コラム

第1回 ウェビナーが商談につながらないのは、フォローが遅いからではない

執筆:取締役・執行役員 広富 克子

ウェビナーは、BtoBマーケティングの定番施策になりました。

テーマを決め、集客ページをつくり、告知メールを配信する。当日はオンラインで情報を届け、終了後にはアンケートを回収し、参加者リストを営業やインサイドセールスへ共有する。開催までの業務は、多くの企業でかなり整備されています。それでも、「なかなか商談が増えない」という悩みはなくなりません。そこで、ウェビナー終了後の架電件数を増やしたり、フォローメールを早く送ったり、営業への引き渡しを徹底したりします。

しかし、商談化が止まっている本当の原因は、フォローの量や担当者の意欲ではなく、フォローする前の判断材料が整っていないことにあるからです。

「参加者リストを渡す」だけでは、営業は動けない

ウェビナーが終了すると、マーケティング部門は参加者リストとアンケート結果を営業やインサイドセールスへ共有します。一見すると、これでマーケティングから営業への引き渡しが完了したように見えます。

しかし、リストを受け取った担当者の立場で考えると、まだ多くの疑問が残っています。この人は、なぜウェビナーに参加したのか。どのテーマに強く関心を持ったのか。すでに具体的な課題を抱えているのか。それとも、まだ情報を集めている段階なのか。過去に自社との接点はあったのか。今すぐ連絡した方がよいのか、少し時間を置いた方がよいのか。

参加者の名前と会社名、アンケートの満足度だけでは、こうした判断はできません。担当者は、参加・視聴状況、アンケート回答、過去の資料ダウンロード、名刺情報、MAの行動履歴、過去の商談履歴、CRMやSFAの企業情報などを、一件ずつ確認することになります。つまり、フォローが始まる前に、かなりの調査と判断が発生しているのです。

遅れているのは「フォロー」ではなく「フォロー前の判断」

参加者への連絡が翌日以降になると、「フォローの動きが遅い」と考えがちです。

しかし、担当者が何もしていないとは限りません。実際には、複数のシステムやファイルを行き来しながら、誰を優先するか、何を話すか、誰が担当するかを調べています。

情報が分散していれば、優先順位を付けるまでに時間がかかります。担当者によって判断基準も異なります。その結果、一律の営業電話やメールになったり、参加者の関心が薄れた後に連絡したり、商談にならなかった理由が記録されなかったりします。

問題は、営業やインサイドセールスが動いていないことではありません。担当が動くために必要な情報が、動ける形になっていないことです。

参加者リストは、判断の材料ではあっても、行動の指示ではありません。営業やインサイドセールスには、誰に、いつ、どの課題を起点に、どの手段で対応し、次にどこへ進めるのかという判断が残されています。

この判断をすべて現場へ委ねている限り、フォローのスピードや質は担当者の経験に左右されます。

ウェビナーを「リード獲得施策」として捉える限界

多くの企業では、ウェビナーの成果を、申し込み数、参加者数、参加率、アンケート回答数、獲得リード数などで評価しています。これらは、施策を管理するうえで欠かせない指標です。ただし、これだけを追うと、ウェビナーは「どれだけ多くの人を集めたか」を競う施策になりやすくなります。

集客しやすい広いテーマを設定し、多くの参加者を集める。終了後は参加者リストを営業へ渡し、その後は現場の努力に任せる。この運用では、ウェビナーから商談が生まれるかどうかが、営業担当者個人の経験や勘に左右されます。

必要なのは、ウェビナーを単発のリード獲得施策ではなく、商談創出プロセスの一部として設計し直すことです。誰に参加してほしいのか。どのような課題を持つ人を対象にするのか。どの情報があれば参加後の対応を判断できるのか。誰が、いつ、どのような文脈で連絡するのか。どの状態になればWeb会議へ誘導するのか。商談にならなかった参加者とは、次にどのような接点を持つのか。

ウェビナーは、開催当日で終わるものではありません。企画、集客、申込フォーム、アンケート、参加後のフォロー、営業引き渡し、課題確認、商談判定、効果測定までを、一つの流れとして設計する必要があります。

商談化の前に、「次の対話」をつくる

ウェビナー参加者の全員が、すぐに製品やサービスを検討しているわけではありません。あるテーマに問題意識を持ち、まずは情報を得るために参加した人もいます。社内で課題を共有する前の人もいれば、すでに改善策を比較している人もいます。

そのため、参加者全員に同じ営業電話をかけ、すぐに製品説明へ進めようとすると、参加者との間に温度差が生まれます。最初に目指すべきなのは、無理に商談へ進めることではありません。参加した背景や関心を確認し、現在の課題や状況を把握するための「次の対話」をつくることです。

対話の結果、具体的な提案へ進む人もいれば、関連する事例や資料を案内する人もいます。まだ時期が早ければ、次回のウェビナーやコンテンツを案内することもあります。自社の支援対象と合わないことが分かる場合もあるでしょう。

商談にならなかったから失敗なのではありません。参加者が今どの段階にいて、次にどのような接点を持つべきかが分かったことにも価値があります。ウェビナーの価値は、参加者数だけではなく、その後にどのような対話が生まれたかに表れます。

まずは「どこで止まっているか」を確認する

ウェビナーから商談が生まれないとき、すぐに開催回数やフォロー件数を増やす必要はありません。まず、自社のプロセスを確認します。

参加してほしい対象者とテーマは合っているでしょうか。参加者の関心や現在の状態を把握できているでしょうか。営業やインサイドセールスが優先順位を判断するための情報は揃っているでしょうか。対応期限や担当者は決まっているでしょうか。Web会議への誘導条件や営業への引き渡し条件は明確でしょうか。商談になった理由、ならなかった理由を次回へ戻せているでしょうか。

商談化が止まる場所は、企業によって異なります。だからこそ、最初に必要なのは、新しいツールの導入でも、フォロー件数の増加でもありません。どこで商談創出プロセスが止まっているかを、見えるようにすることです。

開催して終わる施策から、次の対話を生むプロセスへ

ウェビナーの開催業務が整っていても、開催後の判断と行動が設計されていなければ、商談創出にはつながりません。参加者リストを渡すだけではなく、参加者の関心や状態を整理し、営業やインサイドセールスが迷わず動ける状態をつくる。商談にならなかった参加者も含めて結果を記録し、次回の企画やフォローへ学びを戻す。この一連の流れがあって初めて、ウェビナーは「開催して終わる施策」から「商談創出プロセス」へ変わります。

次回は、そのプロセスの入り口となるウェビナーアンケートについて考えます。満足度や感想を聞くだけのアンケートから、参加者の関心を次の対話へ変えるアンケートへ。営業やインサイドセールスが次の行動を判断できる設問の考え方を、具体的に整理します。

ウェビナーコラムシリーズ
第1回 ウェビナーが商談につながらないのは、フォローが遅いからではない
第2回 ウェビナーアンケートは、満足度を聞くためのものではない
第3回 営業に渡すべきは、参加者リストではなく「判断済みのアクション」
第4回 最初のフォローのゴールは、「売り込み」ではなく「課題確認の場」をつくること
第5回 AIダッシュボードは「可視化ツール」ではない
第6回 ウェビナーを重ねても商談化率が上がらない会社に欠けているもの

広富 克子

取締役/執⾏役員

広富 克子

コンテンツマーケティング支援

神⼾⼤学経営学部卒業。住友ビジネスコンサルテイング株式会社⼊社。マーケティングリサーチ・コンサルティング業務を中⼼に活動し、その後AJS(オール⽇本スーパーマーケット協会)にて、プライベートブランドの商品開発・営業に従事。2003年10⽉、株式会社パワー・インタラクティブ⼊社。2006年4⽉、取締役執⾏役員に就任。全社営業戦略を統括する。

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