きたかった話とは違う」と感じられてしまいます。早いだけのフォローは、参加者の関心が高い時間を生かすどころか、その関心を失わせる可能性もあります。

必要なのは、単に連絡までの時間を短くすることではありません。参加者の関心に沿った会話を、関心が高いうちに始められる状態をつくることです。

速度と会話の質は、両立できる

フォローの速度を上げようとすると、会話の準備に使える時間が減ると考えがちです。しかし、減らすべきなのは「会話を考える時間」ではありません。参加者の情報を探すために、複数のシステムやファイルを行き来する時間です。

従来は、ウェビナー終了後にCSVを出力し、アンケートを確認し、CRMへ登録し、担当者を割り振り、過去の履歴を調べてから、ようやく話す内容を考えるという流れになりがちでした。その結果、実際の連絡は数日後になります。

目指すのは、ウェビナー終了後に参加者情報を整理し、優先順位と推奨アプローチを確認したうえで、当日または翌営業日に個別のフォローを行う流れです。考える時間をなくすのではありません。「調べる時間」を減らし、「参加者との会話を考える時間」へ変えるのです。

最初のフォローを成功させる「3ステップ」

課題確認の場をつくるための第一歩(ファーストコンタクト)は、次の3つのステップで設計します。

【ステップ1】参加した文脈(背景)を確認する

最初に、参加者が「なぜこのタイミングで、このウェビナーに参加したのか」という動機や文脈を確認します。

投げかけの例:「本日のウェビナーでは特に『営業連携』のパートに関心をお持ちとのことでしたが、どのような背景でお聞きいただいたのでしょうか?」

ここで重要なのは、アンケートの回答結果を答え合わせすることではありません。参加者がどのような問題意識を持ち、なぜ今このテーマを知ろうとしたのかを理解することです。

【ステップ2】現在の業務課題とボトルネックを確認する

文脈が見えてきたら、現在どのような課題があり、どこで業務や検討がストップしているかを確認していきます。

投げかけの例:「現在、ウェビナー後のフォロー体制で最も時間がかかっているのはどの部分でしょうか?」

まずは参加者の組織体制や業務の現状を正確に把握します。「どこで判断や業務が止まっているのか」というボトルネックを一緒に特定していく姿勢が不可欠です。

【ステップ3】次の接点を提案する

参加背景と現在の課題感がクリアになった段階で、相手の状態に応じた「次の接点」を提案します。

投げかけの例:「製品のご説明ではなく、現在のフォロー体制と改善ポイントを一度整理する場を設けませんか」

無理に商談や見積もり提示へ進める必要はありません。参加者が現在立っているフェーズに最も適した選択肢(課題整理の場、事例資料の送付、次回の勉強会案内など)を提示することが、信頼関係の構築につながります。

課題確認の場を「質問攻め」にしないためのコツ

課題確認の目的は、用意したチェックリストをすべて埋めることではありません。ウェビナーの中で参加者が反応したポイントを起点に、自然な会話を生み出すことです。

たとえば、参加者が事前に「営業担当によってフォロー内容が異なる」と回答していたなら、その本人の言葉を会話のスタート地点にします。

会話の例:「アンケートにて『営業担当者によって対応内容が異なる』とご回答いただいてましたが、現在はどのような条件で参加者情報を共有されていますか?」

参加者自身が提示した情報を起点にすれば、唐突な営業ヒアリングにならず、自然な相談の文脈をつくることができます。最初から予算や導入時期、決裁権限といったBANT情報ばかりを詰問するように確認すると、参加者は売込をされていると察知して心を閉ざしてしまいます。課題確認とは、顧客から情報を一方的に回収する場ではなく、「顧客と一緒に現状の課題を整理する場」として設計されるべきです。

課題確認後に用意すべき「3つの出口」

課題確認を行った参加者が、全員そのままスムーズに営業提案へ移行するわけではありません。課題確認後の「出口」は、大きく以下の3つに整理できます。

出口の分類 参加者の状態・課題感 適切なアクションと次の一手
1. 提案へ進む 具体的な課題があり、自社の支援範囲と合致している 課題背景や関係者を整理した上で担当営業へ引き継ぎ、具体的な商談へ移行する
2. 継続接点をつくる 課題感はあるが、社内予算・時期・体制が未定 事例資料の送付、次回ウェビナーへの案内、再アプローチ時期を設定してフォローする
3. 対象外として整理する 参加者の関心や課題が、自社の支援対象外である 無理な追客を終了し、理由をシステムに記録した上で適切に整理する

課題確認後に提案、継続接点、対象外のどこへ進むかを判断できれば、フォローの結果は明確になります。

「商談にならなかったこと」にも価値がある

ウェビナー後のフォローでは、「何件の商談が獲得できたか」のみが成果として評価されがちです。しかし、最初のフォローの成果を商談化だけで評価してしまうと、無理に参加者を商談へ押し込もうとする運用に陥ります。

課題確認を行った結果、「まだ情報収集段階だと分かった」「社内で課題認識が共有されていないと分かった」「自社の支援対象とは異なる領域だと分かった」という事実が判明したとします。

これらは商談にはなっていませんが、「次にどのような接点を持つべきか(あるいは今は接点を持たない方がよいか)」を正しく判断できたという点で、非常に大きな成果です。

商談にならなかったことは失敗ではありません。参加者の状態が分からないまま終わることが、改善につながらない状態です。「なぜ商談にならなかったか」を記録できれば、次回の企画、ターゲット、アンケート、フォロー条件を見直す材料にもなります。

フォローの成果指標を再定義する

最初のフォローを「課題確認の場」として再定義するならば、評価する指標も商談数だけでは不十分です。以下のような状態を追う必要があります。

・参加背景や関心テーマを定性的に確認できたか
・顧客の現在の業務課題やボトルネックを把握できたか
・課題整理を目的とした面談につながったか
・次回の再接触時期や資料送付の約束を設定できたか
・未商談や対象外となった具体的な理由がログとして残っているか

こうした指標があれば、商談化率が低かった場合にも、どこを改善すべきかが分かります。
課題確認までは進んでいるが営業提案へ移らないのであれば、引き渡し条件や支援対象との適合性を見直す。そもそも課題確認につながっていないのであれば、優先順位、フォロー内容、連絡時期を見直す。商談数だけを見るのではなく、参加者がどの段階まで進み、どこで止まったかを見ることが重要です。

フォローとは「相手の現在地を一緒に整理する活動」

ウェビナー後のフォロー業務とは、参加者の中から見込み客を探し出し、強引に営業へ引き渡す作業ではありません。一人ひとりの置かれている状態を正しく理解し、誠実で適切な「次の対話」を設計することこそが、フォロー本来の役割です。

参加者の関心を起点に、現在の課題を一緒に整理し、次に進むべき方向性を明らかにすることです。どの出口に行き着いたとしても、参加者の現在地と次のアクションが明確になっていれば、そのウェビナーは確実に次の対話へとつながっています。

次回(第5回)では、こうした質の高いフォローを再現性高く実行するための「AIダッシュボードの活用法」について解説します。AIダッシュボードを数字を見るための可視化ツールではなく、参加者の情報を整理し、営業やインサイドセールスへ次のアクションを提示する実行支援基盤として捉え直します。

ウェビナーコラムシリーズ
第1回 ウェビナーが商談につながらないのは、フォローが遅いからではない
第2回 ウェビナーアンケートは、満足度を聞くためのものではない
第3回 営業に渡すべきは、参加者リストではなく「判断済みのアクション」
第4回 最初のフォローのゴールは、「売り込み」ではなく「課題確認の場」をつくること
第5回 AIダッシュボードは「可視化ツール」ではない
第6回 ウェビナーを重ねても商談化率が上がらない会社に欠けているもの

広富 克子

取締役/執⾏役員

広富 克子

コンテンツマーケティング支援

神⼾⼤学経営学部卒業。住友ビジネスコンサルテイング株式会社⼊社。マーケティングリサーチ・コンサルティング業務を中⼼に活動し、その後AJS(オール⽇本スーパーマーケット協会)にて、プライベートブランドの商品開発・営業に従事。2003年10⽉、株式会社パワー・インタラクティブ⼊社。2006年4⽉、取締役執⾏役員に就任。全社営業戦略を統括する。

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